もし楽と小咲が結ばれたら。   作:okapi

1 / 3
「ニセコイ」でずっと両想いだった楽と小咲ちゃんが結ばれることができていたら。
という私の願望が詰まったお話になります。



第一章「コクハク」

―天駒高原―

 

思い出の絵本の最後のページを見つけた時、私は10年前に起きたことの全てを思い出した。

それはとても短い間だったけど、楽しくて、嬉しくて、でも今になってみると切なくて、

そんな記憶だった。

 

 

そっか、私全部思い出した…

本当にみんなとここで過ごしてたんだね

そして一条くんは10年前の約束の男の子…

 

 

千棘ちゃんは、10年前も今も私たちのために…

そんなことも忘れて、私…

「ごめんね、本当にごめんね。」

 

 

思わず言葉に出してた。

この時の感情はとても整理できるものではないけれど、一条くんが約束の男の子だとわかった

安心感や嬉しい気持ちがないといったら嘘になるかもしれない。

でも千棘ちゃんのことを想うと、胸が苦しくなって涙を我慢できずにはいられなかった。

 

 

このままじゃ終われない。

もう一度あって話さないと…!

誰か1人だけが傷ついてお別れなんて絶対に嫌だ!

 

 

そう思って私は走りだした。

 

 

馬鹿だなあ私。るりちゃんに怒られちゃうかな。

でも放ってはおけないよ。

こういうところ、ずっと一条くんを見てきたからかな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

でもどこにいるんだろう、千棘ちゃん。

一条くんなら、場所がわかったりするのかな。ずっと一緒にいるもんね。

そしたらもう2人は再会してるかも。

 

 

悶々と考え事をしていると、

さっきまでいたお屋敷を出たところで上空をヘリが通った。

と思ったら、中から梯子が出てきて誰かが降りてくる。

あれは…

 

「万里花ちゃん!?」

驚いて降りてくるその人、橘万里花に向かって叫ぶ。

 

 

万里花ちゃんは綺麗に地面に降り立つと、私に声をかけた。

「お久しぶりですわね、小野寺さん。」

 

「う、うん。久しぶり。」

「って、万里花ちゃんどうしてここに!?」

「身体は大丈夫なの?」

 

「まあ色々ありましてね。安心してください、用が済んだらすぐアメリカに戻ります。」

「ところで小野寺さんこそ、こんなところで1人で何をしてるんですか?」

 

「私はさっき一条くんと別れて千棘ちゃんを探してたの。そしたらこのお屋敷を見つけて。」

 

「なるほどそう言うことですか。」

「その慌てた様子、それにこの屋敷…。もしかして小野寺さんも10年前のことを

思い出したんじゃありませんか?」

 

 

どきっとした。

やっぱり万里花ちゃん鋭い。

「うん。全部思い出した。」

「みんなとここで過ごした時間も、約束のことも。」

 

「それではついに覚悟を決めたんですのね。」

 

「えっ、ついにって…」

 

「何を言っているんですか?ずっと好きだった楽様に告白なさるのでしょう?」

 

「え!えええ!」

「私が一条くんのことその、好きなこと…知ってたの??」

 

「あら、むしろあれでバレていないと思っていたんですね…」

 

 

衝撃が走る。そんなに分かりやすかったんだろうか私。

「そんな…、じゃあもしかして一条くんも知ってたり…??」

「もしそうだとしたら私…どうしたらいいのーー!?」

 

 

てんやわんやな私の様子を面白く思ったのか、万里花ちゃんはクスッと笑った。

「安心してくださいな。どうやら私達の周りには感が鈍い人が多いようですので。」

「楽様もその1人ですわ。それにあなたも…」

 

「え?」

 

「いいえ。なんでもありませんわ。」

 

 

最後の方は声が小さくて聞き取れなかったけど、万里花ちゃんは

はぐらかすように話を続ける。

 

 

「実はさっき楽様にお会いしましたわ。上空から桐崎さんを見かけまして、

その場所をお伝えしました。」

「今はあの丘の上に向かっているはずです。」

 

 

そう言って指差した場所は、ここからそう遠くはなさそうだ。

一条くんがどこにいるかわからないけど、今から行けば合流できるかもしれない。

 

 

「万理花ちゃんありがとう!すぐ向かわなきゃ!」

 

 

場所を聞いた私はお礼を言ってすぐに目的地へと向かおうと身体をそちらに向ける。

「お待ちください。小野寺さん。」

 

「ひゃっ、何?万理花ちゃん。」

勢いを殺されたためか、間の抜けた返事をしてしまった。

 

 

「あの。私が言うのもなんですが、小野寺さんが楽様を慕う気持ちも本物だと感じました。」

「あなたにはお世話になりましたし、まあせいぜい頑張ってくださいな。」

 

 

万理花ちゃんは横を向きながらそう言う。

もちろん私が一番楽様を慕っておりますが。と素早く付け足した万理花ちゃんの横顔は、

なんだかほんのり赤くなっているようにも見えた。

 

 

「ありがとう…!私頑張るよ!」

いつも明るくて積極的な万理花ちゃんに私は憧れを抱いていた。

そんな人から応援をもらえたことが、素直にとても嬉しい。

 

 

「じゃあ今度こそ、いくね。」

そう言っていよいよ私は教えてもらった丘の上へと駆け出す。

ともあれまずは千棘ちゃんを見つけないと。

 

 

「やれやれ、私ったら本当に何をしているんでしょう。我ながらとんだお人好しですわね。」

「さて、今回は楽様も覚悟を決めてここにきたご様子でしたし、私も結末を見守らないといけませんわね。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

万理花ちゃんと別れてしばらく走っていると、

大きな岩が見えてきた。

私は動かし続けていた足をとめる。

あの岩には見覚えがある。そう、私たちが約束をしたあの場所だ。

確か岩の裏側に2人で名前を書いたんだっけ。

 

 

でも思い出に浸っている時間はすぐに終わった。

そのすぐ近くで、真剣な様子で話す一条くんと千棘ちゃんの姿が見えたから。

2人の顔はよく見えなかったけど、2人は向かい合って手を握っていたから。

 

 

一瞬思考が止まって、すぐにいろんな感情が溢れてきた。

さっきまでの嬉しい気持ちも塗り替えられてしまうほどに。

一条くんがもしかして私のことをなんて、勝手に舞い上がって期待してしまった自分が恥ずかしい。

 

 

「そっか、一条くんは千棘ちゃんのことが…」

今にも壊れそうな心をごまかそうとしてポツリと出た言葉が、余計に私を苦しめる。

泣いちゃダメ、祝福してあげなきゃ。

 

 

でも。

やだ。少なくとも今は。

そんなの無理だよ。

ごめんね一条くん。千棘ちゃん。

 

 

これ以上ここにいたくなくて、気づいたら私は来た道をまた走っていた。

いつもだったらすぐにバテてしまうだろう。そんなこと気にならないくらい、とにかくがむしゃらに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれからどれくらい経っただろう。1時間いや2時間くらいかな。

私はまたあのお屋敷に戻って、部屋の隅でうずくまっていた。

今の私はきっとひどい顔をしてると思う。こんな姿を見たら一条くんはどう思うかな。

優しいからきっと心配してくれるだろうな。

 

 

「せめて想いを伝えたかったなあ。」

 

 

どうしようもなく彼のことが好きなことがわかったけれど、今さらどうしようもない。

早くみんなのところに戻らないと。なんて言い訳しよう。

でも戻ったら一条くんと千棘ちゃんもいる。幸せな2人を見るのも辛い。

 

 

そんな風にしばらく塞ぎ込んでいたら、その暗い殻を破るかのように私を呼ぶ声が気こえた。

 

 

「おーーい、おのでらーーー!」

「どこだーーー!」

 

 

聞き間違えるはずもない。大好きな彼の声だ。

「一条くん…」

やっぱり探しにきてくれたんだ。でも今は。

 

 

それからすぐに私のいる部屋の扉が勢いよく開いた。

「小野寺!?ここにいたのか…」

「よかった…。大丈夫か小野寺。」

 

 

息を切らして大量の汗を流しながら一条くんは私に優しい声をかけてくれる。

 

 

「どうしたんだよ。どこにもいないから心配したぞ。」

 

「あはは、実は気がついたらここで寝ちゃってたみたいで。」

優しい彼をこれ以上心配させたくなくて、嘘をついた。だけど。

 

 

「小野寺?さすがにそれは、誰でも嘘だって気づくと思うぞ。」

 

「本当に何があったんだ。その、俺で良ければ話してくれないか?」

 

 

もっと嘘がうまければいいのに。この時初めてそう思った。

でももしかしたら、気づいて欲しかったのかな。

 

 

「さっきね、私見ちゃったの。一条くんが千棘ちゃんに告白するところ。」

 

 

「え、それって。小野寺まっ」

「それでね私!本当に今こんなこと言うのは迷惑だってわかってるんだけど、聞いてほしいことがあるんだ。」

一条くんが何か言いかけたけど、私はそれを遮った。

気持ちを伝える最後のチャンスだと思ったから。

そんないつにない私の真剣さに驚いたのか、一条くんは静かにうなずいてくれた。

 

 

「私…。ずっとずっと一条くんに言えなかった事がある。」

「何度も何度も言おうとして、その度に上手く言えなくて…」

 

 

「それに初めて気づいたのは中学生の頃だったの。私にとっては二度目の、でも本当は初めての。」

「私が好きになった人…」

 

 

一条くんが驚いた顔をしてる。

がんばれ。あと少しだ私。

深呼吸をして、一条くんの目を真っ直ぐ見る。

 

 

「一条くん。私、一条くんが好きです。」

「ずっとずっと、好きでした。」

 

「こんな時にごめんね。」

 

 

悲しい気持ちを隠すように、精一杯の微笑みで彼に想いを伝えた。

何秒かの沈黙がながれる。とても長い時間に感じる。

 

 

沈黙を破ったのは一条くんだった。

「俺も好きだよ。小野寺。」

「小野寺と一緒だ。中学の頃からずっとずっと、好きだったんだ。」

 

 

え?一条くんは今なんて言ったんだろう。

私はついに幻聴を聞いてしまったのだろうか。

 

 

私の理解が追いつかないことを察したのか、一条くんはさらに続ける。

「何から話せばいいのか。さっき小野寺が言ってた、千棘への告白っていうのは誤解だよ。」

 

「さっきはさ、千棘に告白されてきたんだ。」

「そんで俺、そいつを断ってきちまった。」

 

 

そんな。一条くんの言葉を聞いてまた私は固まった。

今日は動揺しっぱなしだな、私。

 

 

「どうして…?」

 

 

震える声で、ようやく口を開いた。

 

 

「言ったろ、俺は小野寺が好きなんだ。ずっと前から。」

 

「でも、私は千棘ちゃんみたいにすごい才能もないし、素敵な女の子じゃないんだよ…?」

 

 

嬉しいくせに、なぜか否定してしまう。

多分もっと確かめたいんだ。彼の口から出る言葉を聞きたいんだ。

 

 

「今から最低なこと言うけどさ、俺ついこの間まで小野寺と千棘の両方を好きになっちまってたみたいなんだ。」

「人から言われるまで気づかなかったんだけどよ。」

 

 

「そんな時橘の結婚騒動があって、あいつのいつでも真剣に生きる様を見たら

自分の気持ちにも真剣に向き合って考えなきゃいけないと思った。」

 

 

「その時気づいたんだ。確かに千棘といるときは楽しくて、腹の底から笑って。

あいつなら俺の知らない世界にも連れて行ってくれるかもしれない。」

「でも。」

「俺はずっと、小野寺のそばにいることが幸せだったんだ。小野寺と話して笑って、

この人と一緒にいられたらきっといつまでも幸せだろうなって。」

 

 

「小野寺は誰にでも優しくて、他人を幸せにできて、少しおっちょこちょいだけどそんなところも可愛くて、だからたまらなく好きなんだ。」

「それじゃダメか?」

 

 

あれ、どうしよう。涙が止まらないよ。

 

 

「ううん…!ダメじゃない。」

「嬉しいよ…。本当に、嬉しい…」

 

 

もっと可愛い声で返事をしたかったけど、涙でぐちゃぐちゃだ。

そんな私につられてか、なぜか一条くんも泣いていた。

 

 

「どうして、一条くんが泣くの?」

 

 

「俺だって小野寺から好きって言ってもらえてすげえ嬉しいんだ。」

「ずっと両想いだったことに気づかないなんて、馬鹿だな俺たち。」

 

 

そう言って泣きながら笑う一条くんを見て、私もようやく本当に笑った。

思えばお互いの気持ちに気づくチャンスはたくさんあった。本当に馬鹿だね、私たち。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しばらく2人で余韻に浸っていたら、今度はみんなの呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「そろそろみんなのところにいかないとね。」

 

「おう、そうだな。めちゃくちゃ怒られそうで怖えけど。」

 

「ふふ、しょうがないよ。一緒に怒られよう。」

勝手に舞い上がったり落ち込んだり、結局一条くんにもみんなにもたくさん迷惑かけちゃったな。あとで謝らないと。

そう思いながら一条くんと一緒に部屋の外に向かう。

 

 

「ねえ、ところでどうして千棘ちゃんの手を握ってたの?」

ふと思い出して聞いてみた。

 

「あ、あれはその…。いろいろあってあいつの気持ちにも真剣に答えてやらなきゃいけないと思ったから。」

「決して変な意味じゃないからな!」

 

「一条くんらしいね。」

やっぱり一条くんは誠実で優しい。

 

「あの、さ。ここから出るまでの間手を繋いでもいい、かな?」

我ながら少し大胆な台詞に、一条くんがドキッとしたのがわかった。

 

「あ、ああ!もちろんだ!」

「ほら、手出せ。」

 

「うん。」

 

 

そして私たちはみんなと再開する少し前まで手を繋いで2人で歩いた。

いつかのクリスマスの時とは違う、今度は恋人繋ぎで。

 

Fin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでくれてありがとうございました。
こういった小説の投稿が初めてなので、至らない部分も多かったと思います。

最近原作を読み返して、小咲推しだった私は当時原作の終わり方に
ショックを受けたことを思い出したので今回このifストーリーを書こうと決心しました。
1人でも多くの同じ思いの人が報われれば幸いです(笑

今後この続きやサイドストーリーも書きたいと考えているので、
その際はまたみてくださると嬉しいです!

今後の創作意欲にも繋がるので、よければ感想・評価お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。