昔、自ブログで勝手にやっていた百人一首企画の一つを改稿・再掲番です。
投稿テストを兼ねて。
話の筋はかわりません。
小倉百人一首 第六拾番
大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
小式部内侍
――大江山を越えていく、生野の道は私には遠すぎて、まだ天橋立の地も踏んでいませんし、母からの文もみていませんよ――
なんでこんな所に居るのだろう?
私――加東景はすこし開けた高台に止められた車の助手席に座っている。空けられた扉から少し肌寒い朝の風が吹き込んできて、そんな扉に佐藤さんが腕をついて微笑んでいると、まるで映画のワンシーンのようだった。
でも、なんでこんなことになっているのか、全く記憶がなかった。
昨日の晩は、確か大学を五限目までうけた後、帰って弓子さんと少し話した。それから、部屋に戻った―――で、いつものように佐藤さんが寝ていたわけだ。
そこまではいい。残念ながら、いつものこと。
それでこれもいつもの通り二人で夕食を食べて、その後に佐藤さんが自主休講した講義のノートを写させてあげて……?この後の記憶が……?
ああ、そうだ、佐藤さんが一休みとかいってコーヒーを入れてきて……!?―――そう、そういうこと、ね……!
「一服、盛った?」
「あれバレちゃったか」
バレないとでも思ったのだろうか?いくらなんでも、あんなに不自然には寝ないし、ここまで来るまでにまったく起きなかったというのもおかしい。
いや、そもそも何故こんな所まで来なくてはいけないのだろう。
「佐藤さん、これはどういうことかしら?」
「いやぁ、ほら昨日の日本文学史で、加東さんもとっていたじゃん?あれで、やったでしょ」
「で…、ここまで来た、と?大江山の酒呑童子に食われてしまいなさい」
佐藤さんの突飛な行動はいつものことだが、流石に今回は怒りを通り越して呆れてしまった。その佐藤さんと言えば「加東さんの寝顔可愛かったよ」などと、そんな私の気持ちを知らないのか、もし知っているのであればわざと私の感情まで逆なでしているとしか思えない事を口走っている。若狭湾に沈めてしまいたい。
しかし、来てしまった者は仕方がない。私は車から、とりあえず降りてみることにした。
そして、頬にさわやかな空気を当てながら二、三歩進み、景色を望んで―――絶句した。
朝の霞の中、浮かび上がった砂州と海が織りなすラグーン―――天橋立が、曙に照らされて、本当に雲間にかかる橋のようだった。神的な光景だった。
私がその風景に感動して立ちつくしていると、佐藤さんは近寄ってきて、私の横に並び微笑んだ。
「ふふ、加東さん、今、来て良かった、思ったでしょ」
図星だった。そして、ふとその表情を見て息を呑んだ。そのエキゾチックな微笑が東から昇った朝日に照らされて、例えようなく純粋にきれいだった。まるで目の前の素晴らしい絵画に溶け込むように最初から用意されていたようだった。
「まぁね」
私は溜め息をつきながら答えた。すこし頬を赤らめていたかもしれないけど、それは天照の所為にしてしまうことにした。
ただ、もう少し、彼女を含めた景色を見ていたかった。
「じゃあこの後、京都観…」
「帰るわよ、今からなら四限に間に合うでしょ?」
投稿テストを兼ねております。
なんというか懐かしいです。
できれば、ちょこちょこ昔の二次創作を記録代わりに載せていきたいと考えています。