少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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少年エルフ、再びベルを捜す

「ではリヴェリア、また後で」

 

「ああ。準備が出来たら私に言ってくれ」

 

 リヴェリアに同行の挨拶ついでに(女性エルフ達からの睨み付きで)軽い世間話を済ませ、ベル達がいる天幕へと戻った。

 

 俺はもう既に帰還の準備は済ませているから、後は向こう待ちだ。恐らく今頃ヴェルフが武器の整備をしている筈だろう。

 

 因みに神ヘルメスとアスフィさんは、まだ18階層を観光するから残るらしい。それと、リューさんは一人で帰ると言っていた。なので、ヘスティア様を含めた俺たち四人パーティ+桜花たち三人は同行する【ロキ・ファミリア】と一緒に帰還する予定になっている。

 

 まだ時間に余裕があるので、誰かの手伝いをするかと思いながら戻ると、リリルカが何やら慌ただしい様子だった。

 

 俺を見つけた途端にリリルカが即座に駆け寄ってきて問おうとする。

 

「リヴァン様、ベル様とヘスティア様を見ませんでしたか!?」

 

「ベルとヘスティア様? いや、見ていないけど……」

 

 何やら深刻そうな空気になっているな。もしかして二人の身に何か遭ったのか?

 

 今度は俺が尋ねてみると、リリルカは簡潔に話す。

 

 理由は未だに分からないが、ベルとヘスティア様が誰にも言わないで忽然といなくなったようだ。今はヴェルフの他に、桜花や命も一緒に野営地付近の森を探し回っていると。

 

 昨日と全く同じパターンだな。唯一違う点があるなら、今回はレフィ姉さんではなくヘスティア様か。

 

 しかも【ロキ・ファミリア】はあと少しすれば帰還する準備を終える。もしこのまま二人が見付からなければ置いて行かれるのは確実だ。

 

 俺達はあくまで彼等の後に付いて行くだけなので、部隊には正式に組み込まれていない。だから此方が待ってくれと言ったところで聞いてもらえず、時間になれば向こうは18階層を出発するだろう。

 

 今回ばかりは本当に困ったものだ。『もし何かあれば前以て誰かに言え』と念を押したと言うのに……!

 

 とは言え、ヘスティア様はともかく、ベルが急にいなくなったのは必ず理由がある。俺達に言う暇が無いほどの事態が。そう考えれば事件に巻き込まれた可能性が大有りだ。もしかすればヘスティア様も関わっているかもしれない。

 

 リリルカから一通りの話を聞き終えると、捜しに行っていた三人が戻って来た。しかし、残念ながらベル達は見付からなかったようだ。

 

「不味いぞ、このまま見付からないようじゃ【ロキ・ファミリア】の部隊に置いていかれる」

 

「もう、時間が殆どありません」

 

 桜花と命の台詞に、俺は思わず野営地側の方へと視線を向けた。

 

 見ると【ロキ・ファミリア】の準備は完了間近の様子だ。桜花の言う通り、ベル達が見付からなければ本当に置いていかれるだろう。

 

 状況を考えると、彼等と同行するのはもう諦めるしかないだろう。俺がリヴェリアに頼んだところで、絶対に待ってはくれない筈だ。彼女は【ファミリア】を束ねる副団長なので、俺達の個人的事情なんか気にしていられない。

 

「なぁリヴァン、【ロキ・ファミリア】に何とか留まるように掛け合って貰える事は出来ないか? お前、あのリヴェリアって副団長のハイエルフと仲良さげだったし」

 

「無理だ。それにそんな厚かましいお願いをしたら、俺が他の同胞(エルフ)達から刺される」

 

 彼女と親しげに話している俺は【ロキ・ファミリア】の同胞(エルフ)達から睨まれている身なので、これ以上の事をすれば絶対に黙っていないだろう。

 

 打つ手なしと言った感じでヴェルフは嘆息するしかなかった。

 

「もうこうなったらベル達の捜索に専念するしかないな。リヴェリアには俺の方から言っておこう」

 

「お、おい待て! 俺達だけで帰還するのは余りにも危険だぞ!」

 

 桜花が進言するも――

 

「帰る方法は他にもあります。それに俺は、どこかの誰かさんと違って見捨てる行為はしたくないんで」

 

「!」

 

 俺からの痛烈な皮肉に何も言えなくなっていた。

 

「リ、リヴァン殿! 今はそのような事を言っている場合では……!」

 

「失礼。確かに命さんの言う通り、今のは失言でしたね」

 

 桜花に代わって命が抗議してきたので、俺はすぐに謝罪した。

 

 土下座した命や、この場にいない千草なら、あんな皮肉は言わない。しかし桜花は何の悪びれも無く『自分の判断は間違っていない』と正面切って言い放ったから、思わず毒を吐いてしまった。

 

「リヴァンって、意外と結構根に持つ奴なんだな」

 

「……まぁ、リリとしては分からなくもないですね」

 

 俺の意外な一面を見たように言っているヴェルフとリリルカだが、一先ず気にしないでおく事にした。

 

 そんな事よりも、今はベル達を一刻も早く捜さないといけない。

 

「ところで、リリルカ達はどれ位の範囲で探していたんだ?」

 

「この野営地付近の森までです。流石に奥まで行くとモンスターに遭遇してしまいますので」

 

「だが俺達が探した限り、二人は何処にもいなかった。恐らくは森の奥まで行ったんじゃないかと思う」

 

 俺と問いにリリルカとヴェルフが答えた。

 

 野営地や周辺の森にはいない、か。だったらまたアレ(・・)を使って探すしかなさそうだ。

 

「なら今度は俺がベルを探すから、一旦場所を変えよう。付いてきてくれ」

 

『?』

 

 帰還準備中とは言え、【ロキ・ファミリア】の目があるから避けたかった。

 

 リリルカ達は不可解な表情をしながらも、取り敢えずと言った感じで移動する俺の後に付いてくる。

 

 野営地から少し離れた森に入り、この周囲に【ロキ・ファミリア】がいない事を確認し、懐から端末機を取り出す。

 

「リヴァン様、それは一体何なのですか?」

 

「……まぁちょっとした、秘密アイテムだ」

 

 この世界は機械が知れ渡ってないから、彼女達に一から説明しても理解出来ないので、敢えて誤魔化す事にした。

 

 そして端末機を起動した直後、前回と同じくディスプレイから立体映像が出現する。

 

「おわっ! な、何だこりゃ!?」

 

「も、もしやこれは、マジックアイテムなのですか!?」

 

 突然の事で仰天しながら叫ぶヴェルフと命。勿論、リリルカと桜花も似たような反応をしている。

 

 しかし、俺は気にせずに映像を確認する。

 

 確かに野営地や周辺にベルを示す点はいないようだ。ヴェルフの言う通り、此処からもっと遠くにいると見ていいだろう。

 

「ちょ、リ、リヴァン様、何が起きたのですか!? よく見ると、地図みたいな感じが……」

 

「地図みたいじゃなくて、今見ているのは地図その物だ。そして今(せわ)しなく動いている丸い点が【ロキ・ファミリア】の団員達だ。それと――」

 

 リリルカの問いに答えるよう、一先ず立体映像の見方について簡単に説明する。四人は一応聞いていても、驚くばかりだった。

 

 本当なら異世界の技術を見せるべきではないが、ベルとヘスティア様の捜索に加わってる仲間と言う事で披露する事にした。勿論、後で誰にも言ってならないよう口止めをする予定だ。

 

 そして説明を終え、表示している立体映像には対象が見付からないので、今度は18階層全体に切り替えた。前回と同じく大雑把な表示だが、特定の色を示しているベルを探すには問題無い。

 

「なぁリヴァン、もしかしてこの点がベルか?」

 

 ヴェルフが立体映像を指しながら俺に問う。その方へ向けると……確かにベルの反応を示す丸い点だった。

 

「間違いない、ベルはこの辺りにいる。やっぱり野営地から結構離れているな……って、何で命さんがそんなに落ち込んでいるんですか?」

 

「い、いえ、どうか自分のことはお気になさらず……」

 

 対象(ベル)を発見出来たのに、命が何故か落ち込んでいた。両手両足を地面に付けて暗い雰囲気を漂わせている様子だ。

 

 一先ず言われた通り気にしないで対象の位置を確認すると、中央の巨大樹の真東にある一本水晶がある所に向かっているな。しかも迷った様子を見せる事無く進んでいる。何だかまるでその場所を知っているような移動だった。

 

 ベルは俺達と同じく初めて18階層に来たばかりだから、この階層の地理はまだ把握していない。なのに、この移動は余りにもおかしい。地図でも持っていない限り、こんな迷わずに進むのは無理な筈だ。

 

 しかし、疑問や理由はどうあれ、ベルの位置が分かった事に変わりない。 

 

「あの、ベル様の位置は分かりましたが、ヘスティア様は分からないのですか?」

 

「残念だが、あの方まで特定は出来ない。そもそも登録してないし」

 

 リリルカの問いに俺は無理だと答えた。

 

 ベルの位置が特定出来たのは情報登録しているからだ。それをしていないヘスティア様を見付ける事は出来ない。というより、神がダンジョンに潜るのは禁止事項になっているから、登録するなんて微塵も考えなかった。

 

 とにかく、今はベルを追う事が先決である事に変わりはない。途中で行方不明中のヘスティア様も見付かるかもしれないので。

 

 モンスターが潜んでいる森の奥へ進むから、武装をする必要があった。その為、一旦野営地に戻る必要がある。

 

「み、みんなー!」

 

 すると、誰かが俺達に向かって大声で呼んでいた。思わず立体映像を解除して振り向くと、駆け寄って来たのは千草だった。

 

 桜花と命が色々質問していると、彼女は俺達を回復薬(ポーション)が散乱した場所へ案内する。

 

「これは、ヘスティア様がナァーザ殿から受け取っていたポーションですね……」

 

「あ、あとね、さっき、クラネルさんがすごい慌てながら森の外へ行っちゃって……」

 

「……リヴァン様。ベル様があの場所にいると言う事は、やはり事件に巻き込まれたと考えた方がよさそうですね」

 

「そのようだな」

 

 命と千草の会話を聞いたリリルカが確信持って言ったので、俺もそれに頷いた。

 

「だとすると、モンスターが何かやらかしたとは考えにくいな。仮にそうだとしたら、ベルがあんな所まで行くとは思えないし。やっぱり人の仕業か?」

 

「その可能性は高いな。人となれば、どこかの冒険者がヘスティア様を誘拐した事になるが」

 

「自分達や【ロキ・ファミリア】にも気付かれずに、ですか?」

 

 ヴェルフと俺が推測をして、命が疑問を抱くように会話を交わす。

 

 そんな中、手掛かりがないかと散乱した回復薬(ポーション)を物色しているリリルカの手が止まっていた。

 

「これは……」

 

「どうした、リリルカ? その香水(・・)に何かあるのか?」




次回はリヴァン無双をする予定です。
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