少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
それではどうぞ!
決行前、リヴェリアに遠回しに時間を遅らせる事は出来ないかと尋ねてみたが、やはり無理だった。なので急な野暮用があるので18階層に残ると言い残した後、リリルカ達に説明する。予想していたみたいで、彼女達も諦めるように嘆息し、ベルとヘスティア様の捜索に専念するようだ。
そして準備を終えた俺達は森の中央の真東にある一本水晶へと向かった。その途中、リリルカがヘスティアを捜すと言って別行動を取って別れている。俺も同行しようかと言うも、ヴェルフ達と一緒にベルの援護に向かうように言われてしまったが。
俺が使う端末機にヘスティア様の居場所は分からないが、リリルカは捜す方法があるそうだ。何でもあの方がリヴィラの街で購入したらしく、その匂いを辿ればいる筈だと。
何故買ったのか聞いてみると、ヘスティア様がいつの間にか買っていたらしい。恐らく身体に染みついた嫌な臭いを消すついで、ベルにアピールする為だとリリルカが推測する。
まぁ兎に角、あの方が香水を付けていれば発見出来るようだ。なので俺達はヘスティア様の捜索を、一先ずリリルカに任せる事にした。
そして俺とヴェルフ、【タケミカヅチ・ファミリア】の三人は目的の場所へ到達間近になるも、端末機に表示させている立体映像には冒険者らしき無数の反応があった。
「ここから数百
「やっぱりいやがったか!」
探知した俺の発言に、それぞれが各自武器を手にしようとする。
因みにヴェルフはこの前のダンジョン探索で大刀を失っていたが、リヴィラの街で中古品の大刀を購入している。ぼったくり同然の値段だったそうだが、武器が無ければ話にならないと言って仕方なく買ったそうだ。
背中に白布が巻かれている武器らしき物もあるが、それはヘスティア様達が用意してくれた物だった。しかし、当の本人は使う気が無いのか、大刀のみで戦おうとしている。
桜花と千草が装備しながら【ロキ・ファミリア】に置いていかれた事を会話するも、俺とヴェルフは気にせずに前方にいるであろう冒険者達に意識を向ける。
「どうする、リヴァン?
「充分だ。俺一人である程度の数を片付けるから、ヴェルフ達は残りを倒してくれ」
「は? お前、何を言って……」
ヴェルフの言葉に頷いた俺は、盛り上がった巨大な根の前で跳躍し、そのままプリズムサーキュラーを発動させた。
「ぶぎゃっ!」
「何ぼぐぁ!?」
「【リトル・ルーキー】の連れだ! どうしてここがぁっ!?」
背後からの強襲に冒険者達は振り向きざま得物で反撃しようとするも、フォトンの帯を纏ったまま高速突進する俺と激突してそのままどこかへ吹っ飛ぶ。臆する事無く進んでいく俺はそのまま突っ込んでいく。
「な、何だあのエルフのガキは!? すげぇ速さでこっちに向かってごぁっ!」
「あのガキを止めぶげっ!」
粗暴な声を上げ、多くの冒険者達は俺を止めようとするも、勢いと速さに負けて次々と轢かれていく。
相手が上級冒険者と知ったから、一切加減をせずに本気でやっているんだが……余りの弱さに拍子抜けだった。
プリズムサーキュラーは移動用として使える他、そのまま敵にダメージを与える事が出来る大変便利なフォトンアーツだ。速度もかなりあって激突した時の威力もそこそこあるも、上級冒険者相手に動きを止めさせる程度だと思っていた。
しかし、フォトンの帯と激突して動きを封じるどころか、そのまま吹っ飛んで痛みに悶えている状態に陥っていた。これが本当に自分より実力が格上の冒険者なのかと、思わず疑問を抱いてしまう。
「おい、魔法を使え!」
「さっさと詠唱して奴を止めろ!」
多くの上級冒険者達を轢きながら片付けていると、自分より少し遠くにいる連中の叫び声が聞こえた。
振り向くと、魔導士らしき冒険者が杖を構えて魔法を撃つ仕草をしている。それに気付いた俺はフォトンの帯を解除して、そのまますぐに光の渦を飛ばすように武器を薙ぎ払う。
「ごあぁッ!?」
「うぎゃぁ!」
凄まじい勢いで直進する光の渦は魔導士だけでなく、他の冒険者達にも命中し吹っ飛んでいった。
「嘘だろ!?」
「詠唱しないで魔法を撃ちやがった!」
「どうなってやがる! あれが本当に『Lv.1』なのかよ!?」
「こんなの聞いてねぇぞ!」
瞬く間に倒されていく光景に、残りの上級冒険者達が慄いていた。
連中の台詞の中に気になる事を言っていたな。確か『【リトル・ルーキー】の連れ』や『こんなの聞いてねぇぞ』とか。
俺が倒した多くの上級冒険者は全員初対面だった。当然それはヴェルフ達も同様の筈だ。
だと言うのに、向こうはこちらの事を前以て知っているような感じだ。そう考えると、俺達の事を知っている誰かが教えたと推測する。
【ロキ・ファミリア】は考えにくい。神であるヘスティア様を誘拐したなんて不届きな事をして地上に知れ渡ってしまえば、【ロキ・ファミリア】の評判に大きな傷が付いてしまう。それどころかオラリオに住まう市民からの信用もガタ落ちだ。団長のフィン・ディムナが、そんな愚かな真似をするとは思えないので除外とする。
俺、リリルカ、ヴェルフも当然除外だ。該当する容疑者としては……【タケミカヅチ・ファミリア】にリューさん、そして【ヘルメス・ファミリア】だ。
桜花や命、そして千草がベル達の事を連中に話したとは思えない。現に今、俺達と同じくベルとヘスティア様の捜索に手伝って貰っている。リューさんはベルに対して親しげな感じがする上に、正義感が強そうな彼女がそんな陰湿な事をやるとは思えない。
そう考えると一番濃厚なのは【ヘルメス・ファミリア】だな。特にあの胡散臭そうな男神が。
確か神ヘルメスは、眷族のアスフィさんと一緒に18階層を観光するからと残ると言っていた。いつの間にか野営地にいなくなっていたのを考えれば、情報を渡したのが奴だと考えられる。
この件が片付いたら、あの男神に後ほど問い質すとしよう。今は目の前の上級冒険者達をどうにかしないと。
「そんな程度の実力なんですか?
『あぁ!?』
皮肉たっぷりの挑発をすると、上級冒険者達は物の見事に乗っかって激高した。
「このクソガキがぁ!」
「妙な魔法を使って調子に乗ってんじゃねぇ!」
「ぶっ殺す!」
「魔法さえ使わせなけりゃこっちのもんって事を教えてやる!」
プリズムサーキュラーから逃れた残りの上級冒険者達が、一斉に襲い掛かろうとする。
俺が
エールスターライト
「リヴァン・ウィリディス、一人で勝手に始めるな!」
「自分達もいる事を忘れないで頂きたい!」
そう言って二人は襲い掛かってくる上級冒険者数名の攻撃を己の得物で受け止める。
「そ、そうだった! このガキ以外の仲間もいたんだ!」
向こうが思い出したように言うと、他の連中も警戒するように一旦動きを止めていた。
そんな中、ヴェルフが俺に話しかけようとする。
「ったく。何なんだよ、お前は。いきなり詠唱無しで魔法を使ったかと思えば、半分以上倒しやがって。俺達の出る幕ねぇじゃねぇか」
「悪いな。見せ場を奪うような事をしてしまって」
「ああ、全くだ。今の俺達はパーティなんだ。今度は一緒に戦おうぜ」
「そうしよう。ならヴェルフは敵の魔導士を頼む。魔法を封じる手段があるなら、是非ともやってくれ」
「おう、任せとけ!」
桜花と命が戦っている中、俺はヴェルフと一緒に残りの上級冒険者達と戦う事となった。
その寸前、俺達の目の前に風が吹いた。
「森が騒がしいと思っていたら……こういうことでしたか」
「お前……!」
「リューさん……」
ケープを纏った覆面の冒険者――リューさんが突然現れた事に、ヴェルフと俺は驚きの表情となった。
彼女が此処に現れるのは予想外だったが、嬉しい誤算だ。
そう思った俺はリューさんに簡単な説明をすると、リューさんは助太刀をすると言ってくれた。
さっきまで大量にいた上級冒険者達だったが、あっと言う間に蹂躙される事となる。
因みに戦闘中、ヴェルフが敵の攻撃を躱した際に刀帯が切れてしまい、背負っていた白布の塊を落としてしまった。遥か下の森に続く斜面へ転がってしまい、すぐに回収するのが無理だった。
大事な物なら取りに行けと言ったが、当の持ち主が眉間を苦渋に歪めながらも大丈夫だと言って、俺達と一緒に先へ進むのであった。
☆
結果から言うと、ヘスティア様のお陰で事件は収束する事となった。
俺達がベルが誰かと戦っている場所へ向かいながら敵を倒し続けている最中、リリルカによって助けられたヘスティア様が現れた。
戦うのを止めろと言うも、上級冒険者達は下らない意地を張って続行しようとするが、それはすぐに一変する。
ヘスティア様が神威を発動させた事により、血気盛んだった奴等は戦意を無くすように逃げ出してしまい、首謀者と思わしき壮年の上級冒険者も退散した。
その後に、神としての威厳を見せていたヘスティア様が一変して、すぐベルに抱き付いて
(これは……)
そう思っていると、突然足場が揺れた。と言うより、階層全体が揺らめいている。
【タケミカヅチ・ファミリア】の三人が足元を見下ろしながら狼狽え、リューさんから『嫌な揺れだ』と不吉な言葉を口にしている始末。
直後、先程まで頭上からそそいでいた光が消え始め、周囲が一瞬で薄暗くなった。
思わず空を見上げると、太陽の役割を果たしている中央の白水晶の中で、巨大な何かが蠢いていた。
まるで何かが出たがっているかのような感じで白水晶に罅が入り、そして突き破って出て来た。俺が17階層で倒した巨人のモンスター『ゴライアス』と思わしき存在が。
(一難去ってまた一難、か。この状況からして、倒すしかなさそうだな)
ベル達がモンスターの出現に困惑している中、冷静に考えている俺はエトワールクラスの武器やスキルを最大限に使って倒すしかないと結論に達する。
感想お待ちしています。