少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「ふぁぁ……」
いつもならナァーザさんが『元気ならダンジョンで稼いできて』とお決まりの台詞が来るが、今回は暫く静養してていいと言われた。先日あった『中層』脱出の件で気遣ってくれているので。
他にもある。中層で倒したモンスターの魔石やドロップアイテム、更に18階層で得た大量の
特に一番高かったのは、17階層で倒した
ただ、俺が一人でその魔石を見た担当アドバイザーのミィシャさんに疑問を抱かれた。嘘を吐くのは忍びなかったので、彼女にだけ真実を話した。それと同時に、俺が『Lv.2』にランクアップした事も含めて。
余りにもぶっ飛んだ内容で信じられなかったのか、ミィシャさんは放心状態になり、数秒経ってすぐに絶叫しながら仰天した。偶々近くで聞いていたベルの担当アドバイザーのエイナさんも一緒に。
その後に二人は俺に謝った後、個別用応接室に案内された。ランクアップはベルの件もあって辛うじて受け入れるも、一番の問題は俺一人で
『信じる信じないのはそちらの自由です。けど、俺一人で
嘘は一切言ってないと分からせる為にギルドの主神――ウラノス様に確認して貰うよう促した。ギルド職員の二人にそこまでの権限がないのか、取り敢えずと言った感じで漸く信じてくれた。どうやら神に嘘を確認しろと言ってきた俺の言葉が効いたようだ。相手の嘘を見抜ける神の名を堂々と持ち出した事で。
因みに俺がランクアップした事は、後日公開される予定となっている。同時に
その【ロキ・ファミリア】に関しては他にもあった。18階層でアイズと別れる前にした個人的な約束を。
俺が
「リヴァン、何故か分からないけど【ロキ・ファミリア】の【剣姫】が来たよ。貴方に用があるみたい」
――いたと思っていたが、実はそうでもなかったみたいだ。
店番をしてるナァーザさんにそう呼ばれた俺は、来客の対応をしようと足を運ぶ。彼女の言う通り、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインがいた。俺の約束をちゃんと守っているみたいで、手にはついさっき買ったばかりの『
「数日振りですね、アイズ。俺はてっきりもっと早く来るかと思っていたんですが」
「ごめん。帰還した後、急な用事が入って行けなかった」
「そうでしたか。ならば敢えて訊かないでおきます」
ナァーザさんの仕事の邪魔をしないよう、俺はアイズを連れて店の外へと出た。今は少し離れた所におり、周囲に人は全くいない。本当に一人で来たかの確認も込めて外に出たが、どうやら本当に一人で来たみたいだ。
急な用事とは恐らく【ロキ・ファミリア】内の事だろうと思い、そこまで詳しく訊こうとはしない。他所の【ファミリア】にいる俺が首を突っ込んでいいものじゃないし、アイズがそんな簡単に教えてくれるとは思ってもいないので。
「約束は守った。だから今度はリヴァンが約束を守る番」
「分かってますって」
俺としては、ここまで律儀に果たそうとする彼女に驚いていた。もしあのフィン・ディムナだったら、何かしら理由を付けて情報収集するだろう。
「そちらの推測通り、17階層の
「!」
知りたかった答えをあっさり教えると、アイズは信じられないと言わんばかりに目を見開いた。
ここで倒してないと嘘を吐いたらどんな反応をするか、それはそれで見てみたかったが、取り敢えず本当の事を教えている。
「……リヴァンが倒したって言う証拠はある? たとえば魔石とか」
「残念ですが、もうそれはギルドで換金しました」
本当だったらアイズが来るまで保管しておくつもりだったが、ナァーザさんが早く売るよう催促されてしまった。一応もう少し待って欲しいと懇願したが、『魔石はさっさと売る』と団長命令で強制売却となってしまった。
あの人に
「明確な証拠が無いから、俺の言った事が本当かどうか判断が付かないでしょう?」
「………………」
俺の問いに、アイズは無言のままコクンと頷く。
そりゃそうだ。いくら本当だとしても、そう簡単に信じる事なんか出来ない。俺が逆の立場だったら絶対にそうしてる。
「だから貴女にだけ先に教えます。
「!!」
もう一つの情報を教えると、アイズは再び目を見開いた。
これも明確な証拠が無いけど、今回はギルドと言う信用が出来るものがある。あそこで虚偽の申告をすれば
だからギルドが真実だと情報公開すれば、周囲は納得するだろう。尤も、他の【ファミリア】や冒険者達はそう簡単に受け入れるとは思えないが。
「ベルだけじゃなく、リヴァンもランクアップって……どうやったら、そんなに早くなれるの?」
「いや、どうやったらと言われても……」
「………リヴァン、一度私と戦って」
「はい?」
何を血迷ったのか、アイズはいきなり俺と戦えと言ってきた。いきなりの事に俺は目が点になっている。
「ちょ、ちょっと待って下さい。何でそんな結論になったのか教えてもらえませんか?」
「君と戦えば何か分かるかもしれないと思って」
「そ、そんな理由で、ですか……」
いくら何でもそれは暴論と言うべきか、非論理的と言うべきか……無茶苦茶過ぎる答えだ。
もしかしてアイズって結構単純だったりする? いや、もしくは脳筋?
まぁどっちにしても、俺のアイズに対する印象がガラリと変化する事に変わりないが。
前にも言ったが、アイズは世間で寡黙で冷静沈着な女性剣士となってる。ジャガ丸くん好きに加え、実は
ついでに、レフィ姉さんが話していた(惚気同然の)アイズ像は俺の中で綺麗さっぱり消えてる。特に『理知的で完璧な女性』と言った部分が。どうやらあの人はアイズを崇拝する余り、少しばかり目が曇っているようだ。
………とは言え、まさか向こうからそう言ってくれたのは、俺としても大変好都合だった。
第一級冒険者と言えば、【フレイヤ・ファミリア】にいる
だから、こんな貴重な展開は願ってもない。オラクル船団に渡り、エトワールクラスとなった俺が第一級冒険者にどこまで通用するか確かめたかった。
因みに18階層で戦った上級冒険者達は全然強くなかったから、不完全燃焼も同然だった。余りの弱さに拍子抜けしてしまう程に。
本当ならアイズとすぐに戦いたいところだが……生憎とそれはすぐに叶わない。
「えっと、非常に嬉しいお誘いですが、出来ればまたの機会にしてもらえませんか? もし戦えば、今日の夜に思いっきり支障をきたしてしまいますので」
「何か予定が入ってるの?」
「はい。今夜はベル達と宴会をする予定でして。良かったらアイズも【ロキ・ファミリア】の代表として参加しますか?」
さり気無くアイズに俺達の宴会に来てもらうよう頼んでみた。
もし来てくれたら、絶対にベルが喜ぶどころか仰天してひっくり返るだろうなぁと思いながら。
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