やはり俺が強くなることは間違っているだろうか   作:149

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#17 二つ名

「真正面から斬り伏せて、勝ち、やがった…」

 

呆然とベートは呟いた。信じられないものを見るかのように、視線の先のベルとハチマンを見る。

 

「…精神枯渇」

 

「立ったまま気絶しちゃってる…」

 

《ヘスティア・ナイフ》を片手にぴくりとも身動ぎしないベルとハチマンに、ティオネとティオナの姉妹も啞然と呟きをこぼした。

 

「っ……!質問に答えろ、小人族!あのガキ共は一体っ…!?」

 

「ベル様ぁ!ハチマン様ぁ!」

 

「おい!?…ちっ!」

 

覚束ない足取りで駆け出して行ったリリにベートは舌打ちをする。

 

「—————————!リヴェリアッ、あいつの【ステイタス】を教えろ!」

 

「…私に盗み見をしろというのか、お前は」

 

「あんな堂々と晒しておいて盗み見になるかよ!あれをこのまま放置しておけば、お前が見なくたって他の奴等が目にするだろうぜ!」

 

晒されているベルの背中を見て、ベートはただ視界に入っただけとリヴェリアに詰め寄る。博識のリヴェリアは嘆息しながらも、好奇心が勝ちすっとベルの背に視線を走らせる。

 

「おい、まだかよっ」

 

「待て、もうすぐ読みおわ——————」

 

リヴェリアはそこで中途半端に言葉を切った。

 

「……くっ、ふふ、はははっ」

 

「何なんだよ、オイ!?ったくっ、アイズ、お前もちっとは【神聖文字】が読めんだろ!何かわからないのかよ!」

 

心底おかしそうに肩を揺らすリヴェリアに悪態をつき、アイズへと視線を向けた。

 

「……S」

 

「…はっ?」

 

「全アビリティ、オールS」

 

『オールS!?』

 

「ああ、動きを見る限りハチマンも、そこの黒髪の少年も同じかそれ以上だろう」

 

ベート達は驚愕の声を揃える。そしてその次の言葉にも言葉を失った。動きを見てベート達はハチマンのステイタスはベル以上だろうと察していた。しかしそれを改めてありえない事実と共に突き付けられ絶句する。

 

「名前は?」

 

沈黙を破る静かな声が響く。

 

「彼等の名前は?」

 

「し、知らねえ…。聞いていない…」

 

「…リヴェリア。いつまでも笑っていないでくれ」

 

「ふふっ…ああ、すまない。それで、何だったか?」

 

「彼の【ステイタス】を読み取ってくれ。彼等の真名を、だ」

 

「ああ、そうだったな。この子らは…」

 

「ハチマンとベル」

 

「アイズ?」

 

「黒髪の子はハチマン・ヒキガヤ、白髪の子はベル・クラネル」

 

【ロキ・ファミリア】の面々の心には少年達の名前が焼き付いた。

 

 

 

所要期間一か月。

 

ベル・クラネル及びハチマン・ヒキガヤLv2到達三日前の事だった。

 

***

 

「あ、エイナのお気に入りの冒険者君、はっけーん」

 

「!」

 

ある日の朝。ギルド本部で仕事をしていたエイナは友人の間延びした声に顔を上げる。

 

「あれれ、今日はなんだか一段と機嫌がよさそうだね、あの子達」

 

「…」

 

隣にいる友人——ミィシャの言葉が左から右へと流れてしまう。ここ数日顔も見せず九階層にミノタウロスが現れたと言う情報を入手し心配していたエイナは大丈夫そうな少年達の様子に思わず口元を緩ませる。

 

「おはようございます、エイナさん!」

 

「おはようございます」

 

「おはよう、ベル君、ハチマン君。久しぶり。探索は頑張ってる…なんて、聞くまでもないかな?」

 

「はい、頑張ってます!今は、最後に潜った日から間が空いちゃってますけど!」

 

「ふふっ、休息も大事だからね。休む時はしっかり休まないといけないから、ちょうどいいんじゃないかな?」

 

顔を綻ばせながら、エイナは上機嫌なベルと会話を進めた。

 

「それで、二人共何かいいことでもあったの?」

 

「わ、わかりますか?」

 

「ベル君だけならともかくハチマン君までそんな顔してちゃぁ、誰でもわかっちゃうよ?」

 

「俺を何だと思ってんですか…」

 

そんな二人にエイナは苦笑をこぼした。

 

「じ、実はですねっ…」

 

「うん」

 

「僕、とうとうLv2になったんです!」

 

——————バサバサバサッ、とミィシャが書類の山を落下させた。ベル達に背を向けた状態で、石のように固まっている。エイナを通してベル達のことを知っているミィシャは、彼が冒険者になって『一か月しかたっていない駆け出し』であることを、知っている。

 

「あ、俺もっす」

 

「は?」

 

今度こそミィシャは言葉を漏らした。彼女らしからぬ口調で。そしてエイナは笑っていた。それはもう綺麗な顔で笑っていた。

 

「…ん?」

 

「だから、Lv2になったんです、僕達!三日前に!」

 

「…LV2?」

 

「はい!」

 

「三日前?」

 

「はい!」

 

「二人共?」

 

「はい!」

 

「嘘なんかついてないよね?」

 

「はい!」

 

「ベル君、ハチマン君、冒険者になったのいつ?」

 

「確か…一か月前ですね」

 

質問の嵐はそこで打ち切られた。ヒューマン二人とハーフエルフの間で、無言の時間が交わされ続ける。そして数秒後——————エイナは爆発した。

 

「一か月で、Lv2~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」

 

周囲のざわめきを丸呑みする大音声。そして目の前にいる二人は身を大きく仰け反らせるのだった。

 

***

 

「ごめんっっ!」

 

両手をバンッと鳴らし、エイナは頭を下げる。場所はギルドの面談用ボックス。机と椅子が揃えられた一室で、エイナは対面にいるベルとハチマンに謝罪していた。

 

「他の【ファミリア】の人達がいるところで叫んじゃって…本当にごめん!」

 

数分前のロビーにて、エイナが衝動的に声を上げてしまったことにより、ベルとハチマンの【ランクアップ】はあの場にいた全員が知るところとなった。

 

「別に大丈夫ですエイナさん。どうせ公開されるんですし…」

 

顔を上げないエイナさんに、俺はまったく気にしてないと告げ、彼女は気まずそうに視線を戻す。

 

(その通りなんだけど…問題は【ランクアップ】自体じゃなくて、そのかかった時間なんだってば…)

 

Lv2到達が一か月と言うのは言葉で説明するのが馬鹿馬鹿しい程に異例の最短期間だ。

 

「あの、エイナさん…?」

 

「…ううん、何でもないよ。ごめんね、ぼーっとしちゃって」

 

色々思案をしていたエイナは難しい顔を浮かべていた後、何とか苦笑を作る。

 

「二人共、ごめん、先にこっちのお願いを聞いてもらってもいいかな?せっかく来てもらったのに悪いんだけど…私もお仕事しなくちゃいけなくて」

 

「あ、はい、大丈夫です。何ですか?」

 

「今日までの冒険者の活動記録を教えてほしいんだ」

 

「えっと…」

 

「大雑把でいいよ。どんなモンスターと戦ったとか、こんな冒険者依頼をこなしてみたとか」

 

羊皮紙と羽根ペンを机に用意しながらそう告げ、私事を決して犯さないように注意しながら、少年達の軌跡を聞き出していった。そして、少年達の話が三日前まで遡った時だった。二度目の頭痛がエイナを襲う。

 

「ミ、ミノタウロス…」

 

くらっ、と後方によろけそうになる頭を右手で押さえる。エイナはそんな眩暈やらなんやらに耐えながら、二人を怒るように睨んだ。あれだけ冒険するなと言ったのにっ。という非難がましい視線に、ベルは委縮しハチマンは委縮しながらすっ、と気配を消す。

 

(もうっ、どんな魔法を使ったのよ、キミ達はっ)

 

どうすればミノタウロスをLv1の冒険者が一騎打ちで倒せるのか、小一時間ほど問い詰めたくなった。

 

「…はぁ。大体わかったよ、キミたちが私の言いつけを、ち~っとも守ってくれる気がないってことは」

 

「いや、別にそんなことは何でもないですごめんなさい」

 

両目を瞑りつんとそっぽを向くエイナに、ハチマンは慌てて弁明しようとしたが、エイナさんに睨まれ速攻で頭を垂れる。

 

「…二人共。その場にいなかった私の言葉は見当違いかもしれない。安易に逃げようとしなかった君達の判断は、もしかしたら最善だったのかもしれない」

 

「「…」」

 

「私には何も言う資格はないかもしれないけど…でもね?これだけはどんな時でも忘れないで。…死んじゃったら、何も意味がないんだよ」

 

お願いだよ、とエイナはベルとハチマンのことを見つめる。

 

「いい?無茶は絶対ダメ。わかった?」

 

「は、はいっ」

 

「…善処します」

 

「わかった?」

 

「いや善…」

 

「ん?」

 

「はい…」

 

最期に鼻の先を押してうぐっと少年達を呻かせた後、二人へ優しく微笑んだ。

 

「…ベル君、ハチマン君、Lv2到達おめでとう。頑張ったね」

 

鼻を押さえていた二人は、目を見開き感謝の言葉を伝えた。

 

「じゃあ、今日は【ランクアップ】の報告だけってことでいいのかな?まだ私に用事があったりする」

 

「あ、そうだった…実は…」

 

そこからベルと俺は思いだしたように『発展アビリティ』についての相談をエイナさんにして帰路についた。

 

***

 

「帰りました、神様ー!」

 

俺達はホームである教会の隠し部屋の扉を開け、ベルが大きな声で挨拶をする。その声に反応しソファーで本を読んでいたヘスティアは読んでいた本から顔を上げ、にっこり微笑んだ。

 

「お帰り、ベル君、ハチマン君。それで決まったかい?君達の選ぶアビリティは」

 

「はい。僕、『幸運』のアビリティにします」

 

「君は?」

 

「俺は『理性』で」

 

エイナさんに相談した結果、ベルの『幸運』も俺の『理性』も過去に発現した人は聞いたことないそうだ。だからこの『理性』ってのが俺に役立つのか効果はどんなものかなんてものは一切わからない。けどエイナさんの話を聞いてこれにすることにしたのだ。

 

「そっか…じゃあ、早速やろうか。君達の【ランクアップ】を」

 

目の前で見上げてくるヘスティアに、俺達は同意した。三人で一緒に定位置となっているベッドへ移動し、【ステイタス】の更新を開始した。

 

「とうとう君達もLv2かぁ…なぁんて普通ならいうんだろうけど、君達の場合、感慨を感じる暇もなかったね」

 

「そ、そうですか?」

 

そんな雑談を交わしながら俺とベルの更新がおわり、ヘスティアの手が止まる。

 

「…終わったよ」

 

ヘスティアが腰から降り、俺達は上半身を起き上がらせた。すぐ横でヘスティアに見られながらも手を握ったり開いたりを繰り返した。

 

「…特に、何も変わらないですね」

 

「ああ、そうだな…」

 

「『ち、力が溢れてくる…!』…なんて起きると思っていたのかい?」

 

「ま、まぁ…」

 

「体の構造が作り変わるわけでもないしね、劇的な変化なんて期待させていたなら悪かったよ」

 

「まあ、そんな期待してたわけじゃないけど…」

 

『嘘である』

 

(うるさい)

 

「ふふっ、でもね?【ステイタス】の昇華は本物さ。君と言う『器』は高次の段階に移った。神達に近付いたって言えばわかりやすいかい?ベル君やハチマン君が意識できてないだけで、いざスイッチを入れればさっきまでとは比べ物にならない動きができる筈だよ?」

 

おかしそうに笑ったヘスティアはそう言うと、いつものように紙に【ステイタス】を記していく。

 

「…驚かせようと思ったけど、先に言っておこうかな」

 

「「?」」

 

嬉しそうに微笑んでいるヘスティアは、用紙を渡しながらそんなことを言っていた。

 

「朗報だぜ、二人共?」

 

「何がだ?」

 

「スキルと魔法、さ」

 

「「へっ?」」

 

「君達の何個——————じゃなくてっ!…うん、ほら、あれだ。ベル君はスキル、ハチマン君はスキルと魔法が発現しているよ」

 

俺とベルは数秒間抜けな表情を浮かべていただろう。ヘスティアの言葉を受け止め、用紙に視線を落とした。

 

ハチマン・ヒキガヤ

 

Lv2

 

力:I 0

 

耐久:I 0

 

器用:I 0

 

敏捷:I 0

 

魔力:I 0

 

理性:I

 

《魔法》

 

【サラマンダー】

 

・付与魔法(エンチャント)

 

・炎属性。

 

・詠唱式【纏え】(フィ・オーガ)

 

【ゾイ・スティーシマ】

 

・付与魔法(エンチャント)

 

・庇護属性。

 

・詠唱式【汝らの傷我がもらい受ける】

 

《スキル》

 

精霊の加護(ティポ)

 

・任意発動。

 

・自身と同一存在を作り出す。起動式は【二重存在】(ダブル)

 

・武器またはモンスターに変身可能。起動式は【顕現せよ】(エピファネイア)

 

・武器像は詠唱時のイメージ依存。

 

・モンスター変身像は討伐したモンスターのみ。

 

・解呪式【解除】(エレフェロシ)

 

・交信可能。

 

【自己犠牲】(アウトフィシア)

 

・ダメージの貯蓄。

 

・能動的行動に対するダメージエンチャント実行権。

 

・貯蓄ダメージは回復後も痛みは残存。

 

そして俺は目を見開き頬を引き攣らせた。

 

(この魔法詠唱的に傷をもらい受ける感じか…?…いらねえ)

 

『とか言いつつハチマン君はきっと使うよ』

 

(俺別にドМってわけじゃないんだけど…)

 

『さあてどうだかね、ミノタウロスには向かっていくし』

 

(うぐっ…悪かったって…)

 

実はあのミノタウロス戦の後目が覚めた時結構ティポにめちゃくちゃ怒られたってわけじゃないけどかなり小言を頂戴した。

 

『まあいいよ。あの時も言ったけど基本的に君の行動にケチつける気はないけどやっぱり心配しちゃうんだよ。それだけは覚えておいて』

 

(…わかった)

 

何となく怪訝な目で見られている気がするがおめでとう、と言い残しティポからの反応はなくなる。そこからベルが自分のスキル名の事で絶叫を上げたり、それを俺とヘスティアでいじりまくって更に発狂したりと色々あったが一段落付いたところでヘスティアが出かける準備を始める。

 

「どっか行くのか?」

 

「うん、今日は三か月に一回の神会の日なんだ」

 

「神会って…も、もしかして?」

 

「ああ、そうさ。暇な神達の会合だよ…【ランクアップ】したものの称号を決める、ね」

 

「なるほど、俺達の二つ名決めか」

 

「ああ、君達ボクは泥水をすすることになっても、必ず無難な二つ名を勝ち取ってくるよ…!」

 

「ああ…頼む」

 

「任せてくれ!それじゃあ行ってくる!」

 

そんな誓いの言葉を残し、扉の向こうへと消えていった。

 

***

 

「今回【ランクアップ】した子供は多いらしい」

 

「ああ、豊作って聞いた。楽しみだな」

 

神会の会場は都市中央に位置する摩天楼、その三十階。

 

「ここに顔を出す神もかなり増えたか」

 

「ひひっ、いなくなった奴も多いけどな」

 

出席をしている顔ぶれは様々だった。そんな色んな神が居座る中、ヘスティアは、用意された席の上で周囲の者達を軽く眺めていた。

 

「案外落ち着いてるわね?」

 

「緊張する理由もないだろ?」

 

「もっと張りつめているかと思ったわ。いつもみたいに、ぐぬぅ~、って顔をして」

 

「…何かが変わるんならいくらでも呻いてやるさ。でも、そんなところを見せるだけ、周りのやつ等を楽しませるだけだろう?」

 

「違いないわね…」

 

様々な神の視線を受けながら二人とも苦笑する。

 

「先に言っておくけど、私の発言なんて期待しないでよ。多数決のまえじゃ、こっちの意見もたったの一票に過ぎないんだから」

 

「わかってるよっ」

 

ヘスティアが語尾を荒くしたところで、「じゃ、始めるでー」と間延びした声が響いた。

 

「第ン千回神会開かせてもらいます、今回の司会進行役はうちことロキや!よろしくなー」

 

『いえぇーい!』と言う声を皮切りに情報交換と言う名の雑談が開始され、ある程度たったところでロキがまとめ今日の本命に移った。

 

「ほんなら、次に進もうか。命名式や」

 

神会の醍醐味と言っても過言でもない命名式と言う言葉が出た瞬間神達の顔に緊張が走る。

 

「資料はいきわたってるなー?ならいくでー?んじゃあ、、トップバッターは…セトのとこの、セティっちゅう冒険者から」

 

「た、頼む、どうかお手柔らかにっ…!?」

 

「「「「「「「「「「断る」」」」」」」」」」

 

「ノォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

そこからは命名式と言う名の地獄の時間が始まった。神々の感性により、所謂痛恨の二つ名が大量につけられていく。これこそがヘスティアが意気込んでいた理由であり、ハチマンが苦い顔をしていた理由なのだ。ベルなんかは神々の感性に感動を覚えていたが。

 

「ん、次の二人で最後やな」

 

「本当にLv2になったのね、あんたのとこの子は…しかも二人も」

 

周りの神々はデザートだと言わんばかりに下品の笑みを浮かべた。そしてその中でロキが静かに席から立ち上がった。

 

「…ロキ?」

 

「二つ名を決める前になぁ、ちょっと聞かせろや、ドチビ」

 

周囲の反応は一切合切無視し、棘を滲ませながらそっと細い眼を開く。

 

「一か月でうちらの『恩恵』を消化させるっちゅうのは、一体どういうことや?」

 

バンっ、とベルとハチマンの資料の上に手をたたきつけ、ロキは瞠目するヘスティアを睨んだ。

 

「うちのアイズでも最初の【ランクアップ】を迎えるのに一年、一年かかったんやぞ?それをこの少年達は一か月やと?何あほ抜かしとんねん。うちらの『恩恵』はこういうもんやない。一か月で子供らみんなが器を一変させたら、世話ないっちゅう話や。それができへんから、どいつもこいつも苦労しとるんやろうが」

 

『神の恩恵』は即席の力じゃない。あくまで促進剤的役割しかない。つまり自分を成長させるための鍵でしかないのだ。

 

「おいこら、ドチビ、説明せぇ」

 

「…」

 

凄味を利かせるロキに、ヘスティアは内心でだらだらと汗をかく。

 

「いえんのか?まさかうちらの力をつかったんじゃないんやろうな?」

 

「そ、そんなことするわけないだろうっ!」

 

「じゃあ、ほれ、言ってみい。後ろめたいことがなかったら、楽勝やろう」

 

「うっ…」

 

言葉巧みにまんまと誘導され返答を促される。万事休すか、とヘスティアが諦めかけた、次の瞬間。

 

「あら、別にいいじゃない」

 

美しいソプラノの声が響き渡った。

 

「…ぇ?」

 

「あぁん?」

 

ヘスティアに向けられた視線が、声の主のもとへと向けられる。

 

「ヘスティアが不正をしていないというのなら、無理に問いただす必要はないでしょう?【ファミリア】の内部事情には不干渉、とりわけ団員の能力は禁制なのだから」

 

「一か月やぞ?この数字の意味わかっとんのか、色ボケ女神」

 

「ふふ、どうしてそこまで強情になっているの、ロキ?私には、今の貴方の態度の方がよっぽど不思議に思えるけれど。…もしかして、焼き餅?自分のお気に入りの子の記録が、ヘスティアの子たちに抜かれたから?」

 

「んなわけあるか」

 

吐き捨てるロキに対し、フレイヤは「本当かしら?」と微笑を崩さない。そんな旧知の女神にジロジロと視線を送り、舌打ちをする。

 

「確かに数字単体を受け取れば耳を疑ってしまう…でも、この子達は奇跡的にもあのミノタウロスを倒したのでしょう?Lvと言う差を覆して」

 

「…」

 

「なら別に【ランクアップ】は不思議なことではない…と、私は思うけれど?」

 

「…」

 

「それじゃあ私は用があるから、失礼させてもらうわ」

 

「せっかくだし、ロリ神の眷属達の二つ名決めてからにしない?最後の最後だしさあ」

 

「ふふ、悪いけれど、そういうわけにもいかないの」

 

「でも、そうね…」とフレイヤは立ったまま資料を手に取り、ベル達の顔を見ながら言った。

 

「どうせなら、可愛い名前つけてあげてね?」

 

「「「「「「「「「「「「「「「おっけーっ!!」」」」」」」」」」」」」」

 

清々しい程男神たちは満場一致を見せ、フレイヤが去った後周りにいた女神達が引くほどの勢いで二つ名を考え始また。その中でロキはヘスティアのもとへと歩み寄る。

 

「ロキ?」

 

「……注意しとけよドチビ」

 

「えっ?」

 

「アホウ、気付け。あの女神が、男庇ったんやぞ?」

 

「っ…?」

 

「かっ、ほんとうにわからんのか。幸せなやっちゃな。…まあ、ええ、そもそもうちには関係ないし」

 

あほくさ、と呟いてロキは自分の席に戻っていく。ヘスティアがそんなロキの背中を見つめている時、円卓がどっと爆発した。

 

『『『『決まったぁー!!』』』』

 

***

 

「来た、届いたぞっ!神会の結果!」

 

ギルドのロビーで誰かの声がこだまする。その声を皮切りに大量の人が殺到し、その手に羊皮紙が渡っていく。

 

「やっとか!」

 

「おい、みせてくれ!」

 

神会の結果———————つまり二つ名の発表。そしてそれはギルド職員にもわたっており、ハーフエルフはそわそわしながらその用紙を受け取る。隣にいる友人のヒューマンとその用紙を上から順に追っていき、二枚目、三枚目、と紙をめくる。そして最後の頁にたどり着いたところで、一番下にお目当ての名前を発見した。

 

「—————あははっ」

 

「ん、ベル君とハチマン君のやつ?」

 

思わず笑い声がこぼれた。肩越しから覗き込んでくる友人に向けて、エイナはその二つ名を読み上げた。

 

「【ホワイト・ルーキー】と【ブラック・ルーキー】だって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも149です。今回は新しい魔法とスキル、それに二つ名を出しました。スキル多すぎだろって思う人もいると思います。俺も思ってましたごめんなさい。でもここから当分増える予定はありません恐らく多分。そして新しい魔法とスキルについて説明したいと思います。

【ゾイ・スティーシマ】

・付与魔法(エンチャント)

・庇護属性

・詠唱式【汝らの傷我がもらい受ける】

これは要するに自分に傷をエンチャントする魔法です。対象が追っている傷はすべてハチマンにうつります。更に呪詛や毒などの異常はダメージとして変換し自身にうつすことも可能です。そして直した対象に微回復効果をもたらします。

【自己犠牲】(アウトフィシア)

・ダメージの貯蓄。

・能動的行動に対するダメージエンチャント実行権。

・貯蓄ダメージは回復後も痛みは残存。

これはダメージをためそれをすべて能動的行動に付与します。ただこれを使ったからって傷が治るとかそういうわけじゃありません。それにためると決めた傷はもし回復しても痛みだけは残ります。この残った痛みはエンチャントを実行すれば消えます。

まあ大体こんな感じです。正直チートです。もう後悔はありません。もし些細なことでもこのスキルや魔法の事でもいいので質問がございましたらコメントしてくださるとうれしいです。それと忙しくなるので全然出せないかもしれません。それでは閲覧ありがとうございました。また次回お会いしましょう。
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