お前のような哲学者が居るか   作:神撃のカツウォヌス

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国の対応が雑かもしれませんがこの世界なら多分雑なくらいがいいと思う()


第15話

 

 波乱の臨海学校から数日。

 夏休みに入ったIS学園では、専用機組と楯無、そして千冬が教員寮のシークの部屋を訪れていた。

 

「…本当に人が住んでいた部屋なのか?」

「全然生活感がないんだけど…」

 

 彼の部屋は備え付けられたベッド等を除き何も無かった。

 食器も衣類も趣味に関する物も何もだ。

 

「ここに色々仕掛けに来る度に思っていたわ。本当に住んでいるのかって」

「仕掛けるって何をですか?」

「そりゃもちろん盗聴器とかカメラとか。万が一ってこともあるし」

 

 何事も無く混じっている楯無だが初め現れた時は怪しさ満点だった。事情をある程度知っている千冬が説明したことで一夏たちは受け入れたが。

 生徒を守るのが生徒会長の責務とは聞いていたが、盗聴器や隠しカメラの話を改めて聞かされると代表候補生はともかく、一夏と箒はあまりいい顔ではない。

 

「何かわかったの?」

「何も。仕掛けてもすぐに壊されたし、監視にも気付かれていたわ」

「…しかし、これでは何も分からんぞ」

「何か手がかりは無いのでしょうか…?」

 

 いきなり手詰まりかと思われたがこの場には二人、シークの知人を知っている者がいる。千冬とラウラだ。

 

「クラリッサはどうでしょう」

「奇遇だな、今そう思っていたところだ」

「…誰なんだ?」

「私の部下だ。副隊長を務めている。ここへ来るときによろしく言うようにと言われていたんだ」

「かなり親しいようだったからな。ハルフォーフなら何か知っているかも知れないが…」

 

 そこで千冬は言い淀み、ラウラは少し暗い顔をする。

 何故なら、まだ彼女に話していないのだ。福音戦はもちろん、VTシステムの件も未だに。

 

「…この際に話せる範囲で全て話します。それに、近いうちに上から聞かされるでしょうから…」

「わかった。何かあれば私に変われ」

「はい」

 

 するとラウラの端末に電話が掛かってきた。

 相手はクラリッサ。

 驚くがすぐに出る。

 

「私だ」

『隊長!今上から通達があったのですが…』

 

 内容はシークについてだ。

 

 銀の福音暴走事件の詳細は国際IS委員会にも報告された。

 福音は凍結処置がなされ、シークに関しては事のあらましと篠ノ之束に次ぐ重要人物として各国の軍・自衛隊の上層部には知らせるつもりだが、ドイツだけは軍全部に知らせることにした。

 テロリスト壊滅事件の生き残りの捕虜が襲撃犯がシークだと言ったとの報告を聞いていたからだ。

 その時は偶々雑誌に載っていた彼の写真を見た捕虜の勘違いの可能性が高いと思われていたが、今回の福音戦の映像を見て確信に確信に変わり重要人物として発表することにしたのだ。

 

 それを聞いたクラリッサが慌てて隊長に連絡してきたのだ。

 

「その事で今電話を掛けようと思っていたのだ…。黙っていてすまない…」

『いえ、気にしていません。私のことを思っての事ですよね?』

「あぁ。シーク先生とかなり親しいようだったから余計なショックを与えないようにと思っていたんだ」

『…大丈夫です。私は軍人、副隊長ですから…』

 

 スピーカーにし、ラウラは今の状況を簡潔に話す。

 すると予想通りだが想定外の言葉が飛んできた。

 

『もしかしたら彼の家に行けば何かわかるかもしれません』

「…何?あいつの家を知っているのか?」

『はい。以前に一度だけ行った事があります』

 

 まさかの爆弾発言に戸惑う一同。

 思春期真っ只中の彼女達は要らぬ妄想をして顔を赤くする。

 

『もし行くのでしたら私も同行させてください』

「だが仕事はいいのか?」

『上には彼の行方を知るためと、教か…織斑先生が一緒ということを伝えれば大丈夫です』

「…そうか、わかった」

『来るのは隊長と織斑先生だけでしょうか?隊長は報告に先に戻られますよね?』

「そうなる。他はそれぞれ事情があるからな」

 

 セシリア、鈴、シャルロットの3人は帰国し、専用機の稼動データと諸々の報告。楯無はそれに加え、生徒会の仕事がいくつか。

 箒は帰らず寮に残り、一夏は自宅に帰る予定だ。

 

『では来る前に再び連絡をください。迎えに行きますので』

「あぁわかった。世話をかけるな」

『いえ。では失礼します』

 

 千冬とラウラはもちろん、全く関わりの無い一夏たちにもクラリッサが無理をしているのがわかった。

 話を聞いただけだが、シークとクラリッサがかなり親しいのは分かったし、だからこそ彼女が相当ショックを受けているのは想像に易い。

 

 彼女のためにもシークを捜し出す。それが出来ずとも、彼が何を企んでいるのか、あの力は何なのか。

 それを明らかにすると決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツ空港

 

 千冬が飛行機から降りロビーに向かうと、ラウラとクラリッサが待っていた。

 

「織斑先生。お疲れ様です」

「いや、二人とも態々すまないな」

「お気になさらず。すぐに向かいますか?」

「あぁ、頼む」

 

早速、車に乗り込み目的地へ向かう。

 

「…ハルフォーフは、どうやってあいつと知り合ったのだ?」

「どうやって、とは?」

「あぁいや、大学の外部講師だったあいつとお前との接点が見当たらなくてな」

「そういうことでしたか。本当に偶然だったんですよ。彼の読んでいた本が気になったのが切欠ですね」

「読んでいた本?」

 

 クラリッサの趣味をよく知っている千冬とラウラは訝しむ。

 日本の少女漫画に始まり、そこからラノベやゲーム等にのめりこんでいる。そんな彼女が気になると言うのはほぼ間違いなくそっち系統のもの。

 シークがその類のものを読むのだろうか?真面目な顔で漫画を読んでいたらそれはそれでギャップがあるのだろうが、残念ながらそんな姿は全く想像できない。

 

「お二人が思っているような本ではありませんよ?」

「では、いったい…」

「錬金術です」

「何だと?たしかにお前なら興味は惹かれるだろうが、あいつがそんなオカルト染みたものを…?」

「本人もそう言ってました。まぁとにかく、それが切欠ですね。行動範囲が同じだったのか、休暇で出かけるたびに会っていました」

「「……」」

 

 出会いの話をするクラリッサの嬉しさと悲しさの混ざった表情を見て、二人はなんとも言えない気持ちになる。

 そのまま無言の状態で目的地に到着した。

 

「着きました。ここです」

 

 住宅街から少し離れた閑静な場所。

 そこに一軒だけ建っている少し大きめの家。

 当然、鍵はかかっているのだが…。

 

「今開けますね」

「…鍵を持っているのか?」

「いえ、ピッキングです。アニメの主人公がやっていたのでちょっと覚えてみました」

「…趣味もここまで来ると恐ろしいな…」

 

 手際がよく、すぐに鍵は開いた。

 

「キレイに片付いているな」

「しっかりしてる人ですから」

「…」

 

 私とは大違いだ、千冬はその言葉を飲み込む。

 世間から超人だ何だと言われる自身が片付けが出来ないなどと言うのは、色々なプライドが許さない。

 

「手がかりとは言ったがどこから手をつければいいのか…」

「…軽く見回しただけですけど、特にめぼしいものはありませんね」

 

 本は多いが、一般人の生活の代表のような家だ。

 部屋を物色しても何もなく、無駄足に終わるかと思い始める。

 そして残るは一部屋。

 

「ここで最後ですね」

「中は本ばかり…書斎のようだな」

「ほとんどが学術書ですね」

 

 シークの専門の哲学を筆頭とし、物理学、生物学、歴史学、天文学etc...

 その他にも錬金術関連の本、神話や伝承まである。

 そして机の上のメモ書や数式や様々な図形の描かれた大量の紙。

 書斎と言うよりはまるで、

 

「研究室のようだな…」

「我々だけでは何もわかりませんね…」

「…一人だけ知っている。適任な人物をな」

「…篠ノ之博士、ですか」

「そうだ」

「私から電話をかければすぐ来るだろう。気は進まないがな」

「では我々は外で待機したほうがいいですね」

「そうですね。彼女の性格を考えればそうしたほうがいいでしょう」

「あぁ、すまないな」

 

 たしかに、かの天災なら理解できるだろう。というより彼女以外に適任はいない。

 世界中が探している人物を電話一本で呼び寄せられるのは千冬とこの場にはいない箒くらいだろう。

 電話を掛けるとワンコールしないうちに出る。

 

『やぁ!ちーちゃんから掛けてくるなんて珍しいね!束さん嬉しいよ!』

「今私が居るところまですぐ来れるか?」

『本当に珍しいね!ちーちゃんが会いたいなんて―――』

「シークについて調べている」

『…わかったすぐ行くね』

 

 臨海学校の時もそうだったが、束はシークの事になるとふざけた雰囲気が無くなるのは、それほど気に入っているのか別の何かがあるのか。

 千冬には知る由もないが、本人がやる気なら問題ない。

 

 電話を切ってから5分しないうちに束が現れた。

 

「おー、ここがシーくんのお家か!おじゃましまーす!」

「来たか。早速で悪いがこれを見てくれ」

「んーなになにー?……ほうほう」

 

 部屋に案内された束は、机の上を興味深そうに見る。

 

「ふむふむ……これは…なるほどねぇ…」

「どうだ?何か分かったか?」

「…これだけじゃ足りないね」

「足りない?」

「別にこれだけでも意味はあるんだけど、あくまでもこれはパーツだね」

「…つまり暗号のようなもの、ということか?」

「そ。多分この部屋のもので十分だろうけど。ちーちゃん」

「…全部持っていけるか?いけるな。場所は用意する」

「さっすがちーちゃん!以心伝心だね!」

 

 ISの量子変換を応用した束特製の収納BOXで部屋中の資料となるもの全てをしまう。

 千冬はIS学園の学園長に電話し、事情を説明する。

 

「というわけですが、お願いできますか?」

『わかりました、すぐに用意しましょう。それとIS委員会にも事情を話しておきます。後でとやかく言われたくはないですからねぇ』

「ありがとうございます」

 

 そして千冬は待機している二人にも事情を説明し先に学園へ帰り、束はお手製のステルス装置で誰にも気付かれずに学園へ向かう。

 残る二人は軍に戻り事の説明、篠ノ之博士がIS学園でシークに関して調べる事とそれについて学園ひいてはIS委員会のほうからも説明される旨を話し、ラウラは専用機の整備が終わり次第学園に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園が用意した秘密の部屋で、束は持ってきたものの他に端末でシークの論文も探し、本格的に作業を開始する。

 しかし、

 

「…改めてみても、これはちょっと大変だなぁ」

 

 天災たる束が大変だと言うのは何故か。

 それは単純に数の多さ。

 いくらISを開発できるほどの頭脳があろうと、興味のないことは知らない。それでも並の専門家以上の知識はあるが、ここにあるのは並の専門家を凌駕するシークのものだけだ。

 それに加え、数式や図形やメモに書かれている文字。

 ドイツ語はもちろん英語や日本語、ロシア語やヒンディー語、更にはラテン語やサンスクリット語まで。世界中の言語が使われており中には束の見たことのない、おそらくシーク独自で考えたものもあり、それらを翻訳しなければならない。

 ただでさえ面倒なものを更に面倒にしているのだから、束でなければ一瞬で投げ出しているだろう。

 

「でもまぁ、シーくんに近づくためだもんね!」

 

 途方もない道程だが、やらないという選択肢はない。

 千冬に頼まれたとかお気に入りに近づくためというのはもちろん、天()としてのプライドがある。

 

 シークの解明を束に任せた千冬は一夏に電話をしていた。

 

「一夏。すぐ学園に戻ってこい」

『え、なんでだよ?』

「お前を鍛えるためだ」

『た、確かに俺はまだまだだと思うけどさ…』

「零落白夜ならシークの攻撃を防げるのはわかっているだろう?ならばヤツに一番対抗できるお前はすぐにでも強く成らなければならない」

『…わかった。明日からでもいいか?』

「…いいだろう。しっかり備えろよ」

『わかった。それじゃあな』

「あぁ」

 

 通話を切り、次は他の専用機持ちたちに同じ連絡を、シークを相手に出来るように特訓する旨を話す。もちろん一夏も一緒ということを伝えて。

 この夏休みの間なら生徒が少ないこともあり、自信が直接指導しやすくなるのでやるなら今しかない。

 次にシークと事を構える時はさらに手強くなっているかもしれない。出来ることは出来るうちにやっておかなければいずれ手遅れになる。それに専用機、とくに一夏はISだけでなく本人も狙われているのだから実力をつけておくにこしたことはない。

 

 

 

 だがここで誰も想定していない懸念がある。

 それはシークの目的や力がわかったとしても対抗策が無い可能性があるということ、もしくはわかったころには既に手遅れとなっている可能性があるということを。

 

 

 

 世界の終わりは、決戦の時は近い。

 

 

 

 

 

決戦の舞台に相応しいのは?

  • IS学園
  • 宇宙(成層圏~)
  • 異空間
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