人類最強の男   作:焼肉定食

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反逆者たちの決断

王都に戻ってから三日が経った。

あれからやはりと言うべきであるが、王国側の人間は誰も彼もが愕然としたものの、それが〝無能〟のハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだった。

国王やイシュタルですら同じだった。強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから。

怒りを覚えていたが、未だにギルドの証が戻ってはきていないということがハジメが生きていることの証明になり、ずっと堪え続けていると言う現状だ

そんな中で俺はギルドハウスでのんびりしている。

というのも今日の会合では、とある人と約束をしているからである

 

「クローバーさん。フードの女性の人が来てますよ。」

「ん。了解。俺の部屋に通して」

 

とどうやらちょうど来客を出迎える

 

「クローバーお兄様。お久しぶりです」

 

と一人のフード姿の、手にはギルドの証がついた少女はにっこりと笑う

この女子はハイリヒ王国王女リリアーナ・S・B・ハイリヒ。まぁいわゆるお姫様である

 

「久しぶり、リリィ。まぁ適当に座ってくれ」

「はい!!」

 

と嬉しそうなリリィに俺も久しぶりに笑顔が溢れる。

 

「そういえば、今日はみなさんは?」

「希望者は樹海に戻す日なんだよ。ついでにアレックスとリアが里帰りしているな」

 

唯一樹海で俺たちのパーティーだけは樹海の侵入を許可されているのである。

なのでリリィと通じて交易関係を結んでいることもあり、リリィと王妃様はギルド側であり俺の後ろをサポートしてくれているのだ。

 

「……あぁ。そういえば最近雫はここに住んでいますよね?香織もそうですが」

「ん?まぁ元々はハジメがいたから住み始めたんだよ。次第に雫は剣術と戦略について学ぶのが目的になっていったけどな」

「ふふ。相変わらずお兄様の周りには女性が多いですね」

「偶然だろ……って忘れていた。香織の具合はどうだ?雫は最近ずっと寝泊まりを香織の部屋でいるらしくて。腕輪で連絡は取れるんだが……そこまで余裕がなさそうだったからな」

 

するとリリィは少し困ったようにする。

 

「未だに香織は目覚めないままです。ハジメさんはどうですか?」

「リリィには伝えてあるけど未だ生存している可能性は高い。……地上であればどこにいるのかわかるんだけどさすがに地下の座標は分からないからな。どうしようもない状況だ」

 

俺は小さく息を吐く。するとお茶とお菓子を持ったメイドがこっちにやってくる

当然付き合いの長いヘリーナである

 

「お茶です。」

「ん。ありがとうなヘリーナ。そういえば、速達が来た。およそ一ヶ月後帝国が勇者たちに会いに来る可能性が高いことがわかった」

「帝国がですが?」

「元々俺に会いに来るついでだろうな。恐らく婚約だろうな。あのおっさん俺に帝国継がせたかがっているし」

「強さこそ正義の国ですからね。でも、避けることはできるんでしょうか?」

「決闘すればいいだけの話だろ?帝国のルールに従ってやればいい」

「……そういうところがあなたが皇帝陛下に好かれているからだと思いますが……」

 

と小さくため息を吐く。そうだよなぁ。あのおっさん結構マゾ願望あるからなぁ

自分が断られるのが結構好きでさらに負けてリベンジするのはもっと好きだからな

 

「結婚は考えないのでしょうか?」

「ん?」

「いえ。クローバーどのは今だに結婚なされていませんですよね?元々孤児院経営もあと少しで国の援助が出るはずですが……結婚の予定は」

「ないっていうよりもする気がないかな。俺は元々孤児院でスラム出身だからな世継ぎも気にせずにいいだろうし、アレックスなんかリアと結婚したからな。……正直結婚ってよりも身分差別をなくすってことくらいしか興味ないし。恐らく死ぬまでは俺は独身だと思う。……未だにミリアを比べてしまう癖があるからな。女性にも失礼だし。俺も本気で好きな女性と結婚したいって思うし」

 

俺は自分でもメンドくさいって思ってしまう。だれか好きな人を考えようと恋バナや婚約話は全てミリアを思い出してしまうのだ

 

「……ガサツに見えて一途ですね」

「悪いか?」

「でも、ミリア殿の願いには……」

 

とそういえばこの二人には最後の遺言について話したんだっけと小さく苦笑してしまう

 

「仕方ねぇだろ?ミリア以上の女がいるかって聞かれたらいないとしか言いようがないな」

「……雫はどうですか?」

 

そうぶっきらぼうにいうとリリィが思いついたようにいう

恐らくリリィも初めて会った時は驚いただろうからな。答えておくのがいいだろう

 

「雫?……雫か?……恋人になるのは考えづらいな。元よりあいつの好みって王子様とか自分を守ってくれる人に憧れている感じが……するんだよ」

「そういうところはミリア姉様と同じですね」

「同じだよなぁ。ただ少し雫は優しすぎるんだよなぁ。厳しいこといいながら少し身内に甘いところがあるからな、……それにあいつらって地球に戻るだろ?そういった意味でも雫にとっては俺とはないだろうな。それに俺はあと少しであいつらとは敵同士になると思うしな」

 

すると不思議そうに俺を見る少しだけ思ったことを言ってみる

 

「つーか結婚かぁ。お前もそろそろ決まる年齢なんじゃねーの?」

「私ですか?」

「王族の一人娘なんだろ?帝国のクソ息子と婚約とかあるんじゃねーのか?」

「……」

「……やっぱり話が出てたんだな」

「はい。帝国と、王国の友好の証にと。……恐らく今度の会合では裏でそのような話もあると思われます」

 

ヘリーナが露骨に嫌な顔をしているのは分かる。

リリィは俺の妹と呼べるくらいに仲がいい。だから幸せになってほしいんだが……

 

「…俺もリリィもまともな結婚ができるのはちょっと厳しいだろうな」

「そうですね。」

 

と俺とリリィはため息を吐く。その後とある連絡が来るまで、俺たちは愚痴をずっと言い合っていたのだった。

 

 

 

「……そっか。良かったな」

『えぇ。本当にありがとうございます』

 

ギルドの証から聞こえてくる声。雫が香織が目覚めたと連絡があったのだ

一応医者などは俺の伝手を使い、勇者の育成をしているということは誰もが驚いていたのだが

 

『クローバーさん?南雲くんが生きているって』

「あぁ、教会にはいうなよ……ギルドが動いているのとこの後ハジメのことを考えたらハジメには自由に生きてもらいたいからな」

『そっか、……良かった』

 

少し後悔だろうか。少し嬉しそうな声でありながら暗い声が上がる

 

『そういえば、生きている限りは地上の方が会える可能性が高いって前に言っていたけど……あれってどう言う意味なの?」

「ん?単純な話だよ。生きるためには強くならざるを得ないんだ。一ヶ月くらいならば下層に行けば会える可能性はあるけど、さすがにそれ以上になると攻略か、自力で上に上がるしかなくなるんだよ」

 

と俺が答えると無言になる二人

よく分からないってことだろうな

 

「所謂食糧の関係だよ。食料が迷宮内にはないんだよ」

『あっ!』

「俺たちが行った大迷宮は50層くらいだけど……恐らくもっとあるだろうからな。200か300層くらいが妥当かな?試練と思われしものもないし……どちらにしろ食料と呼ばれるものがないっていうのは絶望的なんだよ」

『でも、生きているんですよね?』

「生きているんだよなぁ。……運良く食料となるものを見つけたか……それとも……」

 

あまり考えたくはない。俺も幾度か食べたことがあるが、……相性が悪ければ死が訪れる

 

『どうしたのよ……』

「ん?いや。それにそっちの世界の?科学だっけ?それが発達しているんだろ?オルクスの大迷宮は鉱石が豊富だしハジメなら食糧さえなんとかすれば生き残れる思っているんだよ。技術だったら雫が一番欲しかったけど……戦争を率いる俺の感想としてはハジメが一番の鍵を握ると思っていたんだ。いや正直ハジメ一人でよかった」

『南雲くんが』

「あいつ自分の恐ろしさに気づいていないんだよ。一回探りを入れてみたけど。特に銃って奴が一番理不尽だ。なんだよ。詠唱も適正もいらず最低でも30m先の敵をほぼノータイムで殺せる武器って。それにそれが一番弱いっていうんだったら……他の武器はどんなに恐ろしいんだよ。それもそれをあいつは作れるって言ったんだ。錬成と素材が集まればってな……そんなんあれば女子供でさえ数百人殺せる兵士に変わる」

 

その一言で二人もその重要さがわかったのだろう。

 

「……俺たちの世界は魔法に頼りすぎている。だからこそどうしてもそっちの世界の知識が欲しかったんだ」

『それって錬成師ってことを聞いた時に反応した理由ですか?』

「あぁ。……だから教会にだけは絶対に渡されたくなかったんだ……恐らく魔人族戦が終わったあとは直ぐに俺たちに教会は攻め込んでくるだろうからな」

 

そう。その次のことも考えなければならなかった。いや、戦争とかどうでもよかったんだ

俺たちは家族を守るためだけが行動原理なのだから

 

『それって南雲くんを一人の兵器として利用しようと思っていたってことですか?』

「最初はそうだったかな?というよりも俺は勇者の姿を最初見て……正直技術だけ奪って後は放置しておけばいいって思っていたんだよ。だから檜山のあの態度を見てな。……まぁでもギルドハウスに向かう途中にハジメの性格を分かった途端、ハジメは守る対象になったなったんだけどな。あいつは最初から全てを分かっていた。戦争も、自分に対する教会の理不尽も、教会が異常であることもな」

『……』

「複雑だとは思うがこっちが教会と戦争していることを忘れないでほしい。これは俺たちにとって至って当たり前なんだよ」

 

戦争をしているとはいえ家族を守るために勇者という存在は邪魔なのだ。

だから俺はなんとも言わなかった。ただ愚かなことをしていたにも関わらず

 

『それを私たちに話して良かったんですか?』

「というよりも今話さないといけないだろ?お前らは俺たちを善意の集団だと思いすぎているんだよ。だからこそ、全ての真実を話すことが先決だった。……この先は別々に歩いていかないといけないからな」

『どういうことですか?』

「俺たちが異端者集団ってことを忘れているんじゃないかって思ってな。……言っとくが俺たちがやっていることはこの世界では悪だ。教会のことは信じていない。簡単に内戦は起こす。獣人や森人族は保護する……所謂神に反抗していると言っても過言ではない」

 

それはどう言う意味なのか。二人は分からないだろうと思って俺は口を開ける

 

「これ以上俺たちに関わっていたらお前らは地球に帰れる可能性はかなり低くなるんだよ」

『……』

「帰還が神が左右しているならなおさらだ。俺たちは異端者、数十日くらいの交流ならまだしも神に叛逆している反逆者だ」

 

そうだからこそ、このタイミングなのだ。

帰還を目的とするのなら、これ以上は危ないとのアレックスとの判断だ

 

「俺はリリィとは交流があるからな。リリィを通じてハジメの発見を連絡することだってできる。今までは勇者の育成を目標にしていたが今回ばかりはハジメの捜索に移らないといけない……実際俺はもう指導係じゃなくなったからな」

 

そう勇者たちの育成を全て放棄する形になったのだ。まぁ勇者の情報を手にいれるって目的は既に完遂したので別にいいのだが

 

「まぁ、今回の件の責任を取るってことになったのもあるんだけどな」

『責任ですか?』

「あぁ。まぁ聞けば分かると思う。戦争中はあっちもなにもしてこないと思うけどな」

『あの、南雲くんについては嘘をついているわけじゃないんですよね?』

「なんでそんな嘘をつかないといけないといけないんだよ。俺たちのギルドの証は王国や帝国の冒険者にも知られていることだからな」

 

ギルドの証は結構広く知られている。それを開発した俺たちの付加術師は元々はかなり有名な付加術師であったからだ

 

「と言うわけだ。まぁ既に香織と雫の腕輪は外れるようにしてあるからな。腕輪はリリィに預けとけ。あいつは俺の家によくくるからな」

『……ちょ、ちょっと待ってください』

『んじゃ。またな』

 

と俺は腕輪の通話を切る

俺はギルドハウスに腰を下ろすとちょうど通話がくる。ギルドと共同で使っているアーティファクトでこっちは距離の制限がない

それを開くと聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

『お疲れ様。悪役本当に似合うね』

「うっせぇ。……まぁこれでいいのか?」

『さぁね。まぁ僕たちもあの三人は嫌いじゃなかった、いやむしろ好きだったかな。だからこそ僕たちは手放すべきだった。僕たちの家族の揉め事に友達を巻き込むわけにはいかない』

 

話さないんじゃなくて、話さないといけないか。死なないように、友達といれるように

 

「久しぶりにやけ酒になりそうだな」

「……そうだね。一番劣悪なものから開けていこうよ。……嫌なことは酒で忘れるのが……一番」

 

すると珍しくアレックスから啜り声が聞こえてくる

何年振り、いや、本当にミリアがなくなって以来だろう

 

『あれ?どうしてかな?……あんだけミリアが死んだ時に一生流せるだけの涙は出したはずなのに』

「バカ。泣き虫アレックスが今まで泣いてこなかったことが奇跡なんだろう?強くなったからだって罪悪感や哀愁はちゃんと感じるんだよ。……ちゃんと泣いとけ」

『うん。それじゃあ……ちょっと一室借りてくる一杯やろうよ』

「そうだな。たまには二人で飲むか」

 

と俺も立ち上がり酒専用の倉庫に向かう。

……どれだけ、いやなことがあっても変わらない

俺たちは、悪人で異端者なのだから

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