TS転生だと思ったら二重人格だった。個性?「歪曲」?何それ   作:からからしき

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王道だけどスパイダーマンかな。え?知らない?

俺は緑川翡翠(みどりかわひすい)

昔のヤマトもかくやというブラック企業で働いていた普通の社会人だ。

高校までひたすら野球にどっぷりで、勉強なんてしてこなかった。

そのツケは重く、体を削って仕事をして生活していた。

つまりはまあ、過労死というやつと言っていい。

正確には過労で定期健診にも行けなかっただけで、死因は急性腹膜炎。ただの虫垂炎、いわゆる盲腸を放置しすぎたせいで死ぬなんて普通じゃありえない。

内臓の激痛にも気づくことなく、ポックリと死んだはずだった。

それなのに、どうしてか。

 

浅上(あさがみ)さん。一緒に帰ろーよ」

 

どうしてか、女子中学生に転生していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の名前は浅上藤乃(あさがみふじの)

中学生ながら出るとこ出てるナイスな体と、派手ではないが整った顔立ち、紅い目と藤色の長髪が美しい少女で、長野の名家浅神家に生まれたお嬢様である。

しかし浅神家は没落し、藤乃の母親が分家である浅上家に嫁ぐことで浅上姓になった。

勉学もスポーツも難なくこなす才女である。

俺の名前は浅上翡翠。

浅上藤乃の()()()()()()()()である。

彼女はつい最近までa fate worse than death(死ぬより辛い目)にあっていて、耐えきれなくなって誰かに打ち明けたいという思いから俺が生まれた。

解離性同一性障害(二重人格)というものらしい。

人格の主導権は基本的に藤乃が持っているが、藤乃の精神状態が不安定になった場合のみ俺が譲渡される。

藤乃の時は目が紅いのだが、俺の時は琥珀色になる。

親父と母様は目でしか区別できないらしい。

(藤乃の)親友の同級生は目を閉じて交代しても何となく雰囲気でわかるらしい。

 

では、俺の話は一旦中断して転生した世界の話をしよう。

 

この世界では人間は二種類いる。

超常の能力、「個性」を持った人間とそれを持たない「無個性」の人間だ。

今では無個性の方が珍しく、世界は超能力が当たり前の社会となっている。

当然、力を持てば悪用する人間もいる。

人々はそれを(ヴィラン)と呼び、敵を打ち砕くアメコミ的存在、ヒーローが職業として成り立つ。

ヴィランとか、イメージ的にはジョーカーとかかなと思った。

鉛筆を消すシーンは今は亡き息子が縮み上がるような恐怖だった。

藤乃はそういうホラー系の映画(ジョーカーはバッドマンの一部なのでホラーではないが)が好きだったな。

脱線したが、ヒーローが職業として成り立つのは実質的に公務員として国から収入を得ているからだ。

 

当然、藤乃も親友も個性を持っている。

藤乃は視界の中のものを大きさや硬さに関係なくねじ曲げる能力「歪曲」をもっている。

破壊特化の個性なので、幼い頃にヴィランだなんだと言われてかなり塞ぎ込んでしまったらしい。

浅神の頃の父が薬で藤乃を無痛症にし、個性を封じ込めたらしく、俺の時にしか個性を使えないのだが。

 

優れた個性と身体能力、学力、さらに人格も優れている(らしい)トップ級ヒーローに憧れてヒーローを志望する学生が多く、藤乃もその一人だ。

藤乃と親友はトップヒーロー育成機関である国立雄英高校に進学したいらしい。

偏差値79に倍率300超えと前の世界でも比肩できないほどの難関校で、馬鹿な俺は頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

入試当日。

 

「大丈夫でしょうか……人も多いし、少し怖いです」

 

「自信もちなって藤乃。翡翠ならなんの根拠もなく絶対合格するぜー。なんて言ってるわよ?」

 

「人をなんだと思っているんだ。図星だけど」

 

全くこいつは鋭いな。

長い黒髪、青色の目、藤乃ほどではないが発育の良い体。

強気で負けず嫌いな性格と、藤乃よりも文武において優れているのもあって男子生徒からの人気は藤乃と双璧をなしていた彼女は入試なぞ問題外であるといった様子で

 

「さあ行きましょ藤乃、翡翠。私たちのヒーローアカデミアの第一歩よ!」

 

 

 

 

 

 

 

実技試験の説明をプロヒーロー、プレゼント・マイクから受けていると、眼鏡をかけた真面目そうな男子が手を上げて質問した。

いや、質問だけなら問題ないんだ。ドッスンみたいなギミックがいるってわかったし。

でも彼は緊張からか独り言を連発する他の受験生の地味目な男子を威圧し貶すような言動を放ったのだ。

地味男君は物見遊山や記念受験で受けるような不真面目な奴には見えないし、第一こういう高圧的で自分絶対正義みたいな奴は───

 

「あいつ、わざわざそんなこと言う?緊張してるのなんて見れば分かるでしょうし、そんな程度で集中が乱れるような豆腐メンタルでヒーローに、ましてや雄英卒のトップヒーローになんてなれるはずがないわ!」

 

緊張することの否定はしないのか。

こいつは反骨心がかなり強く、高圧的な人間は大嫌い。

つまりあの眼鏡君は天敵という訳だ。

 

「まあまあ、実力が無ければそのうちコケるよ」

 

実技試験の演習場に向かうバスに向かいながら拳を合わせる。

 

「藤乃は絶対俺が合格させる。お前が落ちたら藤乃が可哀想だから応援しといてやるよ」

 

「私はかなり心配だわ。翡翠がポカやって藤乃の足を引っ張るんじゃないかって」

 

藤乃とは穏やかで仲睦まじいくせに、俺には毒しか吐かない。

全く、やな奴だ。

 

 

 

 

「凶れ」

 

ヴィランロボットの亡骸でちょっとした山を築いた所で終了のアナウンスが流れた。

あいつは地味男や眼鏡と同じバスに乗っていたから、実力はともかく素行的な心配がある。

 

「藤乃、あいつ受かってるかな?」

 

「ええ、あの人は凄い人ですから」

 

 

 

学科試験の間は寝てた。

だって俺の仕事じゃねーもん。

 

 

 

これは、死んだら女子中学生の二重人格の片割れに転生した俺が、同居人の藤乃をシアワセにする物語だ。

 

 

 




許して……邪神は難易度高すぎたんや……アザトース様の夢だったんだよ……目覚めたからあの世界は終わったんだ。
だから、あの話はここで終わりなんだ。
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