少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「行かせるか!」
動きを止めようと、スキップ版のシューティングスターを放った。大きなフォトンの剣四本が走るゴライアスの足に突き刺さった事で動きが止まる。が、まるでもう気にしてられないように無理矢理足を上げて引き抜こうとしている。
ならばもっと刺してやると再度放とうとする中、突如俺の横から誰かが疾風の如く通り去った。その正体はリューさんで、丁度フォトンの剣を引っこ抜いたゴライアスへ臆する事無く突っ込んで奇襲を仕掛けようと、遠慮なく膝を狙った。
突然の衝撃により、巨体を支える短足はバランスを崩してしまい、ゴライアスはまたしても倒れた。
「凄っ……!」
リューさんの行動に思わず度肝を抜かれてしまった。
自分よりレベルが上とは言え、あの細腕にどれだけの力が込められているのかと思わず疑問視してしまう。
俺がそう思ってると、両手両足を地につくゴライアスに、リューさんだけでなくアスフィさんも加わって襲い掛かっていた。
『グッ――オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』
顔、手、肩、腿、背。あらゆる部位をでたらめに高速で乱打するリューさんの木刀とアスフィさんの短剣に、ゴライアスは怒り狂ったようだ。
理性を失って暴風と化している巨人に、リューさんは突如詠唱を始めた。
「【――今は遠き森の空。無窮の夜天に
おいおい、凄い事してるぞあの人。
ゴライアスに攻撃を続行しながらも詠唱を奏でている。これには一緒に戦ってるアスフィさんも驚くように見ていた。
「【愚かな我が声に応じ、今一度聖火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」
詠唱と戦闘を両立させているリューさんに、俺はひたすら感服していた。
この世界の魔法はアークスが使うテクニックと違い、発動させる為に多大な集中力と正確な詠唱を求められる。高威力かつ詠唱文が長くなれば長くなるほど高度な制御が強いられる為、魔導士は足を止めて詠唱のみに専念せざるを得ない。
そんな常識を覆すかの如く彼女は階層主を相手に、攻撃、移動、回避、詠唱、四つの行動を高速で同時展開している。下手をすれば
物凄く失礼だが、レフィ姉さんでは絶対無理だろう。あの人は『Lv.3』でも俺が知る限り後衛の魔導士だ。とてもじゃないが、前衛に出て戦う事は出来ない。益してや階層主相手では。
さて、そんな事は如何でもいいとしてだ。問題は俺がどうするかを考えなければならない。
見ての通り、今はリューさんとアスフィさんが奮戦している。本当は俺も加わるべきなんだろうが、あの二人によって充分足止めは出来ている。
なのでここは………一先ず二人に任せて、ベルがいる所へ向かうとしよう。
これは決して敵前逃亡じゃない。俺も俺でやる事があるからだ。
「リューさん、アスフィさん、すみませんがそのまま足止めをお願いします!!」
「え? ちょっ、リヴァン・ウィリディス! 何故こんな土壇場で……!」
叫びながら持ち場を離れる俺に、聞いていたアスフィさんがまるで裏切られたような声をあげていた。
因みにリューさんも聞こえていたみたいで、高速戦闘に集中している為にチラッと俺を見るに留まっている。
移動している際に凄い事が起きていた。
リューさんが詠唱している最中、アスフィさんが
「リヴァンッ……!」
「今は俺に気にせずチャージに集中しろ!」
辿り着いた俺はベルの姿を改めて確認する。
身体は無傷の状態だった。スケープドールによって完全回復している証拠だ。流石に防具や服はボロボロになっているが。
遠くから見えていたが、ベルが手にしている大剣は変わった形をしていた。けど、そこら辺の武器と違ってかなりの業物だと言うのが分かる。
ともかく、万全な状態で力を溜めているのは分かった。一先ず俺のやるべき事をやるとしよう。
「シフタ!」
ベルの能力を
限界を超えたチャージをしているから、放てば相当な威力になると俺は確信している。だからベルには何が何でもゴライアスを仕留めて欲しいので、補助テクニックを掛けさせてもらった。勝率を上げる為、ベルの攻撃力を上げる為に。ついでに防御力も上がっているが気にしないでおく。
「っ! ありがとう、リヴァン!」
力が沸き上がった事にベルは礼を言ってすぐ、再びチャージに集中しようと瞑目する。
それを見た俺は後ろを振り向く。その先には詠唱が完了したリューさんが高威力の魔法を放っていた。
緑風を纏った無数の大光玉によって被弾しているゴライアスだが、損傷と治癒を繰り返しながらも強引に突破しようとする。それによって正面にいたリューさんとアスフィさんが逃げ遅れていた。
二人が窮地に立たされると思いきや――
「【フツノミタマ】!!」
何処からか魔法名を告げる叫びが聞こえた。
その瞬間、ゴライアスの直上より一振りの光剣が出現し、そのまま直下する。
同時に、地からも魔法円らしき複数の同心円も出現。ゴライアスの周囲に、重力の檻と思わしきものが発生した。それによってゴライアスは動けないでいた。
魔法を放ったのは、俺から少し離れた場所にいる命だ。右腕を前に突き出して左手で掴んで踏ん張った表情をしている。
あんなとっておきがあったのは驚いたが、恐らく破られるだろう。その証拠に地面に縫い付けられたゴライアスが、ゆっくりと身を持ち上げて重力の檻から出ようとしている。
そして数秒後、予想通りゴライアスは結界の壁に両手を突き入れ、強引にこじ開けて檻を破った。気のせいか、不愉快な笑みを浮かべている。
「お前らァ! 死にたくなかったらどけぇええええええええええ!!」
すると、誰かが周囲に怒鳴り散らすように叫んだ。
「ヴェルフッ……何だあの剣は?」
聞き覚えのある声に思わず振り向くと、ヴェルフがゴライアスに向かって突っ走っていた。
それとは別に、俺は彼が持っている長剣に目を奪われた。戦闘の時に使っていた中古品の大刀じゃなく、飾り気が一切無い柄と剣身だけの長剣だったから。だがそれとは裏腹に、その剣身はまるで炎を凝縮したかのように猛々しく美しい。
直後、ヴェルフは長剣を両手で翳し――
「
長剣の銘を叫びながら、大上段で一気に振り下ろした瞬間、巨大な炎流が迸って一直線にゴライアスを呑み込んだ。
『――――――――――――――アァァァァッ!?』
まるで地獄の業火とも呼ぶべき一撃に、流石のゴライアスも動きを止めて悲鳴をあげていた。
ヴェルフが放ったのは恐らく魔剣だ。しかも名高い『クロッゾの魔剣』。今はもううろ覚えだが、嘗て
最初は同胞達がクロッゾ一族に対する恨み辛みをぶちまけようと大袈裟に言っただけではないかと思ったが、それは事実だったと認識を改めた。尤も、そうしたところでヴェルフに対する恨みなんて微塵も湧いたりなんかしない。
けど、あんな凄い魔剣を何故今まで使わなかったのかと文句を言いたい。いくら消耗品だからって、あれほどの威力ならダンジョン中層で遭難する破目にならなかった筈なのに。彼にも色々と理由はあるんだろうが、せめて非常手段ぐらいは考えて欲しい。使える筈の手段を使わずに死んでしまったら元も子もないので。後で言っておこう。
さてそれはそうと……ベルのチャージはまだ完了しないようだ。恐らくあと少しで完了するだろう。
対してゴライアスはヴェルフの魔剣で未だに動きを止めて悶え苦しんでいるが、包まれている紅蓮の炎が消えた瞬間、再び動き出す筈だ。
となれば、もう少し時間が欲しいな。ゴライアスの動きをもう暫く止める為の時間が。
…………ベルの能力上昇を終わらせたから、ここは俺もやるか。折角命やヴェルフが最大の切り札を披露したのだから、俺もやらないと割に合わない。
「ベル! 止めはお前に譲るから、絶対に決めろよ!」
決意した俺は再び動こうと、チャージしているベルにそう言った後、悶え苦しんでいるゴライアスの元へと移動する。
全速力で向かっている中、途中で俯いているヴェルフとすれ違った。その際、彼が手にしていた魔剣は既になかった。恐らく回数制限を超えて砕け散ったんだろう。
だが俺は敢えて気にせずに、そのまま未だ燃え盛るゴライアスの近くまで辿り着き、そのまま力強くジャンプする。
「ウィリディスさん!?」
「一体何を……って、彼の持っている剣が変わって……!」
ジャンプする俺を見たリューさんとアスフィさんだが、俺が持っている
エトワール用の
俺の行動にリューさん達だけでなく、この場にいる冒険者達も信じられないように凝視していた。空に浮いた状態のまま、武器が変形するなんて初めて見るんだろう。
『!』
ゴライアスもそれに気付いたのか、此方に視線を移して目が合った。
「フルコネクトォォォォォォォォ!!」
ヴェルフに倣ってスキル名を告げ、力強く斬り上げた後、放たれた鋭利な衝撃波が巨人に襲い掛かろうとする。
衝撃波は命中し、そのまま通り過ぎていく。直後、ゴライアスの身体に斜線が入り、ズズズッと、上半身が徐々に落ちていく。
『ギッ……!』
だが、それでもゴライアスはまだ生きていた。しかも上半身が落ちないよう手で支えようとしている。
落下しながら、本当にしぶとい奴だと思っている中――
「あああああああああああああああッ!!」
下から叫び声がしながら誰かが通り過ぎた。確認せずとも分かっている。ベルだ。
チャージが完了したベルは爆走しながら、大剣を右肩へと振り上げ、そして振り下ろした。
その瞬間、純白の極光が視界を埋め尽くそうとしたので、地面に着地した俺は咄嗟に目を腕で覆った。
視界が遮られながらも、凄まじい轟音が18階層全体に響いている。その所為で聴覚がおかしくなる寸前だ。
そして音が止み、視界も回復したので目を開けてみると、そこには上半身と魔石を完全に失った巨人の身体が立っていた。残った下半身は核となる魔石が無くなった為、灰になって霧散していく。ドロップアイテムと思われる硬皮を残して。
『――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
ゴライアスが倒されたと分かった瞬間、大歓声が巻き起こった。
冒険者達の誰もが喜び、枯れてもおかしくないほど叫び続けている。
「ふぅっ、やっと終わったか……」
モンスターの気配が無くなった事を確認した俺は安堵の息を吐き、力を使い果たしているベルの元へと向かっていった。
「ねぇリヴァン、あの時はチラッとしか見えなかったけど、あの凄くカッコいい一撃は何だったの!?」
「あ、いや、アレはな……」
その後、俺が今まで使ったフォトンアーツやスキルについて問われた。特にベルはフルコネクトの一撃が物凄く気になっていたのか、疲弊していながらもキラキラとした目で訊いてくる。
リリルカ達からも追究されたが、一先ずは黙秘と言う事で何とか凌ごうとする。
漸くゴライアス戦が終わりました。
次回はOVA版の温泉話を出すか、そのまま
取り敢えず、感想お待ちしています。