TS転生だと思ったら二重人格だった。個性?「歪曲」?何それ 作:からからしき
奈須きのこ先生の描くヒロインの中に被害者のまま加害者になる人達がいます。
痛みというのは、それが危険なものだと教える為の生物が当たり前に持った本能だ。
例えば、刃物。
触れば肉を切り裂き、血は流れる。
おままごとに、ひとつだけホンモノが混ざっていた。
「藤乃!あなた、何しているの!?あぁ、こんなに血を流して…痛かったでしょう?すぐに手当てを……」
ごめんなさい母様。
藤乃には、痛いが分かりません。
泣いてしまったのは、母様が優しく抱きしめてくれたから。
私は、一度も痛いとは感じなかったのです。
「おい、しっかり押さえとけよ」
「いいけど、こいつ抵抗しないじゃん」
暗い廃ビルの地下。少年達は獣欲を吐き出していた。
痛みを感じない彼女は、クスリを打たれようが乱暴に犯されようが反応を示さず、そんな彼女を都合がいいと考える者、つまらないと考える者。
少年達の中でも暴力的な嗜好が強い者がナイフを取り出した。
痛みを感じない彼女も、ナイフで刺されたら危険だということは理解していた。
しかし彼女が考えていたことはもっと別のこと。
犯され、殴られ、何をされても痛みを感じない肉体は実感がわかなかった。
思った通りに動いたところで、痛みが無ければそれはゲームのアバターと変わらない。
感じることができない自分の身では、生を実感できなかった。
(誰か、私を理解してくれる人)
ナイフが振り下ろされる直前だった。
(誰か、私に生を実感させて)
意識が薄れていた。
(私は、生きて──いたい)
「────ッ!」
今まで無抵抗だった少女の、突然の蹴りによる反撃に、ナイフを持った少年だけでなく、押さえ込んでいた少年も、またそれを傍観していた少年も面食らっていた。
琥珀色の瞳の少女は、男に囲まれて凌辱されていることよりも、振り下ろされかけていたナイフに恐怖しているようだった。
獣のようなヒステリックな叫びを上げて近くのライトでナイフを持った少年を殴りつける様は、先程までの人形のような少女ではなかった。
ピクピクと痙攣する少年を心配する様子もなく、他の少年達は得物を取り出したりそれぞれの個性を発動させていた。
少女はオーバースローでライトを投擲すると、小さく「曲がれ」と呟いた。
しかしライトに訪れた変化は、弧を描いて曲がるのではなく、雑巾を絞るように捻じ切れる様だった。
それが「個性」だと気づいた少年達は本気で殺す気で少女を襲った。
それが「何か」も分からずに無我夢中に少女は「まがれ」と叫んだ。
翌日、無個性の少女を少年達が集団で暴行した事件が小さく報道された。
少女を脅す為に使っていた動画は消去され、少女は強いストレスを受けた為少しの間入院することになった。
少女は女性看護師や女医と話す時は落ち着いて、年頃の女の子然とした言葉遣いで話していた。
男性と話す時のみ、言葉遣いは荒くなり、一人称も「俺」と男性のような口調になった。
診断の結果、男性に対しての恐怖から男性としての人格を作り上げ、男女間での交流を断ったということだった。
そして男の人格の間は、個性が使えるということが判明した。
当初は「回転」という名前の個性であったが、その真価は触れずに視界に映った物をねじ曲げる、「歪曲」させることだった。
これが無痛症の藤色の少女に、翡翠色のもう一人の自分ができた話。
十三歳の、夏の話。
a fate worse than death にはいくつか意味がありまして、おどけて「死ぬより辛い目に遭ったよ!」って言う意味と「(特に婚前に)処女を喪うこと」があるらしいです。
まあつまりFateはそういうことです。(HFチラ…(´ ・ω|)