モンスターの大群に襲われたある村の一角で叫び声が上がる。
「お父さん!お母さん!コマチ!」
そこにいたのはモンスターの襲撃により崩れた家の前で泣き叫ぶ少年と崩れた家の瓦礫で下敷きになっている家族であろう血だらけの男女。
「うう…ハ…チマンか」
「お父さん!」
下敷きになっている男がうめき声をあげると自らの息子の名を呼び少年が男に近寄る。
「にげろハチマン…」
「なんで…やだ、やだよ!」
「はやく…!早く逃げるんだ!」
「ひっ…」
「俺たちはもう手遅れだ…。父さんの最後のお願いだ…頼む。急げ!」
「う、うわあああああああああああああああ!」
父に真剣に頼まれ少年は泣きながら駆け出した。
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少年は,ハチマンは走った。体力が続く限り走り続けた。走って走って走って次第に体力がなくなっていきついに倒れる。
(なんで…なんでお父さんたちがこんな目に…)
走っているときも頭にチラついた疑問。がむしゃらに走り続けた疲れがどっと襲い掛かってくる。それでも考えるのをとめない、止まらない。
(僕だけが生き残った…)
血まみれで倒れている両親に妹が頭にチラつく。
(ほんとに逃げるべきだったのかな…)
父親の最後の気迫と真剣さに気圧され気付けば走り出していた。
(僕がもっと強ければ…)
(みんなを守れるくらい強ければこんなことにならなかった…)
(村の人もお父さんもお母さんもコマチも死ななかった…)
心も体も疲弊し徐々に意識が遠のき始める。それでも考え続ける。
(僕は)
(強くなりたい)
(全部を守れるくらい強くなりたい)
そう決意すると同時に足音がすることに気づく。何とかそちらの方に首を動かすと人影が見え、人影と目が合う。
「ふむ…」
どうやらモンスターではなく人らしい。人だったことに安心したのか僕は意識を手放した。
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「ん…?」
意識がだんだんと覚醒していくのを感じ目を開ける。
「…」
すると白髪で紅い目をした少年が俺のことを無言で覗き込んでいた。
「お、おはよう」
困った俺はとりあえず勇気を出して挨拶をする。
「おじいちゃーーん!めをさましたよ!」
しかしガン無視をされた。
(勇気出したのに…)
ガン無視されたことにショックを受けていると足音が近づいてくる。
「おお、おきたか」
おじいちゃんが部屋の入り口から顔を覗かせる。そして紅い目をした少年は小走りでおじいちゃんのもとへと行くと服を掴みこちらをじっと見る。それと同時になぜこうなったのかを思い出していた。
(っ…)
思い出したハチマンは顔を青ざめさせ悲しそうな表情を浮かべる。
(…)
悲しそうな表情、森で疲れ倒れていたこと、そしてさっきはいった隣町が魔物に襲われ壊滅したと言う情報を元になんとなくハチマンに何があったのか気づいていた。それを踏まえたうえである質問をする。
「強くなりたいか」
「!」
ハチマンと会って目があった時瞳の奥に決意をみたおじいちゃんーーゼウスは問う。
「…」
ハチマンは心を見透かされた気がして黙り込みうつむくがすぐに顔を上げゼウスを見る。
「僕は強くなりたい…全部守れるくらい強く」
ゼウスは暫くハチマンを見つめあうとふっと笑う。
「お主名は何というんじゃ」
「ハチマン…ハチマン・ヒキガヤです」
「そうか。ハチマン強くなりたいならオラリオという場所に行くと良い」
「オラリオ?」
「そうじゃあそこにはすべてがそろって居る。なによりダンジョンというものもがある」
「…分かりました。助けていただきありがとうございました」
そう言うとハチマンはベッドから起き上がると外に出ようとする。
「こらこら待て待て」
そんなハチマンをゼウスは引き止める。
「オラリオに行くにはおぬしは若すぎる。だから当分この家で暮らしていけ。それにまだ傷も癒えてないじゃろ」
「?傷なんて…」
「バカたれ心のじゃよ。ずっと今にも泣きそうな顔をしておるぞ」
「…」
そんな時ずっと黙っていた赤い瞳の少年が口を開く。
「行っちゃうの…?」
周りに自分の歳と近い子がいなかった少年は初めて会えたのにどこかへ行ってしまうことに悲しそうな表情を浮かべる。そんなベルにコマチの姿が重なり、断ろうと開こうと思っていた口が閉じられる。
「遠慮しているならすることはない」
そう言いハチマンの頭をなでる。その手のひらは暖かくハチマンは抑えていたものが目からあふれ出る。
「いい…んですか」
「ああ大歓迎じゃ」
「ありがとう…ございます」
そう言うとハチマンはゼウスの胸で収まるまで泣き続けた。その日からハチマンはゼウスの家でお世話になることになった。
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「ついたねハチマン」
「ああ…ここがオラリオか…」
「ここで何が起こるんだろうね」
「さあな…面倒ごとはごめんだけどな」
そんな他愛もない談笑をしながら二人の少年はオラリオの中へと入っていった。これは強くなることを望んだ少年と英雄にあこがれた少年が紡ぐ物語。