少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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少年エルフ、戦争遊戯(ウォーゲーム)で暴れる 前日

 戦争遊戯(ウォーゲーム)開催、二日前。

 

 ティオナさん達との修行を終え、フィン・ディムナやリヴェリア達に世話になったと頭を下げて【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)を後にし、久しぶりに会ったミアハ様から【ステイタス】更新を済ませた。そして一通りの話を聞いた後、都市を発つ為に隊商(キャラバン)がいる場所へ向かう。戦争遊戯(ウォーゲーム)の部隊となる『古城跡地』へ向かうのは、話をつけてある隊商(キャラバン)の馬車に乗って案内してもらう事になっているので。

 

 因みにヴェルフ達は既に行ってて、今まで修行をしていた俺とベルは現地で合流する予定だ。

 

 そして隊商(キャラバン)がいる馬車に辿り着いた俺は、御者と門番に通行許可証を見せた後、それを確認した向こうは馬車の一つに案内される。本来都市を出るのにギルドの煩雑な手続きを通さなければならないが、戦争遊戯(ウォーゲーム)参加者と認める署名が入った許可証を貰えれば例外として認められる。それは当然ミアハ様より渡されたから、何の問題無くオラリオから出れるのは言うまでもない。

 

 馬車に案内される際、ベルが来てないかを尋ねるも、まだ来てないと御者からの返答に俺は内心少しばかり焦った。もしかしてギリギリまでアイズとの手合わせをしてるんじゃないかと不安に思いながら。

 

 だが、それは杞憂に終わった。あともう少しで出発しようとするところ、ベルがギリギリのところで駆け付けて、俺のいる馬車へと来た。

 

「ったく、冷や冷やした。これで遅れたら本気でシャレにならなかったぞ」

 

「ご、ごめんリヴァン」

 

 一週間振りに再開して早々に小言を口にする俺にベルがすぐに謝った。

 

 それから次に修行の成果を訊くと、重畳とも言える返答が返って来たので安心する。それを聞きながら、預けていた双小剣(ツインダガー)を返してもらった。

 

 ベルが修行中の際、双小剣(ツインダガー)――ジュティスシーカを使って一度も壊れなかったと不思議に思っていたそうだ。それはベルだけでなく、相手をしていたアイズや監視役のティオネさんも同様に。

 

 何故かいつもより受けるダメージが小さかったり、更にはいつの間にか回復していたらしい。そんな不可思議な現象が起きていた事によって、アイズが全力に近い攻撃を何度も繰り出していたとベルが教えてくれた。

 

 それを聞いていた俺は、武器の特殊能力等が発動出来た事に疑問を抱きつつも安堵した。その後にはヘスティア様や、現地にいるヴェルフ達には黙っておくようにと念押しをしながら。

 

 話を聞いていた乗客達が、俺とベルが戦争遊戯(ウォーゲーム)に参加すると分かった途端に声を掛け、応援の他にお近づきのしるしとして多くの甘味を渡された。甘いものが苦手なベルにとっては大変キツいが、彼等の優しさを無下にしないようにと礼を言いながら受け取っていた。

 

 そして馬車が移動している最中、『豊饒の女主人』のウェイトレス――シルさんが走りながら、ベルに首飾り(アミュレット)を渡していた。足を止めて『お弁当を作って待ってる』と恥ずかしそうに叫んだ事にベルは破顔した後、大事そうに首飾り(アミュレット)を首にかけた。

 

「負けられない理由が増えたな」

 

「――うん。リヴァン、絶対に勝って、帰ってこよう」

 

「おう」

 

 改めて決意をしたベルに、俺もそれに応えようと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 移動時間を丸一日使ってアグリスの町へ到着し、そこにいる臨時支部のギルド職員の案内によって指定の宿へと案内された。

 

 俺とベルが宿の一室に入ると、既に到着済みの一団がいる。【ヘスティア・ファミリア】に改宗(コンバージョン)したヴェルフ・クロッゾ、ヤマト・命さん。そして俺とは別の助っ人要員である『豊饒の女主人』のウェイトレス――リュー・リオンさん。同じく改修(コンバージョン)したリリルカ・アーデの姿はないが、そこは訳ありという事で割愛させてもらう。

 

「遅かったな」

 

「ごめん」

 

「悪い」

 

 ヴェルフからの台詞にベルと俺は早々に謝罪した。事情を知ってるとは言え、俺達が戦争遊戯(ウォーゲーム)のメインである筈なのに、ギリギリで来たのだからヴェルフの言い分は充分に分かっているので。

 

「お二人とも、もう準備はいいのですか?」

 

「はい。神様にも【ステイタス】を見てもらいました」

 

「同じく」

 

 リューさんが若干心配そうに問うも問題無いと答えた。

 

 俺の方で修行内容を明かそうと思ったが、今此処で言うべきじゃないから終わった後にしようと簡潔する。もし言ったら絶対に仰天するのが簡単に想像出来るから。

 

 そう思ってると、返答を聞いたヴェルフはベルにある物を渡そうとする。

 

「じゃあベル、ほら、約束していた短刀(ナイフ)だ。一代目より切れ味は抜群だ、保証する」

 

「ありがとう」

 

 短刀(ナイフ)を受け取ったベルは大事そうに受け取った。

 

 アレはどう見てもジュティスシーカと比べて非常に頼りない。本当なら引き続き貸そうと考えていたが、そんな事をすれば専属鍛冶師(ヴェルフ)契約者(ベル)の関係を壊してしまう恐れがある。故に敢えて何も口出しはしない。

 

「ヴェルフ殿……例の物は?」

 

「用意してある。ただ、やっぱり時間がなかった、悪いが二振りだけだ」

 

 命さんが言う例の物とは、ヴェルフが常日頃から嫌っている魔剣。にも拘らず彼は作った。

 

「一応訊くがヴェルフ、覚悟を決めたと思っていいのか?」

 

 俺からの問いに彼は眉を少しばかり顰めた。

 

 以前の黒いゴライアス戦の後、俺は苦言を呈した。『最初から魔剣を用意してれば、ダンジョン中層で遭難する破目にならなかった』と。

 

 これには当然ヴェルフが激昂しかけるも、足を引っ張っていた自覚はあったみたいで、結局何も言い返さずに顔を俯かせていた。流石に言い過ぎたと思って謝ったが。

 

「ああ。……意地と仲間を(はかり)にかけるのは、もう止めた」

 

「ふーん」

 

 もしかしたら俺以外にも指摘されていたかもしれない。明らかに誰かが苦言を呈した台詞だったので。と言っても、そこは当人同士の深刻そうな問題に思えたので、俺はそれ以上何も言わずに頷くだけにした。

 

 話はもう終わりと言わんばかりに、ヴェルフは用意した魔剣をリューさんに渡していた。

 

「おい、預けとくぞ。さっき言ったが急造だ、威力も強度も保証できない。使いどころを間違えるな」

 

「分かりました」

 

 受け取ったリューさんはコクリと頷いた。戦闘経験豊富な彼女なら問題無いと思ってるからこそ、ヴェルフは信頼して預けたのだ。

 

「本当だったら、リヴァン用にも造ろうと思ってたんだが、どうにも時間がなくてな」

 

「気にするな。俺は俺で自前の武器があるから大丈夫だ」

 

「……前から思ってたんだが、お前の武器は一体何なんだ? 片手剣かと思いきや双剣で、更には柄に連結された二振りの剣になったりって……どういう構造してんだよ」

 

 鍛冶師として気になるのか、ヴェルフは俺の武器について訊いてきた。それにはベル達も気になってる様子だ。

 

「まぁ……そこは色々とだけ言っておく」

 

 流石に異世界で作られた武器とは言えなかったで、俺は適当に誤魔化しておいた。エールスターライトは武器迷彩だが、向こうの世界で作られた武器に変わりない。

 

 俺の武器に関する追究を何とか逸らし、俺を含めたベル達は明日の戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝とうと意気込む。

 

 神ロキから聞いた【アポロン・ファミリア】との戦闘形式(カテゴリー)は攻城戦。勝利条件は、敵大将の撃破。

 

 明らかに【ヘスティア・ファミリア】側に圧倒的不利な戦いだが、それでも誰一人悲嘆してない。寧ろ『絶対勝つ!』とやる気満々だ。

 

「ああ、そうそうリューさん。最初は貴女が魔剣を使って敵を大量に引きつける手筈ですけど、その後は俺が片付けますので下がって下さい」

 

「ウィリディスさんだけ、ですか?」

 

「ええ」

 

 理由は勿論ある。神の宴で人を散々嘲笑したバカ共に、エトワールクラスの恐ろしさをじっくり教えてやろうと考えているので。




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