少年エルフが前衛で戦いながら支援をするのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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少年エルフ、戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わって一段落する

 敵大将であるヒュアキントスが倒れた事で、戦争遊戯(ウォーゲーム)は【ヘスティア・ファミリア】(+俺とリューさん)の勝利と言う事で幕を閉じた。

 

 オラリオに戻って来てから知ったが、敗者となった【アポロン・ファミリア】はヘスティア様の要求通りに解散となったそうだ。主神である神アポロンは眷族達との別れと退団の儀式を済ませた後、オラリオを追放されたとか。あの変態は色々な意味で危ないから、ヘスティア様の判断は正しいと断言出来る。

 

 因みに要求の中には賠償金も含まれており、【ミアハ・ファミリア】側も当然含まれている。いくらベルを助ける為だからと言って、流石に無償(タダ)働きする気は無い。貰える物は貰っておこうと、ヘスティア様には勝利した際の賠償金(ほうしゅう)を頂きたいと言っておいた。

 

 だが、その金額は俺一人が持つには多過ぎた為、半分ほど【ミアハ・ファミリア】の資金にしておいた。ナァーザさんから『自分やミアハ様に対する迷惑料も支払ってもらいたい』と言われたけど――

 

「酒場でやってた賭けで大勝ちしたんですから、それでチャラにして下さい」

 

 俺がそう言った事で、向こうはもう何も言い返せなくなった。

 

 それについて触れなければ、ナァーザさんは素知らぬ顔で迷惑料を頂くつもりだったんだろう。我が【ミアハ・ファミリア】の団長さんは本当に良い性格してる。

 

 まぁとにかく、戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わった事で漸く一段落ついた。俺も漸く本拠地(ホーム)へ戻る事を許可されている。

 

 言い忘れてたが、【アポロン・ファミリア】が使っていた巨大な屋敷は、今後【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)として利用する事になった。そして残った廃教会はヘスティア様を名義人として今後も管理すると言って、それを聞いたあるお願いをした。自分も利用出来る許可が欲しいと。

 

 俺が廃教会を利用したい理由は一応ある。今回起きた戦争遊戯(ウォーゲーム)みたく、俺が勝手な行動をして【ミアハ・ファミリア】に迷惑が掛からないよう、もしもの時の仮拠点として使いたい。他には大して人目が付かないから、鍛錬をするには最適な場所でもある為に。

 

 最初は俺の提案を聞いて訝るヘスティア様だったけど、俺がベル達の為に戦ってくれた事もあって、喜んで許可してくれた。利用する条件としては、偶にでも良いから掃除して欲しいとの事だ。大して苦でもないから、俺は喜んで受け入れている。

 

 とは言え、そんな異常事態がすぐに起きる訳でもないから、暫くは平穏な時間を――

 

「リヴァン、私と手合わせして」

 

「出来れば先ず理由を言って欲しいんですが」

 

 のんびり過ごせるかと思いきや、オラリオに戻った翌日以降、またしても予想外な客が来た。戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる前、ベルに特訓の相手をしてもらったアイズ・ヴァレンシュタインが。

 

 理由を求める俺に、彼女は語ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 時間は遡る。

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わり、【ヘスティア・ファミリア】一行が古城跡地から一日をかけて都市へ帰還するも、【ロキ・ファミリア】の本拠地である『黄昏の館』にある大食堂が少々騒々しい。

 

「ティオネ、アイズ!」

 

 騒ぎの元凶はアマゾネスのティオナ・ヒリュテ。都市最大派閥の幹部を務める一人で、先日『Lv.6』にランクアップした第一級冒険者。天真爛漫な性格をしてる事で周囲を明るくさせているムードメーカーなのだが、今回ばかりは流石に騒がしくて、食事をしてる団員達は若干迷惑そうにしている。

 

「さっきからうるさいわね」

 

「どうしたの?」

 

 彼女の姉であるティオネは煩わしそうにしながらも、アイズは大して気にせず訊ねていた。

 

 因みにレフィーヤは従弟のリヴァンがオラリオから帰還した件もあって、今も【ミアハ・ファミリア】の本拠地(ホーム)にいる。勿論、ロキやリヴェリアの許可を貰った上で。

 

 二人が振り向いた事により、ティオナは笑顔のまま手に持ってる用紙を見せる。

 

「見て見て、コレ!」

 

「【ステイタス】の用紙(かみ)じゃない。アンタ、また更新したの?」

 

 能力値(アビリティ)が記載されてる用紙だと分かったティオネは、意外そうにティオナを見ていた。

 

 この前のダンジョン遠征に加え、港街(メレン)で起きたとある事件から大して日が経ってないのにも拘わらず、【ステイタス】更新をするなんて妹らしくない行動なのだ。

 

 ランクアップしたばかりだけでなく、『Lv.6』になれば能力値(アビリティ)の上昇率はかなり低い。深層域の攻略、もしくは自分に匹敵する強敵と戦って乗り越えなければならない程に。

 

 それは当然ティオナも充分理解してる筈なのに、何故こうも自分達に用紙を見せようとするのかが全く分からないティオネだった。

 

 本人が見ろと言ってきたから、取り敢えずは見ようと、アイズと同じく目を向ける。

 

「ッ!?」

 

「はぁ!?」

 

 眼を見開くアイズ、思わず大声を出してしまうティオネ。

 

 ティオナが見せてる用紙に、二人は揃って驚いていた。魔力を除いた能力値(アビリティ)の熟練度が、上昇値トータル300オーバーしていたから。

 

「えへへ~、凄いでしょ? ロキも見た時にはビックリしたんだよね~」 

 

 ティオネ達の反応を見たティオナは、【ステイタス】更新を頼んだロキの反応を思い出していた。

 

 いきなり更新して欲しいと頼まれた事にロキは珍しげに見ながらも更新した結果、とんでもない数値を叩き出した事に仰天していた程だ。ティオナの急上昇が余りにも予想外だった事もあって、今も執務室でフィン達と話し合っている。

 

「ちょっ、アンタ……! 一体どうやってそこまで上げたの!?」

 

「心当たりがあるとすれば、リヴァン君の特訓かな。って言うか、それしか考えられないよ」

 

 ティオネからの追求に、あっけらかんと教えるティオナ。

 

「リヴァンって、レフィーヤの従弟よね? でもあの子、【リトル・ルーキー】と同じく『Lv.2』の筈じゃ……」

 

 ティオネの言う通り、リヴァン・ウィリディスはベルと同じ『Lv.2』になったばかりの上級冒険者。だからこの前やった特訓程度で、ティオナの能力値(アビリティ)が急上昇するなど、普通に考えればあり得ない。

 

 本拠地(ホーム)の訓練場で、リヴァンがティオナと互角な戦いを繰り広げていたのを知っているが、直接見てない為に信じられないのだ。彼女はその時、アイズの付き添いでベルの特訓を見ていたから。

 

「でもあの子、本当に(すっご)く強かったよ。しかもエルフなのに打たれ強くて、あたしの攻撃を受けてもビクともしなかったんだから」

 

 数日前にやった特訓を思い出しながら、ティオナはリヴァンの実力を裏付けるように言っていた。

 

 聞き耳を立てている団員達も最初は信じられないようにザワついていたが、彼等はその時の特訓を直接見ている。それ故にティオナの発言を否定する事が出来ない。

 

 そんなアマゾネス姉妹の会話とは別に、今もティオナの能力値(アビリティ)が記載されてる用紙をジッと凝視する者がいる。

 

(私もティオナと同じく更新してみたけど、こんなに上がらなかった……!)

 

 アイズはベルの特訓に付き合った後、確認の意味も含めてロキに【ステイタス】更新をしたが、大して上昇しなかった。

 

 しかし、ティオナは自分と全く違う結果を示している。アイズが気になるのは至極当然だった。

 

 それどころかベルとは違う意味で、リヴァンに対する興味が更に湧くどころか、手合わせしたいという欲求も強まっている。

 

「これでまだ続けてたら、あたしもしかしたらアイズを追い越してたかもね!」

 

「そんな都合のいい展開にならないわよ」

 

「だから明日、またリヴァン君にあって特訓を――」

 

「ダメに決まってるでしょ!」

 

 いきなりおバカな事を言い出したティオナに、ティオネがすぐに却下した。

 

 他派閥との特訓は本来やってはいけない。それは相手に情報を与えてしまう行為であり、下手をすれば派閥の機密を盗まれる可能性もある。

 

 ベルとリヴァンの特訓相手をするなど極めて異例だが、アレは深い事情があった為にやらざるを得なかった。団長のフィンが許可を出さない限り、他派閥との特訓など以ての外である。

 

「いいじゃん別に~! もう知らない仲じゃないんだからさー!」

 

「団長が許す訳がないって言ってんのよ!」

 

 ギャーギャーと騒ぐアマゾネス姉妹に、他の団員達はまたかと言うような表情で聞き流し始めていた。

 

 しかし――

 

(絶対にリヴァンと会って手合わせする……!)

 

 アイズはティオネの注意を無視するように、フィン達に内緒でリヴァンに会いに行こうと決意するのであった。

 

 

 

 

 

 

「――って、ティオナが言ってたから」

 

「…………アイズ、そんな話を他派閥の俺に話してどうするんですか……」

 

 ティオナさんの能力値(アビリティ)が急上昇した事を話してくれたアイズに、俺は内心呆れるしかなかった。

 

 しかしそれとは別に、まさか本当にそうなっていたとは予想外だった。冒険者でなく、アークスの俺として戦った事で能力値(アビリティ)が上昇したのだろうか。【神の恩恵(ファルナ)】と言う仕組みは、フォトンと違って基準がよく分からない。

 

「一先ず横に置いとくとして……。で、本当に能力値(アビリティ)が上がるのかを確認しようと、俺と手合わせしたいと思って良いんですか?」

 

 ジェスチャーをした後に俺が確認の意味を込めて問うと、アイズは迷いなく頷いた。

 

 既に分かってはいるがこの人、本当に自分より年上とは思えない。加えて俺の気のせいなのか分からないが、彼女の近くに幼いアイズが何かを主張してるような気がする。

 

 フィン・ディムナは全く知らないだろう。いくら知り合いになったとは言え、都市最大派閥の団長が簡単に許可を出す訳がない。恐らく彼女の独断で此処へ来たはずだ。

 

「別に俺は構わないんですけど……今やるのは流石にちょっと」

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)を終えてオラリオへ帰還した直後、今まで蓄積していた疲労が急に襲い掛かってきた所為で、今は休養中の身である。

 

 休める時に休まないと身体がもたないから、今日は本拠地(ホーム)でゆっくり過ごそうと決めていたところ、アイズと言う予想外な客が来て予定が狂ってしまった。

 

「いつだったら良い?」

 

「そうですねぇ……」

 

 ベルや【ヘスティア・ファミリア】は引っ越しの準備やその他で忙しくなる為、それが終えるまでの間は俺一人でダンジョン探索する事になる。

 

 本当なら明日からアイズと手合わせしても良いけど、戦争遊戯(ウォーゲーム)の関係で俺も注目されてる身である為、ほとぼりが冷めるまでやらない方が良いだろう。

 

「では数日後にまた此処――」

 

「リヴァン! 今夜は祝勝会をやる予定、なん、だけど……」

 

 俺がアイズに予定を話してる最中、いきなり第三者の声がした。

 

 それも凄く聞き覚えのある声だった為に振り向くと、俺の相棒で友達のベルだ。

 

「あ、ベル」

 

 アイズもベルの声に反応して振り向いた。

 

「え? え? え? な、何で、アイズさんが、リヴァンと……?」

 

「ベル、落ち着け。お前は何か盛大な勘違いをしている。だからゆっくり話し合おう」

 

 俺はアイズを差し置いて、混乱してるベルを優先するのであった。




取り敢えず【アポロン・ファミリア】の戦争遊戯(ウォーゲーム)編は、これで終了となります。

次回以降からは何を更新するかは考え中です。

ダンメモ編のストーリー、クノッソス編、イシュタル編など色々迷っています。
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