TS転生だと思ったら二重人格だった。個性?「歪曲」?何それ   作:からからしき

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息抜きです。
バリーボンズ並にかっ飛ばしてますが、どうか許して。


正義の味方。ヒーロー『ジョン・ドゥ』

「凶れ!」

 

息を切らして走る。

黒髪の殺人鬼から逃げる。

藤乃を生き残らせる。藤乃を傷つけさせない。藤乃を守る。

 

「凶れってんだよ!!!」

 

視界をすり抜けるように距離を詰めた敵のナイフが、胸に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

「大丈夫?鮮花ちゃん。最近顔色悪いわよ?」

 

「大丈夫よ蛙水さん。今日も用事があるから、ごめんね」

 

心配してくれているのはわかっている。

彼女だけじゃない。クラスの皆が心配している。

私のことじゃない。あの事件からずっと。

 

「黒桐さん。毎日お見舞いありがとうね」

 

看護師さんに愛想笑いをして病室に入る。

 

「昨日ぶりね藤乃。そろそろ眠り姫にも飽きた頃じゃないの?」

 

 

 

 

 

敵による雄英高校襲撃事件以降、浅上藤乃は事件から一週間たった今も目を覚まさない。

あの事件はオールマイトを狙った「敵連合」を名乗る集団によるものだった。

オールマイトと相澤先生、そして潜入捜査をしていた一人のヒーローの尽力によって撃退することはできたし、大半の敵は逮捕された。

私は確認出来なかったけれど、主犯格の男は逃げてしまったらしいが。

 

「あら鮮花、あなた、その子の知り合いだったの?」

 

不意に後ろから聞き覚えのある声がした。

忌々しい女の声が。

 

両儀式(りょうぎしき)……あなた、よくもここに顔を出せたわね」

 

振り返り、予想通り着物を着た中性的な美人が立っていた。

女性的な口調と表情が乏しい、落ち着いた雰囲気の彼女は、男女問わず人気を博している。

 

「いけないかしら」

 

「あなたのせいで藤乃は個性を失ったのよ」

 

「命を失うよりかはマシだと思うぜ?」

 

口調が変わる。わんぱくな少年のような、猫のような読めなさのある男性的な口調。

もう一人のシキに変わったのだ。

彼女も二重人格。藤乃と翡翠と同じ、男女の人格を持つ。

 

「───ッ、あなたがしっかりしていれば、藤乃はこんな目に遭うこともなかったのよ」

 

「しょうがないだろ鮮花?俺だって精一杯やったさ」

 

肩をすくめておどけるように言うシキに、私は怒りを抑えながら問うた。

 

「なんで、翡翠を殺したのよ」

 

「私が式に頼んだのよ。」

 

シキじゃない別の声。少し歳を重ね、大人びた包容力のある声がした。

 

橙子(とうこ)師。いくら師匠のあなたの言葉でも私は納得しません。藤乃は個性が使えない。翡翠がいないと彼女は────」

 

ポニーテールに纏めた赤い髪を揺らして、橙子師は煙草に火をつけた。

 

「藤乃ちゃんが無意識的に押し付けていただけで、彼女も個性は使えるわよ。無痛症、完璧に治ってるらしいからね」

 

「──────」

 

 

藤乃がヒーローを諦めないで済むことに安堵して、翡翠がいなくなったことを藤乃が受け入れることができるのか心配で、そして──────私が、どうしても翡翠がいなくなったことを認めたくなくて、いなくなっても良かったなんて認めたくなくて、必死に言い訳を探していることとか頭の中は複雑に入り乱れている。

 

 

 

「橙子、病院内では煙草はやめてください」

 

 

式の言葉に、橙子師はぎょっとして慌てて煙草を携帯灰皿に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

**********************

 

ふわふわと体が宙を漂う。

白く燃える炎のようになってしまった体。

幽霊というのか、顔も腕も足も無いが、意思はあるし周囲の風景も認識できる。

 

「今度こそ、死んだかな」

 

風に乗って流され一週間。

昨日見た看板には久留米市って書いてあったかな。

今は大きな川を繋ぐ赤い橋の上に降り立っていた。

風に吹かれて飛ばされるビニール袋のような存在になってしまったが、死んだにしては現世にしがみつき過ぎではないか?

 

「おかしな気配だと思って見に来てみれば、君はいったいどういう状態なんだ、それが君の『個性』とやらか?」

 

赤い鉄橋の上に、同じくらい赤い外套に身を包んだ褐色白髪の青年が現れ、独り言を呟いている。

青年は俺をつまみ上げ───は?

 

「君に言っているんだが、言葉は通じないのか?」

 

「俺が見えているのか?てか俺に触れてるのか?」

 

死んでなかったということだろうか。

 

「まるで幽霊のようなセリフだな……いや、考えすぎだろう。私はヒーロー『無銘』。中東でテロリスト集団相手にヒーロー活動をしていたのだが、諸事情でこちらに来ることになってね。この国の状況がさっぱりでね、協力者を探していたんだ。どうだろう、君さえ良ければ協力してくれないか?」

 

────この出会いは運命であったと、あまり遠くない未来で知ることになるのだが、この時の俺は生きる意味を与えられた気がして、舞い上がっていた。

 

 

「俺は死んで名前も体も喪った男だ。ジョン・ドゥ(名無し)だ。こんなゴミ袋みたいな奴で良ければ存分に使い潰してくれ」

 

「───そうか、ジョン君。きっとそんなこともあるだろう。早速だが、雄英高校というのはどこにあるのか知っているか?」

 

「ああ、よく知ってるよ」

 

 

 

 

 




タグ追加しなきゃ……
タイトル詐欺になってしまいますが、ちょっとの間雄英高校はおやすみです。物語にはバンバン出していくつもりですので、外側から見た雄英高校を描こうと思います。
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