少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
「始まりましたね」
「ええ、行きましょう」
遠方から、銅鑼らしき音が聞こえた。即ち、
響き渡る開始音に俺とリューさんは昨夜の打ち合わせ通り、先鋒として移動を開始した。荒野の中央を静かに歩み、北側の城砦正面へと向かっている。
因みに俺の格好はいつも通りである『カテドラルスーツ』を身に纏い、対してリューさんは奇抜な格好だった。フード付きのケープを身に付け、その上から更にマントを羽織って全身を隠している。俺はともかく、明らかにリューさんの方が凄く怪しい人物と思われるだろう。
そんなどうでもいい事を考えながら、数分もしない内に目的地へ辿り着く。そして予想通りと言うべきか、北側の城壁には見張りと思わしき
距離が約100
「ウィリディスさん、手筈通り下がってください」
「了解」
リューさんが両腕を広げ、弾みでマントが宙を舞いながら、彼女の細い両手が握り締めている紅と紫に染まった二振りの『魔剣』を露わにした。
それを見た俺は隣に歩いている彼女から離れようと後退し距離を取ると、二振りの無骨な長剣が同時に振り下ろされる。
直後、城壁の上にいた者達の目の前で凄まじい砲撃が炸裂した。
(ヴェルフの奴。急造とは言ってたけど、
立て続けにリューさんが二振りの魔剣を振るう事により、紅の剣から巨大な炎塊が吐き出され、紫の剣から大蛇の如き紫電が迸っている。どちらも強力な一撃で、もうあっと言う間に分厚い城壁を貫通し弾け飛んでいた。
流石は『クロッゾの魔剣』。そこら辺の魔剣とは大違いで、魔導士が放つ魔法以上の威力だ。改めて、昔のラキア王国が重宝する筈だと認識する。あれこそ攻城戦に相応しい、最強の攻城武器。
そう思ってると、向こうが慌てたように城壁から矢の雨を放ち始めた。
俺達は走りながら難なく回避。その際にリューさんがお返しと言わんばかりに『魔剣』を振ると、紫の稲妻が城壁にいる魔導士や
(よし、ここで俺もやるか)
分厚い筈の北側城壁が穴だらけとなったのを確認した俺は、リューさんに待ったを掛けた。
「リューさん、今度は俺がやります。あと宜しければ、『魔剣』の片方を貸して下さい。出来れば炎が出る方を」
「それは構いませんが、どうするつもりなんですか?」
紅の『魔剣』を渡しながら問うリューさんに、俺はそれを左手で受け取り、すぐに右手から
「中に入って暴れます」
「なっ! それは危険だっ! いくら腕が立つと言っても、貴方一人では――」
「心配ご無用です。一週間ぶっ続けで『Lv.6』のティオナさんやベート・ローガとの手合わせに比べれば、中にいる連中なんて可愛いもんです」
「――は?」
俺が予想外な事を言ったのか、リューさんは途端に目が点になった。
説明したいところだが、生憎とそんな暇は無い。彼女には悪いけど無視させてもらう。
二つの武器を手にしてる俺は次の行動に移ろうと、プリズムサーキュラーを発動させた。フォトンの帯を纏い、城壁の上部に向かって高速飛行を開始する。
☆
「嘘ぉぉぉぉ! リヴァン君が飛んでる~~~~~~!?」
ティオナが信じられないように叫ぶも、【ロキ・ファミリア】は全く気にしてないように驚愕を露わにしていた。
『鏡』に映っているリヴァンは高速飛行をしながら侵入する事に、敵の【アポロン・ファミリア】側も困惑している。迎撃しようと矢の雨を放たれるが、リヴァンの周囲を覆っている結界らしき物が阻まれて一切当たらない。
見事に城の中へ入った後、結界を解いた直後に右手の片手剣を薙ぎ払った瞬間に光の渦が放たれた。その渦は固まっている【アポロン・ファミリア】団員の数名に直撃し、勢いよく吹っ飛ばされていく。
しかし、それだけでは終わらず、今度は左手にある紅の魔剣を振るい、巨大な火炎の砲弾が放たれる。さっきの渦と違い、砲弾が地面に直撃した瞬間に炸裂する。
落下しながらも、固まってる敵に向かって魔剣を連続で振り続けるリヴァン。それによりどんどん敵の被害が大きくなっていく。
『これで邪魔者は片付いたな』
漸く地面に着地したリヴァンが周囲を見渡し、上手く言ったと言わんばかりの表情をしながら言った。それもその筈。リヴァンが中に侵入後、北側城壁にいる魔導士や
すると、持っている紅の魔剣が木っ端微塵に砕け散ってしまう。回数制限を失い、魔剣としての役目を終えた証拠だ。
それも束の間で、中にいる多くの【アポロン・ファミリア】団員達が現れ、すぐにリヴァンを囲んだ。
魔剣を使ったのが先日に主神アポロンに向かって堂々と宣言したエルフの少年だと分かった途端、団員のエルフ――リッソスは激怒した。
『貴様ぁ!?
激昂するリッソスの台詞は、オラリオで見ている多くのエルフ達も同様の反応を示していた。理由は勿論ある。
嘗てエルフの森は『クロッゾの魔剣』で灰燼に帰した歴史があった。それによりエルフ達は今でも憎んでいる。故にリヴァンが行った事は多くのエルフ達を敵に回しているも同然の行為なのだ。
しかし――
『んなもん知るか。バカバカしい。こっちから言わせれば、そんな
『なっ!?』
リヴァンは全く意に返してないどころか、逆に異常だと言い返してきた。
当然、その台詞はリッソスだけでなく、オラリオにいるエルフ達も聞いている。言うまでもなく大半が激昂しており、憎悪を抱き始める。
因みにこれを聞いていたレフィーヤが慌てふためきながら顔を青褪め、対してリヴェリアは大して気にした様子は見受けられない。後者のほうは寧ろどうでも良いどころか、リヴァンの使った飛行魔法が物凄く気になっている。
『それにさぁ、こっちは圧倒的に不利な状況なのに、そんな物に囚われて手段を封じるバカがどこにいる。これはアンタ以外にもオラリオで観ているエルフ達にも言える事だが、【ファミリア】の存続が掛かった大勝負で負けた際に「忌々しい過去が理由で使える筈の魔剣を使わないでやられてしまいました」と言って、それを他の仲間が簡単に許してくれると思うか?』
そう言った直後、リヴァンは右手に持っている片手剣を分離させると、二振りの剣となった。右手と左手に持ち構えた直後、片方の剣を振るう。
すると、剣から魔力と思われる巨大な衝撃波が放たれ、そのまま複数の団員に命中し吹っ飛んでいく。
『き、貴様! まだ魔剣を持っていたのか!?
『そうやって一生過去に囚われて溺死しろ。ふんっ!』
『がぁっ!』
連続で二振りの剣を交互に衝撃波を放ちながら、最後の同時に振って交差させた衝撃波と追撃の
補足だが、リヴァンはエールスターライトの
アークス用の武器やフォトンアーツについて一切知らないオラリオ側の者達からすれば、リヴァンの武器は『魔剣』と勘違いし戦慄している。
『来ないのか? だったらこっちから攻めさせてもらうぞ!』
リッソスがあっと言う間に倒された事に団員達が驚愕する中、リヴァンは
素早い斬撃と重い蹴撃の他、フォトンアーツによって【アポロン・ファミリア】団員達が次々と簡単に撃破されていく展開に、『鏡』を通して見ているオラリオの住民達は口をあんぐりと開けたまま呆然としていた。これは当然、バベルにいる神アポロンも含めた神々も同様に。
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