少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回も短いです。


少年エルフ、復活の条件を提示する

 ゴライアスに殴り飛ばされたベルの元へ向かったが、そこには誰もいない。けどリューさんが駆け付けて、素早く抱き上げて戦域外へ運んだのをチラッと見えたので、俺は彼女が向かったであろう場所へと向かった。

 

 辿り着いたのは階層の南部、中央樹と補給拠点である丘の丁度中間の草原。倒れているのはベルの他に、命と千草によって運ばれた桜花もいた。どちらも一目見るだけでも重傷だと言うのが分かる。

 

 俺より先に来たヘスティア様とバックパックを背負ったリリルカは手持ちの回復アイテムが尽きてるみたいで、苦渋の色を浮かべていた。それはリューだけでなく、桜花を運んだ千草と命も同様に。

 

「思った通り、酷い状態のようですね」

 

「リヴァン君!」

 

 駆け付けた俺がベル達の容態を見てそう言うと、反応したヘスティアが即座に振り向いた。その直後、リリルカは俺に駆け寄ってくる。

 

「リヴァン様、リリ達は回復アイテムが尽きてます! すいませんがすぐに回復魔法を!」

 

 リリルカが言う回復魔法とは、恐らく回復用の光属性テクニック――レスタの事を言ってるんだろう。彼女は俺がそれを使って回復したのを知ってるから、真っ先に駆け寄ってきたのだ。

 

「分かってる。けどその前に容態を教えてくれ。念の為に訊きたいんだが、骨折とかしているか?」

 

「手足の骨が恐らくそうなってるでしょう」

 

 俺がどうにか落ち着かせるように問うと、代わりにリューさんが答えてくれた。

 

 やっぱりな。如何に大盾で守られたとは言え、あれ程の強烈な打撃と衝撃を直撃すれば、骨が折れるのは確実だ。レスタを使う前に聞いておいて正解だった。

 

「そうか。じゃあ使わない方が良いな」

 

「何故ですか!? ベル様が死にそうなんですよ!」

 

「今ここで回復魔法を使えば確かに傷は治るかもしれないが、骨折している骨が変な方向に繋がる恐れがある」

 

 アークスの俺なら体内フォトンによって元の身体に戻そうとカバーしてくれる。しかし、そう言った補助が一切無いベルを回復させれば、俺が言った状態に陥ってしまう。それは却って悪化させるどころか、ベルの今後の冒険者人生に大きく影響する。

 

 この世界の高等回復薬(ハイ・ポーション)、もしくはエリクサーならどうにかしてくれるだろうが、生憎と俺は持ってない。あればもうとっくに使っている。

 

 俺の説明が不服だったのか、リリルカは睨みながら激昂する。

 

「じゃあどうするんですか!? ベル様が死なないのでしたら――!」

 

「落ち着け、リリルカ。俺はあくまで回復魔法を使った場合の事を言っただけだ。他にもある。ベルを速攻で全快させる方法が」

 

「え?」

 

 急に声を抑えるリリルカを余所に、俺は電子アイテムボックス――周囲からは懐から出す仕草をしている――からアイテムを取り出した。復活アイテム――スケープドールを。

 

 このアイテムは自立起動の自己復活用アイテムで、所持者が戦闘不能になった際に一度だけ身代わりになってくれる。それが起動すれば身体のあらゆる箇所を瞬時に治し、体力も完全回復する。勿論、骨折した骨も元通りにしてくれるから、体内フォトンがなくても大丈夫だ。このアイテムには治療用のフォトンが傷付いた身体を作用してくれるので。

 

 誰もが凝視してる中、俺は倒れているベルに近寄る。そして膝を折って、すぐにスケープドールを彼の胸元の上に置いた瞬間に変化が起きた。

 

 そのアイテムが光を発しながらも、ベルの身体を柔らかく包み込んだ。それによって傷跡や打撲痕が瞬く間に消えていき、苦悶の表情から段々と穏やかになっていく。スケープドールは役目を終えたかのように発していた光が消えていくと同時に、ビキビキと罅が入って使い物にならなくなった。因みにその罅はベルが骨折したと思われる箇所だ。

 

 それを見ながら骨に異常がないか確認するが、予想通り元の状態だった。まだ目覚めてはいないが、一先ずベルの治療はこれで完了だ。

 

 因みに俺が使ったアイテムを不思議そうに見てたヘスティア様達だが、誰もそれを口にしていない。

 

「完全回復を確認した。後は起き上がるのを待つだけだ」

 

「ベル君!」

 

「ベル様!」

 

 俺が診断結果を告げると、ヘスティア様とリリルカがすぐにベルの元へと駆け寄った。リューさんも安堵の表情を見せている。

 

 さて、ベルの治療を終えたから――

 

「あ、あのっ!」

 

「ん?」

 

 すると、誰かが俺に声を掛けてきた。振り向いた先には倒れている桜花を見ている千草が、頭を下げながら俺にこう言ってきた。

 

「お、お願いです! その回復アイテムがまだあるのでしたら、どうか、どうか桜花にも……!」

 

「リヴァン殿! 申し訳ありませんが、自分達は既に回復薬(ポーション)が尽きています! なのでどうか、先程のアイテムで桜花殿をお助け願えませんか!?」

 

 千草の他に、命も一緒になってお願いしてきた。しかも以前見せた土下座をして。

 

「…………」

 

 二人からの懇願に俺は無言となって、倒れている桜花を見る。

 

 ベルをゴライアスの攻撃から守ってくれた彼にも救いの手を差し伸べるべきだろう。けど、俺はすぐに動こうとはしなかった。

 

 千草や命だったら即座に助けるが、桜花に関しては違った。『自分の判断は間違っていない』と中層で怪物進呈(パス・パレード)をした件がどうしても頭に浮かんでしまう。

 

 ここで見捨てると言う選択をしてしまえば、俺は一生【タケミカヅチ・ファミリア】から恨まれる事になる。聞いた話ではミアハ様と神タケミカヅチは交友の間柄だから、場合によっては溝が生じるかもしれない。俺個人だけならまだしも、無関係なミアハ様達を巻き込む訳にはいかないか。

 

 とは言え、いくら人命救助でも容易に手を差し伸べる訳にはいかない。ここは少しばかり条件を付けさせてもらう。

 

 そう考えた俺は立ち上がり、俺は桜花達の方へと近づいていく。

 

「今の内に本音を言っておきましょう。謝罪してきた貴女達とは別に、俺達の前で『判断は間違ってない』と言い切ったこの男を助けたくないです」

 

「「!」」

 

「ちょっとリヴァン君、今此処でそんな事を言ってる場合じゃ――」

 

 本音を聞いた千草と命はビクッと身体を震わせると、神ヘスティアが咎めるように言ってきた。

 

 しかし俺は気にせずこう言い放った。

 

「ベルを守ってくれたからチャラにします。ですが俺の貴重なアイテムで治療するのを差し引いても、こちらとしては割に合いません。なので此処は【タケミカヅチ・ファミリア】に貸し一つと言う事にしておきます。文句はありませんよね?」

 

「「………………」」

 

 桜花を助ける条件を提示すると、二人はすぐに答えれなかった。すぐに決めれないと言った方が正しいだろう。貸しと聞けば猶更に。

 

 個人だけならまだしも、【タケミカヅチ・ファミリア』の貸しとなれば大事となってしまう。団長の桜花や神タケミカヅチに何の相談もなく、千草と命だけで即決出来ない案件だ。

 

 だけど、俺は敢えて【ファミリア】としての貸しを提示した。彼女達にとって団長の桜花と言う存在は大きいから、ここで彼を失えば【タケミカヅチ・ファミリア】最大の損失となると分かっていたので。

 

 この世界の【ファミリア】は、他所から弱みを易々と見せてはいけない決まりとなってる。そうなってしまえば、それにつけ込んで相手の言いなりになってしまう恐れがある。例えるなら【ミアハ・ファミリア】が【ディアンケヒト・ファミリア】に多額の借金がある為、神ディアンケヒトが調子に乗った要求をする事が時々あるので。

 

 零細ファミリアほど大きな貸しを作ってしまうと、言いなりになってしまう恐れがある。故に千草と命はそれを危惧しているから即決出来ないと言う訳だ。

 

 そう言った事情を知っているから、リリルカやリューさんは先程から一切口出しをしていない。

 

 けど――

 

「リヴァン君! 今はそんな話をしてる場合じゃない、早く桜花君を治療しないと死んでしまう!」

 

 ヘスティア様はその空気をぶち壊すように叫んだ。

 

 そして、こうも言った。貸しを作るなら自分たち【ヘスティア・ファミリア】も一緒にして欲しいと。彼女曰く、神の自分がこの18階層まで来れたのは【タケミカヅチ・ファミリア】の三人が護衛してくれたから、その恩を此処で返したいそうだ。

 

 まさかここでヘスティア様が出張って来るとは思いもしなかった。桜花に恩返しをする為に、何の躊躇いもなく貸しを作ろうとするとは。

 

 本当なら千草と命だけの貸しで済まそうと思ったんだが、ヘスティア様まで加わってきた以上、貸しは相殺する事となった。

 

 彼にはベルと違って別の復活アイテム――ハーフドールを使った。スケープドールとは違って体力が半分の状態で復活するが、それ以外の怪我は全て治る。

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッッ!!』

 

 

 そんな中、幻獣のユリウスが役目を終えて姿を消した事により、ずっとボコボコにされていたゴライアス息を吹き返すように叫んだ。




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