人類最強の男 作:焼肉定食
「クローバー!!メルドの兄ちゃんが来やがったぞ。」
「ん?メルドの兄貴が?」
俺は寝ぼけながらに起きる。俺はクローバー。名前はない。
というのも俺は元々スラムで生まれである。母親の顔すらみたことがないがメルドの兄貴に拾われて育てられた。
兄貴は王宮直属の騎士。俺は職業は異なり俺は冒険者として暮らしており五年前に独立している。
ランクは一応最高ランクのゴールドであり、町人にも一年前に倒したレッドドラゴンにあやかって「ドラゴンスレイヤー」と呼ばれ、戦争の功績より英雄として扱われてもいる。
なお俺の家には元スラムの人間が住み着いていて、俺が冒険者として稼いでいる金額で養っている現状であるが冒険者として既に数人俺みたいに独立している奴もいて、スラムの星と呼ばれている。
なお、基本的に治安が良くなったこともあり、王国が支援していることもあるのだが、既に何人かの女性は王宮の待女に呼ばれたりしている。基本的に王国からの評価は高い。
客間に向かうと既にメルドの兄貴が座っている。
「あら。メルドの兄貴どうかしたか?」
「おう。久しぶりだなクローバー。まぁ座れ。冒険者のお前として依頼があるんだよ」
メルドの兄貴ってことは騎士団からの依頼か。
俺の天職は魔法戦士といい、メルドの兄貴とギルドの支部長、パーティー仲間しかしらないことだが魔力操作を持っており、魔法を纏いながら剣術や体術で戦うのが基本である。
「ん。依頼って何だ?」
「近頃、魔人族との戦争が活発化しているのは知っているだろ?」
「まぁな。俺も何度か戦場にでているしな。」
実際、英雄と呼ばれるほどの強さを持つ俺にはこういう依頼は多い。
するとメルドの兄貴が気まずそうにしている。
「……お前にとっては嫌かもしれないが教会が神託を受けて勇者召喚を行なった。」
「……」
「だからお前にも勇者たちの指導役を頼みたい。」
それはまさかの依頼だった。王国にとってその依頼はかなりのリスクを伴う。
何故なら俺たちのパーティーは唯一この国で教会と対立している。即ち異端者と呼ばれる人種であるのだ。
しかし、教会は手が出せない訳があり、特例として俺たちのパーティーは王国の立ち入りを許されている。これはかなり異例なことであるのだ。
「それは王宮からの依頼か?」
「そうじゃなければ依頼なんかしてないだろ?」
「そりゃそうか。……リアは王宮に入れるのか?」
リア。俺のパーティーでの斥候役及び暗殺者としている女性の兎人族の女性だ。
ギルドでの評価も高く美貌もいい。
元々違法の奴隷売人の元の商品の一人だったが俺のパーティーで功績をあげたことにより奴隷ではなくなり、たった一人の少女として同じパーティー仲間で盾役のブロムと結婚している。
「あぁ。当然だ。リリアーナ姫の推薦だからな。」
「リリィが?」
「……クローバー。お前姫様のこと。」
「リリィがいいって言っているんだから別にいいだろ?つーか俺礼儀作法なんて詳しくないしな。」
実際俺は文字が未だに書けない。読むことはできるが、教育なんてものは基本的に受けていないのだ。元々7歳の時に拾われ三年間騎士団で修行、その後に独立したのである。
「全くお前は。」
「つーか勇者召喚って意味あるのか?平和なとこからやってきたガキだったら全く戦争の役に立たないどころか迷惑なんだけど。」
「……お前は少しは遠慮を覚えろ。」
「へいへい。まぁ依頼は召喚された勇者たちの訓練ってことでいいんだな。まぁ俺個人になるけどな。リアが妊娠したから。」
「ほう。リアが?……めでたいな。」
「あぁ。つまりラックスはしばらく休暇ってわけだ。」
本当にめでたいんだが。孤児院を経営している身としてはかなり辛いことであるのだ。
所謂金銭的な事情だ。俺の懐がかなり少なくなるのだ。
「まぁその分金銭的な余裕がなかったからな。ちょうどいい機会だしな。それに俺の討伐とかされたら面倒でありゃしないし。」
「それはないだろ?さすがに冒険者ギルドが相手になったら騎士団でも抑えることはできん。」
あっそ。それならいいけど。
「それじゃあ。明日から頼むぞ。」
「……は?明日?」
「あぁ。今日勇者の召喚されたのは知らないのか?」
「……知る訳ないだろ?俺昨日まで魔物の駆除でウルから帰ってきたばっかりだったから酔いつぶれてさっきまで死んでたわ。」
「……酒はほどほどにしろよ。お前まだ17だろ?」
「たまにはめを外すくらいいいだろうよ。つーか樽4杯程度しか飲んでないからな。」
するとメルドの兄貴が頭を抱える。まるでこりゃダメだって言うみたいに呆れていた。