TS転生だと思ったら二重人格だった。個性?「歪曲」?何それ 作:からからしき
ファンの方、申し訳ないです。
「うぅ……」
「なに〜藤乃?一緒のクラスだったから良かったじゃん」
廊下を手を引かれながら藤乃は歩く。
悩みの種はもちろん、目の前の黒髪の少女と自身の体に同居する翡翠である。
なんにでも噛み付くトラバサミのような二人を、どうリードすればいいのか思い悩んでいた。
教室のドアを開けると、真新しい制服を見本通りにきっちりと着こなし、背筋を伸ばして席に座る眼鏡の男子生徒がいた。
その生徒はドアを開けた藤乃ともう一人に気がつくと、立ち上がり歩み寄ってきた。
「ボ…俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ。同じクラスで一年間、お互いに高め合おう」
「私は
「…………浅上です。よろしくお願いします。」
(拍子抜けだな、鮮花ならもっとバチバチするもんだと思ってたけど)
藤乃は鮮花に悪いと思いながらも親友にかなりの悪口を浴びせるもう一人の自分に同意していた。
(うん。入試でなにかあったのかな)
教室にいた生徒の中である程度の自己紹介をしていると、爆発したような金髪に不機嫌そうな目付きをした生徒が入ってきた。
初日から制服を着崩して着用して、席に座るやいなや机の上に足を乗せて組んでいた。
自身が絶対的に強者であると言わんばかりの態度に、雄英高校に受かった実力も鑑みればある意味増長や思い上がりではないと言えるだろう。
そんな彼の様子が気に入らなかったのか、鮮花と飯田は彼に突っかかっていった。
そんな様子を、ドアから覗いている人物がいた。
(あの人は───)
「君は───」
気づいた飯田がその人物に声をかけていた。
鮮花はその人物が入ってきた途端に、あからさまに不機嫌になっていた。
(なるほどね、アイツだよ藤乃)
藤乃は翡翠が何を言いたいのかわからず、萎縮していた緑髪の男子生徒相手に、鮮花がどうして嫌悪感を持っているのか分からなかった。
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全くなんなのだあいつは。
なよなよしていて、飯田じゃないがとてもヒーロー向きとは思えなかった。
スタートダッシュは遅れるし、ロボットを目の前にしても棒立ち、ゼロポイントロボットが出たら真っ先に腰を抜かして、本当に物見遊山だったのかと思えばゼロポイントに向かって飛び出してオールマイトもかくやという跳躍と超パワーでロボットを粉砕して、入試で実力を隠そうとしていたマヌケかと思えば自分の個性で体をぐちゃぐちゃにする幼児のようだった。
力がないのに、面倒事に首を突っ込む様は見ていて腹が立つ。
強力な個性だとしても扱えなければないのと一緒だ、ああ全く、アイツみたいで腹が立つ。
この高校で一番になるにはまず彼だ。
あの女からアイツを取り戻すにはNo.1じゃなきゃダメだ。
自分より上は全部超える。
そのために私は雄英に入ったのだから。
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まあ、何となく分かっていたさ。
自由な校風、っていうのは学校側は教師の指導内容に口を出さないっていう事を言い換えただけなのだから。
生徒が自由なのは退学する時のみで、本当に自由なのは体罰も懲罰もやりたい放題の教師なのだ。
強豪私立ならどこも似たようなものだろう。
俺の時代は少なくともそうだった。
「個性把握テストで最下位なら除籍ね……なんだっけ、あの先生の名前」
「
「やだよ、藤乃が覚えれば俺は覚える必要はない」
高校最初のイベントは入学式でもガイダンスでもなく、個性使用可の体力テストだった。
ちなみに例としてボール投げをしたのは金髪爆発頭で、700超えという記録を叩き出していた。
右目は右回転、左目は左回転の回転軸を視界の中に作り、ねじ曲げる能力。これでどうやって速く走ればいいんだ。
まあ、走り方やら何やらは野球で散々鍛えた。
藤乃の体も俺が言ってインナーマッスルは鍛えさせてあるし、前ほどとはいかなくても普通に走る分には支障はない。
男ならガッツリ鍛えさせるけど、ムキムキ女子の藤乃は嫌だったからこれが妥協点。
50メートルギリギリ6秒台、鮮花は楽に5秒前半で走ってるし、ルックス以外は藤乃じゃ勝てないか。
───戦闘については、お互いの個性的に考えたくないな。
まあ前座はほどほどにしておいてだ。
高校じゃソフトボール投げなんてやってなかったからな。
ハンドボールは投げにくくてしょうがなかった。
片目を閉じて、片方の回転軸だけをいつでも作れるようにする。
円の一番後ろに立ち、ワインドアップで振りかぶる。
全体重を右足に乗せて、できるだけ後ろに残した状態で左手と足を前に出す。
左足が地に着いた瞬間、右足で地面を強く蹴り、左手を体に巻き込むように引く。背筋を使って少し体を倒し、体の回転を直にボールに伝える。
全体重を乗せたボールが手を離れる瞬間に、小さく呟く。
「凶れ」
片方だけの回転により、強烈なバックスピンがかかったボールはグングン伸びて、いつか憧れたレーザービームのように真っ直ぐ飛んで行った。
「703メートル」
男の体なら1000超えたかもとは思ったが、藤乃の体でやるから意味があるのだと納得することにした。
しかしまあ、やはり個性の汎用性というのは色濃く出るな。
爆豪とかいう爆発頭が705メートルだったり、鮮花も700メートルを超えていた。
あと気になったのは教師からなにか言われていたモサモサ君。
一投目は40ちょっとの運動部の高校生の平均以下だったが二投目はこれまた700オーバー。
まったく、血の滲むような努力とちょっとの才能で100メートル投げていたってのに、こいつらは軽々常識外れた記録を出すんだから、そりゃオリンピックもスポーツも廃れるわな。
「なあ鮮花、あのモサモサ君の名前なんだっけ?」
「緑谷出久よ。翡翠、どうせ記憶しないなら聞かないでちょうだい」
「いや、今度は覚えるさ」
「今から順位を発表する……あ、除籍は嘘な。君たちの全力を引き出す合理的虚偽」
なんだ、思いの外生温いじゃないか、雄英。
発火でどうやって700メートルも飛ばしたんだ鮮花?
芦戸さんがいるんで鮮花もスペックの底上げをしてます。
ていうかあれだけ鍛えたデクがあの身体能力は作者筋トレナメてんな。
握力60じゃ済まないだろアイツ。