少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は前話と比べると短いです。


少年エルフ、リヴィラの街へ行く

 18階層の『夜』が終わり、『朝』が来た。

 

 朝食後に俺達は、神ヘルメスが提案した『街』へ観光しに行こうと【ロキ・ファミリア】の野営地から離れた。

 

 驚く事にベルがいつの間にかアイズと約束をしていたみたいで、彼女も同伴する事となっている。ヘスティア様とリリルカが物凄く面白くなさそうな顔をしていたが。アイズの他にも暇だからと言う理由でアマゾネスの姉妹、ティオナさんとティオネさんも同行している。因みにレフィ姉さんは、毒を受けた団員達の看病がある為に参加出来なかったようだ。

 

 何故か分からないが、アマゾネスの妹であるティオナさんが何故か俺の近くにいる。彼女だけでなく、アイズやティオネさんも時折俺に視線を向けている始末。何かまるで探りを入れているような感じがする。 

 

 探りと言えば、昨夜に神ヘルメスが気になる事を言っていた。『【ロキ・ファミリア】が階層主(ゴライアス)を誰が倒したのか密かに調べている』と。

 

 俺が階層主(ゴライアス)を倒した事に向こうは特定していないと思う。けど、もしかすれば俺がやったかもしれないと疑惑の目で見ている、と言ったところだろう。現に昨日まで大して気にしなかったアマゾネス姉妹が俺を気にかけている上に、ベルと一緒に歩いているアイズもチラチラと俺に視線を向けている。

 

 三人の行動を見て何となく分かった。大方、フィン・ディムナ辺りが『密かに俺の監視や情報収集をするように』と指示されたんだろう。あんまり言いたくないが、フィン・ディムナは人選を誤ったと思う。だってこの三人、あからさまに俺の事を調べていますって丸分かりなので。

 

 もし神ヘルメスが教えてくれなかったら、『一体何をしてるんだ?』と言う程度の疑問しか浮かばなかったと思う。まぁ、向こうの思惑が何となく分かった以上、敢えて何も知らないように振舞っておくか。

 

 大自然の風景を見ながら移動して『リヴィラの街』に到着すると、木の柱と旗で作られたアーチ門が俺達を出迎えた。『ようこそ同業者、リヴィラの街へ!』と共通語(コイネー)で書かれた文も含めて。

 

 ベルは最初喜んだ顔をしていたが、ティオネさんから空かさず忠告をしてくれた。ああいう歓迎の仕方で冒険者の印象を良くして、財布の紐を懐を緩めようという手段であると。

 

 冒険者の補給地点と呼ばれる場所と言われているが、アイズ達は余り好きではないように見える。何故なのかと疑問を抱くも、それは後になって分かった。

 

 因みにリリルカがアスフィさんと話している時に面白い内容が聞けた。この街にある沢山の水晶(クリスタル)は地上で全て換金できると。

 

 リリルカは目をキランと光らせて水晶を山ほど採取しようとベルに言うも、ここにある水晶は大きい上に持ち帰るのは不可能だった。普段背負っている彼女の大きなバックパックはダンジョンで破棄したので、新しい物を購入しなければならない。なので小さな水晶を僅かに持ち帰ることしか出来ないのであった。

 

 彼女は無理でも俺なら問題無い。水晶が多少大きくても、俺の電子アイテムボックスに収納可能だった。恐らくは魔石と同じく『素材』としてカテゴリーされるから、最大99個まで収納出来る筈だ。なるべく形の良い大きめな物を選ぶとしよう。それを地上で売れば、【ミアハ・ファミリア】の財政も潤う事になって、暫くナァーザさんからの小言は控えめになるだろう。

 

 俺が色々と計算している中、神ヘルメスが自由行動を勧めてきた。確かに大人数だったので、俺を含めた全員は当然賛成だ。

 

 但し、一人だけで行動するのは禁止だった。リヴィラの街へ来た事の無い俺達は向こうから見れば、絶好のカモと見られてしまうようだ。

 

 別行動するならベルと一緒に行こうと思いきや、ヘスティア様が連れて進んで行ってしまった為に叶わなかった。あの二人だけでは心配だと思ったのか、アイズの他に神ヘルメスとアスフィさんも付いて行く事となった。

 

 

 

 

「た、高ぇ! この砥石だけで一万三千ヴァリス!?」

 

「こんなボロいバックパックが二万ヴァリスだなんて……法外もいいところです!」

 

 ベル以外のメンバーと別行動する事になった俺は色々な店を見て分かった。どこの店で売られている商品が、通常価格の何倍もの値段で販売されていると。

 

 同行しているティオネさん達の話によると、ダンジョンでは物資が簡単に確保出来ないから、高い値段でも売れてしまうらしい。安全階層(セーフティポイント)とは言っても、ここで物資を補給出来るのは大変ありがたいのは理解してるから、値段が高いのも頷ける。

 

 とは言え、相手の足元を見るような商売は個人的に余り頂けなかった。明らかに粗悪品と思われるアイテムが、地上で売られている製品の何倍以上の値段で販売するなんて、完全にぼったくりだ。

 

 安っぽい砥石や、ボロボロのバックパックを購入しようとするヴェルフとリリルカが叫びたくなるのは無理もない。そんな二人に、売っている側は『嫌なら別に買わなくていい』と完全に上から目線である。

 

 アイズ達が此処を利用したくないと言うのがよく分かった。だから【ロキ・ファミリア】は態々野営地(キャンプ)を設置し、無駄な消費を抑えようとしているのだと。

 

 取り敢えずこの街で地上の価値観を持って買物をすれば、痛い目に遭う事だけは間違いない。もし俺が此処へ来る際は、本当にどうしようも無い時に使う事にしよう。

 

 あと他にも、この街で魔石やドロップアイテムを換金する事は出来るらしい。しかし、ここでは地上の半額以下の金額で買い取られるから、冒険者達は泣き寝入りする事となる。限界以上の魔石やドロップアイテムを所持しても邪魔になるから、更に下へ目指そうとする冒険者としては、仕方なく此処で売らざるを得ないそうだ。

 

 店側の冒険者からすれば、労せず手に入れた買取り品なので、単純な差額以上の利益を得ている。

 

「こんな問題だらけの街をギルドはよく放置しているな。ここにいる連中を取り締まってもおかしくないんだけど……」

 

「無理よ」

 

 俺の呟きに、近くにいたティオネさんが言い返してきた。

 

「ギルドは地上での対応で精一杯だから手が出せないのよ。ここを纏めている頭領(トップ)はそれを分かっているから、やりたい放題してるってわけ」

 

「……さぞかし性根が腐っているんでしょうね、その頭領(トップ)は」

 

 この街のトップに対する毒を吐くと、ティオネさんだけでなくティオナさんも同感だと言わんばかりにうんうんと頷いていた。

 

 そんな中、法外だと叫んでいたリリルカは結局バックパックを購入する事となった。サポーターの彼女としては、どうしてもそれが必要だったので諦めて買う事にしたそうだ。

 

「ところでお聞きしたいんですが、水晶(クリスタル)を採取しても問題無い上に、人目の無い場所ってありますか?」

 

「え? あるにはあるけど……でもあそこは殆どおっきい水晶だけだよ。小さいのは他の冒険者達が採取して拾えるものなんか殆どないし」

 

 俺の問いにティオナさんが答えてくれた。

 

「全くもう、これだから冒険者は嫌なんです……! がめついったらありゃしません!」

 

「水晶を採取しようと考えていたリリスケが言う台詞じゃないな」

 

 それを聞いたリリルカは非常に残念そうな表情となっている。がめつい冒険者達に悪態を吐いているところを、ヴェルフが突っ込んでいたが華麗に無視していた。

 

「大丈夫です。自分で作ればいいだけですし」

 

「作る?」

 

「取り敢えず案内してくれませんか?」

 

 俺の発言にティオナさんは首を傾げるが、一先ず指定先の場所へ案内してもらうように頼んだ。

 

 

 

 

「おいおい、嘘だろ……」

 

「あの大きな水晶が、まるで解体されているみたいに……」

 

「さ~て、回収回収っと」

 

 水晶が大量にある場所へ案内された俺は、一際光沢のある特定の水晶に狙いを定め、エールスターライトの短杖(ウォンド)形態を展開した。

 

 突然武器を出現した事にティオナさん達は驚くも、気にせずに対象を攻撃を開始する。

 

 硬そうに見える大きな水晶だが、柔らかい物のように簡単に斬り裂いていく。先程まであった巨大な水晶は斬られた事でボトボトと地面に落ちて、今はもう完全に無くなっていた。そして俺が立っている地面の周囲は、大量の水晶の塊がゴロゴロと転がっている。

 

 その光景を見ていたヴェルフとリリルカは唖然としており、アマゾネス姉妹も似たような反応をしている。

 

「な、何なんだアイツは……!」

 

「あの水晶を、まるで豆腐を切っているみたいでした……!」

 

「す、すごい……」

 

 一緒に見学していた桜花、命、千草も信じられないように見ていた。

 

 向こうの反応を気にしてない俺は、一つ目の水晶に触れた直後に消えた事に、リリルカ達が反応する。

 

「リ、リヴァン様、水晶が消えてしまいましたが?」

 

「大丈夫。ちゃんと収納済みだから」

 

「しゅ、収納?」

 

 鸚鵡返しをする俺にリリルカにしか聞こえないよう、小声で教える。

 

 流石にアークス専用の電子アイテムボックスに収納しているとは言えないから、周囲には見えない自分専用の大量収納マジックアイテムを使っていると誤魔化した。言っておくが、別に完全な嘘ではない。

 

「何ですか、その超便利過ぎるアイテムは!? そんな物があるなら最初からリリに教えて下さい! と言うよりソレをリリに下さい! リヴァン様が用意してくれれば、あんな無駄に高いバックパックを買わずに済んだと言うのに!」

 

「だから俺だけにしか使えないって言っただろう」

 

 文句を言ってくるリリルカだが、俺は気にせず回収作業を続けた。

 

 詫びとして転がっている水晶を好きなだけ取っていいと言うと、彼女はブツクサと文句を言いながらも拾い始めてボロいバックパックに収納する。ヴェルフが言ってたけど、本当にがめついな。

 

 さっきまであった大量の水晶の塊は俺とリリルカが回収した事により、もう完全に無くなった。しかし、俺の電子アイテムボックスはまだ余裕があるので、もう一つの大きな水晶を解体する事にした。二度目の解体ショーに、ヴェルフ達が再び唖然となったのは言うまでもない。

 

 リリルカはさっきので充分に拾いきったみたいで必要はないようだ。見学していたヴェルフ達にも欲しかったら拾って良いと言うも、持っても邪魔なので遠慮すると断られた。

 

 二体目を解体し、再び地面に転がる大量の水晶の塊を回収後、電子アイテムボックスはもう入らなくなってしまった。後は地上に持ち帰って換金するとしよう。

 

 この場所を案内してくれた【ロキ・ファミリア】の二人に礼を言うも――

 

「凄い凄い! 何かアイズみたいにスパスパ斬ってたね!」

 

「は、はぁ……。第一級冒険者の貴女にそこまで言われるとは光栄です」

 

 ティオナさんから物凄く称賛された。今は俺に近付いて満面の笑みを見せている。

 

「リヴァン君、だったよね? 良かったらさ、アタシと手合わせしてみない?」

 

「………はい?」

 

 何故か分からないが、第一級冒険者の『Lv.5』ティオナ・ヒリュテさんから突然の手合わせを誘われた。

 

 リリルカやヴェルフだけでなく、桜花達も当然吃驚した表情だ。

 

「ちょっとバカティオナ! アンタ何勝手な事を言ってんの!?」

 

「この子があの硬いクリスタルを簡単に斬ってるから、凄く強そうな気がしたんだよねー。だから確かめようと手合わせをしようと思って」

 

「そんなバカバカしい理由で手合わせするんじゃないわよ! 大体この子は『Lv.1』じゃない! 『Lv.5』のアンタがやったら弱い者苛めも同然でしょうが!」

 

 アマゾネス姉妹の言い争いはまだまだ続く様子。

 

 確かにティオネさんの言う通り、『Lv.1()』が『Lv.5(ティオナさん)』と戦ったら百パーセント負けるだろう。冒険者としての常識を考えれば。

 

 しかし、アークスとしての俺はそう簡単に負けたりはしない。エトワールスキルや、アークス製の武装を身に纏っている俺でも勝てる可能性は充分にある。

 

 本当なら喜んでティオナさんとの手合わせをしたいと個人的に思っている。だが、俺が階層主(ゴライアス)を倒したかもしれないと【ロキ・ファミリア】が調査しているから、もし彼女と戦ったら向こうは確実に俺を疑うだろう。

 

 今はバレたら色々と面倒な事になるので――

 

「ティオナさん、折角手合わせを誘って貰って申し訳ないのですが、やはり遠慮しておきます。ティオネさんの言う通り、『Lv.1』の俺では貴女の相手にはなりませんので」

 

「ほら、この子がそう言ってるんだから諦めなさい!」

 

「ちぇ~」

 

 俺が丁重にお断りをすると、ティオネさんが賛同するように言った事に、ティオナさんは漸く諦めてくれた。見守っていたリリルカ達も事無きを得たと安堵した表情となっている。

 

 けれど、この時の俺は全く予想していなかった。地上へ帰還し、彼女と手合わせする機会が訪れる事を。




大量の水晶を地上に持ち帰って換金しようとするリヴァンでした。

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