お前のような哲学者が居るか   作:神撃のカツウォヌス

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第1話

 ドイツ

 

 とある公園のベンチにて、本を読む。

 心地良い風が頬をなでる。

 季節は秋。所謂、読書の秋だ。

 別に秋だから外で本を読んでいるわけではない。

 時々、外の空気を吸いながら本を読み、リフレッシュしている。

 というのもこの本、何度も読み返したものであり内容は全て覚えている。故に真剣に読む必要はなく、木々の擦れる音をきいたり雲が流れる様子を見るのがメインだ。そして時々、読み進め1ページめくる。

 こうしてリフレッシュすることで、更なる()()を可能としている。

 

 しばらくして、昼食の時間が来た。

 本を閉じ、どこかの喫茶店にでも寄ろうと立ち上がった時、視界の端に黒い眼帯をした女性の顔がみえた。

 

「何か用ですか?」

「い、いえ!その、用というより、アナタの読んでいる本が気になりまして…」

「これですか?ただの錬金術の本です」

「錬金術!?も、もし宜しければ読ませて頂けませんか!?」

 

 …凄い食い付きだな。

 思わずのけぞってしまった。

 

「…私は今から喫茶店へ行こうと思っていたのですが。

貴女さえ良ければ一緒にどうです?この本がとても気になるようですし」

「是非!御一緒させてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し歩き、近くの喫茶店へ入る。

 適当な席に座り、互いに軽い自己紹介をする。

 

 彼女の名は“クラリッサ・ハルフォーフ“。

 ドイツ軍に所属しており、階級は大尉、部隊の副隊長を務めているそうだ。

 今日は休暇をもらったので本屋へ向かう予定だったらしい。

 眼帯をしているのは部隊の誇りだそうで、怪我をしているわけではないらしい。

 

「では貴方は、教師なのですか?」

「いえ、違いますよ。時々、大学へ外部講師として赴いているだけです」

 

 そう、私は時々、講師として大学から呼ばれる事がある。

 様々な分野においてそれぞれの界隈では有名らしく、私の噂を聞いた大学から依頼されるのだ。

 1度の講習でそれなりの報酬が貰えるので嬉しい限りだ。

 

「外部講師……。!もしかして錬金術!?」

「哲学です。これはまぁ、ちょっとした趣味ですよ。

そもそも今の時代、オカルトじみたモノに興味を持つものなど殆ど居ない。ましてや錬金術などつまらないと思うのが大半でしょう」

「そんなことはありません!少なくとも私は興味があります!」

 

 こちらに前のめりになってそう言った。

 

「…先ほどもそうでしたがすごい食いつきですね。理由を伺っても?」

「あ、失礼しました…。理由ですね」

 

 そういってハルフォーフは私に語る。

 どうやら元々日本の少女漫画のファンであるらしくそこからライトノベルやゲーム等、日本のサブカルチャー文化に傾倒。つい最近、錬金術を話題にした漫画を読み興味が沸いたそうだ。

 なぜ声をかけてきたかも訊いてみたが、乙女の感、だそうだ。

 

「なるほど、そうでしたか。

それで、錬金術についてどこまでご存知です?」

「えーっと、ホムンクルスという人造人間を生み出したり、賢者の石を作ったりとかですよね?」

「よくご存知で。ちなみに、金の生成自体は理論上可能ということは知っていますか?」

「できるのですか!?」

「えぇ。ただまぁ金1グラムを得るのに莫大なコストと時間がかかるので実質不可能ですね。」

「なるほど。流石に漫画にはありませんでした」

「まぁそういうものです。細かく設定が練られているのは、あくまで漫画を楽しめるようにですから。」

「たしかに、漫画の中でいきなり現実の話を持ち出されても困りますね。」

「…そういえば、貴女は本を買いに行く予定でしたがどちらへ?私はこれから2ブロック先の本屋へ行くつもりですが」

「!私もそこへ行くつもりでした。あの、せっかくですし一緒に行きませんか?」

「えぇ、構いませんよ」

 

 互いの目的地が一致していたので揃って向かうことにした。

 ちなみに、会計は個人で済ませた。初対面であるし妥当な所だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本屋にて

 

 私は既に目当ての本の購入を済ませ、今はクラリッサの本探しを手伝っている。

 (ここにくる道中、クラリッサと呼んでくれと頼まれた。そのほうが呼ばれなれているそうだ)

 

「…ここは他のところに比べて本の種類が多いですけど、探すのが大変なんですよね」

「私はそうは思いませんが…」

「実は日本の漫画とかラノベって結構人気で、置いてる店って多いんですよ。種類も多いので他の文学書とかに比べて探すのが大変なんです、ここは特にそうで」

「なるほど、そういうものか。………ここにあるのがそうじゃないか?」

 

 そういって目の前の棚を指差す。

 

「そうです探していたやつです!ありがとうございます!

それにしても、よくそんな簡単に見つけられましたね。私が初めて探したときはすごく時間が掛かったのに…」

「私は()()()()のでね。探すのは得意です」

 

 探していた本を抱え会計へ向かうクラリッサ。

 その間に私はもう1冊、本を探しだし会計へ向かう。

 

「あれ?もしかして買い忘れですか?」

「そんなところです」

 

 会計を終え、時間を確認すると時計は15時20分を示していた。

 クラリッサは17時までに帰らなければならず、ここから基地までは徒歩で1時間は掛かるのでちょうどいい時間といえるだろう。

 帰り道が途中まで同じなので雑談を交えながら並んで歩く。雑談と言っても私のほうは特に話すようなことが無いので、自然と彼女の仕事である軍隊の話となる。

 

「軍というのはやはり大変ですか?」

「まぁ大変と言えば大変ですかね。訓練もありますが、いろいろな手続きや細かい確認が必要な事務作業のほうが疲れますね」

「なるほど、正直意外ですね。軍隊といえば厳しく辛いものというイメージばかりですから」

「意外なのは私のほうですよ。軍の男性のほとんどがISに嫌悪感を持っていて、女性というだけで嫌な顔をされることが多くて…。そういう人ばかりでない事はわかっているのですが…」

「私としては仕方ない、としか言えませんね」

 

 …本音を言えばくだらない。男だから、女だから。そんなことを考える時点でどちらも愚か者でしかない。

 しかし、わざわざ口にする必要な無い。

 

「それだけじゃないんです…って、こんなこと愚痴ってもしかたないですね、あはは…」

「愚痴は時々吐き出したほうがいいですよ。溜め込みすぎると体に毒ですから」

「…ありがとうございます」

「いえ。…おっと、どうやらここまでのようです」

「あ…。もうこんなに歩いていたんですね、時間が経つのは早いです。では、私はここで。今日はありがとうございました」

「こちらこそ。それでは…っと、その前にこれを」

 

 そういって先ほど追加して買った2冊の本を渡す。

 

「これは…」

「経緯がどうであれ、錬金術に興味があるという貴女へのプレゼントです。初心者でも比較的わかりやすいものと、私の持つのと同じものを買いました」

「いんですか?」

「えぇ。迷惑でなければ」

「そんな、迷惑だなんて…。ありがとうございます。大切にしますね」

「では失礼します。縁があればまた遭いましょう」

 

 そうしてそれぞれ帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それにしても…。

 ()()()()だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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