少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回は1期OVA版であった温泉話です。

最初に言っておきますが、これと言って何の変哲もない短い話です。


少年エルフ、温泉を楽しむ

 ベルが黒いゴライアスを倒した事により、18階層にいる冒険者達から絶賛を博されて一躍のヒーローとなった。だがそれも束の間で、各々が後始末を始める。あの巨人によって色々な被害を被った事で、現在リヴィラは大忙しだ。

 

 そんな中、俺達は一通りの準備を済ませて地上へ帰還する事となった。しかもかなりの大所帯だ。

 

 俺、ベル、ヴェルフ、リリルカ。【タケミカヅチ・ファミリア】の桜花、命、千草。【ヘルメス・ファミリア】のアスフィさん。訳ありのリューさん。最後にヘスティア様に神ヘルメスを含め、計11名で帰還する事となる。

 

 他所の【ファミリア】ならまだしも、二柱の神も連れて一緒に帰還するのは前代未聞かもしれない。もし地上にいるギルドに知られたら大目玉は確実だろう。

 

 因みに壮年の冒険者が起こした事件を俺独自に調べるつもりだったが、後回しにせざるを得なかった。何故なら容疑者である神ヘルメスは何食わぬ顔でずっとベル達の傍にいたからだ。下手に問い詰めれば水を差してしまうどころか、色々な意味で溝が出来てしまうかもしれないと一旦諦める事にした。

 

 地上に戻ったら絶対に問い詰めてやると決意して帰還中、予想外の出来事が起きていた。

 

「はぁぁ~。リヴァン、温泉って凄く気持ちいいんだねぇ~」

 

「そうだな……ふぅっ」

 

 現在、俺達は温泉に浸かっていた。勿論ここにはベルや俺だけじゃなく、ヴェルフや(リューさんを除く)女性陣達も入っている。全員水着に着替えて。因みに俺はベルと色違いの海パンとシャツを纏っている。

 

 何でこうなっているのかと言うと少し長くなるが、事の発端となったのはヘスティア様がこの未開拓領域である温泉を見付けたからだ。

 

 襲い掛かってくるモンスターの群れをベルが奮戦してリリルカ達が褒めている際、剥れたヘスティア様が蹴とばした小石が壁に当たった瞬間に新たな道が開いた。

 

 先達の冒険者であるリューさんやアスフィさんすらも知らないようで、誰もが警戒している中、【タケミカヅチ・ファミリア】の命が急に何かを嗅ぎ取ったかのように奥へ進んだ。いきなりの行動に全員が追った結果、温泉を発見する事となった。

 

 ベルに覗きを促した主犯の神ヘルメスがいた事もあってか、ヘスティア様を筆頭に女性陣が最初は諦めの空気だった。温泉好きの命が涙を流す中、リューさんが水着を着れば問題無いと提案し、温泉に入る事となる。その際、水着は神ヘルメスがいつの間にか全員分用意していた。何故アスフィさんの外套(マント)の中に入っていたのかが凄く気になったが。

 

 水着の着替えにヘスティア様の方で些細なトラブルが起きたが、その後に少しおかしな事があった。命が温泉に入る為の作法を教えてくれたが、余りにもバカらし……もとい奇抜だった。桜花と千草曰く、どうやら温泉好きな彼女独自の風習らしい。ついでに極東出身者の二人も一緒に聞いてて凄く恥ずかしかったみたいだ。

 

 とまあ、そう言う経緯があって未だ地上へ帰還せず此処にいると言う訳である。

 

「そう言えば桜花さん、今更ですけど傷の具合はどうですか?」

 

「問題無い。お前が使ってくれた回復アイテムのお陰で、今もこうして元気なままで生きている」

 

 ヴェルフと桜花が少し剣呑な会話をしてたのが耳に入ったので、俺が割って入るように尋ねると、彼は少し申し訳なさそうな表情となった。

 

 瀕死だったところを俺がハーフドールを使い、体力以外は完全に治っている。一応戦える状態だが、千草が大事を取るようにきつく言われている為、帰還中は一切戦闘に参加していない。桜花は若干不服そうだったが、結局は彼女に従っていた。何と言うかこの二人、仲間以上の関係のように見える。

 

 余談だが、復活させる為に作った貸しはヘスティア様が加わった事で相殺されてるが、後で知った桜花が俺にこう言った。『悪いがコレは俺個人の借りにしてくれ。いくら相殺されたからと言っても、助けられた俺自身が許せない』と。なので【タケミカヅチ・ファミリア】団長の桜花に貸し一つと言う事になった。もし何かしらの事があれば、桜花に命令して動いてもらう事でチャラにする予定だ。

 

 その後、ベルと桜花がこの場から離れた。ベルはヘスティア様に、桜花は千草に呼び出されたから。

 

「ちくしょう。ベルはともかく、何であの大男まで……!」

 

「まぁまぁ」

 

 悔し涙を流すヴェルフに俺は宥めた。

 

 話題を変えたかったのか、涙を引っ込めた彼は俺に尋ねようとする。

 

「なぁリヴァン、18階層で使ったアレ(・・)は本当に魔剣じゃないのか?」

 

「だから違うって言ってるだろう」

 

 ヴェルフが言ってるアレとは、俺が黒いゴライアスに使ったフルコネクトを指している。飛翔剣(デュアルブレード)とフォトン(エッジ)が接続されて大剣となり、巨大な衝撃波を放った事で強力な魔剣と勘違いしている。

 

 一応ベルと同じ、スキルと魔法を発動させたモノだと言っておいた。それでもヴェルフは信じられない表情をしているから、今もこうして訊いてきている。

 

「っと、そうだ。此処にある水晶(クリスタル)は18階層のと少し違うから採っておくか。悪いけど話はまた今度だ、ヴェルフ」

 

「あ、おいコラ!」

 

 このままだと再び詰問されそうな気がした俺は適当な言い訳をしながら、この場から離れようとする。

 

 

 

 

「ふむ、やっぱり色が違うな」

 

 温泉を一通り楽しんだ俺は一足先に服と防具を身に纏い、未開拓領域の探索をしていた。現在は皆から少し離れた奥の方へ向かっており、周囲に生えている水晶を採取している。

 

 18階層の水晶(クリスタル)は透明でキラキラと輝いているが、此処にあるのは青い光沢を放って綺麗だ。さしずめ青水晶(ブルークリスタル)と言ったところか。

 

 こっちもこっちで売れるかもしれないと思った俺は、可能な限り採取しようとする。幸い、電子アイテムボックスにはまだ余裕があるし、18階層の水晶(クリスタル)とは別の扱いとなっているから、大量に収納する事が出来る。

 

 モンスターの魔石やドロップアイテム、二種類の水晶(クリスタル)が電子アイテムボックスにかなり入ってるから、地上で売れば相当な額になるだろう。そうなれば【ミアハ・ファミリア】の財政も潤うし、ナァーザさんも大喜びする筈だ。

 

 ………とまあ、それは別に良いとしてだ。この未開拓領域が本当に安全な場所であるのか、俺は少しばかり疑問を抱いている。

 

 リューさんとアスフィさんが周囲を調べてモンスターの気配は無いとは言ってたが、ダンジョンである以上、必ずしも絶対とは言い切れない。18階層の安全階層(セーフティポイント)みたいにモンスターが出現しなくても、別の階層を通じてどこかに潜んでいる可能性が充分にある。

 

 出来れば俺の取り越し苦労であって欲しいと思いながら青水晶(ブルークリスタル)の採取をしてると、それが的中したように異変が起こった。

 

「何だ? 温泉の色が……」

 

 エメラルドグリーンみたいに透き通っていた筈の温泉の湯が、突如朱色に染まり始めた。

 

 いきなりの展開に戸惑う俺を余所に、湯は未だに染まり続けている。この様子だと、向こうにいるベル達の方も気付いている筈だ。

 

 一先ず皆の様子を確認する為、俺は急いで戻る事にした。

 

「皆さん! 温泉が――っておい……!」

 

 戻って早々凄い光景が俺の両目に映っていた。水着を着ていた筈の女性陣が何故か無くなって殆ど素っ裸だ。神ヘルメスはロープで縛られている。

 

 ついでに男のヴェルフと桜花は未だ気付いてないのか、水着が無くなって完全に全裸だ。ヴェルフが何やら岩で彫刻してるが一先ず無視させてもらう。

 

『きゃぁぁぁぁああ~~~!!』

 

「ウィリディスさんは後ろを向いて下さい」

 

 俺の登場に素っ裸となってる女性陣が一斉に悲鳴をあげ、俺と同じく服を着ているリューさんが後ろを向くよう言ってきた。

 

「で? これは一体どういう状況なんですか?」

 

 彼女の言う通りにして後ろを向いて説明を求めた。

 

 素っ裸の女性陣達が大慌てで着替えてる中、リューさんが簡潔に説明してくれる。

 

 どうやら温泉が朱色に染まった直後、彼女達が着ていた水着が一斉に溶かされたようだ。それを見た神ヘルメスに、アスフィさんが速攻でロープを使って縛り上げた後に俺が来たんだと。

 

 水着が無くなったのは温泉が原因だったか。成程ねぇ。もし俺もずっと温泉に入っていたら、彼女達みたいに素っ裸になっていたと言う事か。一足先に上がって良かったな。

 

「取り敢えず状況は分かりました。ところで、ベルとヘスティア様は?」

 

「!」

 

 この場にいない二人の事について訊くと、リューさんはまるで今気付いたかのようにハッとした。

 

 

 

 

 

 

 先ず結果から言うと、ベルとヘスティア様は辛うじて無事だった。ヘスティア様の水着が溶けて素っ裸寸前により、アスフィさんが応急処置として自身のマントで身体を隠させた。

 

 ヴェルフと桜花、神ヘルメスを置いて駆け付けた俺達が辿り着いた際、初めからいたと思われる魚型モンスターが泳いでいた。

 

 ベルとヘスティア様に襲い掛かる複数のモンスターを、俺とリューさんが速攻で片付けて何とか事無きを得ている。

 

 しかしその直後、この領域の主と思われる巨大な魚型モンスターが出現。そこを俺とベルで片付けた。

 

 モンスターの頭部にある複数の触角が襲い掛かるところを、俺は飛翔剣(デュアルブレード)のフォトンアーツで全て斬り伏せた。その間にベルが急接近し、例のチャージスキル+魔法(ファイアボルト)で倒す事に成功。ゴライアス戦と違って呆気ない勝利だった。

 

「ありがとう、リヴァン。お陰で簡単に倒せたよ」

 

「どういたしまして。それはそうとベル、隠した方が良いぞ。彼女達の目もあるし」

 

「え?」

 

 女性陣が一斉に顔を赤らめながらも見ていたので、さり気なく忠告して指す俺にベルはゆっくりとその方へと視線を向けた。既に溶けて殆ど無くなりかけている海パンを。

 

 非常にどうでもいいが、リリルカは興奮してて鼻血を出していた。それとリューさんは両目を手で隠してても、さりげなく指を広げてジッと見ている。

 

「――っ!? う、うわぁあああああああああああっ!!」

 

 下半身が丸出し寸前になってる事を漸く気付いたベルは、物凄く慌てながらシャツで必死に隠そうとしていた。

 

「$)’%#!?」

 

「おぉーーーーー!」

 

 ベルのアレが露出した事にリリルカとヘスティア様は興奮していた。特にリリルカは興奮のあまり、幸せそうな顔をしながらも倒れている。

 

「リ、リヴァンお願い! そのコート貸して!」

 

「え~……」

 

 顔を赤らめながらお願いしてくるベルに俺は少しばかり嫌な顔をした。

 

 女性のレフィ姉さんならまだしも、下半身丸出し状態の男にコートを貸すのは流石に抵抗感がある。

 

 とは言え、流石に友達のベルをこれ以上辱めるのは忍びないので、取り敢えず一時的に貸す事にした。

 

 後からになって、この未開拓領域にある温泉全ては魚型モンスターが張った罠だと判明した。アスフィさん曰く、『これまで此処を見付けた冒険者はあのモンスターの餌食となった為に発見されなかったかもしれない』と。

 

 ヘスティア様が見つけた予想外の出来事でトラブルが発生したが、俺達はここから一切寄り道せず、再び地上に向けて帰還を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁヴェルフ、あの岩の壁画はどう言う意図で作ったんだ? 神ヘファイストスがブル――!」

 

「リヴァン! ちょっと向こうで話し合いをするぞ!」

 

 神ヘファイストスにブルマを履かせた壁画について尋ねようとしてる最中、ヴェルフがいきなり大声を上げながら俺をベル達から少し離れた所へ連れて行かれた。




感想お待ちしています。

次回は戦争遊戯(ウォーゲーム)編をやると言いましたが変更します。

前の活動報告で書いたダンメモシリーズのストーリーを出します。
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