お前のような哲学者が居るか   作:神撃のカツウォヌス

2 / 17
第2話

 とある建物の廊下を女性が走る。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 走る

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 走る走る

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 走る走る走る

 

「クソッ……」

 

 ふざけるな

 

「クソッ…クソッ……」

 

 ふざけるなふざけるな

 

「クソッ…クソッ…クソォォォォ!」

 

 ふざけるなふざけるなふざけるな

 

「何なんだよ……何なんだよ……!」

 

 何故自分が

 

「何なんだよ…何なんだよ……何なんだよアイツは……!」

 

 何故自分がこんな事になるんだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女性はある組織に所属している。

 ISの操縦、作戦指揮、部下から慕われるカリスマ。

 その全てが高水準の彼女は、将来の幹部候補として最も期待されており、今回の任務が成功したら昇格するはずだった。

 任務の内容は、

 【ある国の開発途中のISを強奪し、本部の研究所に送れ。】

 というものだった。

 事実、5日前に無事任務は成功。

 明日到着予定の輸送班を待ち、自身も輸送班と共に本部へ戻るだけだった。

 それだけだったのに。

 

 

 

 爆発が起こった

 

 

 

 何が起こったのか。

 女性はすぐさま爆発の場所、原因を調べるよう指示を出そうとしたがそれよりも早く、部下から報告があった。

 

 警備部隊Aチームが全滅

 現在Bチームが交戦中

 

 Aチームが全滅?この短時間で?

 だとすると、先の爆発とAチームの全滅の早さから考えて、相手がISである可能性が大きい。

 すぐさま整備中の自身のISのもとへ向かおうとするが、再び爆発が起こった。

 思わず窓から外の様子を確認するが、その光景を見て絶句する。

 

 身体の部位が欠けていたり、おかしな方向に曲がっている者。

 熱で皮膚がドロドロに溶けていたり、火傷を負った者。

 自身の部下だった者たちが見るも無残な状態で転がっているが、女性にとっては(敵か味方は別として)決して見慣れない光景ではない。絶句するほどのものではない。

 

 

 問題なのは、その地獄の中で佇む人物だ。

 これだけの惨状にも関わらず、

 傷らしい傷はおろかその身に纏う衣服にさえ一切の汚れが見当たらない、いっそ清々しいまでに周囲から浮いた存在。

 それが女性にはひどく不気味だった。

 脚が震える。

 腕が震える。

 身体が震える。

 歯がガチガチ音を鳴らし、呼吸が苦しくなる。

 すると、ヤツが此方を向いた。

 

 

 目 が あ っ た

 

 

 瞬間、女性は走り出す。

 一刻も早く、自身のISのもとへ向かわなくては。

 ヒールが脱げたが構わない、その方が速く走れる。

 お気に入りの懐中時計を忘れた、また買えばいい。

 そういえばISは整備の途中だった、生身より安全だ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 走れ走れ走れ

 

「クソッ…」

「クソッ…クソッ……」

「クソッ…クソッ…クソォォォォ!」

 

 ふざけるなふざけるなふざけるな

 

「何なんだよ……何なんだよ……!」

「何なんだよ…何なんだよ……何なんだよアイツは……!」

 

 何故自分がこんな事になるんだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何とか自身のISのもとに辿り着いた。

 整備班がいない。逃げたのだろうがどうでもいい。

 すぐさまISを装着する。

 これで助かる。SEは若干心許ないが問題ない。

 さっさとアレを殺して本部へ帰ろう。

 いくら警備部隊を瞬殺できる手段を持っていようと、ISならば確実に殺せる。

 ハイパーセンサーで生態反応を探す。

 発見。さっき入ってきた扉のすぐ向こうだ。

 唯一使える武器、ライフルを構えるがすぐには撃たない。

 相手がISではないことが分かっているのだ。

 ならばすぐには殺さず情報を集めてからのほうがいい。

 何処のどいつかで何が目的か。何も喋らないかもしれないが、訊かないよりはマシだ。

 そして扉が開かれ、ヤツが入ってきた。

 

「……何故撃ってこない?」

「うるせぇ。テメェ、何モンだ?何が目的だ?」

「……愚か者め」

「あ?聞こえねぇよ」

「……貴様には関係ない」

 

 そう言って奴はこちらに向かって腕を伸ばす。

 その手は、子供がよくやる”拳銃を模した形”。

 ふざけているのか。

 そう言おうとした矢先、

 

 

 

 爆発。そして凄まじい衝撃

 

 

 

 痛い。

 何が起きた?吹き飛ばされた?

 痛い痛い痛い。

 身体中が痛い。

 理解できない。

 ISにはバリアが、絶対防御があるではないか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それに、センサーは武器の類を一切感知していなかった。

 意味が分からない。

 

「ほぅ……今の一撃で全壊しないのか。相変わらずその防御力だけは大したものだ」

 

 SEが残っていない。

 唯一の武器だったライフルはほとんど原型を留めていない。

 駆動部が完全にイかれてる。

 全く動かない。

 飛ぶことはおろか、立つことすらできない。

 

「とはいえ所詮はその程度か………。まぁ、最低限のデータは得られた。()()()()()があることもわかった。目的は達した以上、もうここに用はない」

 

 そう言ってヤツはこちらに腕を伸ばす。

 手はさっきと同じく”拳銃の形”にして。

 

 それが最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ISを強奪したテロリストの潜伏先を突き止めた軍。

 先行部隊が敵勢力を確認し、後衛部隊へと連絡。

 応援の到着後、テロリストを殲滅し強奪されたISを回収。

 という作戦がたてられていた。

 だが、部隊が向かう途中に目標地点から爆発を確認。

 現場へ着いた頃にはすでに廃墟となっていた。

 

 

 

 

 

「………こいつは酷ぇ」

「一体何があったんだ………」

 

 ボロボロの建物。

 壁や天井は吹き飛び、骨組みがむき出しになっている。

 それなりの大きさのこの建物が、これほどの惨状になるには歩兵がもつ火力では足りない。

 そもそもこのような施設はそれなりに頑丈に作られているはずなので、相当な量の爆撃でもされない限りこうはならない。

 爆撃以外となると、

 

「ISの仕業ですかね、隊長」

「……いや。いくらISといえど不可能だろう」

 

 よく誤解されがちだが、ISの武装は近接用のブレードの類や銃火器が主武装のものが多い。

 もちろん、手榴弾やグレネードランチャーなどは大型化されている分破壊力はあるし、中にはミサイル等を搭載した機体もある。

 しかし、ここまでの惨状となるといくらISでも時間はかかる。

 ましてや3()0()()()()()で行うなど不可能だ。

 

「……予め大量の爆薬を用意しておけば可能だろう。だが……」

「…はい、避難した様子はありませんしそれに……」

 

 辺り一帯に転がる死体。

 死体。死体。死体。

 四肢が吹き飛んだモノ。

 身体の半分が消えているモノ。

 皮膚がドロドロに溶けたモノ。

 全身真っ黒になっているモノ。

 鼻をつまんでも感じる、血の臭いや肉の焼けた臭い。

 まさに死屍累々。地獄絵図とはこの事だろう。

 

――――――う"、う"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"

――――――お、おい。大丈夫か!?

――――――とりあえず水を飲め!

 

 あまりにもグロテスクな光景。

 人の死に触れたことすら無い新入りが、吐き出してしまう。

 仕方ないだろう。ベテランですら目を背けたくなるほどだ。

 自分だってそうだ、だが隊長として情けない姿は見せられない。

 すぐに指示を出す。

 

「通信係は後衛部隊へ連絡。"敵は既に全滅だが念のため待機。"」

「それと”重傷者を運ぶ準備もしておけ”、とも連絡を」

「医療部隊、ですか?」

「あぁ。生存者がいれば何か情報が得られるかもしれん」

「り、了解であります!」

 

「1班は建物内の探索。強奪されたISを探す」

「2班は周囲の警戒。3班は2手に別れ、それぞれ1班と2班につけ

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

作戦報告書

 

~前略~

 

 今回の作戦により、強奪されたISを奪還。

 更に、所属不明のISも回収。のちにテロリストが使用していた物と同一機体であることを確認。

 また、今回の作戦における部隊の損害はナシだが帰還後、3名の隊員が体調不良を訴え、現在医務室にて療養。

 3名の精神面を考慮し、カウンセリングを予定。

 

 

特記事項

 

 現場にて負傷者を1人保護。テロリストと思われる。

 現在、軍病院にて治療中。

 意識が取り戻り次第、様子を観察しつつ尋問予定。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。