少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回はソード・オラトリア側の話です。


少年エルフ、友達と従姉を助ける

 ベルがアイズの水浴びを覗いた真相が判明した。騒動の原因は神ヘルメスの仕業のようだ。

 

 それを聞いた俺は「やっぱりそう言う事だったか」と口にしながら内心安堵した。同時に俺の友達を唆した、あの胡散臭い男神に対する殺意を沸々と沸き上がらせながら。

 

 悪く言うつもりではないが、ベルは女性に嫌われてまで覗きを行おうとする度胸なんか無い。というより、そんな事をしようだなんて考えもしないほど純情で真っ直ぐな奴だ。なので俺は、ベルが覗きをしたのは何か理由がある筈だと既に分かっていた。

 

 覗きの元凶である神ヘルメスは、自身の眷族であるアスフィさんによって手酷い制裁を喰らう破目となったのは言うまでもない。とても主神とは思えない程に容赦無い攻撃を繰り出していた。激昂していたヘスティア様や、端から見ていた【ロキ・ファミリア】の団員達も震え上がる程だ。因みに俺は自業自得だと見ていたが。

 

 ベルの方だが、『夜』の時間に切り替わる寸前に野営地へ戻って来た。覗き後に一目散へと大森林に逃走した事で迷子になっていたところを、ヘスティア様達と一緒に同行していたもう一人の冒険者が案内してくれたそうだ。見覚えがあるのだが、その人はまたしても姿を晦まして確認出来なかった。戻って来たベルに聞いてみるも、「本人の希望で自分の事は伏せて欲しい」だそうだ。

 

 結局分からず仕舞いになるも、神ヘルメスが成敗され、ベルも無事に戻って来たので自己完結する事にした。

 

 覗き騒動が漸く収まり、夕飯の時間となった俺は野営地の中央に集まるも――

 

「ヘスティア様、ベル様はどうしたんですか?」

 

「え? 覗いた女の子たちに謝りに行くって言ってたけど……まだやってるのかなぁ」

 

 先に来ていたリリルカとヘスティア様の会話を聞いて思わず足を止めた。

 

 近くにいたヴェルフにも聞いてみると、まだ此処に来ていないとの返答だ。

 

 おかしいな。夕飯の時間になったら来るようにと言われた筈なのに……ヘスティア様の言う通り、まだ覗いた女性陣の謝罪をしているのか?

 

 疑問を抱きながらも、取り敢えずは指定の場所へ座ってヘスティア様達と一緒に食事を始めようとする。

 

 ある程度の時間は経ったが、それでもベルが此処へ来る事はなかった。これにはヘスティア様だけでなく、リリルカやヴェルフもおかしいと疑問を抱き始めている。

 

 すると、【ロキ・ファミリア】の方でも何か起きたと気付いた。よく見ると、レフィ姉さんの姿が見当たらない。あの人は余程の事情が無い限り、時間前には必ずいる筈だ。

 

 そう言えば、此処へ来る前にアイズやティオナさんから聞かれたな。「レフィーヤを見てないか?」って。

 

 俺は見てないと即座に答えたが、今考えるとその時点からいなくなったと言う事になる。もしかすればベルも一緒に。

 

 ヘスティア様達にベルを探してきますと言って俺は席を外し、一先ず天幕の方へと向かった。

 

「さてと……」

 

 天幕に入って早々、周囲に誰もいないのを確認した俺は小型端末機を取り出した。それを起動すると立体映像が出現し、表示しているボタンを押して野営地全体図を映した。

 

 野営地の所々に丸い点があった。その多くは中央に集中して、無数の丸い点だらけとなっている。それもその筈。この点は【ロキ・ファミリア】の団員達の他、ヘスティア様や神ヘルメス達がいると言う生命反応を示す物である。

 

 どれも同じ色をした点だらけで誰が誰だかは一切分からない。分かるのは誰かがいる位置と人数だけ。だが、今回のパーティ探索の際に情報登録をしておいた。ベルとリリルカ、そしてヴェルフには他と違って特定の色を示す為の設定をしてある。なので、中央にいるリリルカとヴェルフを除いて、ベルが野営地のどこにいるかを端末機で探そうとする。

 

「………ん?」

 

 野営地全体の立体映像を見回しても見付からなかった。特定の点が表示しているのは天幕にいる俺と、中央にいるリリルカとヴェルフの三人だけだ。それ以外は【ロキ・ファミリア】の団員達の点しか見当たらない。

 

 特定の反応が俺たち三人しかいないって事は、ベルが現在野営地(ここ)にいないと言う事になる。

 

 どういう事だ? 女性陣の謝罪をするだけで野営地から離れる理由が全く分からない。そうしなければならない非常事態でも起きたのか?

 

 それにレフィ姉さんもいないし………まさかとは思うが、二人揃って野営地から離れているんじゃないだろうな。

 

 どちらにしても、ベルが野営地にいない以上はその周囲を探さなければならない。幸い、ベルは情報登録済みなので、遠く離れても位置を特定する事が出来る。

 

 今度は野営地内ではなく、18階層全体を映すように設定し直した。未だ全て把握しきってない為、かなり大雑把な表示となっている。しかし、情報登録設定をしている誰かを探すには問題無い。

 

 立体映像が切り替わって探すと……漸く見付けた。この野営地からかなり離れた場所で、特定の点を示しているのが一つある。

 

 現在ベルがいる位置は、よりにもよって大森林の方だった。一度あそこで迷子になっていたと言うのに、何でまた同じ事をしているのかが理解出来ない。

 

 何か理由があるにしても、本人に聞かなければ分からないので、一先ず野営地から出て捜索する事にした。

 

 本来なら世話になっている【ロキ・ファミリア】に前以て捜索許可を貰わなければならないのだが……お咎め覚悟の上、俺一人で動く事にした。

 

 理由は勿論ある。色々と不味い事になるからだ。

 

 もしも端末機でベルが此処にいるなんて馬鹿正直に話して、向こうが素直に信じるとは到底思えない。それでもと言って探した結果、本当に見付かって的中したとなれば、フィン・ディムナは間違いなく俺を問い詰めてくるだろう。何かしらの理由を付けて、俺が扱う端末機を根掘り葉掘り聞き出そうと。

 

 今はただでさえ【ロキ・ファミリア】に世話になって主導権を握られている状態なのに、ここで端末機と言う(向こうにとって)未知の存在(アイテム)を知られては非常に不味い。これはオラクル船団――異世界の技術で作られた物だから、絶対に見逃さないだろう。あくまで俺の想像だが、『手助けした礼として端末機を寄越せ。そして使い方を教えろ』、なんて言われる可能性が無きにしも非ずなので。

 

 取り敢えずはこう言うシナリオにしよう。

 

『ベルが野営地を探しても見付からなかった。もしかしたらまた森に彷徨っているんじゃないかと心配になったから、居ても立ってもいられず無断で野営地から離れて探し出した』

 

 色々と疑われる内容だが、それでも端末機について触れられる事は一切無い。俺が勝手に探して、運良く見つける事が出来たと向こうが勝手に判断すると思うので。

 

 

 

 

 

 

「くそっ! 一体何がどうなっている!?」

 

 野営地からコッソリと抜け出し、端末機の反応を頼りに探している中、突然ベルの反応が途絶えた。いきなりの事に焦った俺は、すぐに急行しようと全速力で向かっている。

 

 何の知識も無ければ確実に迷子となる広大な大森林だが、端末機を使っている事でそんな心配は一切無かった。戻る道順も一通り記録してあるので問題無いので。

 

 つい先程まで、何とか特定の丸い点(ベル)+レフィ姉さんと思われる丸い点と合流出来そうだと安堵していたのだが、向こうが急遽別方向へと進み始めた。それどころか自分の位置と向こうの距離が離れていき、内心何をやっているんだと呆れている最中、突然反応が途絶えてしまった。

 

 何の問題無く表示していた点が急に途絶えた理由はいくつかある。

 

 一つ目……ベル達がこの18階層から別の階層へ行ったかもしれない。体内フォトンが強いアークスならばどんなに遠くても捜索出来るが、それが殆ど無い第三者の場合だと別なので物凄く限られる。対象者に発信機でも付ける事が出来れば問題無いが、生憎とベルにそんな物を付けさせていない。

 

 二つ目……18階層にいても探知出来ない場所にいるかもしれない。例えるとしたら、探知妨害するほどの密閉した場所にいる。もしくは……巨大生物の体内にいるかのどちらかだ。いくら高性能な端末機でも限度と言うものがある。

 

 今の状況から考えて、恐らく二つ目の可能性が高いだろう。流石に巨大生物に食われた等と言う馬鹿げた展開にはなっていないと思うが。

 

「まさかとは思うが、落とし穴に嵌って抜け出せなくなった……なんてオチじゃないよな?」

 

 ここは安全階層(セーフティポイント)と言えどダンジョンだ。落とし穴がある可能性は充分にある。

 

 何にしても、ベルとレフィ姉さんがいなくなった場所に行かなければ分からない。一刻も早く向かおうと決意していると――

 

『ゴァァァァァァア!!!』

 

「邪魔だ!」

 

 モンスターと遭遇するも、エールスターライトの短杖(ウォンド)形態――ディムウォンドを振るっただけで簡単に絶命した。

 

 中層のモンスターと戦って、本気を出して倒すまでの相手じゃないと言うのが分かった。それどころかハクセンジョウVer2でも充分過ぎるほどだ。

 

 しかし、今は手を抜いている暇なんかないので、メインウェポンを使ってさっさと片付ける事にしている。

 

「うわっ! な、何だぁ!?」

 

 途絶えた場所まで後もう少しの寸前、前方から光の本流が突然現れた。

 

 予想外の不意打ちだった為、走っていた俺は足を止め、襲い掛かって来た光から目を守ろうと咄嗟に腕で覆う。

 

 戸惑う俺を余所に、光はそのまま天井水晶の一角に炸裂して、大きな爆音を奏でている。それによって森にいるモンスターがギャアギャアと叫んで木霊している。

 

 これ程の大きな光は恐らく俺だけじゃなく、野営地にいる【ロキ・ファミリア】や『リヴィラの街』にいる住人達も気付いている筈だ。

 

 加えて、あの光が起きた場所はベル達が途絶えた場所と一致している。もしかしたら、あの二人が何かやったかもしれない。

 

 そう思っていると、光の奔流が漸く収まった。走っている暇は無いと思った俺は、ミノタウロスを倒した際に使ったプリズムサーキュラーを発動させた。

 

 フォトンアーツは敵を倒す一種の技だが、中には移動用として使える物もある。今使っているプリズムサーキュラーはフォトンの帯を纏ったまま突進する事が出来て、走行以上のスピードを出せる。その分、体内フォトンの消費も激しいので長く使えないが。

 

 途中で再びモンスターと会うも、まるで車に轢かれたように激突して吹っ飛ばした。モンスターにとっては災難な事故だろうが、今の俺にとってはどうでもいい。

 

「見つけた……っ、あれは……!」

 

 そして漸く辿り着くと、途絶えた場所ではベルを抱えているレフィ姉さんの姿が見えて安堵するも、余り喜ばしくない光景だった。

 

『―――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 大きな蛇なのか花なのか分からない不気味なモンスターが何体もいる。その内の一体が吠声を上げながら二人に襲い掛かろうとしていた。

 

 そして――

 

『ガッッ!?』

 

「――え?」

 

 俺が速攻で介入した瞬間、放たれたプリズムサーキュラーの光の渦が一体に命中して薙ぎ飛ばした事で、他のモンスターも巻き込んで横転する事になった。

 

 余りにも予想外の光景だったのか、ベルとレフィ姉さんから呆けた声が聞こえる。 

 

「急いで来てみれば……何なんだ、あの不気味なモンスターは」

 

 フォトン帯が消えて地面に着地しながら思った事を口にする俺だが、それでも武器の構えは解いていない。

 

「リ、リヴァン……?」

 

「どうして、貴方が此処に……?」

 

 ベルとレフィ姉さんは駆け付けたのが俺だと分かった途端、揃って驚いた顔をしていた。

 

 思わず二人を見るとボロボロだった。レフィ姉さんは何故か上着が殆ど無くなって乳房が丸見えで、ベルは力を使い果たしたかのようにぐったりして彼女に寄りかかっている。

 

 何でそんな状況になったのかを問い質したいが、一先ずは目の前のモンスターをどうにかしなければならなかった。

 

「取り敢えずレフィ姉さんはベルと一緒にいて下さい。アレは俺が片付けます」

 

「む、無理よ……! あの食人花の群れを、『Lv.1』のリヴァンが勝てる訳が……!」

 

「まぁ見てて下さい」

 

 引き留めようとするレフィ姉さんに、俺は気にせず草地を蹴る勢いでモンスター――食人花に向かって突進する。

 

 向こうも俺にやられた怒りをぶつけたいのか、一体が凄い勢いで突進しながら口を大きく開けていた。

 

 食人花と激突する寸前、俺は咄嗟に上空へと高く跳んで回避する。その直後、フォトン帯を収束させて目標に放つ短杖(ウォンド)エトワール用フォトンアーツ――グリッターストライプを放った。

 

 俺の後ろへと進む食人花だったが、フォトン帯を直撃して爆発した事で頭を失った。それによって一体目の絶命を確認する。

 

「……え? いま、何が……起きて……」

 

 食人花を倒した事が予想外だったのか、レフィ姉さんが現実逃避するような声が聞こえた。

 

 それでも俺は気にせずに残りを倒そうと戦闘に意識を向ける。

 

『―――アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 同族が倒された事に激高したのか、全ての食人花が雄叫びをあげながら一斉に襲い掛かろうとした。

 

 てっきりさっきの噛み付き攻撃をしようと大口を開いての突進かと思ったが、今度はさっきと違って俺を包囲し、蔦と思わしき触手を出してきた。

 

 数えるが馬鹿らしく思える程の無数にある触手全てが、俺に狙いを定めて貫こうとしている。大方、串刺しにして殺そうとするのだろう。

 

「「リヴァン!」」

 

 絶体絶命の状況だと悟った感じで、レフィ姉さんとベルが悲痛な叫びをあげた。

 

 しかし、それとは対照的に俺は慌てる様子を見せる事無く、左手を前に出してプロテクトバリアを張った。

 

『!?』

 

 襲い掛かって来た触手はそれによって全て弾かれた事に、食人花達は戸惑いの様子を見せた。

 

 咄嗟にバリアを張って防ぐことが出来た上に、ジャストガードと判定されてウォンドギアがある程度溜まった事を確認する。

 

 しかも食人花全てが俺に狙いを定めて包囲をしているので、アレを放つには丁度良かった。

 

 思わず笑みを浮かべた俺は、バリアを展開したまま勢いよく跳躍して――

 

「プロテクトリリース!」

 

 解除したと同時に、球状の強力な衝撃波を放った。

 

 俺を包囲していた食人花達の群れは、躱す暇もなく六発全ての攻撃を受ける事になる。

 

『―――――――――――ァァッ!?』

 

 衝撃波を直撃した食人花は身体だけでなく、花弁や触手を全て吹き飛ばした。頭の部分に魔石でもあったのか、それも失った直後にモンスターの肉体が灰と化した。

 

 インファント・ドラゴンにやった時と違って、今回はメインウェポン――ディムウォンドを使っての発動だ。ハクセンジョウVerと違って攻撃力はかなり高く、全力で放てば大抵の雑魚モンスターはバラバラとなる。

 

「……少しやり過ぎたか」

 

 そう口にしながらも、周囲に残りのモンスターがいない事を確認した俺は、構えを解いて武器を収めた。そしてそのまま、レフィ姉さん達の方へと歩を進める。

 

「……リ、リヴァン……。貴方が、あんなに強かったなんて……い、一体どういう事なの……?」

 

「そんな事より治療を――」

 

 今見た事が全然信じられないような表情をしているレフィ姉さんに、一先ず治療を優先するよう言ってる最中、俺はある事に気付いた。

 

 さっきはモンスターがいた為に気にしなかったが、改めて見た俺は少々気まずそうなに顔を横に向けて咳払いをする。

 

「ゴホンッ! ……先ずはその格好をどうにかしましょうか。と言うかもう、完全に丸見えですよ」

 

「え?」

 

 服が無くなっている所為で乳房が丸見えになっている事を伝えるも、レフィ姉さんは指摘された事に呆然とするも――

 

「―――――――――!!!」

 

 自分がどんな状態になっているのかを漸く理解したのか、一気に顔が熟れたトマトみたいに真っ赤となった。

 

「み、見ないでリヴァン! それとベル・クラネルは離れて下さい! ついでに服を返しなさーい!!」

 

「うげっ!!」

 

「ちょっとレフィ姉さん、それはいくらなんでも酷過ぎます」

 

 レフィ姉さんは叫びながらも、肩を密着させているベルを勢いよく突き放した。

 

 余りにも酷い仕打ちをする従姉に、俺は呆れながらも突っ込みを入れた後、自身の上着を脱いで彼女に着せようとする。

 

「これは、一体……?」

 

 すると、急いで駆けつけてきたと思われる同胞の女性が、俺たちの前に姿を現わした。

 

「あ、貴女は……?」

 

「え? リューさん……」

 

 レフィ姉さんとは別に、ベルは知り合いだったのか名前で呼んでいた。

 

 リューって確か……『豊穣の女主人』にいたウェイトレスだったような……。




原作ではリューが食人花を倒しましたが、ここではオリ主が倒す事になりました。

リュー好きな人には申し訳ありません。

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