少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか 作:さすらいの旅人
突然の【フレイヤ・ファミリア】遭遇だったが、俺はベルを探しに行こうとダンジョンへ向かった。
1~6階層を探した結果、当たって欲しくない予想が的中した。6階層へ行ってやっと見つけたベルが、一人でモンスターを只管倒し続けていたから。
本当ならすぐに駆け付けて加勢したかったが――
「やるんだ、やるんだ、やるんだぁぁぁ~~!! あの人に追い付く為にっっ!!」
「……………」
ベルの叫びを聞いて、足を止めてしまった。
あれは一人の男が決意した叫びだ。そんな時に俺が行ってしまったら、ベルの決意を踏み躙る事になってしまう。故に行けなかった。
嘗て俺もベルと同じ経験をした事がある。故にアイツの気持ちは痛いほど分かる。
アークスになって初の実戦をする為に数名の同期と一緒に惑星ナベリウスへ探索した際、自分だけ大した戦果を上げれずに帰還した事があった。
他の同期から役立たずだのお荷物だのと、挙句の果てにはアークスを辞めろと罵倒され、それを事実と受け止めていた俺は何も言い返せなかった始末。同期達を見返す為に強くなろうと、今やってるベルみたいに只管戦い続けた。後になってカスラから怒られてしまったけど。
そしてある程度の実力を身に付けて再び同期達に会おうとしたが、それはもう叶わなかった。理由は簡単。同期達が探索中に命を落としたからだ。
俺より強い筈の同期達が死んだと聞いて、最初は信じられずに目を疑った。詳しく聞いたところ、同期達は他のアークス達より成果を出し続けて少々天狗になってしまい、難易度の高いクエストを受けた結果、帰らぬ人となってしまったようだ。
その事をカスラに話すと――
『失敗や挫折を経験しない人間ほど脆いものです。こう言うのは不謹慎ですが、私は彼等に感謝しなければなりませんね。彼等が罵倒した事によって、今の貴方は私が予測した以上に強くなったのですから』
同期達に憐れみと感謝の言葉を投げていた。一緒に話を聞いていたクーナさんも――
『大変に気の毒ですが、同情は一切しません。任務を甘く見ていた彼等の油断が命取りとなったのですから』
――と、大変厳しい言葉を送られた。
まぁそれはそうと、ベルが【ロキ・ファミリア】の
しかし、このまま何もしない訳にもいかないので――
(強くなれ、ベル。これが今俺に出来る、唯一のサポートだ)
以前にギルドから貰った支給品の短刀を放り投げた。
冒険者登録をした時に購入した物で、今は全然使っていない。自身の武器と比較する為に使ってみたのだが、余りにも威力が低すぎて使い物にならなかった。それ故にお蔵入りとなっている。
今の俺に短刀は全く不要だが、現在モンスターと全力で戦っているベルには必要だ。今のアイツも同様の短刀を使っているので、使うのに何の問題もない。
「? これって……よし!」
突然、自分の近くに短刀が落ちていた事に気付くベルは戸惑いの様子を見せたが、好機と捉えてすぐに拾った。
二振りの短刀を持ったベルが、さっきと違って攻撃の回数が増えている。それによってモンスター達は次々と倒されていく。
(ベル、頑張れよ……)
すべき事を終えた俺はベルにエールを送りながらダンジョンから出ようとする。
来た道を戻っている最中、周囲の壁からビキビキと罅が入り始めた。その数秒後には、無数のモンスターが出現する。
「邪魔だ」
『―――――!!』
俺が慌てる事無くエールスターライトの
それじゃあ、ベルがダンジョンから戻る際、帰還中に襲われないようある程度は片付けておくとするか。
「……ねぇリヴァン、一体何考えてるの? ……エルフなのにバカなの? アホなの? 何で大物【ファミリア】に喧嘩売ったの? ……そこをもっと詳しく教えてくれない?」
「で、ですから……!」
「これナァーザ、リヴァンを怖がらせるでない」
都市最大派閥の名前が二つも出た事に、ミアハ様は無事でよかったと凄く安堵していたが、ナァーザさんが『もうダメ、【ミアハ・ファミリア】が無くなっちゃう……』と言いながら倒れた。
ナァーザさんの反応は物凄く分かる。俺が超有名【ファミリア】相手に喧嘩を売った事に加え、更には謝罪までさせた。うちみたいな零細【ファミリア】の冒険者が決して許される事ではない。
その後には虚ろ目となり、暗い雰囲気を漂わせながら詰め寄ってくるナァーザさんが物凄く怖かった。まるで幽鬼みたいな恐怖の存在となっていたので。
結果として、俺は謹慎処分を下される事となった。有名な二つの都市最大派閥に喧嘩を売ったのだから、暫く
因みに謹慎となっているから、ベルとのダンジョン探索も当然無い。翌日以降にはナァーザさんが直接【ヘスティア・ファミリア】の
☆
「あ~、久々のお出掛けだぁ~」
謹慎して数日後。
今日は年に一度開催される
俺が出掛ける事にナァーザさんが最初に難色を示すも、ミアハ様の説得もあって何とか許可してくれた。その代わり、『絶対に目立つ行動はしないように』と、キツく念を押されているが。
本当だったらベルと一緒に行こうと思っていたが、【ヘスティア・ファミリア】の
(何か久しぶりに見た気がする……)
メインストリートを歩いている中、まるで懐かしむような感じになっていた。この数日、ずっと
周囲を見渡しながら先へ進んでいると、前にベルと食事した酒場――『豊穣の女主人』を見付けた。それを見た俺はこの前の嫌な事を思い出すが、すぐに頭を振り払って忘れる事にする。
そのままスタスタと酒場を通り過ごした瞬間――
「あっ! この前、白髪頭と一緒にいた山吹頭ニャ!」
白髪頭と言う単語に思わず反応して、俺は思わず足を止める。
声のした方へ振り向くと、『豊穣の女主人』の店先で、
……シルさんと同じ制服を着てるって事は、あの酒場のウェイトレスだな。ついでに、山吹頭とは確実に俺の事を言っているのであろう。俺の髪は山吹色なので。
取り敢えず、失礼な呼び名で言うウェイトレスは無視させてもらう。この前会った、アレンと言う
「ちょっ! 山吹頭、無視するんじゃないニャ!」
こっちに来いと言ってくる
「何かご用ですか、茶髪猫さん」
「ニャ!? 誰が茶髪猫ニャ! 失礼な奴だニャ!」
人に山吹頭と呼んでおいて、自分はダメなのかよ。
全ての
「山吹頭、よく覚えておくニャ! ミャーにはアーニャと言う名前があるニャ! 今度またミャーの事を茶髪猫なんて呼んだら成敗するニャ!」
「……はいはい、気を付けますよ。茶髪猫さん」
「ニャ~~~~!? また言ったニャ~~~!!」
再び茶髪猫と言った直後、
「ミャーの警告を無視するとは良い度胸してるじゃニャいか、山吹頭! ミャーを怒らせた事を後悔させて――」
「止めなさい、アーニャ」
「ふギャ!」
俺に襲い掛かろうとするアーニャに、いきなり現れたエルフのウェイトレスが阻止しようと、彼女の頭にチョップを当てた。
「~~~~! リュー、いきなり何するニャ!?」
痛みに悶えていたアーニャは、攻撃をしたエルフのウェイトレス――リューと言う女性に抗議した。
「貴女こそ何をやろうとしていたのですか?」
「この失礼な山吹頭が、ミャーを茶髪猫と呼んでくるから成敗するんだニャ!」
「そうですか。ですがアーニャ、先程から彼の事を『山吹頭』と失礼な事を言ってるのですが」
「ニャ?」
リューさんが指摘した事により、アーニャはさっきまでの怒りが急に収まった。
数秒後、う~んと何かを思い出すような仕草をしながら首を傾げてる。
「え~っと、ミャーも失礼な事を言ってたかニャ?」
「……同胞のウェイトレスさん、この人はもしかしてアレですか?」
「はい、それもかなり」
おバカと言う単語を敢えて使わず、自身の頭を指で突っつきながら問うと、それが伝わったリューさんはコクンと頷く。
「ニャー! なにエルフ同士しか分からない会話をしてるニャ!? ミャーにも教えるニャ!」
別にエルフとか関係ないんだが……まぁ、いちいち言う事じゃないから気にしないでおこう。
リューさんも俺と同じ考えなのか、何も言わずに嘆息している。
因みにこの後、リューさんは俺に『リュー・リオン』と自己紹介してくれた。呼び方は自由にしていいと言われたので、取り敢えずリューさんと呼ぶ事にする。
「ところでアーニャさん。話を戻しますが、俺に一体何の用ですか?」
「ニャ? ………あ~、すっかり忘れてたニャ」
俺が用件を問うと本当に忘れていたのか、アーニャは思い出したような顔をした。
用件を忘れていた上に、俺に失礼な呼び名をしてた事も忘れてるって……この人、本当に大丈夫なのか?
内心、本当にウェイトレスとしてやっているのかと不安に思ってる中、アーニャは用件を話そうとする。
「おミャー、白髪頭に話してなかったのかニャ? 一昨日に白髪頭が店にやってきて、おミャーが払った筈の金を払おうとしてたニャ」
「え?」
ベルの奴、俺が料理代を払った事を聞いてないのか?
…………って、よくよく考えてみたら教えてなかった。あの後には色々な事があった上に、
あちゃ~、これは完全に俺のミスだ。無駄足を踏ませてしまったベルには、後で謝っておかないと。
俺の表情を見てベルに話してない事が分かったのか、アーニャは少し小馬鹿にしたように笑い始める。
「ニャハハ。おミャーも案外おっちょこちょいなんだニャ。まるで財布を忘れたシルみたいニャ。ま、今頃は白髪頭が財布を届けている筈だから大丈夫の筈ニャけど」
「シル?」
その名前は確か、俺達を案内してくれた
あのウェイトレスがおっちょこちょいとは凄く意外だ。ベルにお金をたくさん使わせようと、女将さんに有ること無いこと言って嵌めようとしてたのに。
と言うか今、何か気になる内容を言ったな。
「ベルが財布を届けてるってどういう事ですか?」
「ついさっき白髪頭が来たから、店番サボって祭り見に行ったシルに、忘れて行った財布を届けて欲しいと頼んだニャ」
店番サボって祭りを見に行ったって………色々と突っ込みどころのある人なんだな、シルさんは。
すると、途中から話を聞いていたリューさんが割って入ろうとする。
「アーニャ。先程クラネルさんに言った通り、シルは休暇を出して祭りへ行ったのです」
「どっちにしても同じニャ! 今は
成程、さぼりではなく休暇だったのか。俺には如何でもいい事だが。
あ、そうだ。ついでだから、アーニャに訊いてみるか。この前、神フレイヤと一緒にいて攻撃してきた、アレンって
「アーニャさん、俺からも聞きたい事があるんですが」
「何ニャ?」
「アレンという
「!」
俺が質問をした瞬間、さっきまで能天気そうな表情をしていたアーニャは途端に驚愕を露わにした。リューさんも少し意外そうな顔をしている。
……何なんだ、この反応は? もしかして俺、訊いちゃいけない事を訊いてしまったのか?
「……………………」
「どうしたんですか、アーニャさん?」
いきなり無口になったアーニャに俺が問うも――
「……さ、さぁニャ~。ミャーはそんな男の名前ニャんて知らないニャ~」
目を泳がしながらしらばっくれた。
明らかに知っていますと言う反応だな。それに俺はアレンを『男』だなんて言ってもいないのに、自分から喋っちゃってるし。
しかし、アーニャの様子からして、余り教えたくないようだ。雰囲気が丸分かりなので。
「そうですか。変な質問をしてすいませんでした」
「ま、全くニャ! さぁ~て、ミャーはこれからお掃除ニャ~」
しどろもどろになりながらも、仕事を始めようと店の中へと引っ込んでしまった。
今この場には俺とリューさんしかいない。
「因みに、一体どんな関係なんですか?」
「私としてはそれ以前に、何故ウィリディスさんが【
俺がアーニャとアレンが関係者だと見抜いた事を分かっているリューさんが、不審に思いながら疑問をぶつけてきた。
【
「まぁ、ちょっと訳ありとだけ言っておきます」
数日前にアレンと戦う事態に発展しそうになった、なんて流石に言えやしない。
適当に誤魔化しながらリューさんと一通り話を終えた後、俺は
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