TS転生だと思ったら二重人格だった。個性?「歪曲」?何それ 作:からからしき
なんかあっさり倒せたと思ったらチビ田のセクハラにあっていたらしい。
成績とか女子からの評価とか気にしないのか、ある意味男だよな。
「お疲れ翡翠。個性の発動条件が緩いと対策は難しいのかしら」
「ポニテの人の個性は把握テストで見てたから対策できたし、ピンク髪の人と相性が悪かっただけだよ」
あの紫色のぷよぷよは触ったらダメな気がしたし、相性ってやっぱり大事だ。
「次は私の番ね。口田くん、行きましょう」
(少し、ピリピリしていますね)
(うん、多分あの紅白頭のことを意識しているんじゃないかな)
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師匠にもらった火蜥蜴の手袋を握り締めて、私は見ていた。
ビルそのものを氷漬けにし、一瞬で敵の動きを封じてしまう彼の様子を。
そしてその氷をあっという間に溶かしていく様子も。
緑谷出久だけじゃない。
爆豪勝己の戦闘センスも目の当たりにして、乗り越える相手が増えたと思ったばかりだというのに。
これが雄英。
これがトップ。
手袋がなければ自分の個性も完全に扱えない私が、トップヒーローになるのは難しいとわかっていた。
それでも、あの女に勝つにはやるしかない。
自分の気持ちに言い訳したくない。
何より、私の事を凄い人だと言い続ける親友の為に、私は彼女の前では凄い人であり続けなければいけない。
私の個性、『発火』。
炎を出して攻撃するのではなく、対象が発火して攻撃する個性。
手加減もしにくいし応用も利きづらい。
それでも、私はヒーローになると決めた。
この力で私はあの女を超えるのだから。
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修道服をベースにしたコスチュームに身を包み、核兵器(のハリボテ)の前で仁王立ちの鮮花。
オドオドとなにか提言する相方の意見を聞いて、三階に位置する核兵器を置いた部屋の窓から飛び出してしまった。
猫のようなしなやかな動きで音も立てずに着地すると身を屈め、既に建物の中に侵入していたカエル顔の少女と鳥顔の少年に這いより、廊下に仕込んでいたテープに発火の個性を使った。煙とスプリンクラーの水で視界が悪い中、鮮花は目を開けることなくテープを二人に巻き付けていた。
彼女の個性は発火だが、上手く制御できていない。
知り合いのヒーローの元で指導を受けているらしく、熱の感知や加速はずば抜けている。
温度の変化をほぼ第六感で感じ取れる為、視界の悪い中での活動は夜目が利くとかいうレベルじゃない。
また自身が火を放つ個性ではなく、対象が勝手に発火するため、個性を使っても居場所がバレにくいなどといったことからトリッキーな動きが彼女の武器だ。
階段の手すりの上でダッシュしたり教会の椅子の背もたれの上でダッシュできる体幹とバランス力、集中力に度胸と個性以外の部分で他の生徒より優れていると言える。
唯一、自己評価が少し低いのが欠点なぐらいで彼女はこのクラスの中でもトップクラスのセンスの塊だ。
爆豪やピンク髪程の身体能力はないが藤乃が言う通り「凄い奴」だ。
藤乃の前でそれを絶対に崩さない部分も含めて。
(一瞬出てきた鳥の個性?スタンド?がめちゃくちゃヤバい感じだったな)
(そうなんでしょうか……でも
(まあ多分ね)
どうしてもあれは言いきれない。
紅白とか爆豪とか緑谷とかそんなレベルじゃない。
現状のこのクラスで最強は間違いなくアイツだ。
後で鮮花に名前聞いとこう。
「鮮花ー、あのお前がぶっ飛ばした鳥頭なんだけど」
「ちょっと翡翠!」
「すみません黒桐さん!」
着替えている時に聞いたら怒られた。
藤乃が慌てて交代する。
てか藤乃も忘れてたじゃん。
「ケロ、藤乃ちゃんはやっぱり二人いるのかしら?」
カエル顔の子がふとそんなことを口に出した。
「え?あ、蛙吹さん?見ての通り藤乃は藤乃で一人しか───」
「じゃあ、もう一人藤乃ちゃんじゃない人がいるの?」
鮮花より鋭いんじゃないか?
ボロ出したのもあるけど、鮮花でも三日くらいかかったと思うけど。
「黒桐さん、ありがとうございます。私から説明します」
まあ、演習で組んだりすればそのうちバレる事ではあるし、できれば藤乃には普通の女の子でいてほしいから俺が隠してただけだったし。
協力してくれた鮮花には悪いけど、ちゃんと理解してもらう事も大事だ。
理解できないとか言ったら曲げるし。
「カッコイイじゃん!」
「藤乃ちゃんと、翡翠くんね」
ピンク髪とおちゃらかが屈託なく笑う。
拍子抜けというのだろうか。
思いの外あっさりと受け入れられた。
────でも、無痛症とあの事は無理だ。
鮮花にも話していないこと。
警察を脅してまで秘密にさせたこと。
「ごめんなさい。私、思ったことすぐ口に出しちゃうの。秘密にしてたことだったのに」
「いいえ、大丈夫ですよ蛙吹さん。同じクラスでヒーローを目指す以上、いつまでも秘密にはできませんから」
俺の心配をよそに藤乃は笑っている。
────誰にでも見せる、貼り付けた笑顔。
俺は彼女を笑わせてあげたい。
俺が死んですぐにあんなことになって頭がどうにかなりそうだった時。
自分よりも不幸だと思って同情した。
醜い。
本当に自分の醜さが嫌になる。
同情と優越感で君に寄り添った。
君は気づいていたかもしれない。
でも君は、俺をすぐに受け入れてくれた。
何も隠さず、全部話してくれた。
神様がくれたチャンスなんだろう。
来世で多少マシな人生が送れるように、徳を積めってことだ。
「よろしく、お願いしますね?」
これは、贖罪の物語。
美しい魂の君を辱めて、自分の愉悦の為に寄り添った俺が消えるまでの。
次回予告でもしましょうか。
地獄のような、男だった。
次回!『俯瞰の身体の少女、俯瞰の視線の少女』