(Armed) School Life 作:とある遊戯の凍傷野郎
後半は頭が回っていないがオチは決まっていたので結局文才が無い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
───────放課後、とある教室。
一体の存在が机に向かい、ノートを開く。
帽子を初めとした外装の様なパーツは黄色、肌色───基本色は白。
少年型のロボットめいた姿をした彼はあらゆる「作品」と未だ縁を持たなかった。
詳細な説明に値しない、設定のみが独り歩きした人物と言えよう。
重要なのは彼の前に置かれたノートの内容である。
「無計画な
反省点を可能な限り多く述べよ、………」
ロボットの首筋に装着されたダイヤルの設定は現在『メタ』にあった。
反省文の草稿と思しき文書作成にロボットは筆を走らせる。
「表現可能な域を超えた数の設定を交錯させた点に付きましては猛省しております───」
小さな呟きとは言え、静まり返った教室ではそれなりに響く。
残り僅か一年、血相を変え勉学に励む周囲の受験生の顰蹙にも憚らず彼は作業を続けた。
「加えて幾つかの世界設定に関して十分な知識を持たずにプロット作成に臨んだ愚に付きましても我ながら大変遺憾に感じております──────」
集中を邪魔する間の抜けた雰囲気に耐え兼ねて振り向いた生徒が唖然とする。
彼の様子に気付いた者は極力その光景に関わらない様、首を不自然に曲げて視線を逸らす。
「何よりも、その結果として当該作品を未完のまま放置した事。
臭い物には蓋をすると言う最低限のネットマナーすら守ろうとしなかった私のお見苦しい怠慢に関しましても重ね重ね、深くお詫び申し上げます──────」
最も災難なのは彼の
異常現象が頭上数十センチの所で何やら蠢いている中、常人が冷静な思考を保てよう筈も無い。
辛うじてそれを可能にしたのは彼女の頑強な精神力、そして26階級分に拡張された新たな学級振り分け方式ですら尚Aクラス生徒の座を離れる事がなかったという矜持の賜物と言えよう。
「さて、本来は『その辺のモブキャラ魔改造』をコンセプトに半オリジナルキャラクターを主人公の座に据える予定でしたが──────」
───考えまい考えまい関わるまい考えまい………………!
───大丈夫、秀吉とのクラス交換事件だって長期的に見れば無事に乗り切ったんだから………
───この頭のオカシい状況にもアタシは耐え切ってやる………!
「──のモチベーション不足によりその段階まで物語を進行させる事すら─────」
事実、彼女はその短気さに見合わない忍耐力を発揮していた。
本来なら席を立って一言注意する所でそうした行為に及ばなかった理由は幾つかある。
一つはロボット男が彼女より上の立場の人間、即ち教職員に属する人間だったという物。
騒ぎを起こす事が許されない場所で教師の神経を逆撫でし、進んで面倒事を起こす事は少なからず彼女の「完全無欠の優等生」のイメージに傷を付けると予想された。
───ただでさえあのバカのお陰であらぬ噂を立てられてるのに………!
「───更には十分な語彙力や内容整理能力を持たず、少年期特有の青臭さを生のままお伝えしてしまうことと相成りまして───────」
もう一つは単純に件の人物があらゆる意味で面倒な、関わりたくない類の人物だったという物。
最後には、下手に動けば彼女自身の自制が効かない可能性。
極限状況で我慢の限界を迎えた”優等生”が日頃のイメージ作りの演技を忘れて迷惑者に掴み掛からないという保証は何処にもなかった。
「御謝罪の御文言を御並べ上げ奉るべき御点は御両手の御指で御数えする事も御叶わず───」
真面に聞くと気の遠くなる様な独り言による精神攻撃をすんでの所で躱す。
序でに上から降るシャープペンシルの折れ芯も軽く首を傾げて避ける。
ルーティンを発見した彼女の集中は次第に軌道に乗り始めていた。
「誠にもう書く内容の種が尽きて参りまして当方としても非常に困惑しており─────」
ふと自分のノートを見遣ると黒い物体が付着している。
無思考に、機械的に指で摘まみ出そうと試みる。
グニョリと。
思わぬ粘性を感じた彼女は内心総毛立った。
刹那、無意識に両手が上へと延びる。
男の頬を左右から鷲掴む形になった所で───────
「───────ヘギャッ!?」
ロボット生命体の頭部は躊躇なく捻られた。
粘る物体の正体は男によって作られた簡易練り消しゴムであるが、彼女は知る由もない。
纏まった量の消し屑を指でよく練りこむ事で皮脂等を混入させ、それによって固めている。
素材その物である他の消し屑を纏めるには役に立つ。無論衛生的に宜しい代物ではない。
突然の悲鳴、次いで大きな落下音と轟く怒号。
一対の机と椅子が男の体ごと空中から叩き付けられる。
全身の骨をあらぬ方向に折り曲げた男は成仏霊の様なエフェクトを出して失神した。
周囲の人物は半ば恐れ、半ば憐れみを込めた視線を一ヶ所に集める。
自らに施したメッキが剥げる事も恐れず、その場にいた全員の心情を代弁するかのように───────元2年Aクラス所属生徒、木下優子は肺の底から声を絞り出した。
「
──よく解らない謎の技術で机ごと天井に張り付いてんじゃないわよ!出て行きなさいっ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「んだよ、自習の邪魔にならないようにと思って態々席も取らないどころか床の面積すら取らない方法を選んだのにぃ………そりゃあ呟くのはちょっと迷惑か、とは思ったり思わなかったり」
言う程面白くなかった。撤収。
「───────。
無軌道なスラップスティック擬きが特定の終着点に至る事は最早ない。
故にこれより先は日常の断片であり、言い換えれば潔さとは無縁の恥の上塗りである。
但し、恥として一度産んだ以上何らかの形で決着させねばならないのもまたモラルである。
要はそれに向けて「努力している」風に振る舞えば良いのだ───────」
正直想像力が今より豊かだった時代の妄想を見るのは見ていられない点を除けば楽しい。
「聞けよ。『ちびちゅき』好き?」
………………いっぱいちゅき?
「違う。そっちじゃない」
ハイ。ごめんなさい。
また放置します。魚拓はNG。
誰に言ってるんだろうか私は。