少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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今回はダンメモの短編話です。

18階層の黒いゴライアス戦から数日経った、と言う流れになっています。

それではどうぞ!


ダンメモ編 少年エルフ、アイドルを目指す従姉を目撃する

 突然だが、信じられない事が起きていた。

 

 目の前に――

 

「きゅるるん☆」

 

「「………………」」

 

 俺の従姉であるレフィ姉さんが肌を露出させ、おかしなポーズをしていた。

 

 余りにも奇抜な行動を取っている為、俺だけでなくベルも一緒に呆然状態に陥っている。

 

 何故こんな事になってるのかと言うと、時間を少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

「リヴァンと二人だけで行くのは久しぶりだね」

 

「そうだな。初めて組んだ時を思い出すよ」

 

 ダンジョン10階層。俺はベルと一緒に探索をしていた。

 

 本当はリリルカとヴェルフもいる筈なんだが、急遽用事が入ってしまった為に不参加となった。リリルカは下宿先で世話になってる店主のお世話で、ヴェルフは最近出来た顧客からの急な鍛冶依頼によって。

 

 四人パーティでの探索が当たり前となっているのでダンジョン探索は中止……ではなく二人だけで行く事にした。

 

 本音を言わせてもらうと、今はのびのびとした探索をしている。リリルカとヴェルフには申し訳ないけど、別にいなくても大して問題無いと思っていた。寧ろ却って好都合な展開だ。

 

 俺はあの二人にベルほどの信頼感はないどころか、今のところお荷物程度としか見ていない。ベルの前で決して言うつもりは無いし、勿論二人にも言ったりしない。

 

 こんな風に考えてしまうのは、俺が異世界のオラクル船団でアークスとしての経験を積んだからだ。冒険者とアークスの視点が全く異なってると分かっても、ついつい比較してしまう。これは俺の悪い癖なので自重するとしよう。

 

「ん? 今度はオーク、か」

 

「僕がやるから下がってて」

 

「了解」

 

 突如オークが数体現れたので武器を構えるも、前に出たベルが一人でやると言ったので下がる事にした。

 

 既に『Lv.2』となり、ダンジョン中層での戦闘を経験したベルからすれば全く問題無い。と言っても、万が一の事が起きた場合に俺が即座に動けるよう待機はしてる。

 

「あ~らら、もう終わってるし……」

 

 が、それは杞憂に終わった。ベルが突進して早々一体目を一撃で倒し、別のオークにナイフで素早く斬りつけた。鈍重なオークは既にやられた事に気付かないまま絶命し、そのまま倒れていく。

 

 開始して一分も経たない内に戦闘が終了だ。何もしてなかった俺は魔石回収しないと。

 

「あ、リヴァン。それ位は僕一人でも……!」

 

「いいからいいから。お前は少し休んでろって」

 

 そう言ったが、結局ベルも魔石回収をする。

 

 サポーターのリリルカだったら有無を言わさず絶対に休ませるだろう。そう思ってると、二人の女性冒険者が聞こえて何故か俺達の方へと近づいてきた。

 

「リ、リヴァン……!?」

 

「ん?」

 

 聞き覚えのある声だったので振り向いたら……何とレフィ姉さんがいた。しかもいつもと違う格好で、矢鱈と肌を露出している。以前に会った【ロキ・ファミリア】のアマゾネス――ティオネさんと同じ衣装だ。

 

 エルフは貞操観念が強い種族で、基本的に肌を晒す事はしない。俺はオラクル船団での教育を受けた事で、そう言った抵抗感は殆どない。この世界のエルフから見れば異端と見られるだろう。

 

 しかし、レフィ姉さんは俺と違い、この世界で育った純粋なエルフだ。だからアマゾネスみたいに肌を露出する事はしない……筈なんだが、一体どういう事なんだ?

 

「…………」

 

「「………………」」

 

 凄く気まずそうに無言となるレフィ姉さんに対し、彼女の姿に思わず呆然となって無言になる俺とベル。

 

 けど、そんな雰囲気は数秒後に消える事となる。

 

「なっ……なんでリヴァンだけでなく、貴方もここにいるんですかっ!?」

 

「いや、なんでって言われても……」

 

「ここ、ダンジョンですし……」

 

 レフィ姉さんは従弟の俺には恥ずかしそうな表情をしてたが、ベルに対しては凄く攻撃的に睨みながらも質問してきた。

 

 思った事をそのまま言うも、向こうは最悪と言わんばかりに勝手に騒ぎ始める。

 

「示し合わせたみたいに、こんなときばっかり! 二人揃って私を笑いに来たんですねっ! そうなんでしょう!? 特にベル・クラネル!」

 

「ちょちょ……レフィーヤさんっ!?」

 

「はぁっ、またか……」

 

 標的をベルだけに食ってかかるレフィ姉さんの姿勢に、俺は呆れながら嘆息する。

 

 相変わらずだなぁ、この人は。前に注意した筈なんだけど、それを忘れてると思うほど感情的だった。ベルがアイズと仲が良いからと言う理由で、何もそこまでムキにならなくても良いのに。普段の優しいレフィ姉さんは何処へ行ったのやら。

 

「この人でなし! いえ、(ウサ)でなしっっ! うぅ……私を辱めて何が楽しいんですかぁ~! もうやだぁ~! この、変態、変態、へんたーい!!」

 

(ウサ)でなしってなんなんですか!? というか何で泣くんですか!?」

 

 色々と突っ込み満載な所が多過ぎる所為か、ベルは困惑気味になっていた。

 

 それと(ウサ)でなしって……。確かに見た目は兎を連想するが、何もそこまで言わなくても良いんじゃないかと……。

 

 すると、俺達の後ろから別の女性冒険者が俺達に声を掛けてくる。

 

「もぉ~、違うよ、レフィーヤ」

 

「てぃ、ティオナさん……?」

 

 声を掛けてきたのは【ロキ・ファミリア】の幹部でアマゾネスのティオナ・ヒリュテさんだった。

 

 彼女の登場により、さっきまでベルを罵りながら泣き叫んでいたレフィ姉さんが一旦落ち着いている。

 

「ロキのメモによると、罵ったりするのは、『特殊なふぁん』への『ご褒美』なんだって。アルゴノゥト君達は『特殊』じゃないよね?」

 

 特殊って………まさかとは思うが、罵られて喜ぶ被虐嗜好(マゾヒスト)――通称『ドM』の事じゃないだろうな? だとしたら断じて違うと否定する。

 

 けどティオナさんの言い方から察して、恐らく知らないんじゃないかと思う。その中に『ファン』と言う単語が入っていたが、明らかに意味を知らずそのまま読んだかのように見えた。メモを書いた神ロキは知ってるだろうが。

 

「え? えっと……。たぶん、そうだと思いますけど……?」

 

「生憎と俺もそちらが仰る『特殊なファン』ではありませんので」

 

 全く分からないベルは曖昧に答え、意味を知ってる俺は違うとキッパリ答えた。

 

「ほら、やっぱり! アルゴノゥト君達には、たぶん、こっちがいいって!」

 

「はい……? って、なんですか、これっ!?」

 

 反応が異なる俺達の返答に、ティオナさんは何の疑いもなく確信していた。

 

 これが思慮深いフィン・ディムナであったら確実に訝るだろうが、目の前のアマゾネスさんは全く気にしないようだ。

 

 そんな中、ティオナさんはメモらしき物を渡している。それを読んだレフィ姉さんは信じられないように目を見開いていた。

 

「ほらほら~、ちゃんと『まねーじゃあ』の言うこと聞いて『ぷろもぉしょん』しないとっ。ねっ、二人とも! もちろんレフィーヤの『ふぁん』になってくれるよねっ!」

 

 ………何か段々分かってきた気がする。まだ確証はないけど、もしかしたら彼女達は芸能活動してるかもしれない。レフィ姉さんはアイドル役で、ティオナさんがマネージャーとして。

 

 オラクル船団にいた頃、俺はカスラの指示で(アイドル側)クーナさんのマネージャー役をやらされた。主にやってたのはスケジュール管理のサポート業務だ。

 

 クーナさんとしては最初必要ないと断っていたが、俺だと分かった途端に了承した。本当の自分を知っているなら問題無い、と言う理由で。

 

 初めてマネージャー業務をやった時は物凄く大変だった。あれよこれよと知らない事だらけで、頭の中がショート寸前にまで陥った。アークスだけでなく、未知で未経験のマネージャー業務もやらされてカスラに殺意を抱きながらも、二つの役割をこなして今に至る。尤も、今は元の世界に戻って、向こうの仕事は一切手付かず状態だが。

 

「ふぁ、ふぁん……? えーと……僕にできることでしたら……」

 

「……まぁ、レフィ姉さんの従弟として……応援するのは(やぶさ)かではありませんが……」

 

 ベルと俺は取り敢えずと言った感じで協力すると返答した。それを聞いたティオナさんがレフィ姉さんに向かってこう言った。

 

「よ~っし! 話はついたよ、レフィーヤ! どーーーーんっと、いってみよーーっ!」

 

「む、無理っ――」

 

「無理って言うの禁止ー」

 

 断ろうとするレフィ姉さんだったが、ティオナさんから空かさずダメ出しをされて退路が断たれてしまった。

 

 もう逃げ場が無いと悟ったのか、彼女から諦念の雰囲気を醸し出していく。

 

「………………」

 

(リ、リヴァン。あの人の目が死んでる……)

 

(相当やりたくないのが伝わるなぁ)

 

 無言になるレフィ姉さんを見たベルが小声で話しかけたので、俺は答えながらも一体どんな事をやらされるのかと見守っていた。

 

 すると、彼女は俺達を見てこう言った。

 

「リヴァン、わたし、あなたを信じてるから……」

 

「は、はぁ……」

 

「……ベル・クラネル、わたしは、あなたのこと、嫌いです……でも、信じます……」

 

「レ、レフィーヤさんっ?」

 

「今から見るものは、忘れてください……絶対に忘れてください……信じて、ますから……」

 

 何だかまるで自ら死地へと赴くような言い方だ。

 

 どうでもいいけどレフィ姉さん、やっぱり貴女はベルの事が嫌いなんですね。

 

「レフィーヤさんっ、レフィーヤさぁんっ!? なんか遺言みたいになってますよ!?」

 

「――っっ!! いきます!!」

 

 叫ぶベルを余所に、レフィ姉さんは意を決するように始めた。

 

 そして、急に笑顔となり――

 

「きゅるるん☆ ダンジョン☆あいどる、レフィーヤちゃんですっ☆ 私たちの新ゆにっと、エルフ・リンクス☆ 待望のふぁーすと・しんぐる『ウィーシェの森でさようなら』☆ よい子のみんな、よろしくねっ☆」

 

 いきなりレフィ姉さんが絶対に言わない事を叫んだ。

 

 きゅるるん? ダンジョンアイドル? 新ユニット、エルフ・リンクス? ファースト・シングル?

 

 ……もしかしてレフィ姉さん、向こうにいるアイドル歌姫のクーナさんみたいな事をやらされてるのか?

 

 いや、その、何と言うか………敢えてアドバイスを送らせてもらうと、アイドルって実は凄く険しい道ですよ。クーナさんの場合は諸事情でアイドルやらされてますけど。

 

「きゅるるん☆」

 

「「………………」」

 

 レフィ姉さんが締めるように言い終えると、俺とベルは口を開けながら呆然となっていた。

 

 そんな俺達の反応とは別に、一緒に見ていたティオナさんが満面の笑顔となっている。

 

「うんっ! よかったよ、レフィーヤ! 完璧だねっ! これで従弟君とアルゴノゥト君も……」

 

「もぉ、やだあああぁぁぁぁっっ!」

 

 耐え切れなくなったのか、レフィ姉さんは真っ赤な顔をしたまま、涙を流してダンジョンの奥へと走り去っていった。

 

「レ、レフィーヤさぁーーんっ!?」

 

 

「うええええええええええええええんっ!!」

 

 

 ベルが叫ぶも、レフィ姉さんは全く聞いてないように泣き叫んでいた。

 

「じゃーね、二人ともっ! ふぁーすと・しんぐる、よろしくねぇ!」

 

 しかし、そんな彼女の反応を全く気にしてないのか、ティオナさんは俺達に別れの言葉を告げて後を追うように颯爽といなくなった。

 

「……えっと、リヴァン。ふぁーすと……って、なに?」

 

「ファースト・シングル。早い話、『初めて披露する歌』ってことだ」

 

 質問をしてくるベルに俺は意味を分かりやすく教えた。

 

 まさか、オラクル船団で得た知識が此処で役立つとは完全に予想外だった。この世界では全く無縁だと思っていたんだが……神ロキ、ではなく天界にいた神々は知ってるようだ。

 

 レフィ姉さんは気の毒に。あの様子からして、意味も分からないまま主神が強制的にやるよう命じられたんだろう。もう災難だったとしか言いようがない。

 

 都市最大派閥の主神と呼ばれてるロキも、色々と傍迷惑なお方かもしれない。ミアハ様とはえらい違いだ。

 

「ねぇ、この後どうする?」

 

「……帰ろう。レフィ姉さん達の所為で、急にどっと疲れが出た」

 

「そ、そうだね……」

 

 本当は中層手前まで行く予定だったが、予想外の出来事が起きてしまった為、急遽帰還する事にした。

 

 レフィ姉さん、色々と大変だけど頑張ってくれ。別のファミリアである従弟の俺にはそれしか言えない。

 

 もし俺が【ロキ・ファミリア】に所属していたら、それなりのサポートは出来たんだけどなぁ。




次回もダンメモ編を更新予定です。

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