「はぁっ…はあっ…」
速くしないと、速く助けを呼ばないと…。
「はあっ…はあっ…きゃっ!!」
瓦礫に足を取られる、血が滲む。構わず再び走り出す。
速く助けを…
後方から轟音、ビルが崩れる音だ。
「生存者発見した!保護するぞ!」
良かった、助けが来てくれた。
「はぁっ…げほっ…あのっ!私の弟がまだ家に…」
「弟?まだ逃げていない人がいるのか!?」
「襲われて怪我してて…きゃぁぁ!?」
「ぐっ!?」
急な突風。その方向を見ると数え切れないほどの化物がビルの残骸や道路を喰らい、争っていた。
「不味い…こちら偵察班!
エリアG-4でアラガミの大軍を確認した!
至急討伐班を派遣してくれ!
君!速く逃げるぞ!」
逃げる?待ってよ…まだ…
「まだ…」
「離れるなよ!」
「いや!まだ翠月が!!!」
手を握られ引っ張られる。
嫌、離して。
大人の力に勝てるはずもなく私はその場を去った。
数日後、安全が確認された家には、
破壊された壁と赤く染まった腕輪だけが残っていた。
ーーー
ーー
ー
よくわからない機械に囲まれた部屋。
そこにある台の上に私は横になっている。
「気を楽になさい、蒼月。あなたはすでに選ばれて、ここにいるのです……」
その部屋に、落ち着いた女性の声が響く。
「今から貴方には、対アラガミ討伐部隊
《ゴッドイーター》適正試験を受けてもらいます」
ゴッドイーター、それは突如として現れたアラガミに対抗できる唯一の存在であり、人類が存続する希望。通称神機使いである。
私は神機使いになるために必要な偏食因子に適性を持っているらしく、地震でも新規使いになる事を希望していたため、こうして適正試験を受けることになった。
「試験といっても、不安に思う必要はありませんよ」
この声の主は、ラケル博士だ。詳しくは知らないがアラガミ関係の研究をしているらしい。
「貴方はそう……《荒ぶる神》に選ばれし者ですから…フフッ」
台の隣から自分の背丈ほどある剣が出てくる、神機だ。これに手を当て
因子注入用のハーネスに手を嵌めれば試験が始まる。
「…ふぅ…」
深呼吸をし、手を当てる。ハーネスが腕に巻かれる。
天井からよくわからないものが降りてきてハーネスに何かを注入したその瞬間に腕を中心に激痛が走る。
「…!ぅぁぁぁぁぁ!!!ぅぅぅぅ!!」
耐えがたい痛みから逃れようと体を捩る。しかしハーネスが固定されていて動くことができない。
「うぅぅぅぅ!うぁ!」
突然拘束が外され、勢い余って地面に転げ落ちる。
「ぐぅ…ぅぅぅぅ…ふっ…ふぅ…」
「適合失敗か……?」
「…いいえ、よくご覧なさい?」
「…ふぅー…ふぅー…」
激しい痛みが少しずつ引いていき、神機を杖になんとか立ち上がる。痛みの影響で少しふらつく。
「ふふっ…貴方に《洗礼》を施した時と、そっくり…。おめでとう……これで貴方は神を喰らうもの《ゴッドイーター》になりました。そしてこれから更なる《血の力》に目覚めることで局致化技術開発局《ブラッド》に配属されることになります。ゴッドイーターを超越した、選ばれし者「ブラット」……来るべき新たな神話の担い手……まずは体力の回復に努めなさい……貴方には……期待していますよ」
どうやら試験は終わったらしく、扉が開かれる。支給されている端末で今日の予定を確認すると、これ以降は自由待機となっていた。休めということだろうか。
「…はぁ、痛かったぁ」
人生で一番強い外的な痛みを感じた気がする、生理のあれなんて比じゃなかった。…にしても意外と神機って軽いんだね、身長くらいあるのに軽々と振り回せる。…さて、自由時間だ。ここの構造をまだ把握していないからそこら辺の探索でもしようかな。部屋を出てメインホールに向かう。神機使いになる前から情報局員として二年働いてきたが外とは違い区画整理されたこの空間に、外域出身の私は少し落ち着かない。
「庭園…だっけ?休憩するところがあった気がするけど…」
どこあるんだっけ?地図とか持ってないからここの地理が全くわからない。…あの人に聞いてみるかな。
「あの、すみません」
「ん?…おお、君が件のブラッド候補生か!何か用かい?」
「庭園に行きたいんですけど…場所が分からなくて…」
「庭園ね、そこのエレベーターからいけるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「他に分からないことが有れば遠慮なく聞いてくれよ」
意外と優しい人が多いようだ。情報局はずっとピリピリしていたからな…なんだか新鮮だ。言われた通りにエレベーターを使って庭園に向かう。
「うわぁ…!!」
庭園、その名の通りさまざまな花が咲いていた。全て人工的に造られたのだろうか?管理が大変そうだな。…ん?誰かいる。
「…ああ。適合試験、お疲れ様。無事終わって何よりだ。
まぁ、座ると良い。」
「はい…失礼します」
「ここは《フライア》の中でも、一番落ち着く場所なんだ。暇があると、ずっとここでぼーっとしている…」
誰だろう、適合試験のときもこの人の声が聞こえた気がするけど…
聞いておいたほうがいいよね。
「あの…貴方は?」
「そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺は、ジュリウス・ヴィスコンティ。これからお前が配属される、局地が技術開発局《ブラッド》の隊長を務めている。あまり恐縮しなくていい、これからよろしく頼む。さて…休んだ後でフライアをゆっくり見て回るといい。また後で会おう…」
行ってしまった。自己紹介返せなかったね、残念。
ブラッドかぁ…まだ実感がないけど私はもうは神機使いになったんだね。これでアラガミを倒せる…明日から早速実践だ。今日はゆっくり休もう。