少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「ベル、まだなのか!?」
「もう少し……!」
ベルがチャージを開始し、小刻みに鳴る
最大出力で放つ為に溜めているのは分かっているが、ゴライアスと戦っているリューさんたち冒険者側が段々不味い状況に陥っている為、思わず急かすように声を荒げてしまう。
俺を爪で八つ裂きにしようとするバグベアーを難なく躱し、ルミナスフレアで反撃した。近接戦になっている為、ビーム状ではなく塊として素早く放ち、それがバグベアーに命中した瞬間に爆発。吹っ飛ばされた敵は言うまでもなく絶命している。
ルミナスフレアは本来、距離を取ってからビーム状として放つフォトンアーツとなっている。しかしエトワールクラスには『フォーカス』と言う、フォトンアーツの性質が大きく変わるスキルがある。ファントムクラスにあるシフトフォトンアーツと似たモノだ。
エトワールクラスが使うフォトンアーツの攻撃範囲は広いが、フォーカスを発動させる事で逆に狭くなってしまう。だがその代わりとして、威力が通常より高くなっている。
バグベアーに使ったフォーカス用のルミナスフレアは、ビームが凝縮された塊となって発射され相当な威力となっていた。射程は非常に短くなったが、近接戦として当てれば素早く仕留める事が出来る。
倒して丁度四十匹となった直後――
「溜まった……!」
後ろからチャージ完了の報告が入った。
思わず振り向くと、ベルの右手は発光状態となっている。白光の粒子が収束されているから、ありったけの魔力が凝縮されていると見ていいだろう。前にあれでインファント・ドラゴンを一撃で葬っている。
防衛から反撃に転じようと、俺はゴライアスへ向かう為の道を作ろうと動き出した。
「行け、ベル! このまま真っ直ぐ進め!」
「分かった!」
残ったモンスターを通常のルミナスフレアで全て一掃した後、この先へ進むよう叫んだ。
俺の言葉に頷いたベルは、ゴライアスの元へ向かう為に疾走していく。
それを見て自分も後に続こうとするも、後方から再び大量のモンスターが出現する。
これからベルがゴライアスを倒しに行くから、間近で見ようと思っていたと言うのに……。空気の読めない連中だな!
……と、そんな個人的な事情は後回しだ。コイツ等を放置していたら、確実にベルの障害となってしまう。さっさと片付けて、後から合流する事にしよう。
「ちっ。次から次へと……!」
思っていた以上に数が多く、倒し終えたと思いきやまたしても現れる始末。
通常攻撃とフォトンアーツを交互に使いながらモンスターを片付けていると、後方から凄まじい轟音がした。
丁度倒したのでゴライアスがいる方角へ視線を向ける。先程まで猛威を振舞っていたゴライアスの頭部が殆ど失っていた。その為に巨人はたったまま硬直している。
恐るべきはベルの魔法だ。何人の魔導士達が一斉射撃の魔法で鉄壁並みの体皮にダメージを与えたと言うのに、それを一人だけであんな容易く突破した破壊力とは恐れ入る。余りの光景に周囲も静まり返るほどだ。
間近で見れなかったのは非常に残念だが、取り敢えずこれで漸く終了だ。いくら自己再生出来るゴライアスでも、頭を失ってしまえば活動を続けられるのは不可能なので。
そう思った直後、死んだゴライアスに異変が起こった。
「おいおい、嘘だろ……!」
俺の視界にはとんでもない光景が映っていた。悍ましい勢いで失われた巨人の顔が修復されていくと言う光景が。
元来、生物は頭を失えば生きていられない。だと言うのに、ゴライアスはその常識を覆すように、失った頭を再生している。尋常ではない生命力だ。
俺が17階層で戦ったゴライアスは、あそこまでの事はしてない。身体を左右に真っ二つした後に倒れて、そのまま絶命した。
分かってはいたが、あの黒い巨人は本当に通常のモンスターと違うって改めて認識した。
「っ! 不味い!」
頭部を再生をしているゴライアスが下を見て睨んでいた。見ているその先は、自身の顔を破壊されたベルだ。巨人の目から明確な殺意を抱いているのが分かる。
「逃げろっ、ベル!」
「ベルッ、逃げなさい!!」
俺と同じく、どこからかリューさんが叫んだ。しかしそれらは虚しく、ゴライアスから『
回避行動が遅れたベルは、奴の口から放たれた魔力塊が地面に着弾した瞬間に傷付き、そして吹き飛ばされる。
足が地面から離れてるベルに、ゴライアスは追撃をしようと、片方の極腕が大気を食いちぎって繰り出そうとしていた。
最早それは回避不可能で、誰もが見ただけで一撃必殺と思われる。防御特化スキルを持ったエトワールクラスの俺なら生きているが、そうでないベルが受ければ即死だ。
今更全速力で駆け付けても無駄だと分かっていながらも、俺は巨人の攻撃を阻止しようと――次の瞬間、予想外の人物が現れた。大盾を持ちながら飛び出す巨漢の冒険者――桜花がベルとゴライアスの間に割り込みながら。
ベルを守るように桜花が大盾を前に出して防御態勢となる……が、ゴライアスはまるで気にしないように腕を振るう。
まるで虫を払うかのような薙ぎ払いだった。ゴライアスの指が頑丈である筈の大盾を簡単にめり込ませるどころか、ひしゃげさせている。
そしてそのまま、ベルと桜花は殴り飛ばされて宙を舞う事となった。
「ベル……」
友達が殴り飛ばされた光景を見た俺は呆然と呟いた後――
「この……図体と叫ぶしか能の無いクソったれがぁぁ~~~ッ!!」
頭の中にある何かがプツンとキレて、口汚く罵りながら巨大な
「出てこい、ユリウス!」
そう言った瞬間、俺の背後から
これはマグと呼ばれる、アークスをサポートする機械生命体が持つ支援機能の一つ。エサを与える事で攻撃支援、防御支援、回復支援が決まる。俺がマグに与えたエサは攻撃用のエサを与えた事で技量寄りの攻撃支援型となっている。
俺が幻獣を召喚させた事に、冒険者達だけでなく敵のゴライアスからも一斉に視線が集まった。俺や人間の倍以上ある大きな存在に誰もが驚くだろう。
「奴をぶちのめせ! ユリウス・プロイ!」
『!』
叫びを聞いたユリウスは突如消える――が、すぐに出現した。ゴライアスの目の前に。
突然の事に巨人が戸惑う様子を見せるも、向こうは気にしないように、六本ある大きな腕を使って顔面を殴り始めた。
ゴライアスも応戦しようと両腕を振るったり『
正確に言えば、ゴライアスの攻撃はユリウスの身体に当たっても素通りされているのが正しい。
あの幻獣は元々小さな
ここまで良いこと尽くめに思われるだろうが、幻獣が出現していられる時間はそんなに長くもたない。攻撃を終えた瞬間に速攻でいなくなる仕組みとなっている。今のところはゴライアスを殴り続けているが、もう少ししたら消えてしまう予定だ。
『~~~~~~~!!』
「……よし、今の内に」
ユリウスが若干涙目となってるゴライアスをボコボコにしているのを見て、熱くなっていた俺の頭が急速に冷えていく。その隙に、怪我をしているベルの元へ向かおうとする。
「……おいおい、なんだよアレは」
リヴァンが素早く移動している中、幻獣とモンスターの攻防と言う光景に、遠くで見ているヘルメスが呟いた。
「あんな魔法、神の俺ですら知らないぞ……!」
同時にゾクゾクしていた。永く生きている自分すら知らないリヴァンが使った魔法を見て。
今のヘルメスは【リトル・ルーキー】ベルと同様、リヴァンに対する興味が一層湧き始めている。尤も、ゴライアスを倒したと聞いた時から既にそうなっていたが。
「確か彼は【ロキ・ファミリア】にいる【
レフィーヤが『Lv.3』でありながらも規格外な魔導士である事をヘルメスは知っている。だが、『Lv.1』であるリヴァンが使った魔法は違う意味での規格外だった。
しかし――
「こんな気分になったのは久しぶりだ! ああ、リヴァン君。まだ他にもあるなら見せてくれ、君の力を……!」
ベルの勇姿を見届ける目的から、リヴァンが使う未知の力を見たい欲求に駆られているヘルメスだった。
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