少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
時間は少し遡る。
「リヴァン、ほ、本当に落ちないよね!?」
「やったらタダじゃおかねぇからな!」
「しないから、そんな強く掴まらないでくれ」
ベルとヴェルフがそれぞれ片手で自分の肩に掴んだ直後、プリズムサーキュラーを発動させた俺は空中移動していた。
初体験だったのか、二人は足が地面から離れた直後に狼狽し、絶対に落ちたくないと少々震えながらも両手で俺の肩を力強く掴んでいる。エトワールクラスのスキルが無ければ痛がっていたかもしれないが、その痛みを全く感じない俺は二人に軽く指摘するだけで済ませていた。因みに地上に残したリリルカは俺達の空中移動を見て少々呆然となりかけていたが、すぐにハッとして別方向へ向かっている。
あと少しで体内フォトンが無くなりそうになるも、目的の場所に着いたので、俺は空中移動をしていたフォトンの帯を一旦解除する。
足が地面に着いた事で安心したのか、ベルとヴェルフは少しばかり安堵の息を漏らすも、すぐに自分達がいる場所を認識する。
「リ、リヴァン、此処って……」
「おいおい、何で俺達は
本来であれば白い塔へ向かう為に必要な
「言っただろ? 正面からじゃなく、背後から仕掛けようって」
「そうか。さっきの空中移動で一気に玉座へ行けば……!」
「でもそれだったら、態々こんな所で止まる必要はねぇだろ」
意図を見抜いたように言うベルだったが、ヴェルフの台詞を聞いた途端にまた不可解な表情となっていく。
「リヴァンの事だから、何か理由がある筈だ。まさか此処から奇襲でも仕掛けるつもりか?」
「正解だ、ヴェルフ」
自分の当てずっぽうが正解だった事にヴェルフは面食らったかのように少々驚いたような表情になった。
「おいおい、マジかよ……」
「で、でもリヴァン、この距離からだと僕の
確かにベルの言う通り、今いる砦の屋上から白い塔の玉座までの距離がある。黒いゴライアスの時に使ったチャージスキルなら問題無く届くかもしれないが、今からやれば少々時間が掛かるだけでなく、渡り廊下で待機してる魔導士に気付かれてしまう。
「いや、俺がやる。此処からでも充分に届く魔法があるからな」
「リヴァンの魔法……も、もしかして、18階層で見せてくれた一撃を使うの!?」
俺が黒いゴライアス戦で披露したフルコネクトを思い出したのか、途端にキラキラと凄く期待が籠った目で見てくるベル。
確かにアレを使えば、最上階にある玉座ごと白い塔を斜めに斬り裂いて、敵大将のヒュアキントスごと落とす事は可能だ。だけど、やるつもりは毛頭無い。
今回の
助っ人の俺がやる事は、ベルを万全かつ無傷のままヒュアキントスへ向かわせる為であり、障害となるモノを叩き潰すのが一番の目的としている。
あの白い塔の最上階に
「ご期待に沿えなくて申し訳ないが、今回は全く違う方法でやらせてもらう」
「そう、なんだ……って、何ソレ!?」
俺の返答にベルは途端にガッカリしたように気落ちするも、俺が武器を切り替えた事で一気に興味を引いた。
「おいリヴァン、見た事の無い形状だが、それは武器なのか?」
「まぁ、ちょっとした特殊な魔剣だと思ってくれ」
エールスターライトの
ドラゴンの頭部を機械的に模して結構強そうな見た目をしてるけど、実を言うと俺がメインで使ってるディムシリーズより性能が低い旧式武器の一つ。それでも俺が結構世話になった武器だから、今も電子アイテムパックの中に入れている。俺がメインで使ってる
リグジエンザーには、あるテクニックが搭載されている。今まで使った回復や補助じゃない攻撃用の炎属性テクニック『イル・フォイエ』で、白い塔の最上階に奇襲を仕掛けると言う寸法だ。
普通なら
それをやろうと、俺は右手に持っているリグジエンザーを空に向かって掲げながら、イル・フォイエを放つ準備に移る。
「な、何だ? 塔の最上階から魔法陣が……!」
「リ、リヴァン、一体どんな魔法を使う気なの!?」
狙いを定めてチャージしてる最中、ヴェルフとベルは困惑した様子を見せていた。
だが俺は気にせず、目標に向けて巨大な炎の塊を落として大きな爆発を引き起こす上級の炎属性テクニック――イル・フォイエを発動させようとトリガーを引いた。
数秒後、巨大な炎の塊が塔の最上階にある玉座の間へと直撃した途端に大爆発が起きた。
「す、凄い……!」
「お前、マジで一体何なんだよ……!」
こうなる事を想像しなかったのか、ベルとヴェルフは目の前の光景に驚愕するばかりだった。
☆
「すっごぉぉい! リヴァン君、あんな魔法も使えるんだ!」
「……………」
遠く離れた【ロキ・ファミリア】
彼女だけでなく、アイズも無言のまま釘付けになっている。今の
(リヴァン、あんな凄い魔法をいつの間に……!)
レフィーヤは
18階層で食人花を倒す時に使った攻撃魔法、負傷した自分やベルを治療する為に使った回復魔法、そのどれもが普通の魔導士とは違うとレフィーヤはとっくに気付いている。本当なら従姉として根掘り葉掘り問い質したいのだが、生憎彼は他派閥である【ミアハ・ファミリア】の眷族なので無理だった。
剣などの武器で近接戦闘をこなし、回復魔法での後方支援も出来て、更には攻撃魔法による遠距離攻撃も可能ときた。後方魔導士である自分とは全く異なる戦闘スタイルを披露されてる事で、レフィーヤはこの上なくショックを受けている。ただでさえ数日前に修行目的でティオナやベートと互角にやり合う程の実力を見せていたから、それが余計に口惜しくて堪らない。自分と従弟の実力が余りにも違い過ぎる為に。
「確かに凄いですけど……何もこんなまどろっこしいやり方じゃなくても、あのままリヴァンって子が一気に敵大将の元へ強襲すれば良かったんじゃないんですか?」
一緒に観ているティオネが疑問を呈する。
「アマゾネスらしいのぉ、その考え方……」
「ンー、まぁ確かに彼なら出来るかもしれないね。『Lv.6』のティオナやベートに匹敵する実力を持っていれば猶更に」
「だがリヴァンは敢えてやらなかった。そうしないのは理由があるのだろう」
ティオネの疑問にガレス、フィン、リヴェリアは思ったままの返答をした。
もしもリヴァンが『Lv.3』の
都市最大派閥の首脳陣が冷静に分析している中――
「あのクソエルフの事だ」
ベートが突然口を開いた。
「どうせ兎野郎に花を持たせようと、あの変態野郎とは万全の状態でケリをつけさせるって
全く興味無さそうに『鏡』を見ている
「下らねぇことに知恵を働かすからな、あいつは」
今更ながらもリヴァンの
明確に拒否したのにも関わらず、あのエルフは相手してくれると確信を持っていたのか、煽るかのような発言をしていた。そして自分が
それで自分は利用された事に漸く気付いた直後、ベートは怒りに震えていた。『あのクソガキッ……!!』と口惜しげに悪態を吐きながら。
今もリヴァンの顔を一発ぶん殴りたい気持ちなのだが、もう既に断念している。未だに納得してないが、リヴァンは自分と手合わせによる経験を得た事で結果を示しているのだ。自分より遥かに格下の雑魚共を圧倒している為に。
だがしかし――
(クソエルフ、もしこれで無様に負けたらブッ殺すからな!)
リヴァンが自分を利用しておいて敗北した時には、制裁を下そうと心に決めているのであった。
終わらせようと書いてますが、どうも長引いてしまいます。
感想お待ちしています。