少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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原作とは違う流れです。


少年エルフ、【ロキ・ファミリア】と交渉する

 リヴェリアの登場により、俺とベルは漸く館の中へ案内される事となった。

 

 俺達を招く事に団員達は反対するが、リヴェリアから一喝されて委縮する。直後、「お前達には後で話がある」と低い声で言われて顔面真っ青になったのは言うまでもない。

 

 案内された応接間には、【ロキ・ファミリア】の首領フィン・ディムナ、主要幹部のガレス・ランドロック、幹部のヒリュテ姉妹にアイズ・ヴァレンシュタインやベート・ローガ、そして従姉のレフィ姉さんがいた。

 

 都市最大派閥の主要メンバーが勢揃いしてる事により、ベルは気圧されそうになるも、隣にいる俺が「虚勢でもいいから怯えるな」と言っておいた。それによって何とか【ヘスティア・ファミリア】の代表として振舞おうとしている。

 

 そして――

 

「全く、何なんですかあの連中は!? 用件を言っても聞き入れないどころか、厚顔無恥だの恥晒しだのと好き勝手に罵った挙句、危うく暴行されるところでしたよ! あれが【ロキ・ファミリア】の流儀なんですか!? いくら都市最大派閥だからって、俺達が弱小【ファミリア】という理由であんな品性に欠けた行為をやるのは冒険者以前に、人として大問題ですよ!」

 

 ソファーに座って早々、俺は先程の団員達についての行動を問題視するように捲し立てた。

 

 零細の【ミアハ・ファミリア】が、大物派閥である【ロキ・ファミリア】にそんな事をするのは非常に恐れ多い行為だ。下手をすれば手痛い竹箆(しっぺ)返しを喰らう事になるだろう。

 

「返す言葉もない。【ロキ・ファミリア】の団長として、心から謝罪する」

 

「あの大馬鹿者達には、後で私達が厳しく言い含めておく」

 

「本当に、本当にすまなかった」

 

 団長のフィン・ディムナと副団長のリヴェリアが頭を下げ、ガレス・ランドロックも同様に謝罪の言葉を述べていた。

 

 オラリオを代表する都市最大派閥の一つである三巨頭が、揃って謝罪をするのは極めて異例の事態だ。他の【ファミリア】が知れば驚愕するだろう。

 

 しかし、向こうの団員達が来客として来た俺とベルに不誠実な対応をしたどころか、挙句の果てには暴行まで行おうとした。普通に考えれば無礼極まりないどころか、自分達の評判を落とす下劣な行為だ。

 

 こんな事が世間に知られれば格好の的になり、信頼されているギルドからも非難の声が上がるだろう。都市最大派閥と言うビッグネームが付いた【ロキ・ファミリア】なら猶更に。

 

 フィン・ディムナ達は当然そうなる事になれば非常に不味いと分かっているから、炎上させないよう穏便に解決する緊急措置として自ら頭を下げている。それは組織を束ねる長として当然の行動だ。世間に向けた謝罪より、当事者内で早々に解決させた方が被害は最小限に収まるから。

 

 俺としては、ここまで好都合な展開になるとは思いもしなかった。最初はフィン・ディムナに会い、アイズ・ヴァレンシュタインや他の幹部に修行相手をさせる為の貸し出し要求をする為として、俺に関する情報をカードとして切ろうと考えていた。内容としては、俺が一人でゴライアスを倒した方法や、リヴェリアが気になってた魔法(テクニック)についての仔細だ。

 

 しかし、もうそんな心配は無い。【ロキ・ファミリア】側が自ら失態を演じてしまったから、此方が要求すれば簡単に受け入れるだろう。尤も、余り調子に乗った要求をすれば逆に此方が危うくなってしまうが。

 

 ついでに言っておくと、俺が感情的になって捲し立てているのは、有利に進める為の演技をしてるだけに過ぎない。相手側が完全に非があって強く出れないと分かった際、ここぞと言う時に強く訴えれば何も言い返せなくなるとカスラから教わったので。クーナさん曰く『陰険なやり方』だそうだが。

 

 それは別として、三巨頭の謝罪を見ていた幹部のアイズ達は色々な表情をしていた。

 

 ティオネさんは「あのバカ共、団長に頭を下げさせやがって……!」と怒りの表情で全身をプルプルと震わせ、それを見たティオナさんが何とか宥めようとしている。アイズとレフィ姉さんは非常に申し訳なさそうな表情で俺達を見ている。ついでにベート・ローガは何を考えてるのかは分からないが、そっぽを向きながら舌打ちをしていた。

 

 因みに俺の隣に座ってるベルだが、相手が有名な【ロキ・ファミリア】だからか、三巨頭からの謝罪に困惑する一方だ。多分だが、『自分は謝られる事はしてないのに』と思っているんだろう。

 

「………ふぅっ。本当でしたらあの連中の行動をギルドに報告したいところですが、【ロキ・ファミリア】を代表する方々が自ら謝罪してくれましたので止めておきましょう。それにリヴェリアが俺に謝罪したと他の同胞(エルフ)達に知られたら、色々と面倒な事になるでしょうし」

 

「こちらとしては非常にありがたい。感謝する、リヴァン・ウィリディス」

 

「お詫びにはならんが、こちらとしては可能な限り君達の要求に応えるとしよう。と言っても、度が過ぎる要求をされても困るが」

 

 リヴェリアからの台詞を聞いて、『その言葉を待っていた』と内心笑みを浮かべた。

 

 それを何とか出さないよう表情を抑えながらも、俺は念の為に確認しようとする。

 

「俺達のような弱小【ファミリア】相手にそんな事を言っても良いんですか、リヴェリア? 下手をすれば足元を見られるかもしれませんよ?」

 

「少なくともお前が従姉(レフィーヤ)と争う真似はしないと思ってるが」

 

「……………………」

 

 指摘された俺は何も言い返せなかった。これは即ち肯定の意味でもある。

 

 やっぱり見抜かれていたか。レフィ姉さんが突然名指しに戸惑っているも、俺は敢えて気にしないようにした。

 

「因みにベル・クラネルはどう思ってるんだい?」

 

「え!? ぼ、僕は別にそんな事は……!」

 

 フィン・ディムナに突然声を掛けられたベルは戸惑いながらも、やらないと首を横に振っている。

 

 ベルに多大な要求をさせない為の釘を刺されてしまったか……本当に目の前の団長さんは油断出来ないな。

 

 二人に言質を取られてしまった以上、俺とベルは【ロキ・ファミリア】に多大な要求が出来なくなってしまった。向こうからすれば、俺達はまだまだ交渉が下手な青い小僧達だと思ってるだろう。同時に被害も何とか抑える事が出来たのは不幸中の幸いだと。

 

 まぁ、ハッキリ言ってそんな事は非常に如何でもいいし、フィン・ディムナ達が思ってるような要求をする気なんか微塵も無い。俺としては、カードを切る必要がなく向こうに要求出来る立場を得れば、それだけで充分過ぎるほどに満足している。

 

 一先ずと言った感じで、俺は話題を変えようと、こちらの要求内容に移る事にした。

 

「念の為に伺いますが、ディムナさんは既に戦争遊戯(ウォーゲーム)についてご存知ですよね?」

 

「ああ。君達が此処へ来る前、リヴェリアから一通り聞かせてもらったよ」

 

「そうですか、ならば話は早い。フィン・ディムナさん。戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる前日まで、そちらの幹部数名を貸してもらえませんか? 勿論これは俺とベルからの要求です」

 

「へぇ」

 

『!』

 

 要求内容を聞いてフィン・ディムナは笑みを浮かべたままだが、控えているアイズ達幹部勢は目を見開いていた。

 

「此方の幹部をご所望とは、それはそれで多大な要求だね。出来れば理由を聞かせてもらってもいいかな?」

 

「勿論です」

 

 理由を求められた俺は簡潔に説明する。

 

 今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)は【ヘスティア・ファミリア】のベル+助っ人の俺が戦う相手は、百名以上の団員がいる【アポロン・ファミリア】と相手をする事になっている。どちらが勝つかなんて聞くまでもないだろう。

 

 数を覆す為の策……とまでいかないが、ベルと俺は複数相手の対人戦――上級冒険者との戦闘経験が不足している。それを補う為として、【ロキ・ファミリア】の幹部に修行相手になってもらおうと考えた。自分達より遥かに格上の第一級冒険者なら、【アポロン・ファミリア】の下級・上級冒険者の数十人分以上の戦闘経験を得られるので。

 

 しかし、いくら第一級冒険者から戦闘経験を積んだとしても、それで確実に勝てるとは思ってない。はっきり言って苦肉の策どころか、無謀な考えでもある。他の【ファミリア】から見れば馬鹿げていると笑われるだろう。

 

 それでも何もせず負けるわけにはいかないから、無理であってもやらないわけにはいかない。俺達はもう既に今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)で圧倒的不利である事を分かっている上に、後にも引けない状況になっている。負けてしまえば俺達は変態男神(アポロン)に、身体を好き放題に犯されると言う最悪な未来が待っているので。

 

 因みに俺が神アポロンに好き放題されると話した際、【ロキ・ファミリア】一同は揃って眉を顰めていた。それどころか若干身震いしているのもいる。あとレフィ姉さんは虚ろな目になりかけていたが、敢えて気にしないでおいた。一体どこまで想像したのやら。

 

「――という訳で、そちらの幹部に俺達の修行相手として求めているんです。これでご納得いただけましたか?」

 

「ん~……まぁ、君達が絶対に負けたくない気持ちはよく伝わった。特に負ければ色々な意味で終わってしまう事が、ね」

 

 苦笑と同時に冷や汗を流すフィン・ディムナは、俺達の熱意を理解してくれたようだ。と言っても、あくまでそれだけだが。 

 

 さて、一応言うだけ言ってみたが、彼は一体どんな返答をするだろうか。いくら同情してるからと言っても、【ロキ・ファミリア】の団長としての立場となれば話は別だ。

 

 こちらが要求できる立場でも、俺達の個人的な理由で幹部を貸してくれと言ってすぐに通らないだろう。場合によっては無理だと返答されかねない。

 

「ねーフィンー、修行ぐらいなら別に良いんじゃないの~? と言うかあたし、アルゴノゥト君とリヴァン君がアポロン様に好き放題されるなんて嫌だよ」

 

「わ、私もです! ベル・クラネルはどうでもいいですが、私の従弟がアポロン様となんて……もう考えるだけで悍ましいです!」

 

「そう言われてもねぇ……」

 

 一緒に聞いていたティオナさんとレフィ姉さんが手を貸すよう進言してきた。アイズさんも同様なのか、二人の言い分にコクリと頷いている。

 

 どうでもいいんだが、あの人は相変わらずベルに対する当たりが悪い。いくらアイズと仲が良いからって、何もそこまで毛嫌いする事はないと思うんだが。

 

 フィン・ディムナが言い返そうとするも――

 

「良いのではないか、フィン。先程の謝罪の件も考えれば、然して問題無かろう」

 

「ガレスの言う通りだ。昨日の宴で直接見た私としても、正直言って神アポロンのやり方は非常に不快だった。折角訪ねて来た同胞からのお願いに、それくらいの事は手を差し伸べても構わないだろう」

 

「君達まで……」

 

 ガレス・ランドロックやリヴェリアから予想外の援護が来た事で段々不利になってきた。

 

 身内から進言された事により、フィン・ディムナは観念したように嘆息する。

 

「分かった、君達の要求を呑もう。ここで下手に断ってしまえば、僕が悪者扱いされてしまいそうだからね」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 許可してくれた事でベルは大変喜んで礼を言いながら頭を下げた。一応こちらの要求だから、ベルが頭を下げる必要はないんだが……まぁ良いか。

 

 フィン・ディムナも似たような事を思っている筈だが、そこは敢えて指摘する事はせず俺に問おうとする。

 

「それで、君が指名したい幹部は一体誰なんだい?」

 

「先ずはアイズ・ヴァレンシュタイン。主にベルの修行相手としてお願いしたい」

 

「ええ!? リ、リヴァン、何でよりにもよってベル・クラネルにアイズさんを……!」

 

 一人目を要求した事に、思った通りと言うべきかレフィ姉さんが抗議してきた。

 

 けど、フィン・ディムナは気にせずアイズに確認しようとする。

 

「アイズ、ご指名のようだがどうする?」

 

「うん、いいよ……私も、そうしたいと思ってたから」

 

「アイズさんまで!?」

 

 まるでこの世の終わりかのように嘆くレフィ姉さん。

 

 取り敢えず一人目はOKだ。

 

「じゃあ次は誰かな?」

 

「二人目は――」

 

「はいはーい! あたしやるよ~!」

 

 俺が名前を上げようとする直前、突然ティオナさんが挙手しながら立候補してきた。

 

 突然の事に俺達は思わず彼女の方へ視線を向ける。

 

「ちょっと、何勝手に言ってるのよ!?」

 

 そこで待ったを掛けるティオネさんだが、ティオナさんは頬を膨らませる。

 

「え~? 幹部って言うから、あたしもその内の一人だからいいじゃ~ん」

 

「ティオナ、これは向こうの要求に応える為の指名だ。君が勝手に決めれる事じゃない」

 

「問題ありませんよ。ティオナさんに声を掛けるつもりでしたから。俺の修行相手として」

 

 フィン・ディムナは窘めようとするが、俺としては最初から彼女を指名するつもりだった。それを聞いたティオナさんが満面の笑みを浮かべる。

 

「やった~! よろしくね、リヴァン君。前から君と手合わせしてみたかったんだよね~!」

 

「こちらこそお手柔らかにお願いします」

 

「指名する相手は以上かな? 僕はてっきりリヴェリアか、レフィーヤを指名すると思っていたが」

 

 お手合わせをするティオナさんに挨拶をしてると、フィン・ディムナが確認するように訊いてきた。

 

 リヴェリア達も取り敢えず問題無さそうだと思っている様子だ。レフィ姉さんやベート・ローガは納得していないが。

 

「レフィ姉さんは『Lv.3』の後衛向き魔導士ですから無理です。リヴェリアは……万が一に傷を付けてしまえば最後、オラリオ中の同胞(エルフ)達を敵に回してしまう事になりますから猶更無理です」

 

「うん、どちらも尤もな理由だね」

 

 俺が理由を言うとレフィ姉さんとリヴェリアは少し残念そうな表情となった。と言うかリヴェリア、貴女は俺の修行相手になりたかったのか?

 

 まぁそれは気にしないでおこう。俺の思い過ごしかもしれない。

 

「ではアイズとティオナ、二人の修行相手を――」

 

「待って下さい。俺の方でもう一人を希望します。まぁその相手が嫌だと言えばそれまでですが」

 

「え?」

 

 俺の台詞が予想外だったのか、ベルや【ロキ・ファミリア】一同が揃って意外そうに見る。

 

 そして――

 

「ベート・ローガ。アンタも俺の修行相手に加わってくれ」

 

「あぁ?」

 

 今まで会話に全く参加しなかった狼人(ウェアウルフ)――ベート・ローガが訝しげな表情となった。




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