少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回はフライング+連続投稿です。


少年エルフ、【ロキ・ファミリア】と再会する

「ふぅっ、思いのほか梃子摺ったな……」

 

 17階層の階層主――『ゴライアス』との戦闘を終えた俺は、18階層へ続く狭い連絡口を進んでいる。

 

 戦闘前にゴライアスの巨大な手が目前に迫ったが、既に飛翔剣(デュアルブレード)――ディムDブレードを展開していた俺は咄嗟に武器アクション『パリィ』で防いだ。

 

 パリィは常時使用出来るジャストガードで、成功すれば敵の攻撃を防ぐだけでなく、カウンターとしてフォトン(エッジ)を飛ばす。そのカウンターに命中したゴライアスは手に痛みが走った事で引っ込めた。

 

 直後、俺は怯んだゴライアスの隙を突こうと、巨大亀形ダーカー――ゼッシュレイダと戦う要領で攻略しようとした。

 

 まず初めに大地を縫うようにしている巨大な足を痛めつけようと、接近しながらフォトンアーツを仕掛けた。連撃と共に巨大な衝撃波を幾重にも放ち、追撃でフォトンの刃を展開して敵を貫く飛翔剣(デュアルブレード)エトワール用フォトンアーツ――ライトウェーブを。

 

 貫通性能を持った四発の衝撃波と追撃の(エッジ)により、対象の右足は斬り刻まれる。余りの激痛だったのか、咄嗟に右足を上げて左足のみで立っているゴライアスに、空かさず攻撃を仕掛けた。

 

 左足に狙いを定めて目標を両手の刃で突き刺して切り裂いた後、追撃でフォトンの刃を放つ飛翔剣(デュアルブレード)エトワール用フォトンアーツ――ディストーションピアスを放った。流れとしては踏み込んで二連突いて、一瞬溜めて開き斬った後、大き目なフォトンの(エッジ)で挟み斬りの四段攻撃だ。

 

 斬り刻まれた右足と違って、バッサリと足首を切断された事により、ゴライアスは激痛による悲鳴を上げながら仰向けに倒れた。

 

 悶えて苦しむゴライアスに俺はこれを好機として、エトワール用の飛翔剣(デュアルブレード)専用スキル――フルコネクトを発動。

 

 戦闘で溜めたギアを全て消費させ、二つの剣として使っていた飛翔剣(デュアルブレード)を、フォトン(エッジ)と共に接続し、両手持ち用の大剣を形成する。

 

 辛うじてゴライアスが頭を上げた瞬間、力強く斬り上げた俺を見た後、放たれた鋭利な衝撃波によって二つに分かれた。もっと分かりやすく言えば、ゴライアスの身体が左右に真っ二つだ。

 

 激痛を通り越したのか、ゴライアスは意識を失うように頭を下ろして即座に灰となって絶命する。左右真っ二つとなった大きな魔石を残して。勿論ソレは回収済みである。

 

 以上が、ゴライアスとの戦闘経緯である。初見の所為もあって、倒すのに時間を喰ってしまった。

 

 本当なら相手の戦い方を分析しながら倒したかったが、一刻も早くベルと合流する為に短期決戦をやろうと、敵に攻撃させないように本気でやらざるを得なかった。次回は必ず分析しようと決意して。

 

 それはそうと、連絡口を降り続けていると、少し先に明かりらしき日の光らしきものが見えた。

 

 ダンジョンなのにどうしてと疑問を抱く俺だが、この先にベル達がいる事は確かなので、今は気にせず出口と思しき穴へ飛び込む。

 

「此処が18階層、か……」

 

 着地に成功した俺は周囲を見渡しながら呟く。

 

 今いる18階層は、もしかして地上ではないかと錯覚している。

 

 後ろにダンジョンの壁はあっても、地面には数え切れない無数の草が生え、周囲にはいくつもの木々が並んでいる。まるで地上の草原や森林みたいだ。

 

 更に見上げると、光の大元が分かった。俺の瞳には、天井が光り輝く水晶で埋め尽くされていたから。あの夥しい量の水晶から発光してる事で、快晴と思われる青空が形作られていたんだろう。

 

「……成程。これが『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』と呼ばれている所以か」

 

 加えて、安全階層(セーフティポイント)である事も理解した。水晶と大自然に満たされた地下世界を見れば、誰だって安全な所だと思ってしまう。

 

 俺がよく好んで探索に訪れた惑星ナベリウスとよく似ている。エルフである俺としては、自然に囲まれると心が落ち着くので。

 

 って、今はそんな事どうでもいい。俺が遅れてやって来たと言っても、疲弊しているベルの事を考えれば、この辺りで気絶している筈なんだが……どこにもいなかった。しかもリリルカとヴェルフも一緒に。

 

 三人がいない可能性はいくつかある。

 

 ベルが気絶せず、リリルカとヴェルフをどこか安全な場所へ運んでいる。もしくは、別の者が気絶しているベル達を何処かへ運んだ。

 

 他にもあるが、この状況で考えるとしたら、恐らく後者だろう。確証はないが、視界の先にはいくつかテントを建てられてる野営地らしき拠点がある。あそこにいる誰かがベル達を連れて行ったかもしれない。

 

 例えあそこにベル達がいなくても、何かしらの情報がある筈だ。とは言え、アレは明らかに【ファミリア】の冒険者達と思われる拠点だから、俺の質問に答えてくれるかどうか怪しい。同業者と言っても、冒険者は基本的に他所の【ファミリア】に対して深く干渉しない事になってるからな。

 

 せめて友好的な【ファミリア】である事を願いつつ、俺は野営地に向かう事にする。

 

 

 

 

「失礼。少しお伺いしたい事があります」

 

「何でしょうか?」

 

 野営地の入り口にいる見張りらしき同胞(エルフ)の少女に話しかけると、向こうは警戒しながら訪ねてくる。

 

「いかに同胞と言えど、ここは【ロキ・ファミリア】の野営地です。他所の【ファミリア】である貴方に答える内容は限らせてもらいます」

 

「【ロキ・ファミリア】?」

 

 同胞からの思わぬ台詞に、俺は思わず鸚鵡返しをした。

 

 まさか、俺が以前に宴で一悶着を起こした都市最大派閥がこんな所にいたとは。

 

 そう言えば確か【ロキ・ファミリア】は遠征中だったな。となると、遠征に出発した日数から考えて、この階層にいるって事は現在帰還中か。なのに此処で野営地にしてるのには、何かしらの理由があるんだろう。

 

 となると、ここには俺がよく知っているあの人がいる筈だ。

 

「ならば話は早い。そちらにレフィーヤ・ウィリディスはいらっしゃいますか?」

 

「レフィーヤ? ……失礼ですが、彼女とは知り合いですか?」

 

「知り合いも何も、俺は彼女の従弟です。確認して頂ければ、すぐに分かります。リヴァン・ウィリディスが来たと伝えて頂ければ」

 

 訝る同胞の少女からの問いに、俺は嫌な顔をする事なく答える。

 

「……分かりました。ではすぐに呼んできますので、此処で少々お待ち下さい」

 

 待つように言われた俺は頷くと、彼女はすぐに野営地の中へと進んでいく。

 

 レフィ姉さんがいるなら、ベル達の事を粗方聞ける筈だ。取り敢えずは向こうが来るまで待てば自ずと――

 

 

「あ~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」

 

 

 野営地の奥から、突然叫び声が聞こえた。

 

 な、何だ? 今のってもしや……レフィ姉さんか? あの人らしくない絶叫だったな。

 

 本当ならすぐに確認したかったが、待つように言われた俺は留まるしかなかった。

 

 その後、何故か少々涙目となってるレフィ姉さんが此方へ来て、俺を見た途端に物凄く驚いた顔となる。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだね、リヴァン・ウィリディス。まさか、ここで君と再会するとは思わなかったよ」

 

「どうも。あの時の宴以来ですね。今回は、彼等を救って頂き誠にありがとうございます」

 

 レフィ姉さんと再会して事情を説明した後、ベル達が此処にいると分かった。すぐに会わせて欲しいと許可を願うと、野営地に招かれて一つの天幕に案内された。

 

 彼女の言う通り、静かな寝息を立てて安静にしているベルとリリルカとヴェルフを見付けた事に、俺は非常に安堵した。けれど、それとは別に、天幕の中には三人――特にベル――の看病をしていた【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインもいた。俺の姿を見た彼女は非常に驚いた顔をしていたのは分からないが。

 

 因みに三人の傷は【ロキ・ファミリア】によって治療されていた。アイズ・ヴァレンシュタインが助けた以上は見捨てる事は出来ない他、同業者を見捨てる訳にはいかないと処置を施してくれたようだ。そのついでとして、俺も治療される事になったが、丁重に辞退させてもらった。俺自身は大した傷を負っていないし、回復アイテムも所持しているので。

 

 その後、レフィ姉さんより団長のフィン・ディムナから話があると言われたので、【ロキ・ファミリア】首脳陣の天幕にいると言う訳である。

 

 今はベル達を救出してくれた感謝の礼をする為に、深く頭を下げている。

 

「そう畏まらないで、どうか楽にしてくれ。冒険者とは言え、こんな時くらいは助け合わないとね」

 

 彼はそう言って、肩を少し上げる素振りをする。

 

「それに、アイズの知人である彼を見殺しにしたら、僕は彼女や君に恨まれてしまうからね。それ以外にも、僕としては以前にあった宴の件での償いをしたいと思っていたところだしね」

 

「あの件でしたら、もうレフィ姉さんの謝罪で充分だと申した筈ですが?」

 

「君はそうかもしれないけど、もう一人の方――ベル・クラネルは別だ。彼には正式な謝罪を一切してないからね」

 

「まぁ、確かに……」

 

 確かにアレはあくまで俺一人で済ませた。しかし、ベルについては一切何もしていない。だからフィン・ディムナは、ベルの救出には謝罪の意味も含まれていると言う事か。

 

 色々と考えているなぁと思いながらも、敢えて口には出さなかった。

 

「君達の事情は概ね理解しているつもりだけど、一応説明してもらえるかい? 僕らの現状も話しておくから、情報交換といこう」

 

 …………成程、そう言う事か。本当に食えない人だ。

 

 本来ならダンジョン探索に関する詳細な情報は、基本的に他所の【ファミリア】には教えない事になっている。下手に教えれば向こうに主導権を握られてしまう恐れがあるので。

 

 しかし、残念ながら今の俺に断る権利はなかった。偶然とはいえ、【ロキ・ファミリア】にはベル達を救出してくれた恩義がある為、それに見合う代償を支払わなければいけない。

 

 もしこの場で教えないと断ってしまえば、後々に必ず面倒な事になる。特にあの狡猾そうな神ロキに何を言われるか分かったもんじゃない。

 

 とは言え、向こうの思惑通りに洗いざらい話すのは癪なので、少しばかりの抵抗をさせてもらうとしよう。

 

「そうしたいのは山々ですが、生憎と現パーティのリーダーはベル・クラネルになっています。いくら救ってくれた恩があるとは言え、リーダーである彼の許可がない状態で、情報交換をするのは道理に反しますので」

 

「…分かった。では後ほど、彼に訊くとしよう」

 

 俺の抵抗にフィン・ディムナはほんの少しばかり間があったが、すぐに笑顔でそう答えた。

 

 まぁ、ベルの事だから全部話すだろう。アイツは超が付く程のお人好しだから、内容を一切包み隠さずに全て話す筈だ。

 

 何も考えずに全て話すのは楽だが、俺は一時カスラに育てられたので、相手の心情を予測して色々と考えるようになった。(アイドル側の)クーナさん曰く、『考え方まで陰険メガネと似なくていいのに』と言われた事がある。

 

「その代わりだけど、ベル・クラネルから情報交換しない限り、こちらも教える訳にはいかない。かと言って、追い出す気は無いから安心してくれ。君達を客人としてもてなそう。周囲と揉め事を起こさなければ、彼等がいるあのテントを好きに使って貰って構わない。団員達にも僕の口から伝えておくよ」

 

「お心遣いに感謝します。こちらとしては大変願っても無い事なので」

 

 取り敢えずはベル達の身の安全は確定か。俺としても好都合だから、何の文句も無く従う事にする。

 

「がははっ、フィン相手にここまで言い切るとは本当に度胸のある小僧じゃ! ここまで面白いエルフは久々に見たわい!」

 

「ガレス、それは私の事を言っているんじゃないだろうな?」

 

 大笑いするドワーフのガレス・ランドロックに、同胞……ではなく王族(ハイエルフ)のリヴェリア・リヨス・アールヴ様が睨むように問う。

 

 そう言えば、確かあのお方はレフィ姉さんの師だったな。本当ならすぐにでも挨拶すべきなんだが、やる事があり過ぎた為に後回し……と言うより忘れていた。他のエルフからすれば考えられないどころか、かなり不敬だと言われるだろうが。

 

 一先ずは挨拶をしようと、俺は彼女に向かって膝を折り、頭を垂れる。

 

「この度は御挨拶が遅れてしまって誠に申し訳ありませんでした、リヴェリア・リヨス・アールヴ様。本来であれば、宴の時に名乗らなければならなかった無礼をお許し下さい。存じているかとお思いですが、私はレフィーヤ・ウィリディスの従弟、リヴァン・ウィリディスです。以後お見知りおきを」

 

「ああ、お前の事はレフィーヤから一通り聞いている。以前の宴については、本当にすまなかった。だがそれとは別に、私が王族(ハイエルフ)だからと言って、そのように畏まる必要は無い。出来れば私の事は、一人の冒険者として接して欲しい。なんなら、『リヴェリア』と呼んでも良いぞ」

 

 ……ん? 何かレフィ姉さんから聞いた話とは違うな。リヴェリア様は王族(ハイエルフ)で大変高貴な御方だから、礼節には物凄く厳しいから決して粗相無く振舞うようにって言われたが……。

 

 幼少時の俺だったら、何の疑いも無く受け入れていた。恐らく、リヴェリア様が何を言っても高貴なお方と接し続けていただろう。

 

 だけど、オラクル船団でカスラから教育された今の俺は、凄く堅苦しかった。

 

『私が三英雄だからと言って、そんな仰々しく畏まる必要なんか一切ありません。出来れば普通に話して頂けませんか?』

 

 と、カスラからそう言われた事があった。

 

 なので俺は、リヴェリア様に言われた通りの事を実行しようと立ち上がる。

 

「そうですか。では今後、貴女を『リヴェリア』と呼ばせて頂きます。よろしければ友好の証として、握手でもどうでしょうか?」

 

「なっ……」

 

『ッ!』

 

 俺がリヴェリア様(以降はリヴェリア)を呼び捨てにしながら手を差し伸べた瞬間、彼女だけでなく他の二人も驚愕の表情となった。

 

 そして――

 

「……くっ、ふふ、はははっ」

 

 リヴェリアは心底可笑しそうに肩を揺らした。

 

「? 俺は何か笑うような事を言いましたか?」

 

「ああ、すまない。まさか本当に呼び捨てにされるだけでなく、握手まで求められるとは思いもしなかったのでな」

 

「……御不快でしたら、今まで通りの接し方になさいますが」

 

「いいや、そんな必要など一切無い」

 

 そう言いながらリヴェリアは差し伸べてる私の手を取って、少々強く握りしめてくる。

 

「今後もそのままでいてくれ。あと、私もお前の事を『リヴァン』と呼ばせてもらう。構わないか?」

 

「勿論ですよ、リヴェリア」

 

 頷きながら再び呼び捨てで言う俺に、彼女はとても気分が良さそうな表情となった。

 

「……これは驚いたね。まさか王族(ハイエルフ)のリヴェリア相手に、あんな態度を取るエルフがいたとはね」

 

「リヴェリア本人も随分と嬉しそうな顔をしとるのう。うちの所におるエルフ達が大騒ぎにならなければ良いのじゃが」

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