不死身の提督の見た地平線 作:消えずの金剛石
余りにも重すぎる初陣(復帰戦)を終えた私達は何とかリミットである30分以内に母港に戻ってくることが出来た訳ですが、ここで一つ問題が発生。
現在私こと大和と提督である優斗さんは無理やり融合状態のまま母港に帰還した所為なのか、
私が内心で大慌てしていると私の裏側にいる提督が”問題ないです”と答えてくれたのけれど……一体どうするのだろうかと思っていると突然ふと身体の感覚が重くなり、執務室の手前で糸が切れたように倒れてしまい、私は意識を失ってしまいました。
私が次に視界が戻った時に目に入ったのは何処かの病室のベッドの上でまさか誘拐されてしまったのかと焦ったけれど、部屋の外を見ると私が知っている景色でその心配は杞憂だった事を知った。
自身の焦りも落ち着いたので周囲を確認すると近くには点滴器具や棚があり、窓の向こうには自分が知っている風景が見えることから私は帰ってこれたのだと安堵し、自分の身体に何か不調はないかと確認するとあることに気付いた。
あまりにも不自然な程に自分の身体に
「あら……? 先程まで私の中から提督の気配を感じたのですれど……」
まさか分離でもしたのだろうかと大和は僅かながらの疑問を抱いたが、まぁ気のせいだろうと片づけることにして、大和はベッドから体を起こして提督のもとに向かうことにした。
病室の扉の取っ手を引き通路に出て、恐らく提督が居るであろう執務室に足を進める事にした。
大和が執務室に向かうこと15分、目覚めたばかりのぼんやりした思考でどうにか辿り着き、大和はノックをした後、執務室の扉のノブを引いた。
「失礼します、大和です……えぇ?」
「ああ、来たか大和」
「お、目が覚めたのか、大和サン」
「Good evening!! よく眠れましたカ? 大和」
「え、えぇ。それはぐっすりと……って違いますよ!」
大和はその目の前で何事もなかったかのように彼女に笑いかけてくる男と何事もなかったかのように話す天龍と金剛に思わずため息が出そうになった。いくら問題ないと言ったとはいえ一体何をしたのだろうかと疑問に思った私は問いを投げた。
「来たか、じゃありませんよ! どうしてあの状態で私が提督と分離できたのですか? 教えて下さい」
そう言うと彼女は頭を下げ、男は少し思案したのちに静かにその
「そうだな……どうして君が生き返ったのか、まずそれを言うには昔話をしようか。その方が解りやすいだろうからね」
そう、それは今から何百年以上前の僕の祖先が不滅の栄華を求め、一人の女性によって狂ってしまった末に起きた物語だよ。
今から1000年以上前に僕の祖先、藤原不比等はある一人の女性に恋をする。その女性は誰よりも華やかで美しかったという。その女性は現在では「
我が祖先である不比等は輝夜に求婚した際に輝夜から出された難題、
しかしいざ輝夜にそれを見せると
しかし、何故僕が貴方を蘇らせれたのかについて重要なのはこれからのお話。
藤原不比等にはある娘がいた、その娘の名は
少女は月に帰って行った輝夜が残したとされる壺が富士の火口に捨てられると聞き、その壺を捨てに行った人たちが油断したときに壺を奪い、その壺の中に入っていた蓬莱の薬を呑んだ彼女は
彼女は自分がどうしてそうなったかを旦那と考えた末にある一つの仮説に達した。
それは
『「いいか? 何があってもその体質の事は絶対に隠し通せ。それを話していいのは結婚相手だけだ。もしもアンタに子供が出来たら今言った事を伝えてくれ」』
そして妹紅の血筋の末端である人物は代々不死身を継承され、次第に憑依術や炎を操る力を編み出していったという。
「……そしてそれは律儀にも何代も継がれていき、僕に至るというわけだよ」
かなり長い昔話を終えた彼はあぁ疲れたと愚痴り、いつの間にか用意されていた紅茶が入ったティーカップを手に取りすすった。
大和は自身の提督の家系が遥か昔からの血筋であることに思わず固まりかけたが、何故それが自分が完全な形で生き返ったことに繋がるのだろうかと困惑した。
「そうですか……提督の血筋がかの藤原氏の一族なのは驚きましたが、それと私が生き返ったことにどういう関係が……?」
私がむすっとした顔で尋ねると提督は先程言っただろうというやれやれという顔で答えた。
「それは先程説明したんだけどなぁ……僕には
彼はそう言っておもむろに軍服の左腕の袖を捲り見せ、それを見た私は情けないけれど悲鳴にも似た声を上げてしまった。
「提督……その火傷は一体……」
ああそれはね、と説明を続ける。
「これがさっき言った代金だよ。人一人、いや艦娘一人完全蘇生させるとその分の
まぁそのうち治るから気にしなくてもいいさと提督は朗らかに笑って見せた。今の私には目の前で笑っている彼がどこかおかしく見えた、艦娘は良くも悪くも兵器であり、いくら私が大戦艦大和だと言えど何もそこまでする必要はなかったのではなかろうか。
「あの、提督はどうしてそこまでして私を
私がそう聞くと彼は少し間を開けて返事した。
「どうして、ね……貴女をを蘇らせたあの時、不意に聞こえたんだ。〝大和を助けてあげて”って声が。だから僕は貴女を蘇らせたんだ」と何処か遠くを見つめるように彼は呟いた。
「そう……なんですか、それでその声って一体……?」
私が提督にその声は誰かと聞くとあからさまに話題をすり替えた。いつか絶対にその声が誰だったかを聞き出そう。
「……それはいつか話すとして、今いるメンバーに話がある。先の戦闘で帰還した山城についてだ」
「「「……ッ!」」」
その言葉に場の雰囲気が鋭くなる。
「山城についてだけど、現在彼女には入渠してもらっている。もちろん入渠させる前に掃除したから問題は無い」
「へぇ、あの泥風呂を直したのか、不死身だとそんな器用なこともできるのか」
「いやそれは関係ないからな?」
天龍は僅かながらの驚きと共に言葉を漏らした。
確かにあの泥風呂と言って相違ない浴場は新築と見間違う程には綺麗になっていたが、あれは提督が掃除をしていたのか……出撃前にしたのか……? いや出撃後にやった可能性もあるかもしれない。いや、それはどうでもいいや、とオレは頭を切り替える。
「それはそれとしてだな提督サン、お前から見て山城さんは大丈夫なのか?」
オレが山城さんの容体を聞くと「彼女には特に今のところは後遺症はない、それと深海棲艦化の様子もなし。しばらくは経過観察かな」と言っていたから命に別条はないことだけは確認できたので良しとしよう。
「そうか……分かった。山城さんを助けてくれた事、感謝してる」
正直あの時
「……オレはまだお前のことを心から信じているわけでは無いからな?」
「それはワタシも同じネー。」
オレが試すように
「……分かった。信用してもらえるよう善処するよ」
とあいつは炎々と燃えるルビー色の瞳がオレの目を真っ直ぐ見つめながら応えた。
「……おう、あまり期待はしないが頑張れよ」
「言われなくとも、そのために僕はここに来たのだから」
それからは今後の鎮守府の予定や運用などを確認し合いその日は幕を閉じた。
大変遅れてしまい申し訳ありませんでした!!
これからも鈍亀更新ではありますが宜しくお願い致します!!