少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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少年エルフ、【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ行く

 ヴェルフからの情報にベルとヘスティア様だけでなく、一緒に聞いていた俺も全く予想外だった。何故リリルカが【ソーマ・ファミリア】に連れていかれたのかと。

 

 聞いた話によると、二人は今日に昨夜の宴で戦争遊戯(ウォーゲーム)を知り、大慌てで廃教会へ向かおうとしていた際、【ソーマ・ファミリア】の一団と遭遇したそうだ。

 

 そこで団長と思わしき男が前に出てリリルカに戻って来いと強要され、嫌だと言った瞬間にヴェルフや【ヘスティア・ファミリア】に総攻撃を仕掛けると言う最悪な宣告をして。

 

 最初は何故そんなバカげた事をするのかと思った。いくら【ヘスティア・ファミリア】が零細とは言え、何の理由も無しに襲い掛かったらギルドからの罰則(ペナルティ)が下される事ぐらいは分かっている筈である。

 

 けれど、【ソーマ・ファミリア】には総攻撃を仕掛ける理由があるようだ。死んだと思っていた筈のリリルカが、実は【リトル・ルーキー】のベルを筆頭に誑かした連中に(かどわ)かされていたから、然るべき報復を受けて貰うと言う正当な理由が。

 

 リリルカは何もかも察したように諦観の表情となり、団長の男に向かって条件を言った。主神のもとに帰る際、ベル達に一切手を出すなと。その懇願に向こうは『戻ってくるなら構わない』とあっさり了承したそうだ。

 

 一緒にいたヴェルフは最初抵抗しようとするが、リリルカが必死になって手を出さないよう懇願されただけでなく、武装してる【ソーマ・ファミリア】の圧倒的な人数を前に諦めざるを得なかった。無力な自分を恨みつつも、ベル達がいる本拠地(ホーム)へ来て報告しに今に至る。

 

 俺と一緒に聞いていたベルは当然激昂し、動き出そうとした。

 

 けど、俺は腕を掴んで阻止する。

 

「待てベル、何処へ行くつもりだ? 今は戦争遊戯(ウォーゲーム)が控えているのに」

 

「リリを助けに行くに決まってるだろう!」

 

「彼女がやった事を無駄にする気か? もしもそうしたら最後、【ソーマ・ファミリア】が本格的に動くぞ」

 

 奴等からすれば格好の的になるだろう。諸悪の根源扱いしているベルが行けば、正当な理由で迎撃出来るから、ギルドからの罰則(ペナルティ)は回避される。それどころか逆に【ヘスティア・ファミリア】を訴えて、団員(リリルカ)を誑かした代償を支払わせる行為をするかもしれない。

 

 しかし俺には分からなかった。ベル達が【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)が控えてる中、何故【ソーマ・ファミリア】が今になってリリルカを取り返そうと動き出したのかが。

 

 そもそも向こうの団員達から用済みとされて死亡扱いになっていると聞いた。だと言うのに、一体何処で生存情報を知ったんだろうか。

 

 すると、ヴェルフが思い出したような表情になって俺達にこう言った。

 

「そういや、あそこの団長が『アポロン派から依頼を受けた』とか言ってたような……」

 

「何だって! アポロンの奴、そこまでしてベル君を奪うつもりだったのか……!」

 

 ヴェルフからの更なる情報にヘスティア様が驚愕した。

 

 どうやら奴等が動いたのは【アポロン・ファミリア】が絡んでいたようだ。もしかすれば、変態男神(アポロン)が事前に協力の依頼をしたのかもしれない。どこかで入手したリリルカの生存情報と報酬を出すから、自分達に協力しろと言った感じで。

 

 あの変態男神(アポロン)が用意周到に戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けたんだから、それ位の事はやりかねない。俺の推測が正解であるかどうかは分からないが。

 

 今のところは【アポロン・ファミリア】の思惑通りに動いているって事か。ついでに【ソーマ・ファミリア】も。

 

 ベル奪取の為にここまでやる神アポロンの嫌らしい笑みを想像しただけで段々と殺意が湧いてくる。神殺しをしたいと思うほどに。

 

 俺の考えはどうでも良いとして、問題はベルだ。リリルカを助けに行きたいと、さっきから暴れている。

 

「放してリヴァン! 早くリリを助けに行かないと……!」

 

「だから落ち着けって! 彼女は戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わってからでも助けに行けば――」

 

「リリは僕の大事な仲間なんだ! 後回しになんか出来ないよ!」

 

「!」

 

 それを聞いた俺は何も言い返せなくなってしまう。

 

 考えてみればそうだった。例え一時的でもベルは仲間を見捨てる行為なんか絶対にしない。そう言うところが良いから俺はベルの手助けをしている。

 

 俺だってもしも友達のベルが誰かに誘拐されたなんて知ったら、止めようとする周囲を振り切って真っ先に助けに行こうとするだろう。

 

 そんな中、ヘスティア様は意を決したように言う。

 

「待つんだベル君、君はリヴァン君と一緒にやるべき事をやってくれ。サポーター君はボクが必ず助ける!」

 

 相手が己の主神だからか、ベルはやっと思い止まってくれた。

 

 その後に彼女はベルにいつもの武器(ナイフ)を置いていくよう言い、ヴェルフにリリルカ救出に協力を申し出た。反対する理由が一切ないヴェルフはやる気満々だ。

 

 とは言え、流石に人数が少な過ぎるから【ミアハ・ファミリア】の他、【タケミカヅチ・ファミリア】の団長――桜花にも応援を要請するよう言っておいた。

 

 これにはヘスティア様とヴェルフが、何故今回の件と無関係な桜花に頼むのかと聞かれた。『彼は俺に個人的な借りがあるから、これで相殺(チャラ)にしようと思いまして』と返答し、聞いた二人は何となく察しながらも俺に感謝し、行動に移ろうとする。

 

 二人が動き出し、俺もベルを連れてある場所へ行こうとする。従姉がいる都市北端にある塔へ向かって。

 

 

 

 

 

 

「リヴァン、本気であの人達に頼むの?」

 

「勿論だ。俺やベルが知ってる強い【ファミリア】と言えば、あそこしかないからな」

 

 俺とベルが移動してる最中、都市中は既に大騒ぎとなっていた。理由は戦争遊戯(ウォーゲーム)が開催されるからだ。

 

 恐らく昨日の宴に参加した神々が吹聴したんだろう。加えて冒険者達や市民もその勢いに火が点き、今はもう多くの者達に知れ渡っているに違いない。

 

 娯楽を求める神々のやる事に呆れながらも、俺はベルの記憶を頼りに従姉が属する本拠地(ホーム)を目指す。

 

 少し道に迷いながらも、漸く【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)――『黄昏の館』に辿り着いた。

 

「止まれ、貴様ら!」

 

「一体何の用だ!?」

 

「フィン・ディムナさんにお話がありますので、お取次ぎ願えませんか?」

 

 門番と思われる男女二名が俺達を警戒する中、俺は面会を頼んだ。

 

 こちらの頼みに対し、男性の団員は気付いたように眉を顰めた。

 

「お前達、リヴァン・ウィリディスと【リトル・ルーキー】……? いくら片方がレフィーヤの身内とは言え、他所の人間が団長と会おうなど、どう言う了見だ!?」

 

 俺達の特徴から見抜いたのか、門番は他派閥である俺とベルに激昂する。生憎と俺にはそんなの知った事ではない。

 

 一先ずフィン・ディムナと話がしたいと何度も言うが、全く聞き入れてくれなかった。それどころか騒ぎを聞きつけ、本拠地(ホーム)にいた団員達が段々と正門前に集まって来た。

 

 ざっと見ただけで二十人ぐらいで、その集団は俺達の目の前で半円を作った。門番があらましを伝えると、剣呑の雰囲気が形成されていく。

 

 その直後に向こうは俺達を罵り始めた。厚顔無恥、恥晒しめ、よくもそんな身勝手をと。

 

 特にエルフの団員達は俺に対する辺りが凄く厳しい。俺がリヴェリアに馴れ馴れしい態度を取ってる上に呼び捨てにしてるから、ここぞとばかりに非難している。

 

 こうなってるのは恐らく、【ヘスティア・ファミリア】が戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加するのを知って、俺達がフィンに力を借りる為の交渉をしに来たと捉えたんだろう。交渉するのは間違ってはいないが、奴等が思ってるような事じゃない。

 

 彼等の剣幕にベルが本気で怯えており、身体が後退しかけている。それを見た俺は肩の上に手を置いて、大丈夫だと言って安心させる。

 

「はぁっ……そちらが俺達に対して、どう言う風に見てるのかがよく分かったよ。以前の失態を全く顧みてないクソったれな【ファミリア】だって事がな」

 

『なっ!』

 

「いいっ!」

 

 俺からの罵倒返しに団員達は絶句し、聞いていたベルもギョッとしていた。

 

 こういった理由は勿論ある。【ロキ・ファミリア】は前々回の遠征で、ミノタウロスを上層に逃がした失態を起こした。それで俺とベルは被害を受けたが、ベート・ローガはあろう事か宴会で酒の肴にしていた。

 

 既にレフィ姉さんの謝罪で許しているが、この連中はソレについての後ろめたさが全くなかった。というより顧みていない。あの件はもう終わった事だと言われたら、それまでとなってしまうが。

 

「き、貴様! 我々【ロキ・ファミリア】に対する侮辱は許さんぞ!」

 

「こちらの話を一切聞かず、好き勝手に口汚く非難するアンタ等に言われたくない。お互い様だ」

 

「リ、リヴァン、これ以上は不味いって……!」

 

 ベルが俺を止めようとするが無視していた。ここで退くわけにはいかない。

 

「お前達のような弱小【ファミリア】風情が、我々を敵に回したらどうなるのか分かっているんだろうな!?」

 

「挙句には脅迫行為をする、か。リヴェリアが知ればどうなる事やら」

 

「貴様、またしてもリヴェリア様を呼び捨てに!」

 

「それ以上の不敬は許さんぞ!」

 

 俺の台詞にリヴェリアを崇拝してる団員の同胞(エルフ)達が怒りと同時に殺気立っていた。これで本気で襲い掛かってくれば、非常に好都合な展開だ。

 

 王族(ハイエルフ)のリヴェリアに対する不敬を働いたという理由で同胞(エルフ)が、矯正と言う名の暴行をしようと動いたら、俺は一切無抵抗のまま被るつもりでいる。

 

 そんな光景を館にいる彼女が知ったらどうなるだろうか。絶対に許さない筈だ。一人の冒険者として接してくれる数少ない同胞(エルフ)を、リヴェリアは何かしらの事をしてくれる。

 

 と言っても、これはちょっとした賭けでもある。本当にリヴェリアが動いてくれるかどうか分からないので。

 

「不敬なのは貴方達じゃないんですか? 近くにいながらも、対等に接して欲しいリヴェリアの気持ちを全く理解してないんですから」

 

「ちょ、リヴァン!」

 

 この瞬間、同胞(エルフ)達の堪忍袋の緒が切れた。何故なら表情が完全に怒り狂っているから。

 

「もう許さん!」

 

「下賤な貴様如きがリヴェリア様の何が分かる!?」

 

「レフィーヤの従弟だからある程度見逃していたが、我慢ならん! この場で成敗してくれる!」

 

「お、おい、よせお前等!」

 

 簡単に乗ってくれる同胞(エルフ)達に対し、俺は本当に単純な奴等だと思った。

 

 他の団員達は止めようとするも、全く聞く耳持たずだった。

 

「あわわわわ……!」

 

 同胞(エルフ)達の殺気にベルは完全に逃げ腰となっている。それでも逃げないのは俺が近くにいるからだ。

 

 そして俺に襲い掛かろうとするエルフ達は――

 

「お前達、何をやろうとしている!?」

 

 突然響き渡った声に誰もが止まった。

 

 それには同胞(エルフ)だけでなく他の団員達も静まっている。

 

 館から出たのは、【ロキ・ファミリア】の副団長――リヴェリアだった。昨日見たドレス姿でなく、ダンジョンで見たローブを身に纏っている。

 

 さて、これでやっと話の出来る人物が出てきてくれた。ここからが本番だ。

 

 【ロキ・ファミリア】の方々――特に同胞(エルフ)達――には感謝しないといけないな。俺の思惑通りに動いてくれたんだから。




ちょっと無理な流れかと思いますが、どうかご容赦を。

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