人類最強の男 作:焼肉定食
「お邪魔します」
「お邪魔します。クローバーさんはって、いるわね」
「ん?って雫と香織か。ハジメは……そういや図書館寄ってから帰るって行っていたか?」
あれから10日が経ち俺は遠征の準備をしていたところ二人がいつも通りに、いや最近ではギルドハウスにすみこむようになっている
「えっと?何しているの?」
「いや、明日から3日間少し火山の方に行ってマグマ溜まりを取り除く作業があるんだよ。所謂迷宮攻略者だからできる仕事ってわけ。だから少しばかり遠征にでるからその準備」
「へぇ〜でもマグマ溜まりをどう捨てるんですか?」
「空間魔法でマグマを少し海に流せばいい。それだけで噴火の危険性は格段に落ちるからな」
と何気ない会話だがそれが異常であるので苦笑しているのがよくわかる
「そういえば何かあったのか?俺は三日間離れることになるんだが。もしかして訓練か?」
「はい。オルクスの大迷宮について何か知っていることはありますか?」
おや、ちょうどいい時期に実践に出るんだな。
俺はまぁ必要なことだし説明にでるかと笑う
「オルクスの大迷宮か。まぁここから一番近いとされている大迷宮だな。元々は緑の大坑道があった場所でいい鉱石が取れるからな。だから上層は人気なんだよ。んで中層からは基本的に俺たちしか今の所はたどり着いてないな。俺たちは基本的に潜っていないけど。」
「潜っていないんですか?」
「いないな。俺たちくらいになるとオルクスの大迷宮よりも高難易度クエストを受けた方が稼ぎになるし、さらに魔物の素材も手にはいるからな。それに俺たちがいるのは暗殺者であって盗賊じゃないからトラップが避けられないんだよ」
「トラップ?罠とは違うんですか?」
「罠とトラップの違いはわかるか?説明するとほとんどの物が罠は目に見える物、トラップは魔力を軸とした妨害道具のことだ。基本的に何かに連動して発動することが多い。多いのは鉱石を取ろうとしたら発動する魔法陣とかな」
とオルクス大迷宮で知っている知識をひたすらに話していく俺。二人はただずっと聞いてメモをとっていく。
オルクス大迷宮は20層まで潜るらしいので昔の知識でいいならと新人の時に潜った魔物の情報など
今はほとんど三人の専属教師となっている。三人はこっちに来てから常識などをこっちと教会の知識で比べていて正しい情報を見極めているようだ。
「ってところだな。まぁ二十層くらいなら基本的には大丈夫だろうけどな」
「すいません。クローバー。この後剣見てもらっていいかしら?」
「いいけど。雫の構えでも全然戦えるぞ?それに、お前うちの教え子に勝ち越しているんだろ?」
「クローバーの剣はとても綺麗だから手本になるわよ。それに同世代で私よりも強いのはあなただけだから」
雫の言葉に少しだけ苦笑してしまう。雫は誰よりも別格に近い
俺の剣は形がほとんどないがどの方向から振っても変わらないことから見ていて飽きないらしい。
剣の指導はしたことがあるのだが、雫の剣はある程度完成された剣なのでいじる場合は注意が必要になるのだが
「というよりも本当に俺の剣でいいのか?俺の剣はアーティファクトじゃないけど」
「はい。こちらの方が振りやすいですし。」
と俺の剣は少し特殊で片方の辺でしか切れない。所謂ハジメ達曰く日本刀と呼ばれる細味の両手剣に似ている剣らしい。
透明に近い透き通った剣は弱いアーティファクトより強いものも存在することもあるくらいの切れ味だ。元々俺自身が速度型で魔法を使って強化しているので切れ味に特化している剣は雫に私渡している。
一応白龍の剣は予備も含め5つはあるので一つくらいはあげてもいいだろう。
「……んじゃあ当分の間はハジメの分の飯だけでいいってことか」
「えっ?」
「ん?おかしいこと言ったか?非戦闘職のハジメは、王都滞在するのが普通だろ」
「……えっと。その……」
雫も香織も困ったように俺を見る
その反応だけで分かってしまう。
……ハジメも大迷宮についていくことが決定したのだ。
「何考えてやがるんだ。騎士団も教会も」
「あの、やっぱり怒ってますか?」
「怒っているより呆れているよ。いくら勇者たちがステータスが強いからってまだ王宮騎士団より弱いのに20層は確かにギリギリのラインだろう。でも、ハジメは違う。あいつにとったら1層すら危ない。……つーか止めなかったお前らもお前らだけど」
実際技能も、ステータスも1層を超えられたら奇跡的な問題だ。
そんな奴を迷宮に連れて行くのは愚策としか
「……でも、私たちが守れば」
「そんな考え捨てろ。何が起きるかが分からないのが迷宮なんだ。人ってもんは簡単に死んでしまうんだよ。……それにあいつは付き合いはお前らより短いけど分かるんだよ。あいつは本当に大切な時、怖いと思っても絶対に引かない。弱音を決して吐かない。だからこそ不安になるんだよ。……あいつは何かあった時絶対に逃げない。真っ先に自分が危険を犯すってな」
「そうだね。そういうところは本当に無茶をする子だと思っているよ。」
するとアレックスが俺たちに近づいてくる
「どうした?アレックス」
「いや。明日から団長火山にいくだろうから久しぶりに剣を打ち合おうって思ってね。僕も剣が鈍るといけなかったんだけど。お邪魔だったかい?」
「いや。全然、……アレックス。今の勇者達に現状とステータスを含めて、犠牲者はでると思うか?」
アレックスにも暇な時間を使い王宮に顔を出してもらっている。勇者達には結構人気が高く飴の役割をになってもらっているのだが
「まさかクローバー。出ないと思っているのかい?」
自分の意見はきっぱりというタイプだ。
「いや。出るよな。兄貴がついているとはいえ、トラップ対策が低すぎる。大迷宮は一種の魔物だからな」
「魔物?」
「そう魔物だよ。ちゃんと学習し、そして新しいトラップを仕掛ける。大迷宮の構造が変わるとか火山攻略に二ヶ月かかったけど、結局火山のトラップは常に変化していた。……よく三人で攻略できたのか、未だに謎だけどね」
大迷宮は未だに分からないことも多い。だからこそ非戦闘職が絶対に入らないようにと釘を刺していたのだが
「……まぁこっちでも少しばかり対策を取るか。さすがにクララは俺の方に同行してもらわないといけないから」
「対策ですか?」
「あぁ。連絡用のアーティファクトを持っているんだよ。だからいつでも連絡できるようにできるんだけど……でもこれって射程距離っていうのがあって百km程度の遠距離の相手しか連絡できないんだよ。元々俺が持っているのは火山の噴火を抑えるために領主と連絡を持つためだけど……一応三人分用意しようか。……本当はギルド員しか持たせないようになっているんだけどな。一応この印を持っていたらこのギルドが後ろにいるって証になる」
と俺がつけている小さな腕輪を引き出しから取り出す
「……悪い。本当ならやめさせたいが、訓練内容には俺は口出しできない。…無事を祈るしかないけど……せめてないよりかはましだと思うし迷宮内でも会話ができるから……でも迷宮内は俺たちは行ったことがないから転移もできないし」
「……ふふ。ありがとうございます。でも、いいんですか?ギルドの証明書になるって結構高価なものじゃ」
「友達の命に比べたら安いものだろ。……それに祈ることしかできないのが悔しいところだけど」
「クローバー結構過保護だね〜。実際一番甘いのってクローバーじゃないかい?」
アレックスが笑うと俺は少し苦い顔をしてしまう。
自覚はある。でも、どうしても過保護になってしまうのだ。
「……大丈夫。君の弟子たちだよ。簡単に死ぬわけがないわけじゃないか」
「……でも。」
「本当に変わらないね。……二人とも、死なないでね。ハジメくんも二人も僕たちにとってはもう家族みたいなものだから。僕とクローバーはもう家族を失うのは……耐えられそうにないから」
とアレックスが少し苦笑いをしているが二人は気づいたらしい
過保護になる理由も、このギルドにとって死がどういう意味を持っているのも
二人の顔が引き締まる。だから少しこの時ばかりは大丈夫かなっと少し油断してしまったんだ。
後悔することになる。ハジメを、戦場に出してしまったことに。