キャンペーンシナリオ[トータス旅行記]リハビリ作 作:重言 白
初めは単純に驚いていた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ」
世界の真実。
それを一端とはいえ知っている身として、コレがありえない事だと知っていた……いや、思い込んでいたから。
「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
月曜の朝。
それは多くの人にとっては最も憂鬱な時間帯だろう。
徹夜明けである自分にとっても、それは適用される。
昨日は友人から届いた、遺物の分析と記録をしていた。
気づけば日が昇っていたのだが、アレには時間を加速させるような効果が……?
そんなたわいもないことを考えているうちに、学校に着いた。
正直な話、諸事情で高校で習うような知識は既にあるのだが、卒業するまでは通わなければならないのは非常に面倒だ。
くたばれ学歴社会。
始業時間よりも少し早めに着いたので、いつも通りに本を読む。
そのまま時間は流れていき、始業時間の直前。
教室の空気が変わる。
南雲ハジメが登校してきたのだ。
「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
クラスメイト中でも極め付けの阿呆数名その1が南雲ハジメを罵倒し始める。
確かに彼はオタクである。
アニメや漫画に精通しており、積極性がなく大人しい。
しかしキモオタなどと揶揄されるような、見苦しい言動や容貌をしているわけではない。
どちらかといえばイケメン寄りであり、言動も真面目で明瞭だ。
それに私は、彼が徹夜している理由が主に両親の仕事の手伝いであり、ゲームで徹夜する事はたまにしかないを知っている。
善良で、賢く、自分ができることを正しく理解して行動に移せる彼は、私がこの学校で唯一尊敬している人物であり、自慢の友人だ。
なので昔、1度あの阿呆数名をとっちめてやろうとしたことがあるのだが、他ならぬ彼自身に止められた。
それ以来、私はこの件に関する干渉は止めた。
しかしオタクであるという点で女子や阿呆共から嫌われるのはともかく、なぜクラス全体が敵意をもっているのか。
その答えが極め付けの阿呆数名その2だ。
「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
ニコニコと笑顔で彼に話しかけるのは阿呆2-1。
彼女は自身の容貌が優れている事には気づいていても、それがもたらす影響を全く理解していない。
彼がクラスメイトから嫌われている諸悪の根源1号でもある。
「南雲君。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」
その側にいるのは阿呆2-2~4だ。
2-2は2-1が原因であることに気付いていても、それを伝えることはしない。
おそらく自身が嫌われたり、友人と喧嘩するのが嫌なのだろう。
2-3は論外である。
せめて他人と対話するという機能を取り戻してから出直してこいというレベル。
無意識にイジメを煽動するコイツは、諸悪の根源2号だ。
2-4は努力家という点は認めるが、自分と同じ努力を他人に求めようとする。
短距離走者に長距離走をさせようとするようなものであり、畑違いという他ない。
どいつもこいつも南雲ハジメを罵倒したり嫌悪するだけで、行動しない阿保ばかり。
ハア……早く卒業したい。
徹夜続きなのか、彼は相当疲れを溜め込んでいるようだ。
普段であればさっさと教室から出て食事をとるはずの彼が、珍しく教室で10秒チャージをしていたので、話しかけることにする。
「今回の修羅場は中々大変そうみたいだね。手伝いに行こうか?」
「じゅるるるる……え? ああ、うん。じゃあお願い出来るかな? 今日で2徹目だから、一旦寝たかったんだ」
4徹するより2徹を2回繰り返した方だ楽だし、と笑いながら言える彼は相当社畜の気があるのではないだろうか。
こちらを恨めしそうに見ている阿呆2-1を放置しながら進捗を聞いていると、ふと非日常の空気を感じた。
立ち上がって辺りを見渡すと、光り輝く見たことのない魔法陣が阿保2-3の足元から広がっていた。
これは避けられないな。
そう直感的に理解した私は、とにかく自分の通学カバンを手に取った。
そして冒頭に戻る。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」
私達は聖堂のような場所から、幾つもの長いテーブルのある大広間に場所に移動していた。
好々爺のような演技をするたぬき曰く、どうやら私達はトーラスという異世界に召喚されたらしい。
魔族との100年を超えて戦争しているこの国では、戦力が不足している。
しかし魔族の出生率が低いこともあり、戦線はなんとか保たれていた。
そんな中、魔族が大量の魔物を使役するようになった。
結果、数の力で対抗していたこの国は、魔物という数の力で押し潰されそうになった。
そんな中、彼らの信仰する神格である“エヒト”が、私達をこの世界に召喚したということだそうだ。
言いたいことは多々あるが、とりあえずあの召喚の呪文を考察してみよう。
まず、私の使える召喚の魔術は基本、場と贄を整えた状態で呼びかけることで来ていただくという方法だ。
つまり、来る事ができる存在に呼びかけているだけであり、来るのは召喚する存在の力だ。
しかしこの魔法陣の効果は違う。
私達は何の代価も受け取っていないし、召喚に際して何の力も使っていない。
私の知っている魔術とは違う、まさしく魔法という感じの何かだ。
無理矢理当てはめるのであれば、門の呪文に近いだろう。
しかし此処から地球の学校まで門を作る場合、一体どれだけのコストを支払うこととなるだろうか。
とりあえず私1人やろうとすれば、間違いなく精神が消し飛ぶことは確かだ。
この世界の魔術はコストが軽いという前提があるにしても、相当な実力がある存在がいるのだろう。
さて、詳しく詰めるのはこの世界の魔術を学んでからになるが、帰還のための魔術を作ることにしよう。
ベースを《門の創造》とし、この世界の魔術を複合させた世界間移動魔術。
仮名を《万能鍵》としよう。
帰ってからも使い道は多岐に渡りそうだ。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
コストを賄うために手段をいくつか考えていると、怒鳴り声でふと現実に戻ってきた。
確か……社会科の先生だった人だ。
まあ戦争用の兵器として誘拐したと言われれば、怒ってもおかしくない。
だが、そういう目的で召喚した以上、「はいそうですか」と帰すわけもない。
帰れないということをようやく理解したのか殆どのクラスメイトがパニックに陥る中、阿呆2-3が「勇者の僕なら大丈夫! 一緒に敵国を滅ぼそうぜ!」という一声でパニックになっていたクラスメイトは平常に戻った。
そして再開されたたぬきの話。
私はそれを聞き流しながら、《万能鍵》の構成について考える。
門の外型を事前に作ることで、コストの軽減を図れないだろうか。
この世界には普通に魔物がいるらしいので、それらを燃料に変換する方法も考えなければ。
空気の成分や気圧などの環境はおそらく同一だが、未知の感染症なども存在するだろう。
やる事は山積みだが、少しずつ進めていくことにしよう。
戦争に参加するという方向で話が纏まった以上、このまま此処にいるわけにもいかず、王城の方へ移動することになった。
案内されるがままにたどり着いた場所には、巨大で複雑な魔法陣が刻まれていた。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん──〝天道〟」
たぬきがその一言唱えると、立っていた場所が浮いて動き始める。
この世界における魔術は魔法陣と詠唱によるものなのか?
いや、コレはサンプルの1つに過ぎない。
とりあえず、後で再現実験を行うために魔法陣は模写しておこう。
雲海を超えて辿り着いた王城では、真っ先に玉座の間に案内された。
この国ではたぬきの権力の方が王よりも大きいらしい。
王とたぬきがいくつか話し合った後、私たちはそれぞれ当てがわれた部屋に案内された。
無駄に豪奢な部屋だが、作業するには都合が良い。
監視されているような感じもないので、元の世界からなんとか持ってきておいた学生カバンの中身を確認する。
その中から15センチ角の箱を取り出し、箱についているボタンを押した。
『──────やぁ。こないだ送った遺物の記録が終わったのかな?』
「一区切りはついたってくらいかな。それより、そっちから私の現在地ってわかる?」
箱に付いたスピーカー部分から音が出る。
こいつは私の友人の1人で、昨日の遺物を送ってきたやつだ。
『調べればわかると思うけど、また何かに巻き込まれたんだ? 人間はこういうとき、確かm9(^д^)<プギャーってやるんだっけ?』
「帰ったら覚えてろよ。まあ、巻き込まれたのはあってるけど」
とりあえず今度会ったら1発ぶん殴ってやろう。
人間の身体を使っているが故のダメージを負うがいい!
『──────かなり遠い所に居るみたいだね。まさか異世界とは驚いた』
「通信が繋がった以上いけるとは思ってたけど、本当にわかるとは。実はこの世界で神を崇められてる存在に、戦争用の戦力としてクラスまるごと召喚されてね。巻き添えで私もこの世界に来ることになったというわけだ」
いや、待て。
戦力として呼び出すなら、なんで軍人でもない学生なんだ?
たぬきは神から力が与えられているとか言っていたが、元々の素体は良い方がいいに決まっている。
『世界名“トータス”。神として信仰されているのは“エヒトとアルヴ”。地球と近い環境だね。ああ、君が危惧しているような細菌やウィルスは存在しないから安心して大丈夫そうだ』
「助かる」
大人よりも学生の方が洗脳しやすかった?
いや、阿呆2-3がいなければ、このクラスはパニックのまま崩壊していただろう。
そんな不安定な素体より、大人の方が精神的に安定しているだろう。
大人は大量に召喚出来なかった可能性もあるが、神がなんらかの目的を持ってこのクラスを狙い撃ちした可能性。
このクラスでなくてはいけなかった可能性がある。
まあ現状、考えてもわかることではないだろう。
「まあこっちはこんな状況だ。また連絡する」
『りょーかい。あ、そっちの世界の歴史を纏めておいてくれると嬉しい』
返事はせずに通話を切った。
さて、寝るか。
新クトゥルフ神話TRPGを買ったのですが、魔道書に習得できると書かれているにも関わらず、効果が書かれていない魔術とかどうすれば良いんでしょうね。
別に原作や原作キャラが嫌いなわけじゃないんですが、南雲ハジメをクラスみんなでイジメておきながら、助けを求めたりハーレムに入ったりするのはどうかと思いました。
少なくとも、八重樫雫は親友である白崎香織と天乃河光輝が原因でイジメが発生していた事に気づいていたのにも関わらず、謝りはするものの止めようとはしなかったわけで。
読み直した時にその辺がモヤッとしたので、こういう扱いになっています。
オリ主君の価値判断基準は単純で、探索者として使い物になるかどうかで判断しています。
オリ主君はクラスメイトの中で現状、神話的事象に関わったときに正気を保てる可能性があるのが南雲ハジメだけと考えています。
そのため、クラスメイトを“価値あるものを見下す阿呆の群れ”としか見ていません。
殆ど名前も覚えてません。
所有アーティファクト
【次元通信機】--ホログラム機能を取り除いた小型版。
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