少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
会場全体が大爆笑の渦になった後、同様に笑っていた神アポロンは特例として俺の参加を認めてくれた。
本来なら【ヘスティア・ファミリア】じゃない他所の俺は参加出来ないが、自分を心底笑わせてくれたお礼だそうだ。寧ろ、やれるものならやってみろと言う余裕の表れだった。
確かに普通に考えれば、俺一人加わったところで、かなりの団員達がいる【アポロン・ファミリア】の勝利は揺るぎはしない。総力戦となる
神アポロンも当然それを分かっているから、俺の参加は友達のベルを助けようとする無意味な行動としか見てないだろう。
それどころか――
『リヴァン・ウィリディス。参加すると言うなら、我々が勝ったら君も私の【ファミリア】に入ってもらう。私の前であんな事を言ったのだから、当然それくらいの覚悟はあるんだろう?』
まるで飛んで火に入る夏の虫みたいに思ってたみたいに、嫌らしい笑みを浮かべながら軍門に下れと言い放った。
あの笑みに内心辟易しながらも、それで構わないと言った。その瞬間、『君も一緒に可愛がってあげよう』と一段と気持ち悪い笑みで言われた事で、余計負けるわけにはいかないと改めて決意した。
俺としても、負けたら見捨てるという無責任な事をするつもりは毛頭ない。一度関わったら最後まで付き合うつもりでいる。と言っても万が一に負けてしまった場合、犯罪者覚悟でベルとヘスティア様をオラリオから逃がす予定だ。あの変態に好き放題されるくらいなら、アークスの力をフル活用して御法度である神殺しも辞さない。
とまあ、そんなIFの事はどうでもいいとして、今は目の前の事を考えなければならなかった。
今回俺がやった事は、ミアハ様達に相談一切無しの完全な独断行動だ。只でさえ俺は色々と騒ぎを起こしてるから、これ以上(ナァーザさんに)迷惑が掛からないよう、俺はベル達と行動すると決めた。
一応、神アポロンにも二人は一切関係無いと言ってある。向こうは【ミアハ・ファミリア】に余り警戒してないようで、俺の退団儀式まで一切手を出さないと誓ってくれた。
これには流石のミアハ様も口を挟もうとしていたが、どうにか留まるよう俺の方で説得した。ナァーザさんの援護もあって、仕方ないという感じで何とか収まっている。
因みにナァーザさんが俺の説得に手を貸してくれた理由は至って簡単だ。最近勝手な事ばかりしてる俺への罰として、団長命令で『
俺からすれば願ってもない事だったので、何一つ文句を言うこと無く受け入れた。逆にベルとヘスティア様が凄く申し訳なさそうに見ていたが、そこは気にしないようにと俺の方で言ってある。
そして、『神の宴』から一夜が明けた。
「リヴァン、僕達としては嬉しいんだけど、本当に良いのかい? 君は違う【ファミリア】なのに」
「気にすんなって。あの場で行動しなければ、逆に俺が後悔してたからな」
場所は【ヘスティア・ファミリア】の
「でもリヴァン君、勝算はあるのかい? 君が強いのはこの前の18階層で分かってはいるけど……ベル君が調べた際に【アポロン・ファミリア】は、かなりの人数で冒険者の質も高い。あそこで戦った上級冒険者達より強い筈だよ」
ヘスティア様が不安そうに、18階層で戦った上級冒険者と【アポロン・ファミリア】を比較していた。
と言うかベル、いつの間にか調べていたんだな。多分だが、酒場の件があってギルド辺りで調べたんだろう。
「まぁそこはご安心ください。俺が全力でベルを援護しますから」
「う~ん、そう言われてもねぇ~……」
俺がダンジョンで活躍したのは知ってても、相手はモンスターじゃなくて冒険者。本能で襲い掛かるモンスターと違い、様々な手段を用いて戦おうとする冒険者では勝手が違う。ヘスティア様が不安がるのは当然だろう。
まぁ俺としても、アークスの力を最大限に使って絶対に勝てるとは言えない。【ヘスティア・ファミリア】や【ミアハ・ファミリア】と違って、【アポロン・ファミリア】は遥かに格上の相手だ。下手をすれば負ける可能性だってある。
それに加え、俺は最近腕が鈍りがちだった。この前の黒いゴライアス戦の時は全力で戦ったが、思った以上に戦えなかった。
理由としては、ダンジョン上層や中層のモンスターが簡単に倒せてしまうほど弱い相手だったので、歯応えのある相手と全く戦えてない。オラクル船団にいた時は、ダーカーという強敵と戦う日々を送ってたから大して困ってなかった。修行が必要な時はクーナさんやアイカさんに頼んで貰った事もある。
けど、このオラリオで自分より格上の人と修行出来る相手がいない。作業同然のダンジョン探索を続けて腕が鈍っていくばかりだ。これは本格的にどうにかしないと不味い。
自分が知ってる格上と言えば、【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】だ。余りに有名過ぎる【ファミリア】だから論外だ。
前者は別として、後者の方は何とかお願い出来るかもしれない。あそこの団長や幹部達は俺やベルにそれなりの興味を抱いてるから、もしかすれば多少のお願いは通るかもしれない。尤も、それに見合う代償を用意しなければ、向こうは絶対に首を縦に振ってくれるとは思えないが。
すると、ベルは何か思い出したようにこう言った。
「あっ……リリとヴェルフに
忘れてたと言うベルだったが、俺は大して問題無いと思う。
あの会場に神ヘファイストスがいたから、戻った後に教えていると思う。リリルカも恐らく今日になって、
恐らく後数時間経てば、向こうから血相を変えてこの
「大変だベル、ヘスティア様! リリスケが【ソーマ・ファミリア】の連中に連れて行かれた!」
『!』
かと思いきや、ヴェルフからの予想外の報告に俺達は目を見開いた。
「リ、リヴァンがベル・クラネルの【ファミリア】の助っ人として、【アポロン・ファミリア】の
場所は変わって【ロキ・ファミリア】の
団員達が集まる応接室に、リヴェリアが昨夜の『神の宴』について話していた。
それを聞いたレフィーヤ・ウィリディスが仰天し、立ち振る舞いを無視して詰め寄っている。
因みに先程までリヴェリアがリヴァンにダンスの誘いをされて踊った事を教えた瞬間、聞いていたエルフ達は憤慨していた。特にアリシア達が『なんて不敬な!』と怒りを露わにする程に。尤も、そこはリヴェリアの方でフォローして何とか事無きを得ている。
「落ち着け、レフィーヤ。全く、リヴァンの従姉ならもう少し冷静になれ」
「しかし、あの小僧は一体何を考えておるんじゃ? いくら『Lv.2』にランクアップしたとは言え、一人加わったところで『アポロン・ファミリア』相手に勝てるとは到底思えんのじゃが」
ソファーの上に座りながらレフィーヤを宥めるリヴェリアに、隣にいるドワーフのガレスが不可思議そうに言った。
端から見れば、リヴァンの行動は血迷ったとしか思えない行動だ。彼もそれくらいの事は分かっている筈だが、何故そんな事をしたのかが全く理解出来ない。
「見捨てたくなかったからじゃないの? あの子、アルゴノゥト君と凄く仲が良い友達みたいだし」
「いくらそうでも、
当てずっぽうに言うティオナに対し、彼女の姉であるティオネが指摘するように言い返す。
仲が良いと言っても、【ファミリア】同士の戦いになれば関わろうとはしない。それは却って己の主神や団員達に迷惑を被ってしまうから、基本的に関わらない事になっている。
けど、リヴァンは無視するように介入した。完全に周囲の事を全く考えてない迷惑行動となるから、誰に何を言われても文句が言えなくなってしまう。
「んなクソエルフなんかほっとけ。自分から言い出したんだろ?」
全くどうでも良さそうに言い放つベート。
以前の酒場の件で口が回る奴と思っていた彼だったが、今回の件を聞いて完全に呆れ果てている。たかが『Lv.2』にランクアップしたお調子者のザコと認定していた。
「んー……あの彼が、何の勝算もなく大胆な発言をしたとは到底思えないね」
一通りの話を聞いていたフィンはこれまでの出来事を思い出そうとする。
前々回の遠征後で『豊饒の女主人』でベートが暴言を吐いた後、リヴァンが【
まともに話したのはまだ二回だけだが、それでもフィンはリヴァンを頭の回転が早いエルフと見ている。だから今回あった『神の宴』で起こした行動は、何か考えがあって動いたんじゃないかと思っている。
自分が助っ人要因になって【ヘスティア・ファミリア】を勝たせる、と言うリヴァンの考えをリヴェリアから聞いたが、きっとそれだけではないとフィンは思っている。何か他にも勝つ為の策を考えているんじゃないかと。
「わ、私、リヴァンに会って考えを改めるように説得をして――」
「駄目だよ、レフィーヤ」
団員に早まった行動をさせないと、考えに没頭していたフィンは即座に切り替えて阻止した。
「君が心配する気持ちは分かる。だけど今の彼はヘスティア派に加わっているから、手を貸すような真似はしないでくれ」
「ち、違います! 私はただ、
「彼は自らの意思で参加したんだ。君がそうしたところで撤回するとは思えない。それにこれはあくまで他派閥の問題だ。僕達が介入できるものじゃない」
「う……」
釘を刺されたレフィーヤは押し黙ってしまう。
フィンの言う通り、今回の
「それとアイズも同様だよ。君も間違って介入しないようにと、この場にいないロキから既に厳命されているからね」
「うん……わかった」
まるで行動はお見通しと言うように釘を刺すフィンに、アイズは小さく頷くしかなかった。
アイズとしてはベルとリヴァンの手助けをしたいのが本音だ。既にもう知らない仲ではない上に、彼女としては二人が神アポロンに連れて行かれるのを考えるだけで嫌な気持ちになってしまう。あの気持ち悪い笑みを見て猶更に。
因みにロキはフィンの言う通り、現在は
すると、偶然に開いている応接室の窓から騒がしい声が聞こえた。主に相手を罵る叫び声が。
フィン達は気になって声がした方へ視線を向けていると、一人の団員が応接室に入って来た。
「だ、団長! 【リトル・ルーキー】とレフィーヤの従弟が来てるっす!」
「何だって?」
団員――ラウルからの報告にフィンだけでなく、この場にいるアイズ達も同様に目を見開いていた。
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