すみれ色と正義の味方   作:カズラドロップ

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リアルが忙しく投稿が空いてしまいまことに申し訳ありません。


海軍学校

 

 

 

 

 

 ゼファー君が12歳になり、私がこの島に来てから7年の年月が流れた。

 

 7年前に撮影してもらったけど写真と今の己の容姿を比べ、老いるどころか1ミリも成長している様子もないため、やはりこの身体は不老だと思われる。ゼファー君の成長を日々目にしていると尚更そう思うことは仕方ないであろう。

 

 年齢で言えば、アジサイさんもさっぱり年齢を重ねているように見えないが、ONE PIECEの世界の実力者かつ美人の女性は、老いると突然老魔女のように変貌するか、何故か全く外見年齢が変わっていないように見えるかの2択な気がするので、彼女は後者なだけだろうと勝手に納得している。逆にDr.くれはとかの例の方がレアな気がしなくもない。

 

 まあ、アジサイさんが素で歳を重ねているように見えないのか、何かしらの悪魔の実を食べておりそうなっているのかは不明だが、どちらにしても女は魔女という言葉で片付けよう。だから私だって魔女なのである。えっへん。

 

「行くぞ! おらァ!」

 それはそうとして、何故か最近ゼファー君が私に挑んでくるようになった。どうやら私がアジサイさんから剣術を習っていることを嗅ぎ付けたらしく、ならば強いのではないかという事で挑んできたのが始まりである。実際、腕っぷしの強さだけなら、今のゼファー君に敵う子供どころか大人だってほとんどこの軍港には居はしない。

 

 "どうしてスミレだけ……"等と剣術をアジサイさんから習う嫉妬心を抱かない辺り、ゼファー君の人間性が出来過ぎていると言わざるをえない。いや、そのような考えに至る私の方が余ほどに卑しいだろう。

 

「踏み込みが足りません」

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

 しかし、それはそれこれはこれ。アジサイさんにゼファー君に手加減して一本取られたなんていう事実を知られれば、ただでさえ日頃から一杯一杯な剣術指南がより密なものになるのは目に見えているのである。

 

 悪魔の実抜きでのしあがった未来の海軍三大将と言えども、まだ12歳ならば適当に繊維化させた私の腕によるフェイントで簡単にスッ転ばせだり、布地によるオールレンジ攻撃でぺちぺちして黙らせたりすることも容易い。

 

「く、くそぉ! まだだ……!」

 

「踏み込みが足りません」

 

「わぁぁぁぁ!?」

 

 私の繊維化した腕の適当で雑な縦薙ぎが当たり、数m上空に吹き飛ばされるゼファー君を見つつ、いつかこれも懐かしい思い出になるときが来るのだろうなと少し遠くを見るばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼファー君が14歳になり、私がこの島に来てから9年の年月が流れた。

 

 9年で孤児院は気持ち拡大し、設備の増設によって受け入れ可能人数とそれによる職員体制を教員を含めてきっちりと整えたため、私のやることも概ね無くなってしまったのは悲しむべきことかもしれない。

 

 2日に1度、アジサイさんから剣術を学ぶぐらいしか目立ったことはしていないそんな折、彼女に"貴女のやりたいことをやっていいんですよ?"等と言われたため――。

 

 

「スミレ……。なんでお前も"海軍学校"に入るんだよ」

 

「それはもう正義のヒーローゼット君のご活躍をこの目で見るためです」

 

「――や、止めろッつってんだろ!?」

 

 

 海軍の仕官学校にゼファー君と入隊することにした。いつの間にか剣術道場に通わなくなったゼファー君と私は、支給されたライフルの訓練に忙しんでいる。

 

 彼の中で、正義のヒーローゼットはいつの間にか黒歴史になってしまったようだが、私が何もせずに放っておくと、74歳でゼットになってしまうのだから実に切ないものであろう。

 

 また、多少腹立たしいことに14歳の彼に身長を抜かれてしまって久しいが、翌々考えなくともゼファー君の将来は3m以上の大男になるので、遂に来たかと感慨深いものだ。

 

「スミレは銃も得意なんだな……」

 

「そうでもありませんよ」

 

 それはもう、変身スキルによる銃身の固定と、A+の敏捷以外オールBというトンファーみたいな形をした微妙なステータスによるただのゴリ押しであろう。後、目もかなりいい。

 

 結果的に100mほど先にある的に、最初の2発以外の弾は全て的の中央に当たっており、既に私の成績は満点に近いであろう。しかし、こんなものは残念ながら、ONE PIECEの上位陣では射的屋の景品を落とすスキルを競うよりも遥かに無駄なものだ。

 

「それに実戦の的は動くので、こんなものは使い物にならないと私は思いますがね」

 

「まあ、そうかも知れねぇけど……」

 

「それに――」

 

 私は手を繊維化させて、細く長く伸ばすと的目掛けて弾丸のように飛ばす。

 

 それは銃撃するよりも速く的まで殺到して、ど真ん中を撃ち抜くと共に的を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

「こちらの方がより効率的です。また、弾の消費もなくとてもエコロジーです」

 

「お、おう……」

 

「コラァァ!? そこ何やっている!?」

 

 教官に怒られてしまった。

 

 それはそれとして、ONE PIECEの中の海軍が採用しているような古めかしい銃は本来ならば20~30mを狙えてギリギリなところであろうが、何故か私が知るような知識の中の銃よりも射程距離が遥かに長いため、有用では確かにある。しかし、だからといって、湿気る、うるさい、よく壊れる、リロードが面倒などの問題点は据え置きのため、信用性に著しく欠けるのだ。

 

 そのため、私は銃なんかよりも私の悪魔の実っぽい能力の方が余ほどに有用であり、是非ともそちらの方を成績に加味して欲しいということをその場で教官にプレゼンテーションし――。

 

「……スミレ訓練生は今日の寮清掃当番を全て一人でこなすように」

 

「なぜッ……!?」

 

「お前って本当、時々アホになるよな」

 

 くそう……! しかし、長年チビッ子たちを相手にしながら、孤児院をピカピカに磨き上げてきた私の変身スキルを舐めないことです……!

 

 

 

 

 

 その日の夜から明け方に掛けて、寮だけでなく海軍学校全体の施設という施設を内装から外壁までピカピカに磨き上げたところ、教官複数名から更に怒られた。新手のテロだと思われたらしい。解せません……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼファー君が18歳になり、私がこの島に来てから13年の年月が流れた頃。

 

 この島の軍港にある海軍学校では、ゼファー君と私がツートップで著しい成績を修めていた。まあ、当然と言えば当然であろう。そして、ようやく卒業である。

 

 というか、ゼファー君と私以外は、その辺の千万ベリーぐらいの賞金首の海賊にまとめて吹き飛ばされそうなレベルのほぼ一般人である。必修科目にある武術の組手で、運悪く私たちと当たった訓練生は全てを悟ったような清らかな顔付きで、真昼の空に海軍のカモメを浮かべることになるのだ。かなり可哀想。

 

 まあ、それはひとまず置いておこう。この島の軍港はグランドラインの海にしてもド田舎に位置しているためか、正直なところお世辞にもレベル高いとは言えない。嫌みとかではなく、比較対照がCP9とか海軍本部とかコビーとかのため仕方のないことである。

 

 そのため、海軍学校での4年間は私にとっては余りに暇過ぎた。思い出の中で六式を覚えたり出来るのならば、とっくに覇気も習得出来ているだろうしな。まあ、随分前に覇気に関しての習得はまた今度……ゼファー君と同じぐらいの時期でいいと思って手を付けてはいない。

 

 というわけでこの4年間――引いてはアジサイさんとの訓練以外の今まで油を売っていたのかと問われればそうでもない。何故ならばあの"生命帰還"とやらの修行に明け暮れていたのだ。

 

 生命帰還と言えば、本来は脳の命令で動かしたりすることのできない髪や内臓、果ては爪先や睫毛などを己の意識を張り巡らせることによって操ることができる技術で、バイオフィードバックなどとも呼ばれるもの。作中では一瞬で消化したり、動物系共通の変形以外の姿へと変化させたり、伸ばした髪を操って捕縛や攻撃したりもされている。習得できれば便利なことこの上ないだろう。

 

 しかし、作中では習得しているCP9のクマドリが、過酷な仙人暮らしの修行が必要とのことだったため、当初は私も諦めていた。だが、数年前にふと思ったのだ――"私、少なくとも髪に意識を張り巡らせて操ることは既に出来ていないか?"と。

 

 実際、変身スキルを使う最中に繊維化した場所に感覚は普通にある。引いては動かしていれば髪などの感覚もあった。そのため、私は中途半端に生命帰還が出来ているのではないかという仮説に至ったのだ。

 

 まあ、ゼロから習得するのは厳しいが、既にある程度下地――というよりも動かす感覚をある程度は知っているのでそこまで難しい話でもない。そのため、孤児院の手伝いと海軍学校生活の傍らで、数年の歳月を兎に角、全身に意識を張り巡らせることに重点を置いて生活することにしたのだ。

 

 

「くッ!? スミレのツインテールがッ!?」

 

「えいっえいっ」

 

 

 その結果、変身スキルを使わずとも普通に髪を蛇のように動かしたり、伸ばすことが可能になったり、直ぐに消化できるようになったのである。ゼファー君も髪型がぐにぐに変わりながら襲い掛かる縦横無尽の攻撃にはたじたじらしい。

 

 とは言え、やっていて気づいたのだが、どうもこの生命帰還っぽいモノの修行は、明確な線引きがないためにさっぱり終わりが見えない。そのため、これで習得出来ているのか、果たしてこれが本当に生命帰還なのかは謎である。まあ、なんちゃって生命帰還ぐらいのものでご容赦して欲しいかな。

 

 

「勝てねェ……」

 

 

 卒業した記念にゼファー君が手合わせを持ち掛けてきたために戦った結果、大の字で地面に寝転がる彼が出来上る。まあ、まだ六式も覇気も覚えていない状態ではこんなものだろう。流石に今の彼に負けたら私がヘコむ。

 

 彼の成長は今後だ。これから下士官の時点で六式を覚え、34歳で覇気を習得し、38歳で海軍大将に登り詰める。故に今はまだ雌伏の時と言えよう。

 

 そういえば、今回の手合わせでは"負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞く"というルールでやっていた。まあ、学生時代は無為な賭け事に惹かれるものなのでこういうこともあるのだろう。私からは特に何もないので風邪を引かないうちに家に帰ろうとだけ伝えておいた。

 

 話は変わるが勤務先は成績の良さから考えても海軍本部寄りの場所になる。そのため、この島からはゼファー君と共に近いうちに離れることになる。それまでは孤児院の子供たちやアジサイさんとの時間を大切にしたいと思う。

 

 ちなみに適度に失態をして成績をほぼゼファー君と横並びにしつつ、勤務希望も彼と同じところにしたので、今後もお姉さんのストーカーは止まりません。ふふふ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼファー、どうかしましたか?」

 

 ゼファーにとって、スミレという不思議な女性は常に憧れの対象だった。

 

 幼年期の頃は純粋にその強さに憧れていた。何せ、スミレはゼファーからすれば、ただ悪魔の実を食べたとてつもなく強い女性だった。また、蛇のようにうねるその身体はまるで物語の悪役のようで子供の目を引くものであっただろう。

 

 

 

「掃除、洗濯終わり……次は料理ですね。そういえば備蓄がそろそろ……ゼファー、買い出しを手伝ってください」

 

 学童期の頃になると20~30人は軽く子供達が生活している孤児院を全力で回している姿勢に憧れを抱く。

 

 悪魔の実で髪や身体を何本もの伸縮する腕に変えて、同時に幾つも家事をこなすその様は、能力者としてそれでいいのかと思われつつもとてつもなく効率的であり、形振り構わず挑む姿勢には子供らへの確かな愛が感じられた。

 

 

 

「ゼファー、学校を1日でピカピカにしたら怒られてしまいました」

 

 そして、海軍士官学校時代。成績は優秀なのだが、問題行動が目立つという意外とお茶目な一面に幾度となく触れ、スミレが母や姉ではなくただの女性だということに気付かされる。

 

 また、悪魔の実で見た目は歳を重ねているように見えず、徐々に彼女の容姿に彼の年齢が近づいていくにつれ、誰よりも彼女を間近で接していたゼファーはこれまでとは異なる憧れを抱く。

 

 そして、男として彼女よりも強くなるため、海軍学校の4年で愚直に己を鍛え続け、卒業時に"負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞く"というルールで手合わせを持ち掛けた。仮に勝てれば口下手なゼファーなりに告白するつもりであり、所謂若気のいたりという奴である。

 

 

「うふふ、まだまだですよ。なんで負けたのか、考えておいてください。そしたらまた何かが見えてくるかも知れません。えっ、勝った私の頼み? ……ふむ、今は思い付かないので保留でも?」

 

 

 まあ、結果はこの通りだった訳だが。どう見ても本気を出しているようには見えない彼女にまるで歯が立たなかった。実際、彼女はただの手合わせと思っているので、特に何もおかしくはないのだが、ゼファーは歴然たる差を痛感する。

 

「まあ、配属先はゼファーと同じなのでこれから毎日手合わせしましょうか?」

 

「は……?」

 

 ゼファーがこのような行動に走った理由に、これまで当たり前のように同じ屋根の下で暮らしてきたが、海軍支部に配属が決まれば離れ離れになることへの焦りもあったのだろう。それゆえの呆けた呟きである。

 

「また、よろしくお願いします」

 

 そう言って微笑むスミレはまるで女神のように美しい。男の性か、ゼファーはまだこうして彼女と共にいれるのならばそれでいいと思ってしまうのであった。

 

 

 

 

 







嫁がクソ強ければゼファーさんの鬱イベントを全てぶち壊せるんじゃないでしょうか?(脳筋理論)
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