人間には
この経脈は地球にもあり、風水術では「龍脈」、西洋では「レイライン」などと呼ばれている。
世界中にある聖地や先史時代の遺跡、不可思議な現象の起きる場所などはその殆どがこのレイラインに沿って存在しており、先史時代の有名な遺跡"ストーンヘンジ"や、魔の三角海域"バミューダトライアングル"などがある。
その他にも、異常気象が起きやすかったり、地下の鉱脈には貴重な物が多く含まれていたりと。
地球の内部にただ流れているだけでここまでの影響があるのだ。
仮に、この膨大なエネルギーに指向性を持たせたら?自在に扱うことが出来たら?
どこまでのことができるだろうか
「教師!?IS学園の!?」
「声が大きいぞ、クラリッサ」
「あぁ…すみません。ちょっとビックリしたのでつい……」
いつもの喫茶店にてクラリッサと、談笑する。
何度も会う内に知人から友人へとランクアップし、今では互いに砕けて話すほどにまで親しくなった。
ちなみに彼女が敬語口調なのは、そのほうが話し慣れているからだそうだ。
「それにしても、何でそんなことになったんです?」
「教員の一人が寿退職するかららしい。そこでどうせなら優秀な人材を、とのことで私に白羽の矢が立ったようだ」
「自分で優秀って言っちゃうんですね…」
「向こうがそう言っていただけだよ。……以前話したことがあるが、それなりに広い分野に造詣が深いからな、他の教師の手助けができるというのが大きかったらしい」
「なるほど……。あれ?」
「?」
何か気にかかることがあるようだ。
「教員免許持っているからといってそんないきなり教師やってくれ、なんてなります?ましてやIS学園ですよ、いろいろ手続きとかあるんじゃないですか?」
「そこはあの手この手でどうにかしたそうだ。それに、どうしても4月からやる必要があるんだ」
「……!男性適性者ですね」
「そうだ。知っての通りIS学園は職員はともかく生徒は全員女子だ。たとえ職員であろうと同じ男性が居るほうが精神的に楽だろうな」
いくら肝が据わっていようと、自分の周りが全て女性なんて環境に放り込まれたら疲弊するに決まっている。
それに加えて今の時世、男が同じ学び舎に通っているというだけで不満を表すものもいるのだ。ストレスは相当のものになるだろう。
「それじゃあ、今度からは会える機会が少なくなりますね」
「何も全く時間が取れないことはないさ。それに、電話なり何なりがあるじゃないか」
「確かにそうですね!……あ、そうだ!ちょっとお願いしたいことがあって」
「なんだ?」
「織斑教か…じゃなくて織斑先生によろしく言っておいてくれませんか?」
「接点があったのか」
「えぇ、前に部隊でお世話になったことがあって。それで、そのことについて改めてお礼をと思いまして」
「そういうことならわかった。ちゃんと伝えておく」
「よろしくお願いします」
ふむ。
部隊で、織斑千冬に、お世話になった、か。
「クラリッサはIS部隊所属なんだな」
「な、何で分かったんですか!?……あ」
「やっぱりそうか」
「……カマかけたんですか」
「さっき織斑千冬にお世話になったと言っただろう?」
「えぇ、まぁ言いましたけど…」
「只の鍛錬かとも思ったが、ISの操縦に関してブリュンヒルデの右に出るものは居ない。ならばISについて教導してもらうのが一番だろう考えてな」
「あれだけでわかっちゃうんですか……」
「まぁな」
もしかしたら、以前の織斑一夏誘拐事件。
軍が織斑千冬に恩を売るために仕込んだのかもしれないな。
店を出る。
時刻は13時を少し過ぎたころ。
「まだ時間があるな、どうするか……」
「それだったら映画見に行きません?」
「映画か、いいかもな。それで何を見るんだ?」
「それは着いてからのお楽しみということで」
何を観るのかなんとなく気になるが、着いてからと言われたのでは仕方がない。
「クラリッサは映画はよく観るのか?」
「んー、借りてきて観ることはあるんですけど。映画館ではあまりないですね」
「それは何故だ?映画館のほうが大画面・大音量で見ごたえがあると思うが…」
「何と言うか、時間が勿体無い気がして。ほら、借りてくれば観たいときにみれるし、途中で止めることもできますし」
「確かにそれは言えるな。自分の都合に合わせられるのはいい」
映画館は上映時間が決まっており、それにあわせなくてはならない。
それとは逆に、家ならば空いた時間に観ればいいし、合間の時間にちょくちょく観ることもできる。
シリーズものなら時間さえあれば一気に通して観る事もできるのか。
「でもアクション映画とかは映画館のほうが迫力があって面白いですし、それに…っと、着きましたね」
「あまり大きくはないのだな。それでも周りの建物より大きいが」
「最近だとこうやって映画を観に来る人が少ないらしいので、これくらいなんだそうです」
「そうなのか」
中に入って券を買いに行く。
「それで。いったい何を観るんだ?」
「えーっと。これです、これ」
「最近CMが結構流れていて話題になっているやつか。確か、CG無しの実写だけで撮影されたアクション映画だったか」
「はい、隊の中でも何人か観た人がいておススメされまして」
券を買って時間を確認すると、あと10分後に始まるようだ。
飲み物とポップコーンも買い席へ向かう。
「そういえばさっき何か言いかけていたな」
「さっき?」
「映画館のほうが迫力がある、ともう一つ」
「あー、それはですね」
並んで座る。
平日だからだろうか。
周りにはあまり人が居ない。
「こうやって一緒に観られますし」
「……そうか」
そう言って、少し照れくさそうに微笑む。
約2時間の映画が終わり、時間は15時半。
「いやー、凄かったですね!あれが全部CGじゃないなんて!」
「俄かには信じられなかったな。一歩間違えば大怪我では済まないシーンがかなりあったぞ」
「実際、撮影中に怪我して撮影が延びたって話も聞きますし。でもそれだけ面白かったですね!」
「特に中盤の、燃える大広間での戦闘は凄まじかったな。手に汗握るとはまさにあのことだな」
「確かに凄かったですね、観てるこっちまで熱くなりましたよ」
お互いに映画の感想を言い合いながら歩く。
昨今の映画は内容がチグハグだったり、人物描写が違和感だらけのものも少なくない。
だが、今日見た映画は登場人物の心境やストーリーの組み立てが上手かったりと、よく2時間に収められたものだ。
初めて観た映画がこれでよかったと思う。
それとも、一人だったらまた違ったのだろうか。
「あ……そろそろですね」
「あぁ、そうだな。時間が経つのは早いな」
かなり話し込んでいたようで、気付けばそれぞれの家路が見える。
「ふふ、確かに時間が経つのは早いですね」
「どうかしたか?」
「いえ。初めて会ったときに私言ったじゃないですか」
「そういえばそうだったな」
「気付けばあの日から5年も経ってるじゃないですか。それで2つに意味が掛かっているって気付いたのでつい……」
「別に狙ったわけではないが、そうか……。もうそんなに経つのか」
もうそんなに経つ。
最初に出会ったあの日から。
そして……
「はい、なんだかあの日が懐かしいです」
「あぁ、懐かしい」
この世界に生れ落ちた日から