少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
(強い、流石は第一級冒険者……!)
修行と言う名の手合わせを初めてそれなりの時間が経ち、リヴァンは第一級冒険者の戦いを肌で感じ認識した。黒いゴライアスを除くダンジョン上層・中層のモンスター、リヴィラで戦った上級冒険者とは一味も二味も違うと。
これまで戦ってきた相手は大して本気も出さないまま倒し、殆ど作業同然で全く緊張感のない戦いばかりであった為、リヴァンの心は冷め気味となっていた。
嘗てオラクル船団にいた頃、強敵のダーカー達相手に常に緊張感を持った戦いを強いられた。下手に気を抜いてしまえば、あっと言う間に殺されてしまう地獄の環境を何度も味わっている。後見人のカスラや先輩のクーナ、アイカがいても危険が身に纏う状態の中、リヴァンは必死に戦い続けた。
だが、ひょんな事から元の世界に戻った事で一変した。世界の中心と呼ばれる迷宮都市オラリオで路頭に迷ってる中、ミアハと言う神に拾われ、借金塗れの生活をしてる彼に恩返しをしようと【ミアハ・ファミリア】に入団し、ダンジョン探索をしてお金を稼ぐ生活を送っている。
ギルドの担当アドバイザーからダンジョンのモンスターは凄く危険と言われたから、ダーカーみたいな相手だと思って緊張感を持ちながら警戒して、いざ全力で戦うと一気に拍子抜けとなった。余りの弱さに全力を出した自分が馬鹿らしくなってしまう程に。
上層モンスターじゃ全然相手にならないので中層以降に行こうと思っていた。けれど『Lv.1』という理由でダメ出しをされてしまった為、【ミアハ・ファミリア】の為に上層で必死に稼ぐ事となってる。その反面、弱過ぎる相手と戦い続けて今までの緊張感が段々と薄れて心が冷めていく。
ベルと出会い知り合った事で、退屈な日々から突如一転する。それが今は
大した緊張感を持たないまま冷静に作業をこなすように相手を殆ど一撃で倒していたが、目の前にいるティオナは全く違う。それどころか、こちらの攻撃を簡単に防がれて逆に反撃され吹っ飛ばされた。広間にある壁に激突したのを見たティオナは焦り、レフィーヤは安否を確認しようとすぐに駆け付けていた。
受けるダメージを大幅に軽減するスキル――ダメージバランサーによって殆ど軽傷とは言え、やっとまともに戦える相手と出会えたと歓喜した。今までそんな事を考えなかったが、ずっと弱い相手と戦い続けて心が冷めていた為、
(上等だ!)
「リ、リヴァン……?」
駆け付けて声を掛けてくるレフィーヤに、リヴァンは全く聞こえてないように立ち上がり、再びティオナと対峙する。
「ごめんリヴァン君、大丈夫? さっきは思わずちょっと本気で攻撃しちゃって……」
凄く申し訳なさそうに謝ってくるティオナ。
だが――
「心配ご無用です。それとティオナさん、俺からも言っておきます。全力で防御した方が良いですよ」
「え?」
突如リヴァンが意味不明な事を言った事に思わず首を傾げた。
隙だらけとなってるティオナにリヴァンは武器を持ったまま突進し、そのまま跳躍する。流れるかのようにティオナの頭目掛けて、
「っ! ぐぅっ!」
けど、トロールと違ってティオナは咄嗟に手にしてる
(お、重い……! これが『Lv.2』って嘘でしょ!?)
リヴァンの踵落としと武器を防いだが、衝撃と威力が強くて仰け反ってしまいそうだった。それでも何とか踏ん張ろうと両足に力を入れてると、地面に少しばかり罅が入る。
けれど、攻撃はまだ終わらなかった。突然ティオナの目の前に巨大な剣が出現し、それを見たリヴァンが力強く蹴り放った。
「おわっ!」
『…………………』
蹴り放った巨大な剣がティオナに命中し、凄まじい勢いで吹っ飛んでいき、そのまま広間にある建物の壁ごと突き破っていく。
誰もが予想しなかった展開と光景に、見物している団員達が自身の目を疑っていた。何故、『Lv.6』ティオナさんが吹っ飛んだのか。何故、『Lv.2』であるレフィーヤの従弟にあれほどの力があるのか。
(何だあのガキ、今何しやがった!?)
遠くから見ていたベートは信じられないように動きを止め、目を見開いていた。
先程までの互角な打ち合いを見て、非常に気に食わないが口だけのエルフじゃないと考えを多少改めている。リヴァンが軽く吹っ飛ばされたのを見て、所詮はここまでかと思って去ろうとしたが、直後に状況が一変した。
ベートは普段からティオナと仲が悪くて互いに憎まれ口を叩いているが、それでも一応強者の一人として認めている。だから『Lv.2』のリヴァン相手に、決して無様な姿を見せる事はないだろうと思っていた。
だと言うのに、それがものの見事に覆った。リヴァンがティオナに攻撃したかと思えば、魔力らしき巨大な剣が形成されて、それを蹴り飛ばして彼女を凄い勢いで吹っ飛ばした。しかも壁ごと突き破って。
誰もが無言になっている中、リヴァンは周囲の空気を気にせず、穴が出来た壁に向かってこう言った。
「早く出てきたらどうですか? 貴女があれくらいの攻撃でやられたとは思えないんですが」
そう言ってるリヴァンだが、実は内心結構焦っていた。
今回はあくまで修行と言う名の手合わせだから、先程放ったフォトンアーツ――セレスティアルコライドは非殺傷用にしようと加減していた。
本来だったら形成して弾丸の如く蹴り放ったフォトン刃は、対象の身体ごと貫いて吹っ飛ばすが、そこをリヴァンが調節して威力を弱めたのだ。流石に衝撃までは調節出来なかったが。
壁ごと突き破って吹っ飛んだティオナが未だに出てこないから、もしかしたら当たり所が悪くて気絶してしまったんじゃないかと危惧した。折角修行相手として頼んだのに、こんな簡単に終わってしまったら色々と申し訳ない気持ちになってしまう。
早く起き上がり姿を現してくれと切に願ってると――
「あ~、ビックリした~!!」
突き破った壁の中から漸くティオナが、笑顔のまま出てきた事にリヴァンはホッと安堵する。
彼女が無事である事にレフィーヤと団員達も同様に安堵してる中、ティオナの様子が少しばかり変であることに気付き始めた。
「いや~、あたし油断しちゃってたよ。まさか吹っ飛ばされるなんてガレスと初めて戦った時かな?」
「それはそれは……」
「でも、年下の男の子に吹っ飛ばされたのは生まれて初めてなんだよね~」
ティオナの言ってる事は冗談でも何でもない。本当に事実を述べている。
今まで自分より年下で異性の冒険者に吹っ飛ばされた経験は一切無い。更に自分よりレベルが低い事も含めて。
普通に考えれば、第一級冒険者の『Lv.6』が格下である『Lv.2』相手に吹っ飛ばされたとなれば恥だと憤慨するだろう。これがベートだったら間違いなくそう言ってる筈だ。
けれど、ティオナの場合は違う。それどころか心底楽しそうに笑っている。ここまで自分を
「リヴァン君、先に謝っておくね。あたし、最初君の事を甘く見ていた」
「でしょうね」
聞いたリヴァンは特に気を悪くしないどころか、それは至極当然だと思っていた。もし自分が逆の立場だったら、相手は格下だからという理由で手加減しようと考えている。
そう思ってると、彼女は
「悪いけど、こっからは本気でやらせてもらうよ。いいよね?」
『!』
「ええ、勿論です。そのつもりでさっきの技を放ったんですから」
『!?』
団員達がティオナの本気発言にギョッとしており、それに応えようと構えて頷くリヴァンに更に驚いた。
第一級冒険者が本気でやれば、ただで済むはずがないと誰もが分かっている。下手をすればリヴァンは死んでしまうだろう。
「だ、駄目ですティオナさん! 本気でやっちゃったらリヴァンが死んじゃいますから!」
当然、リヴァンの従姉であるレフィーヤが黙って見過ごす筈がなかった。すぐに撤回させようとティオナに近付いて説得しようとする。
「ごめんレフィーヤ、今のあたしすっごく
「!」
ティオナから発する闘気に当てられたのか、レフィーヤは近付く足を止めてしまう。
それは他の団員達にも言える事で、無言になりながらもゴクリと唾を呑み込んでいる者もいる。
対してリヴァンは、格上との相手は久しぶりだなぁ~と思いながらも
「ならここからは第二幕と行きましょうか」
「うん。それじゃ……行っくよおおおおおおおおおっ!」
「来いっ!」
しかし、その連続攻撃をリヴァンは受け止め、躱し、そして受け流そうと防御していた。
互いが同じ形状の武器でありながらも、両者の戦い方は全く異なっている。一人は力強く振るった攻撃、一人は冷静に攻撃を受け止めて防御と反撃。それはさながら静と動の戦いだろう。
『Lv.6』のティオナと『Lv.2』のリヴァン。実力差があり過ぎる手合わせの筈が、今は全く互角な戦いを繰り広げており、誰もが唖然としていた。
「さっきの大きな音は一体……っ!?」
途中、壁を突き破った音が気になったガレスが駆け付けるも、本気で戦っているティオナがリヴァンと互角に戦ってる事に目を見開いていた。
非常にどうでも良い事だが、手合わせを始めて一日目だ。これが暫く続くという事を、この場にいる誰もがすっかり忘れていた。
☆
「? 今、なんか大きい音がしたような……」
場所は変わって都市の市壁の上。
以前にアイズがベルと修行した場所であり、ここでやる事となっていた。
案内されて早々に修行を開始してる二人を余所に、見守っているティオネの耳から音が入った。自身の聴力に間違いが無ければ、音の発生源は『黄昏の館』からだ。因みにアイズとベルは修行に集中している所為か、音など一切気にした様子は一切見受けられない。
念の為に確認しようとティオネは
再び二人の修行を見守ろうとするが、彼女はある事が気になっていた。ベルが武器として手にしている見慣れない二つのダガーがどうしても目に入ってしまう。
その武器はリヴァンが前以てベルに渡していた物。彼曰く「ヴェルフに悪いが、修行の時はこの武器を使え」との事だ。
ベルは戸惑いながらもカッコいいと受け取った瞬間、突然刃の部分から青白い光が発した。それを見たリヴァンは「成程な」と納得した後、修行が終わるまで使うようにと言われたから、ベルは疑問に思いながらも今も手放さずに使っている。
修行する場所について早々、渡された武器を早速披露したベルに対し、アイズとティオネは食い入るように見ていた。二人が知る限り、ベルにあんな武器は持ってなかった筈だと。
(どういうこと? いつものベルじゃないような気が……)
アイズが修行を始め、その最中にある疑問を抱き始めていた。自分の知る限り、ベルはここまで強くなかった筈だと。
加えて、異常に打たれ強くなった事も疑問点として浮かんでいる。少し強めに攻撃して倒れたかと思いきや、まるで痛みが無くなったようにケロッとして立ち上がっている。
(なんかあんまり痛い感じがしない。もしかしてアイズさん、かなり手加減してくれてるのかな?)
これにはアイズやティオネだけでなく、ベル本人も何故と疑問を抱いていた。
以前の修行でアイズに攻撃を受けた時は結構効いて、当たり所が悪ければすぐに立ち上がる事は出来なかった。しかし、リヴァンから渡された武器で戦うと、ダメージが軽減されてるどころか、痛みがあっと言う間に引いて回復している。
それぞれが不可解に思いながら、修行は続く。
因みにベルが持っている武器は
既にエトワールクラスとなった今のリヴァンでは、全く使えない武器として電子アイテムパックに死蔵していた。元の世界でクラス変更出来ない以上、永遠に使うことはないと思っていた際、リヴァンは考えた。自分が使えないなら誰かに使わせてみようと。
当然、不用意にアークス製の武器を他人に貸してはいけない規則がある。しかし、元の世界でオラクル船団の規則なんか通用しない。それに縛られて死蔵したまま、廃棄処分なんてしたら武器が余りにも不憫過ぎる。
かと言って、いくらリヴァンでもそんな簡単に自身の武器を貸したりしない。自分が一番信頼の出来る相手が出来ない限り貸さないと決めている。
そんな時に友達のベルがいた。信頼出来る彼なら大丈夫と思い、ベルの武器と少々似ている
最初は持つ事が出来るかと不安を抱いたが、それはすぐに解消された。刃から青白い光を発しているのは、それ即ち使用出来るという証明だったので。恐らくS級を含めた特殊能力、潜在能力も発動するだろうと思いながら。
リヴァンはアークスじゃないベルが何故使えるのかと考えてしまうも、今は
ベルのアークス武器使用についてご都合主義過ぎるかもしれませんがご容赦下さい。
因みにジュティスシーカに付随されてるS特殊能力ですが、
S1:葉ノ緑閃(被ダメージを8%軽減し怯まなくなるバリアが20秒間隔で発生・消滅
注:ゲームと違ってオーラは見えません)
S2:時流活与2(一定時間ごとにHPを75%回復する)
となっています。
プレイヤー視点から見れば大して価値の無い物ですが、オラリオ側からすればとんでもない能力となります。
感想お待ちしています。