少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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少年エルフ、黒いゴライアスに苦戦する

(さて、どうやるか……)

 

 プリズムサーキュラーで移動しながら、黒いゴライアスを倒す戦い方を考えていた。

 

 見るからに17階層で倒したアレと違うのは既に分かっている。普通ならここは一度敵の動きを観察する為として、遠距離攻撃をメインで戦うべきだ。

 

 だが、今そんな事を悠長にしている暇なんか無い。既に暴れ始めているゴライアスは下を見ながら太腕を大きく振るっていた。先程まで俺達が戦った上級冒険者達を殴り飛ばしている。まるで紙屑のように吹き飛んでいた。

 

 首謀者と思われる壮年の上級冒険者もおり、今はもう他者の事なんか気にせず一心不乱に距離を取って逃げていた。さっきまでベルを追い込んでいた時とは大違いだ。

 

 相手が相手だから、そうならざるを得ないのは無理もない。あのゴライアスは明らかに17階層のとは強さが違う。

 

 ベルを陥れた連中を助けようとする気はこれっぽっちも無い。だが、当の本人が助けようとしているので、見捨てるわけにもいかなかった。

 

 なので一足先に到着した俺は、ゴライアスが口を開いて何かをする瞬間にフォトンの帯を解き、即座に光の渦をアレの顔面飛ばす事にした。

 

『ゴアッ!?』

 

「……え?」

 

 光の渦が命中した事で、ゴライアスがよろけた。同時に口腔から吐き出されるモノが不発となった事に、下にいる上級冒険者が唖然となって動きを止めた。

 

『――――――――アァッ!!』

 

 攻撃したのが俺だと分かったのか、向こうは俺の方へと狙いを定めて再び口を開けた。

 

 しかし俺はそんな事を気にせず、宙に浮いている状態を維持したまま、一足早く新たなフォトンアーツを撃つ仕草をする。

 

「甘い!」

 

『~~~~~~~!?』

 

 ビーム上の細長い光が照射するフォトンアーツ――ルミナスフレアを、ゴライアスの口を狙って放った。

 

 吐き出そうとしていた物を、光の異物によって無理矢理押し込めるようにされている為に悶え苦しむ表情となっている。負けじと押し返そうとするも、こちらの攻撃によってダメージを受けてる事で吐き出すのは無理だった。

 

 ゴライアスはそれを諦めようとしたのか、ビームを放っている俺を捕まえようと片手を伸ばそうとする。当然、そうする事を予想していた俺は、ルミナスフレアを撃ちながらも距離を取っている。

 

「はい、もう一丁!」

 

 ビームを撃ち終えた俺は、再びルミナスフレアを撃ち放つ。しかも、未だに浮遊状態のままだ。

 

 エトワールクラスは他のクラスと違い、フォトンアーツを撃った後は浮遊状態を維持出来る。だから再度撃つ寸前の間は地面に落下する事無く、新たなフォトンアーツを撃ち続ける事が出来る。

 

『~~~~~~!!』

 

「何っ!? ぐっ!」

 

 ルミナスフレアを受けて怯んでいる筈のゴライアスだったが、やぶれかぶれと言った感じで俺に接近して太腕を真横に振るってきた。

 

 俺は距離を取りながらも下がるも向こうが速く、開いた大きな手に命中し、そのまま勢いよく吹っ飛ばされてしまった。

 

「がはっ!」

 

「ウィリディスッ!?」

 

 物凄い勢いで地面に激突して血を吐く俺に、既に駆け付けたリューさんが俺を見て叫んだ。

 

「くっ! 一旦彼を――」

 

 彼女は倒れている俺を見て別の場所へ連れて行こうとするも――

 

「~~~~!? いてて、あ~~……久々に強烈な一撃を貰っちまった~……!」

 

「はぁ!?」

 

 すぐにムクリと立ち上がって、片手で頭を支えながらフラフラする俺を見て驚愕していた。

 

 さっきの一撃は本当に滅茶苦茶効いた。もし俺がエトワールの防御系スキルの他、ステルス化してる防具や、武器に搭載している特殊能力が無ければ間違いなく死んでいたと確信する。

 

 エルフと言う種族は只でさえ打たれ弱いから、防御を中心としたクラスや武装をしてないと、接近戦なんてやっていられない。ゴライアスやゼッシュレイダと戦った時に、何度死にそうな目に遭った事か。

 

「ウィ、ウィリディスさん、貴方……重症の筈では……?」

 

「大丈夫です。俺、そこら辺のエルフよりは少し頑丈なので……」

 

「……頑丈と済ませるのはどうかと思うのですが」

 

 何やらリューさんから呆れたような言葉が返って来た。

 

 大丈夫な理由は勿論ある。エトワールスキル――ダメージバランサーや武装の特殊能力により、本来受ける筈のダメージの8割以上は抑えられた。それ故に俺はまだまだ戦える。

 

 それに加えて、久々に受けたダメージで俺の心は少しばかり粗ぶっていた。歯応えのある獲物を見て特に。

 

「やってくれたな、あのデカブツ……! 本気でぶちのめしてやる!」

 

「! 武器が……!」

 

 荒々しい口調で言いながら、エールスターライト短杖(ウォンド)形態から別に切り替えようと、重なっている剣を分離して飛翔剣(デュアルブレード)形態――ディムDブレードへと切り替えた。

 

 それを見たリューさんが驚いた表情になりながらも、俺は気にせず武器の切り替えを終える。

 

 エトワール短杖(ウォンド)は遠距離攻撃メインの武器で、他の武器と比べて動作が緩慢で接近戦に持ち込まれたら若干弱い。対して飛翔剣(デュアルブレード)形態は短杖(ウォンド)より動作が速い上に、ゴライアスのようなデカいモンスター相手には丁度良い。両剣(ダブルセイバー)形態も充分にやれるが、アレ相手には飛翔剣(デュアルブレード)が好都合だ。

 

「リューさん、突出した俺が言うのも何ですが、手伝ってくれませんか? アレ相手には俺一人では流石に無理なので」

 

「……それはこちらの台詞です。元より、私もアレと戦う為に来たのですから」

 

 そう言いながらリューさんは所持している木刀を手にして構えようとする。

 

「にしてもアレ、結構防御力があるな。上にいた階層主(やつ)とは大違いだ」

 

「ッ! ウィリディスさん、まさか……!」

 

 俺の独り言に、凄い反応をしながら振り向くリューさん。

 

「やはり貴方だったんですか、17階層の階層主(ゴライアス)を倒したのは……!」

 

「……それよりも、今は敵に集中しましょう」

 

 つい比較して口に出してしまったか。まぁ、この人にバレても大丈夫だろう。周囲に言い触らすとは思えないし。

 

 そして俺とリューさんが突撃し、それぞれ黒いゴライアスに攻撃を始める。

 

 後になってベル達だけでなく、リヴィラの街から多くの冒険者達が駆け付けてきた。大半はアレに向かって突撃してるが、その他はゴライアスの雄叫びに呼応するように現れたモンスター達を倒している。

 

 俺を含めた18階層にいる冒険者総出で、巨人モンスターの討伐戦が本格的に開始される事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソっ、本当に色んな意味でバケモノだな……!」

 

 完全な乱戦状態に陥るも、俺を含めた多くの冒険者達が総攻撃を仕掛けてそれなりの時間が経つも、ゴライアスは倒れる気配を見せようとしなかった。それでも動きは鈍らせているが。

 

 俺はライトウェーブによる遠距離用のフォトンアーツを連発し、敵の両手足を斬り刻んでも、全く怯む様子を見せなかった。激痛による悲鳴をあげても、それを無視したような攻撃をする始末。

 

 ゴライアスには手足だけでなく、口から衝撃波を放つ遠距離攻撃も使っていた。最初に俺が一人で戦った時はソレを撃たせないよう阻止したが、乱戦になった事で周囲にいる冒険者達に向けて撃っていた。威力は当然相当なもので、地面に大き目なクレーターが出来上がったり、岩や水晶を簡単に破壊していた。人の身でまともに喰らったら終わりだろう。

 

 因みに一番ダメージを与えていたのは主に俺だった。特にライトウェーブを何度も使っていた俺にリューさんや、いつの間に参加したアスフィさんが何故か信じられない程に驚愕していたが。

 

 他にもベルが駆け付けてゴライアスと戦って少々危険な一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)をするも、ダメージを与えてはいた。それでも俺やリューさん達と同じく、決定打に欠けてはいたが。

 

 そんな中、後方に控えていた魔導士達が詠唱を完了させ、怒涛のような一斉射撃を放った。前衛組が離れた際、ゴライアスは他属性の攻撃魔法を全て浴びた事により、やっとの事で片膝を地についたどころか、顔面部分を始めとした体皮は抉れて赤い血肉を晒した。

 

 誰もがチャンスだと冒険者達が一斉に前へ出て畳みかけるも、そこから大きな変化が起きた。誰もが予想しなかった展開だ。

 

 何とゴライアスが体を治そうと、魔法によって抉られた顔面は瞬く間に自己再生を行った。これには多くの冒険者達は呆然と立ち尽くしてしまう程だった。

 

 まるで此方の隙を突くように、ゴライアスは前衛達だけでなく、魔導士達も含め、巨大な両腕を頭上高く振り上げた。

 

 瞬間、握り締められた二つの大きな拳が足元へ振り下ろす。大草原が割れて凄まじい爆発、地割れ、そして衝撃波を発生させ、まるで破壊の津波と呼ぶべきものだった。

 

 誰もが前衛達が吹き飛ばされている中、俺とリューさんは咄嗟にベルを連れて退避に成功し、今に至る。

 

 至近距離から衝撃波を浴びた前衛達は言うまでもなく、後衛の多くも倒れ込んでいる。起き上がろうとしている者達もいるが、それは数えるほどしかいなかった。

 

 今の光景は死屍累々だけでなく、裂け目のあちこちから煙を上げる大草原も加わってる事により、地獄絵図と呼ぶに相応しいほど凄惨さだ。

 

 それを作り出したゴライアスは次に、再び信じられない事をしている。アレの身体から立ち昇る光の粒――燃えた魔力の残滓で、自己治癒力増幅に用いていたのだ。

 

 自己再生に加え、魔力を利用しての治癒力増幅。普通のモンスターには出来ない芸当をやってのけている事に、俺は思わず戦慄した。自身のいた世界にいるエネミーに、あそこまで出来るのは滅多にいないと。

 

 ここまで厄介な敵は、この世界に来て初めてだと改めて実感する。俺が戦った17階層の階層主(ゴライアス)が段々可愛く思えてくるほどに。

 

『――――アァッ!』

 

 すると、ゴライアスの攻撃は再開される。今度は動くものすべてに衝撃波――『咆哮(ハウル)』を放ち、再起不能を免れた冒険者達に追い打ちをかけていた。その攻撃に彼等は、弾かれたり飛ばされたりと、虫の息と化している。

 

 だがそれだけでなく、アレは顔を頭上に向けて雄叫びを上げ、階層中の全てモンスターを大草原へと押し寄せようとする。

 

 辛うじて生き残っている冒険者達は、もはやゴライアスを気にしている余裕はなく、眼前の敵に手一杯となっていた。

 

 他の連中が無理なら、俺がやるしかない。あの時は全力で戦うとは言ったが、どうやら心の奥底ではアレを侮っていたと俺は認識する。その慢心があった為、こんな無様な結果となっている。

 

 なら今度は冒険者としてでなく、一人のアークスとしてゴライアス(エネミー)を撃破する。アレをアークスの仇敵――ダーカーのように思えば、もう一切の油断なんかしない。それに周囲の目なんか、もうクソ喰らえだ。

 

「リ、リヴァン……」

 

「ベル、お前は下がっ――」

 

 前へ進もうとする俺にベルが声を掛けてきたので、下がるように言ってる最中リューさんが割って入って来た。

 

「クラネルさん、此処に残りなさい。周囲と協力して、モンスター達を。ウィリディスさんもです」

 

「リュ、リューさんは!?」

 

「アンドロメダと共に、ゴライアスを押さえます」

 

 リューさんの台詞にベルが目を見張り、俺はすぐに待ったを掛けようとする。

 

「いくらなんでも、それは無理じゃないですか? 貴女たち二人だけで、アレを押さえるのは流石に」

 

「例えそうでも、あのモンスターを止めておかなければ、このまま蹂躙されます。それに、貴方が使っているその魔剣も限界の筈です」

 

「は?」

 

 魔剣って……一体何の話だ? 俺が使う飛翔剣(デュアルブレード)は魔剣じゃなく、アークス製の武器なんだが。

 

 確か魔剣はナァーザさんから、何回か使えば壊れる消耗品と聞いた。なので俺はそんな物は一切……ああ、そう言う事か。彼女は恐らく、俺がライトウェーブを使ったのを見て飛翔剣(デュアルブレード)を魔剣と勘違いしたんだろう。

 

 そう考えていると、リューさんはいつの間にか駆け出して、ゴライアスの元へと向かっていった。

 

 本当だったら俺が行きたいところだけど、先に行かれてしまった以上ベルを置いていくわけにはいかない。

 

「一応訊いておくが、どうする? 俺達はリューさんに言われた通り、モンスター達を倒しているか?」

 

「………………」

 

 俺の質問にベルは答えようとしない。それどころか、全く聞いていない感じだった。

 

 思わず振り向いてみると、答えなかった理由が分かった。何故なら自分の右手を見て何かをやろうとしているから。

 

「……リヴァン、頼みがある」

 

「何を?」

 

「どうか僕に、力を貸して欲しい……!」

 

 心から頼んでいる事に、俺は思わず驚愕した。こんな事を言われたのは初めてだ。

 

 初めて二人でダンジョン探索をしてから今まで、コイツは自分から俺を頼った事はなかった。

 

 俺が不味いと思った時に助太刀をした事はあったが、自分から『助けて欲しい!』とか『一緒に戦ってくれ!』と言う懇願をしなかった。戦う時は必ず自分一人で戦っている。

 

 ベルは俺と組んでモンスターと戦っている時、どこか遠慮している所が多々あった。恐らく、自分では力の差があるから俺の足手纏いになっていると。口には出していなかったが、ベルの行動や態度を見て俺は何となく察していた。

 

 だと言うのに、今初めて俺に力を貸して欲しいと頼ってきた。俺は思わず笑みを浮かべてしまう。この世界で初めて出来た友達に頼られた事に、俺は自身の胸の内が熱くなってくる……!

 

「いいぞ。で、俺は何をすればいい? 体力回復か? 魔力回復か? それとも補助魔法での能力強化か?」

 

「出来れば……え? リヴァン、能力強化も出来るの?」

 

「ああ、支援に関しては一通りな」

 

 ハクセンジョウVer2でレスタの体力回復、ミアハ様より貰った回復薬や俺のとっておきのスキルで魔力(ついでに体力)回復、ビーチシェードでアンティの治療回復。あと今まで使ってなかったが、導具(タリス)――イクルシオクルテに搭載されているシフタ(+潜在能力でデバンド)での能力強化も出来る。

 

 あっさりと答えた俺にベルは頬を引き攣っているが、一先ずはと言った感じで要望を出そうとする。

 

「じゃ、じゃあ能力強化で……」

 

「分かった」

 

 要望に応えようと、俺は飛翔剣(デュアルブレード)から導具(タリス)――イクルシオクルテに切り替えた。

 

 導具(タリス)は本来エトワールクラスで扱える武器じゃないが、所持しているコレはハクセンジョウVer2やビーチシェードど同様に全クラス装備可能だ。当然、搭載されているテクニックも含めて。

 

「シフタ!」

 

 搭載テクニックの名称を口にした直後、赤と青の光が展開された。レスタとデバンドが同時発動だ。

 

 イクルシオクルテの潜在能力――異彩共闘は、シフタ発動時にデバンド効果を得る事が出来る。ついでにシフタのフォトン消費量を半分まで軽減するのも含めて。この世界の魔導士からすれば絶対に驚くだろう。

 

 そしてその補助テクニックによって、俺とベルの攻撃力と防御力は上がっている。今なら中層のモンスターを簡単に倒せるはずだ。

 

「す、凄い! 力が沸き上がってくる……!」

 

「さぁ、お前の望み通り強化はした。時間制限はあるが、それは暫くもつ。この後はどうするつもりだ?」

 

 強化された事に驚くベルだが、俺は次の指示を催促した。

 

アレ(・・)を使うから、リヴァンはその間、襲い掛かってくるモンスター達を倒して欲しい」

 

「アレって……ああ、成程」

 

 俺は疑問を抱くも、これ以上訊く必要は無かった。ベルの右手から白い光粒を収束させているのを見たので。

 

 その光には見覚えがある。以前、11階層で『インファント・ドラゴン』を倒した時に使ったやつだ。ベル曰く、畜力(チャージ)系のスキルだと言っていた。

 

 そのスキルを最大出力までチャージして、ゴライアスを倒そうとしているんだろう。

 

「分かった。その代わり、ここまで俺に頼んだ以上、ちゃんと仕留めてくれよ?」

 

「うん!」

 

 丁度こちらを狙おうとする無数のモンスターがやってきたので、俺は即座に導具(タリス)からエールスターライト短杖(ウォンド)形態――ディムウォンドを展開する。

 

 ゴライアスと違って、中層のモンスター程度は俺の敵じゃないので軽く一掃出来るから全然問題無い。

 

 ベルがチャージを開始したのを見て、俺も襲い掛かってくる敵の殲滅に取り掛かろうとする。




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