彩の軌跡   作:sumeragi

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突入、激闘

ルナリア自然公園の入り口は鉄格子と南京錠で閉ざされていて、管理員だという男達の姿は無かった。

既に逃げたのか、と考えていると、門の前で光るものを見つける。

その光るものの正体は、帝都の商人が扱っていた商品と同じデザインのブレスレットだった。

こんなものが落ちているということは、やはり"犯人たち"は自然公園の中に潜んでいるのだろう。

 

しかし、門は内側から南京錠を掛けられている。

かなりの大きさで、相当頑丈そうなそれをどうしたものかと悩んでいると、リィンが文字通り"一刀両断"――南京錠を真っ二つにした。

初伝クラスの技だと謙遜していたが、音も立てず見事に切断してみせたのは明らかにリィンの実力が成したことだと分かる。

少しは自分を認めればいいのに、と誰ともなく思う。

 

そして、犯人たちを捕らえるためティア達は自然公園へと足を踏み入れたのだが。

 

 

 

 

「――やれやれ。口ほどにもない連中だ」

 

 

自然公園の最奥で、犯人らしき4人の男たちと盗品が入れられた大量の木箱を見つけた。

男たちの会話から、彼らが窃盗犯であると確信したティア達は、立ち去ろうと準備を始める窃盗犯たちの前に走り寄る。

突然現れた学生達に驚き、銃を構え攻撃を仕掛けてくる窃盗犯たちにすぐさま応戦する。

大した練度もない窃盗犯たちの無力化に、時間はそれほどかからなかった。

 

 

「勝負はあった。投降して、大市の人たちにきちんと謝罪してもらうぞ?」

 

「そちらの盗難品も全て回収するわ」

 

「"誰に"頼まれたかも話してもらいましょうか?」

 

 

往生際悪く、負けを認めず口を割ろうとしない窃盗犯たちを拘束しようとしたその時。

 

 

「エリオット、どうかしたのか?」

 

「う、うん・・・何だか笛のような音が聞こえた気が――っ!?」

 

 

大型魔獣のものらしい咆哮が聞こえてきた。

直後、地響きを立てながらこちらへ近付いてくる。

 

耳をつんざくような雄叫びをあげ、木々を押しのけて巨大なヒヒが姿を現した。

 

 

「この自然公園のヌシといったところか・・・!どうする、リィン!?」

 

 

ラウラの問いに、リィンは腰を抜かしている窃盗犯達を見やる。

 

 

「くっ・・・さすがに彼らを放り出すわけにもいかない!みんな、何とか撃退するぞ!」

 

「承知・・・!」

「了解しました!」

「わ、分かったわ・・・!」

「女神様・・・どうかご加護を・・・!」

 

 

武器を構え直しながらティア達はリィンへと返事をする。

それが合図だったかのようにヒヒ――グルノージャは再び咆哮をあげて襲い掛かってきた。

 

 

 

 

          ・・・

 

 

 

 

アーツを発動し終えると、すぐさま目の前のゴーディオッサーへ銃口を向ける。

敵はグルノージャだけではなかった。

巨大な霊長類・・・ゴーディオッサーが2体、お供として現れたのだ。

 

 

「アリサさん!」

 

「任せて!――フランベルジュ!」

 

 

炎を纏った矢がゴーディオッサーへと放たれる。

最初こそビクともしていなかったが、何度もアーツを喰らい弱っていたゴーディオッサーはついに体勢を崩した。

その隙を逃さず、ティアが首元へと銃弾を撃ち込む。

動きが止まったかと思うと、ゴーディオッサーはゆっくりと地面に倒れた。

 

 

「・・・はぁ、・・・これで、2体目・・・!」

 

「はい・・・後は、あの巨大なヒヒだけ、ですね・・・」

 

 

前方でリィンとラウラがグルノージャと対峙している。

エリオットは2人をクラフトや補助アーツでサポートしているが、やはり3人ではあまり余裕も無さそうだ。

自分たちではなく、後ろにいる窃盗犯たちを襲う可能性のある魔獣はもうグルノージャしかいない。

ティアとアリサは後方にちらりと視線を送った後、すぐにリィン達の元へと走り寄る。

 

 

 

 

 

「奥義・洸刃乱舞!!」

 

 

目に留まるのは、光を纏う大剣でグルノージャへと切りかかるラウラの姿。

しかしグルノージャは最後の回転斬りをくらい、一瞬のけぞったがすぐに体勢を立て直した。

 

 

「くっ・・・!?」

 

 

自身の渾身の一撃でも致命傷を負わせるには至らず、一瞬ラウラの動きが止まる。

グルノージャは拳を振り上げラウラへ迫る。

 

 

「ラウラ!!」

 

「――フロストエッジ!」

 

 

グルノージャが拳を振り下ろす直前、リィンがラウラを庇おうと立ちふさがり、エリオットはアーツを発動させる。

アーツの直撃を受けひるんだところに、リィンが斬りかかり後退させた。

致命傷は負っていないが、グルノージャも無傷ではない。

先ほどまでの戦いで蓄積されたダメージは残っており、確実に動きは鈍くなっていた。

 

もう一度リィンが斬りかかろうとしたその時、グルノージャは再び耳をつんざくような咆哮を上げる。

威嚇などではなく、明確な怒りを孕んだそれに、リィンは剣を握りなおす。

 

襲い掛かってくるグルノージャに、カウンターを喰らわせようとリィンは気合を溜める。

しかし、怒りに突き動かされるグルノージャの動きは今までよりも明らかに速くなっていた。

完全に遅れた、とリィンが思った直後――

 

 

「スパークアロー!」

 

「ヒートウェイブ!」

 

 

ティアが強力な風のアーツを発動させ、雷がグルノージャへと真っすぐ向かっていき、直撃した。

グオオ、と苦痛の叫びを上げたグルノージャに、アリサが火のアーツを発動させる。

不意打ちを食らい、グルノージャの動きは完全に止まった。

 

 

今だ、と叫んだのは誰だっただろうか。

 

 

自分を呼ぶ声に、リィンは太刀を構えなおす。

 

 

「焔よ・・・我が剣に集え」

 

 

開眼すると同時に、凄まじいスピードでグルノージャへ近づく。

 

 

「はああああああっ!――斬っ!!」

 

 

リィンの剣が焔を纏い、一気に振り下ろされた。

右肩から左脇腹へと容赦なく斬り付けられ、グルノージャはまるで爆発したかのような炎に包まれる。

 

グルノージャは大きくのけぞると、断末魔の叫びをあげて地面へと崩れ落ちていく。

うつ伏せで倒れたままぴくりとも動かない姿を確認すると、誰ともなく安堵の息を漏らした。

 

 

 

「と、とんでもなかったわね・・・」

 

「はあぁ~・・・さすがに、もうだめかと思ったよ・・・」

 

「あはは・・・お疲れ様です」

 

 

お互いに労いの言葉をかけながら、ラウラは最後に見せたリィンの技について尋ねる。

リィンは修行の賜物だ、と答えラウラは満足そうな笑みを返した。

 

 

「この勝利――俺たちA班全員の"成果"だ」

 

 

その言葉に思わず笑みがこぼれ、全員が顔を見合わせる。

一番の大役を果たしたリィンだが、やはり、というべきか彼が驕ることはなかった。

 

 

 

 

「・・・と、とんでもねぇ・・・」

 

 

大きな壁を乗り越え、和やかなムードになっていたティア達に水をさすように驚愕の言葉を零す1人の窃盗犯。

それに釣られたかのように他の者達も口を開く。

そのどれもが"信じられない"といった旨の言葉だったが、"あの野郎"、"話が違う"という言葉が聞こえてくる。

何のことだ、とリィンが尋ねようとした瞬間、ピー!と笛の音が鳴り響いた。

 

 

「・・・無粋な人たちですね」

 

 

笛の音と共に領邦軍は姿を現す。

隊長の合図で彼らは走り出し・・・ティア達を(・・・・・)取り囲んだ。

 

 




クラフトは名前が思いつかなくて今回も出せませんでしたが、攻撃2つと回復、補助が1つづつでSクラフトは回復技を想定して現在開発中です。
かっこいいセンス溢れる技名降ってこい・・・!

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