お前のような哲学者が居るか   作:神撃のカツウォヌス

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ここから展開を早めることにしました


第11話

 凰鈴音(ファン・リンイン)

 中国の国家代表候補生であり、このIS学園に途中編入してくる事になった。

 何故、編入という形なのだろうか。代表候補生にはなれる程度ならば入試で落ちるとは考えられず、聞いたところによると元々ここに来るつもりはなかったらしい。

 織斑教諭、山田教諭のどちらも詳しくは知らぬようだが、そこまで重要な話でもないか。どのような理由であろうと新しく生徒が増える、という事実が変わるわけでもない。

 そんな事を考えていたからか。

 

 スパンッ!

 

ホームルーム(HR)の時間だ、教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

 

 件の生徒が入り口を塞いで何かしていたのが目に入った。

 

「織斑先生と呼べ。入り口を塞ぐな、邪魔だ。そしてさっさと自分の教室に戻れ」

「は、はい…!すみません!」

 

 相変わらず生徒に厳しい一組の担任。

 どうやら織斑教諭と…否。織斑姉弟と面識があったようで、あの天敵と相対したような怯えも過去に何度か経験しているのなら納得である。

 

「ふん……では、HRを始める。席に着け―――」

「い、一夏さん!さっきの方とはどういう関係でして!?」

「…えらく親しいそうだったが、今のは誰だ?」

 

 スパンッ!スパンッ!

 

「聞こえなかったか?席に着けと言ったんだが」

 

 二人だけでなく、同じように質問しようとしていた他の生徒も慌てて席に戻る。

 まるで恐怖政治だな。

 

 

 

 

 

 

―――――

―――

 

 

 

 

 

 

「そうだな……篠ノ之、ここを答えてもらおうか」

「……」

「…おい?」

「……」

 

 スパンッ!

 

「いっ…!?」

「授業に集中しろ……オルコット、答えろ」

「……」

「…オルコット」

「……」

 

 スパンッ!

 

「痛っ…!?」

「授業中だ、集中しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……篠ノ之、オルコット」

「「……」」

 

 スパンッ!スパンッ!

 

「いい加減にしろ」

「「す、すみません……」」

 

 

 

 

 

 

―――――

―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

「先輩が溜め息なんて珍しいですね」

「あの二人ですか?」

 

 結局、篠ノ之とオルコットの両名は、午前だけでそれぞれ3回の出席簿アタックを受けた。

 

「言ってもわからぬどころか痛い目にあってもあれだったからな。呆れて溜め息の一つ二つくらい溢したくもなるさ」

「思わぬ恋のライバル(仮)の出現で気が気でないのでしょう。まぁ、授業を聞かぬ理由にはなりませんが」

「…わかるのか?そういうことには疎いと思っていたが」

「とある友人のおかげですかね。そうでなくとも、あの様子を見てわからないのは彼だけでしょう」

 

 いくら恋愛に鈍くても殆どの人は、あそこまであからさまな様子を見れば流石にわかるだろう。その殆どから外れているのが織斑一夏なわけだが。

 そういえばこの際だからついでに聞いておこうか。

 

「ところで、織斑教諭は凰と面識があったのですか?」

「まぁな。一夏が小学5年の時に転校してきてな。そこから中学2年になって中国へ帰るまでに何度か家に遊びに来ていたからその時ににな」

「随分貴女に苦手意識を持っているようでしたが?」

「さぁな、身に覚えが無いからな。向こうが勝手にそう思っているだけだろう」

「…先輩って目つき鋭いですからそのせいなんじゃ……」

「何か言ったか?山田君」

「い、いえ!」

「……」

 

 そういうところだろう、と言いかけるがそのまま飲み込む。口は災いの元だ。

 ……山田教諭に助け舟を出すか。

 

「ところで織斑教諭」

「なんだ?」

「もうすぐクラス対抗戦ですが、織斑はどこまでやれると思います?」

「…鳳か」

「えぇ。代表候補生ですし、少なくともオルコット程度の実力はあるでしょうし」

「わたしは結構いいところまでいくと思います。オルコットさんをあと一歩のところまで追い詰めましたし、もしかしたら勝てるかもしれませんね」

「それはどうでしょう。オルコットの場合は油断と初見だったのが大きいですから」

「シーク殿の言うとおりだ。それに機体同士の相性もあるし、織斑が素人に変わりはない」

 

 代表決定戦の時や此度の対抗戦。

 事前に相手の機体データを調べておけば対策を組んで優位に立てるが、そこまで頭が回る生徒は少なくとも今の一組の中には居ない。

 仮に調べたとしても、そこから対策を練り、練習を積むには間に合わない。

 本人のセンスが問われる戦いだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦当日

 

 

 

 対戦カードは初戦が一組VS二組、いきなり専用機同士の試合となっている。

 偶然かもしれんが学園側で仕組んだ可能性が……無いな。態々そんな事をするメリットが無いし、2戦目以降が盛り上がりに欠けるかもしれないのはデメリットだろう。

 そしてその件の代表二人は言い争ってるようだ。

 

「何を言ってるのでしょうか」

「さっぱりわからん。ん?何か慌ててるようだが…」

「シーク先生、何を言ってるかわかりませんか?」

「何故、私に聞くのです?」

「いえ、読唇術とかできそうですから」

「…できませんが言ってることはわかりますよ。謝るなら手加減する、もし自分が勝ったら言うことを聞いてもらう。こんなところでしょう。まぁ、織斑が凰を泣かせただの転校して早々に喧嘩しただのといった噂とあの二人の様子から推測しただけで、実際は全く違うことかもしれませんが」

 

 そんな他愛も無いことを話しているうちに、試合が始まった。

 武装が「雪片弐型」しかないこともあり開始早々に突っ込む織斑に対して、凰は大型の青龍刀「双天牙月」で持って受ける。前回の反省を生かし単一仕様能力の零落白夜を常時稼動させることはしていないが、それでもいくらかの無駄が発生しているので最大効率にはまだまだ程遠くい。また、鳳の防御が安定しているのでなかなか崩せず、このままではジリ貧である。

 

「攻めあぐねていますね」

「織斑はともかく凰も近接戦闘が主だからな。どちらも自身の得意である以上、経験の少ない織斑では分が悪い」

「正直すぎる動きに加え、長引くと不利になる焦りがそれを助長している」

「がんばれ一夏…!」

「一夏さん……」

 

 このままではダメだと判断したのか、一度距離を取る織斑。

 だがそれは悪手だ。

 突如、織斑が吹き飛ばされる。

 

「なんだ!?何が起きたのだ!?」

「”龍砲”。第3世代型兵器だ」

「龍砲…」

「山田君、解説を」

「はい。空間自体に圧力をかけて砲身をつくり、砲弾の代わりに衝撃を撃ち出す衝撃砲です。その性質上、射角限界が無く、砲弾はおろか砲身すら目に見えないのが特徴です」

「それじゃあ避けようがないじゃありませんか!?」

「いや、そうでもない」

 

 額面通り受け取ればそう思うだろうが、この龍砲には弱点が多い。

 

「あくまでも衝撃でしかないのだから実弾より射程は劣り遠距離から攻撃されれば対処は難しい。そして砲身を生成するところから始める以上連続して攻撃はできない。また、空間を圧縮する際の温度変化を見れば擬似的に見えるようになる、密度が高くなると温度は上がるからな。ISのハイパーセンサーならそれを見ることも可能だろう」

「ほぅ、シーク殿はISにも造詣が深いのか?」

「解説を聞けばこの程度のことは考えられるだろう。それに、鳳の場合は攻撃の意思が表情に出る。それを見ればタイミングは読める」

「……たしかに。何となくわかりますね」

 

 解説をしているうちに織斑の顔つきが変わり、鳳に向かって突っ込む。

 どうやら隙を見て懐にもぐりこみ零落白夜での一撃に賭けるようだ。これが決まれば素晴らしい逆転劇になるが、そう上手くはいかなかったようだ。

 

 アリーナに走る閃光と衝撃、そしてシールドバリアの破壊される音が響く。

 

「何事だ!?」

「高熱の何かがアリーナのバリアを破壊したようです……こ、これは!?ISです!」

 

 山田教諭が襲撃者の正体を確認するとほぼ同時に砂煙が晴れ、ISの姿が確認できる。

 黒い全装甲(フルスキン)の機体。武器らしきものは持っておらず、機体の大きさの半分を占める巨大な腕が特徴的だ。

 …っと、観察はこの程度にしておこう。

 

「どうやらアリーナの観戦席の出入り口が開かないようですね」

「外部からのハッキングのようです!急いで対応していますが…」

「…客席の専用機持ちに扉を破壊させましょう。緊急時ですし致し方ないでしょう」

「しかし……いや、そうだな」

 

 幸か不幸かマイクは通じたので、提案した通りに呼びかける。あとは外に待機している者にまかせればとりあえず観客は大丈夫だろう。

 あとは問題の所属不明のISだが…。

 

「…いや、やらせてみてもいいだろう」

「織斑先生!?」

「ただし!教員が到着するまでだ。その後は速やかに退け、いいな?」

 

 …その場に居合わせているとはいえ、生徒に対応させるとはそれでも教師か?

 織斑の性格だ、時間稼ぎをすると自分から言い出したのだろうが。姉弟揃って何を考えているのか。

 

 ん?

 

「篠ノ之が何処かへ行ったようですが?」

「何だと?」

「えぇ!?こんなときに……」

 

 この非常時に何を考えているんだ。

 あの性格なら自分だけ逃げるという選択肢はなく、あったとしても今の時世、ブリュンヒルデの側に居るほうが安全と考えるのが自然だろう。

 意中の相手が心配でいても立ってもいられなくなったというところ―――『一夏!』

 

『男なら…男なら、それくらいの敵に勝てなくてどうする!』

 

 そんな大音量を出せば、標的にされるのは自明の理。

 案の定、襲撃者は篠ノ之に向けて砲撃。織斑が間に割って入ろうとするが間に合わず、このままでは篠ノ之はただではすまない。

 全く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余計な手間をかけさせるな」

「……え?」

 

 教師として、生徒を見殺しにするわけにはいかないからな。

 

「色々言うことがあるが、それは後だ」

 

 篠ノ之は何が起きたのかわからないって顔をしているがそれはしょうがない。

 ()()()()()()()()ように動いたのだからな。

 緊急時故、かなりの不自然さはあるが納得できる範囲での説明はできる。

 …さて、呆けている連中を何とかせねばな。

 

「織斑、篠ノ之は無事だ。さっさとそのガラクタを沈めろ」

 

 無事だったマイクを使って篠ノ之の無事を伝える。

 あの砲撃は連射できないのは観察済みだ、危惧することは何一つ無い。

 

「一先ず騒動は治まったな。まずは織斑教諭のもとへ戻るぞ」

「…はい。あ、あの、助けてくれてありがとうございます」

「生徒を助けるのも教師の仕事だからな。これに懲りたら、勝手な行動は慎むことだ」

 

 放送室を出て以降は会話は無く、管制室まで戻る。

 山田教諭は涙を浮かべ、織斑教諭は呆れつつも鬼の形相なのは流石というべきか。

 

「篠ノ之さん!無事でよかったです…!」

「お前がしたことは到底許されることではない。反省文を50枚書いてもらう」

「……はい」

「だが、お前が無事でよかった」

「…千冬さん……!」

「わかったらさっさと行け」

 

 我々に一礼をして退出する篠ノ之。

 一先ずの騒動が治まったことと、生徒が無事だったことに安堵した様子の二人。 

 と、そこで何かに気付いた織斑教諭が質問してくる。

 

「シーク殿、篠ノ之を助けてくれて感謝する。だが、何をしたのだ?ここ(管制室)から放送室まではそれなりに距離があるが…」

「篠ノ之が居ないことに気付いてすぐ向かったんですよ。あの性格ですからね、行き先はすぐわかりましたよ」

「それならギリギリ間に合うか。だがあの砲撃はどうやって…?」

「着いてすぐに篠ノ之を引っ張りましたから。角度があったことが幸いしました、ギリギリでしたが」

「……そうか。ともかく、篠ノ之を助けてくれたことを改めて感謝する」

「いえ、教師ですから」

 

 多少こちらを訝しんでいるが大丈夫なようだな。

 自分でもかなり無理がある説明だったと思うが他に良い言い分はなく、納得してくれたのならそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園地下

 

「所属は不明。コアは未登録で損傷が激しく使用は不可…」

 

 襲撃してきたISを回収し、地下の極秘解析室にて所属や登録ナンバーを調べる。

 極秘と言うので私には無関係かと思ったが、私が居ればわからない事が少ないだろうとのことで学園長直々に同伴してほしいと言われたそうだ。

 

「未登録のコアで無人機。この時点で該当する人物は一人しか居ませんが、たしか織斑教諭とは親しい間柄でしたよね?」

「…さぁな、少なくとも私は何も聞いていない。あいつが何を考えているかはわからん」

 

 事実がどうであれ、あのウサギ(天災)が態々こんなものを作って介入してきたのは、十中八九織斑が目的だろう。

 成長具合を見るためか、ただ面白半分で事を起こしたか。

 

「…とにかく。このISの所属も何もかもが不明でコアは使えない」

「しかし先輩…」

「……」

「…まぁ確かに状況証拠だけで確証はありませんからね。それに、そもそもコンタクトが取れないですから」

 

 都合・不都合は今に始まったことではない。

 第一、当人に動機を聞こうが何を言おうがどうにもならない。

 

「さて、今日はもう他にやるべき事はないからな。飲みにいかないか?」

「いいですね、行きましょう!」

「明日は臨時休校になったので気兼ねなく飲めますね」

「店は私に任せてもらえるか?いいところを知っているんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここですか」

 

 いいところがあると言われ連れてこられた場所は小さな居酒屋。

 織斑千冬(ブリュンヒルデ)ほどの人物ならばそれなりに値の張る店を選ぶと思っていたが、世間の評価と本人は関係ないということだな。

 

「あぁ。IS学園から近く、尚且つ周りを気にせず飲めるから気に入っているんだ」

「私もよく連れて来てもらってるんですよ」

「なるほど。有名人はこういうところで辛いですね」

 

 中へ入るとすぐに奥の個室へ案内される。

 なるほど、行き着けなだけあってスムーズな対応だ。

 

「ところでシーク殿は飲める口か?」

「ビール大国ドイツ出身ですよ。それに、飲もうと提案したのは私です」

「それもそうか。とりあえず生3つとからあげを2つ」

 

 まぁ飲めるというより「酔う事ができない」が正しいが、真実をそのまま言う必要は無い。世の中には知らなくていい事が多々ある。

 空いているからか、そう時間が経たないうちに注文の品が届いた。

 

「実はな、これはシーク殿の歓迎祝いでもある。ただ飲みたかったのもあるがな」

「本当は他の先生も誘いたかったんですけど、みんな用事があってなかなか…」

「仕方ないでしょう。全員が全員都合がつくわけではないですし」

「まぁともかく、ようこそIS学園へ。乾杯」

「「乾杯」」

 

 一気にビールを呷る。

 

「…っはぁ~!やはりビールはいいな。疲れが吹き飛ぶ」

「酒は一日の長、っていいますからね」

「織斑教諭はともかく、山田教諭までいい飲みっぷりですね」

「いつも先輩につき合わされているので自然と…」

「だがすぐダウンするがな」

「先輩が強すぎるんですよ…」

「たしかに。天下の織斑教諭が酒に弱いとは考えられませんからね。潰れた山田教諭を連れて帰る様子が目に浮かびます」

 

 雑談を交えながら酒を飲み、無くなればつまみとセットで頼み、また飲み進める。

 

 教師としての威厳が無い。生徒から尊敬されたい。

 山田教諭の愚痴だが、それほど苦労しているのか普段からこういう場で一気に発散しているのだろう。

 織斑教諭は主に弟の織斑一夏についてだな。

 まだまだ未熟だ。あの唐変木に何人が涙を流したか。

 やはり流石の彼女でもこれだけ飲めば少々の酔いが回ってくるのか、姉としての弟の愚痴が多くなっている。

 

 おや?

 

「山田君はもうダウンか。いつもならもう少し飲めるのだが…」

「我々はかなりのハイペースで飲んでいますし、ついてこようと無理したのでしょう」

「そういうお前はまだまだ大丈夫なようだな?」

「貴女もですよね?」

「これでも少しは酔いが回ってきているさ」

 

 とジョークを言いつつもやはり余裕にしているのは流石と言うべきか。

 そうだな、今のうちに伝えておくか。

 

「そういえば織斑教諭に伝言があります」

「ん?私にか?」

「えぇ、クラリッサ・ハルフォーフからです。”部隊を指導していただき、改めてありがとうございます”とのことです」

「別にそうかしこまらずともよかったのだが、わかった。たしかに聞いたぞ。それにしてもハルフォーフと接点があったとはな」

「休暇中の彼女と偶然街中で出逢いましてね。偶々私の読んでいる本と彼女の趣味が合致したので、それ以来何度か会ううちに親しくなった次第です」

「ほう、あいつの趣味と。何を読んでいたんだ?」

 

 面白いものを見つけたと言わんばかりにニヤニヤしている。

 一時期とはいえ教官をやっていただけはあるのかクラリッサの趣味は知っているようで、どうやら私がそういう方面の趣味があったのかと思っているようだ。別に間違ってはいないが少々ジャンルが違う。

 

「楽しそうなところ残念ですがたいした本ではありませんよ。ただの錬金術書ですから」

「…それはそれで気になるのだが…」

「錬金術と言ってもあくまでも化学の歴史書のようなものですよ」

「折角いじりがいのありそうな話題を見つけたと思ったのだがな…」

 

 そこまで残念がられるとは…。少しだけ楽しませてやろうか?

 

「…突然の話ですが最近映画を観に行きましたよ、CMで話題だったアレです」

「あぁ、あの映画か。面白そうだと思っていたんだ。まさか一人で行ったのか?」

「まさか、映画館は複数で観に行くのが楽しいでしょう?クラリッサと行きましたよ」

「…なんだ惚気か?そういうのは勘弁してくれ…」

「態々いじりがいのある話を切り出したのですがね」

「それとこれとは話が別だ。私だってそういう相手がほしいとは思っているのだ」

「いえ、そんな事言ってませんが」

「別に高望みしているのではない。芯がしっかりしていればごく平凡な相手でも構わないのだがなかなか―――」

 

 どうやら変に気を回したせいで余計なスイッチを入れてしまったようだ。

 いつだかの店主が言っていた高嶺の花というのは間違いではなかったようで、本人が気にしなくともその相手が気にするので結果誰とも近しい関係にならない悲しい現実が目の前にいる。

 ふと、時計を見るとそろそろ帰る時間だ。

 

「そもそも世界最強と称えられてもこんな肩書き私はいらないんだ。大会に出たのだって一夏の面倒を見るために」

「ストップ。いろいろあるのでしょうがそれはまた今度。もう時間ですから」

「む?もうそんなに経っていたのか」

「楽しい時間は早く過ぎさるものです」

 

 未だダウンしている一名を連れて勘定を済ませて店を出る。

 ぴったり割り勘できる金額で、山田教諭の分まで織斑教諭が払い後日徴収することになった。何でも毎回同じ状況になるそうだ。

 

 

 

 翌日、山田教諭は二日酔いに悩まされたらしい。

 

 

 

 

 




織斑先生って高嶺の花すぎて、きっと灰色の青春時代だったに違いない
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