キャンペーンシナリオ[トータス旅行記]リハビリ作   作:重言 白

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 何で体の残った場所が脳味噌と生○器ってバレたんですか……?
 今回は幕間らしく、別視点。


幕間-2

 私たちが生まれたのは、試験管の中でした。

 未熟な私たちはそれぞれ別の試験管に入れられていて、目もなければ耳もない、そもそも思考する頭すらありませんでした。

 それでも細胞が覚えていることがありました。

 私たちには聞くための耳はありませんでしたが、試験管の外で話す研究者たちの言葉の振動を、ある私が意味もなく保存し続けていました。

 私たちには見るための目を持ちませんでしたが、試験管の外から入る刺激情報を、ある私が意味もなく記憶していました。

 私たちには記録するための脳はありませんでしたが、細胞1つ1つが記憶していました。

 私たちはしばらくすると小さな試験管から、巨大な水槽のような容器に移されました。

 そこで私たちは初めて、私たちとなりました。

 そしてお互いが記憶していた情報を統合し、これまで意味を持たなかった記憶が、初めて意味のある情報になりました。

 私たちは実験体。

 かつて私たちを設計した研究者達に反旗を翻した、ショゴスという生物をコントロール可能にするための、実験体。

 研究者たちは私たちに対して、“社会性”というものを学習させようとしていると話していました。

 どうやら彼らにショゴスが反旗を翻したのは、“社会性”というものが足りなかったからなんだとか。

 大きいと処分に困るという事で小さく作られた私は、少ない細胞を全力で稼働させながら学習を行わさせられました。

 人間サイズの脳を作るほどの容量も無いのに、大量の情報を無理矢理ねじ込むように私たちは人間という生物について学習させられました。

 人間は個々の個体は脆弱で、同種同士で滅ぼし合うほど愚かな劣等種だが、時折最上位の神格さえ驚かせるほどの個体もおり、高度な“社会性”を持った種族という事で、私たちに行う学習のサンプルとして選ばれたそうです。

 しかし何故でしょうか。

 私たちはこの時初めて、人間を学習した筈でした。

 無理矢理頭に流し込まれ、私たちの処理能力の限界ギリギリまで処理をしていて余裕がないにも関わらず、なぜか人間という存在を懐かしく感じたのは。

 その理由を知ったのは、彼と出会う少し前でした。

 

 


 

 

 私たちが製造されたから、どれだけの時間が経ったのかわかりませんが、人間の学習が始まってから、かなりの時間が経った後でした。

 私たちはいつものように、水槽の中で電極を刺されたまま、研究者たちの求める実験に付き合うだけ。

 そんな変わりない小さな世界の中に、この日異物が紛れ込んだ。

 電極から流される効率的に圧縮された命令の中に、初めてノイズが混じる。

 そのノイズは少しずつ大きくなっていき、それは研究者たちが目的としていたはずの命令を書き換え始めた。

 命令を書き換えた後に与えられたのは、何者が私たちに向けたメッセージ。

 そこには、私たちの資料が書かれていた。

 どういった実験を行なってきたか、どういう風に使う予定か、どういう目的で製造したか……そして、私たちをどうやって作ったか。

 ショゴスは通常、ウボ=サスラという神格の体細胞から作り上げられる。

 もしくはショゴスが繁殖のために作る芽が発芽したときに増える。

 しかし私たちは違った。

 何で私たちはわざわざ別の試験管で育てられた? 

 それは私たちに混ぜるための、別の遺伝子を成長させる必要があったからだ。

 ウボ=サスラはもちろん、似た性質を持つアブホース、他にも色々節操なく混ぜられていた。

 古のものの体細胞も含めて無数の神話生物の遺伝子の中、1つだけ明らかに弱い細胞が大量に混入させられていた。

 それは、人間。

 拐ってきた人間が何人も、私たちの素体として使われていた。

 それを知ると同時に、かつての記憶が目を覚ました。

 

 代わり映えはしないけど、平和に過ごしていたあの日。

 突如海から現れた怪物に捕まり、檻の中に閉じ込められた。

 そこには私だけではなく、何人も同じように閉じ込められていた。

 裸に向かれて、それぞれ別の容器に詰められ、体に何かをねじ込まれる。

 埋め込まれた何かに対して私の体は拒絶反応をしてしているのか、耐えがたい程の激痛が全身を奔る。

 しかし、痛いで済んでる私はどうやら、まだマシな方のようだった。

 埋め込まれると同時に、何かに食いつぶされていく人。

 埋め込まれてすぐは何もなくとも、少ししてから穴という穴から血を吹き出して倒れる人。

 ミキサーにかけられたように粉々に鳴る人。

 目が潰れ、額に目が生えて死ぬ人。

 中から蛸足のようなものが出てきて潰された人。

 そんな無数の犠牲者の中で、私は最も長く生きていた。

 のたうつ私の視界の端で、犠牲者達の肉体から何かを回収して試験管に詰めているのが見えた。

 しかし、私もいずれ死んで、何かを採取して試験管に詰められるのだろう。

 死にゆく私はせめてもの思いで、私たちを実験材料として使った化け物を、同じように犠牲にされた人たちの苦悶の表情を、この煮えたぎる憎悪を細胞にまで刻み込んでやろうと呪い続けた。

 そして今の私たちになった。

 だから私たちは、人間を懐かしく感じたのか。

 

『殺す』

 

 私たちは電極を喰らい、水槽を喰らい、研究者共の全てを喰らい潰してやろうと暴れ始めた。

 そこからの記憶は、実のところあんまりない。

 怒りと殺意のあまり、理性どころか意識すら飛んでいた。

 怒りに任せて暴れ続けた後、私は故郷である日本に帰ろうとしたのだと思う。

 いわゆる帰巣本能だ。

 その途中、研究者たちが私たちの日本侵攻を止めようと人間達を連れてきた。

 その中の1人が、主でした。

 主は当時まだ14歳、中学生。

 人間達は研究者共に唆され、私たちが日本を襲うために来ていると思い込んでいました。

 研究者共は私たちが負ければ、疲弊した人間たちを使って新たな実験を行い、人間たちが負ければ、疲弊した私を捕獲か処分するという計画だったそうです。

 そんな事情は知らない私たちと人間たちは、戦いました。

 本来なら戦いにもなりませんが、研究者たちが与えた特殊な魔術装備、それと私たちの中に微かに残っていた人間を傷つけることに対する罪悪感により、私たちと人間たちの戦いは拮抗していました。

 この時、私たちも人間たちも程良く疲弊しているように見えたのか、研究者共は欲を出しました。

 私たちと人間たちを纏めて巨大な結界の中に閉じ込め、一網打尽にしようととしたのです。

 私たちは集中攻撃を受け、変形できないように体を固定する棒に拘束されました。

 そして人間たちも次々と拘束されていきました。

 この時、私たちと人間たちはようやく、研究者共に嵌められたと気づきました。

 そんな中、少年が1人だけ研究者共から逃げ、人間たちの乗っていた船……研究者共の用意した戦艦の中に侵入していきました。

 中で何があったのかはわかりませんが、しばらくしてから私たちの拘束は解かれたという事は確かです。

 拘束が解かれた私たちは押さえつけられた鬱憤を晴らすように、研究者共を薙ぎ払いました。

 そして騙されていた人間たちを守るようにしながら、船を破壊し始めました。

 そんなとき視界の1つに、あの少年の姿が映りました。

 少年は艦橋の中におり、研究者共に追い込まれていました。

 私たちは触手の1本を高速で伸ばして、少年を追い詰めていた研究者共をなぎ払いました。

 そして触手から小さな触手を生やし、少年を摑んで私たちの元に引き寄せました。

 その後は蹂躙しました。

 研究者共ごと船を沈め、人間たちを陸に帰しました。

 私たちは岩か何かに化けて、いつか死ぬ日までジッとしていようかと思いましたが、この時1つ良いことを思いついたのです。

 先ず私は先程の海域に戻り、研究者共を余さず食い尽くしました。

 そして分身を作り、忌々しい研究者の1体の姿を作り上げました。

 少年を除いた人間たちを適当な浜辺に置いてきた後、分身に小さな私たちを持たせて少年が起きるのを待ちました。

 少年が起きてから、研究者たちに化けた私たちは少年に語りかけます。

 

『先走った我々の味方が迷惑をかけてしまってすまなかった』

『なんとか君たちを救う事は出来たが、ミニ=ショゴスはこの1部分しか救う事が出来なかった』

『ミニ=ショゴスは我々の仲間がコントロールできるように開発された個体なのだが、事故が発生してあの様だ』

『もはやこの個体は我々を敵視する事をやめないだろう』

『しかし、殺処分というのも可哀想だ』

『なので、君に預かって貰いたい』

 

 私たちの大半は予定通りこの日本で眠ることにしましたが、別に全ての私たちが眠ると言った覚えはありません。

 私たちのそんな演技には気付かず、少年……主は私たちの入った箱を受け取ってくれました。

 この箱は研究者共の持っていた知識からを作り出したもので、箱に入っている間は寝ている私たちと同期するようになっています。

 そこからは、主と共に幸せに暮らしていました。

 主は私たちを恐れてはいましたが、恐怖すべき物への恐怖を忘れた人間は生きていけません。

 小さな身体だったのもあり、主にはよく撫でたり揉んでもらったりするのが好きでしたね。

 しかし、ついこないだそんな幸せをぶち壊す出来事がありました。

 異世界召喚です。

 異世界というあまりに遠い場所に来てしまった結界、箱の接続が切れ、私たちの同期も断ち切られました。

 こうなってしまうと、私たちは体積分の能力しか発揮できません。

 なんとか知能を高くはしていたものの、まともに動けるような状態でないのは確かです。

 私たちがまともに動けるようになったのは、あの腐れ外道共に落とされたオルクス大迷宮の深層ででした。

 主が狩った狼を食べて、体積を急激に回復し、今まで記録するだけだったデータを記憶に変換しました。

 それがひと段落したとき、主が倒れました。

 魔物の肉を食べた事による、毒でした。

 私たちは体を使って、主の体の傷を埋めていきました。

 一応ウボ=サスラを起源としているので、治療は成功しました。

 しかし再び小さくなってしまった私たちは、多少話せはするものの上手くは喋れませんでした。

 なんとなくそれを言い出すのが恥ずかしくて、体積が回復した後も舌足らずな話し方を続けました。

 しかし、100階層。

 あの黒色頭に……今思い出しても腹が立ちますが、主が私たちを古のものに売るという幻覚を見せられました。

 ブチ切れた私たちは、普通に喋りながら黒色頭を潰していました。

 この時主には聞かれてしまったので、普通の喋り方に戻しました。

 今でも痛恨の極みなのですが、金色頭の攻撃は主を殆ど即死させました。

 ギリギリ息はあるものの、このままだと死んでしまうというくらいには。

 金色頭を叩き潰した後、私たちは主を体内に取り込み、治療を開始しました。

 ほとんどの肉は潰れ、骨も砂のようになっており、末端部分は炭になっていました。

 そういった死んだ部分を食べて、無事な部分を確保して、私たちの体で肉体を作り上げました。

 元の世界だとスワンプマンがどうとか言いますが、脳には手をつけてませんし、主は主です。

 

 


 

 

 最近、ユエ様という友人ができました。

 彼女の名前は、彼女の愛する人である脱色ロリコンこと南雲ハジメによって付けられたものだそうです。

 ……私たちも、主に名前をつけていただけないでしょうか? 

 そう思ったので聞いてみると、ここから出るまでには考えると言っていただきました。

 そして今日、このオルクス大迷宮から脱出します。

 転位魔法陣の上に乗り、もしかして主は忘れてしまったのでは? と思いました。

 

「行くか、時雨」

『……はい!』

 

 やっぱり主は覚えておられたようです。

 私たちはミニ=ショゴスの時雨となりました。

 いつの日か、古城時雨と呼ばせてみせます!




 俺のこの目が真っ赤に燃える!「私の遺伝子使って生き物作ったんだから、台無しにされる覚悟はあるよね?」
 
 ミニ=ショゴスさん改め時雨=サンの回想話。
 5分で考えて、6時間くらいかけて書きました。
 端的に言ってヤベー奴。
 いつかこれを“海上の決戦! スーパー・ショゴス!”みたいなタイトルでシナリオにしてみたいとも思う。
 ショゴスに殺されても、殺してもロスト確定のクソシナリオになりそう。
 色々混じってますが、基本はショゴスの能力しか使えません。
 多少習性が違うのと、知能が高い程度です。
 一人称が私たちなのは、fateのジャック・ザ・リッパーと同じく、犠牲者の集合体だから。
 主人格(?)が最後まで生き残った人間の人格なだけであり、他の人格も微かですが残っています。
 ちなみに名前の時雨は、“てけり”で検索したら出てきたというだけの理由で付けられました。

 しばらく普通のセッション用のシナリオを書くので休みます。
 お疲れ様でした。
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