やはり俺が強くなることは間違っているだろうか   作:149

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#19 スキル

 

 

 

「やってきたぜ、十一階層!」

 

腰に手を当て自身の得物を肩に担ぎながらヴェルフは快活に言い放った。

 

「感謝してるぜ、ベル、ハチマン。【ファミリア】は閉鎖的だなんて言うが、捨てたもんじゃないな」

 

「まあ、色々もらったし『鍛冶』のアビリティの為なら俺達も無関係ってわけじゃないからな」

 

「しっかし、こんなにいるか?」

 

「まあ、ちょっとな」

 

ヴェルフはそう言いながらリリが背負っているバックパックの横についているナイフや両刃剣などに視線を向ける。明らかに俺達が扱う分には多すぎる武器がそこにはあった。

 

「…新しいお仲間が増えたと聞いてみれば、なーんですか、ただお二人がモノに釣られて買収されただけではありませんか」

 

会話を交わす俺達の横で、不機嫌そうな声が発せられる。非難と不満が込められた物言いと視線が俺とベルにぐさりと刺さる。

 

「ハチマン様がいるから厄介事なんて起こらない…なんて考えていたリリがバカでした」

 

「いや厄介事って…」

 

あまりの物言いに流石の俺も軽く引く。

 

「どこが違うんですか!せめてリリに相談をしてください!」

 

「何だ、そんなに俺が邪魔か、チビスケ?」

 

そこでヴェルフが口を挟み、リリは「チビ」と言われ、栗色の瞳を一層尖らせる。

 

「チビではありません!リリにはリリルカ・アーデと言う名前があります!」

 

「そうか。じゃあよろしくな、リリスケ」

 

「…もういいですっ、構うだけ無駄ですね!」

 

恐らく馬鹿にしているだろう声音で笑いかけてくるヴェルフに、リリはとうとうそっぽを向いた。

 

「…えーと、リリ。今更だけど紹介するよ?この人はヴェルフ・クロッゾさん。【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師なんだ」

 

「クロッゾっ?」

 

ヴェルフの名前を聞いたリリが弾かれるように振り返った。

 

「呪われた魔剣鍛冶師の家名?あの没落した————むぐっ」

 

最後まで言い切る前に俺はリリの口を手でふさいだ。

 

「ストップだリリ」

 

いきなり口を塞がれたリリは軽くヴェルフは驚いたようにベルは訳が分からないと言う風に俺に視線を送る。

 

「…知ってたのか?」

 

「ああ、魔剣が打てるようになった理由も、な」

 

「…もしそれを俺が打てる、と言ったら…どうする?」

 

「別にどうもしねえよ」

 

「はっ?」

 

「俺が使いたいと思ったのはヴェルフの装備だ。魔剣なんてどうでもいい」

 

今度は目をあらん限り見開き、言葉を失った後笑い声をあげる。

 

「ははっ、こりゃかなわねえ」

 

「いてえよ…」

 

楽しそうに笑いながら俺の背中をバンバンッと叩く。普通に痛い。

 

「————?」

 

「ん?」

 

その時だった。向かい合っている俺達の耳に、ピキリ、と言う音が響く。動きを止めたのは少しだけ、ダンジョンに慣れている俺達はその音が何なのかすぐに気づき武器を構える。

 

「う、わっ…!」

 

「…でけえな」

 

「『オーク』、ですね」

 

「きたな」

 

それぞれが反応する中で、ダンジョンの壁がひび割れ、破れる。

 

『ブギッ……ォオオオオオオオ…!』

 

潰れた産声を上げながら、オークは壁から生まれ落ちる。それに続いて大量のモンスターが生まれ落ちていく。

 

「よし、オークは俺に任せろ」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「むしろ大歓迎だろ?動きはトロいし的はでかい。俺の腕でも楽勝に当てられる。まあこの数はきつそうだが」

 

「なら真正面の二体は頼むその他のオークは俺がやる。リリはヴェルフの援護、ベルは好きに動け」

 

「「「了解です(わかった)」」」

 

指示を出した俺は膝を曲げオーク目掛けて地を蹴った。次の瞬間草原が爆ぜる。

 

『——————ブォ?』

 

オークの巨体が目の前に現れる。

 

(…)

 

洒落にならない加速力に内心で驚きながらも《神様のソード》を繰り出し、サンッッ、と言う快音が響く。

 

『!?』

 

オークの首が宙を舞う。仲間が一瞬で狩られ棒立ちになったオークに俺は襲い掛かる。敵の合間を縫い胸を刺し一閃し倒していく。

 

(————速くなってる…)

 

違う。全然違う。これまでとは次元が違う。これがランクアップ。強くなっている結果にテンションが上がりながらも冷静にモンスターを処していく。

 

「ふっ」

 

『ブギャアッ!?』

 

最期のオークを倒し一息つこうとした瞬間。

 

『ロオオオオオオオオオオオオッ!』

 

「!」

 

雄叫びを上げながら同じモンスターが迫ってくる。全身を震わせ、二匹いるアルマジロのモンスター——————『ハード・アーマード』が俺の方に真っすぐ向ってくる。

 

【纏え】(フィ・オーガ)!」

 

『!?』

 

炎を《神様のソード》に付与させ真正面から対峙する。ハード・アーマードはドワーフの攻撃を跳ね返すほどの鉄壁っぷり。そんなハード・アーマードを前に真正面から対峙すると言うのは普通なら愚行である。しかしそれは普通の冒険者の話で

 

『—————ガッッ!?』

 

そんな常識が当てはまらないハチマンはハード・アーマードの胴体を両断する。その勢いのまま他のモンスターも抹殺していく。

 

「っ…クロッゾ…様…」

 

「…」

 

勢い余ってヴェルフの周りに居るシルバーバックも撃破し、そこで戦闘がすべて終了する。

 

「ん?どうした?」

 

「…いえなんでもありません」

 

呆然と俺の方を見ていたヴェルフは、ふっと微笑して、大刀を肩に担ぎなおした。

 

「やっぱりいいよね、仲間って言うのは」

 

その男前な笑みに俺とベルは同意した。

 

***

 

大群だったモンスターとの戦闘を終え、俺達は小休憩をとり太刀を背中の鞘に戻して腕を組んでいるヴェルフ達と十一階層のルームにて雑談を交わしていた。

 

「やっぱ頭一つ飛びぬけたやつがいると戦闘は楽になるな。頼り切るのも駄目なんだが」

 

「でも、僕も戦ってて、前より負担って言うのが減ったような気がします」

 

「パーティーの利点だな。俺の方も大分余裕があったし」

 

「にしても、よく働くな、リリスケ」

 

「この時ばっかりは、サポーターの人に悪い気がしますよね…」

 

確かにと笑うヴェルフと俺達の視線の先には、リリがせっせと魔石を回収する姿があった。

 

「ところで、他の連中も増えてきたし、どうする?この後は場所を移すか?」

 

「うーん、そうですよね…」

 

「いっそ昼飯の時間にするか。人はいるからモンスターを警戒する必要もなさそうだし」

 

「なるほどな、ただ場所を譲るのも癪だし、利用させてもらうか。いいぞ、俺は賛成だ」

 

俺の提案にヴェルフとベルは賛同し、リリが戻ったら早いお昼にしようと言うことが決まった。そこから手持ち無沙汰になった俺はふと視線をルームに巡らせながら警戒はしつつもぼーっとする。

 

(あ、そいやスキル…)

 

ぼーっと辺りにいる冒険者を眺めそういえば発現していたスキルのことを思いだす。魔法に関してはティポに聞いて大体わかったのだがスキルに関してはほとんど触れていなかった。

 

(能動的行動に対するダメージエンチャント実行権…自らの意思で攻撃するときにためたダメージを付与するってことか…?)

 

ここまでは理解してもその先がわからなかった。何がきっかけでダメージがたまるのか、どう付与するのか、どれにしても何かしらのきっかけがいるんだろう。しかしそのきっかけがわからない。

 

(ダメージの貯蓄…念じてみるか?)

 

荒唐無稽な話だが特に心当たりもないので取り敢えず念じてみる。すると頭の中でカチリッ、と音が響く。そしてその音が頭の中で響くと体にあった傷に一瞬漆黒の粒が灯る。

 

(これで貯蓄完了…なのか?)

 

試しに小さな傷に少量の回復薬をかけると傷は治ったが微かに痛みが残り続ける。

 

(なるほど大体の感覚は掴んだ)

 

「…おい、ベル。それ、何だ?」

 

「?」

 

色々試している所にヴェルフの声が耳を叩き、ベルの方を見るとベルの右手で白い光の粒が明滅していた。

 

「…えっ?」

 

ベルもそれに気付き目を丸くする。俺の光とは違って雪のように白いその光は吸い込まれたと思ったら、新しく光粒が生まれ、また収縮していく。また、リン、リン、と言う高く細かい音が生じる。

 

「「「…」」」

 

俺達は一斉に顔を見合わせた。ベルはただただ困惑しそれを見かねたヴェルフが口を開こうとした——————その直前だった。

 

『—————————オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

耳を聾するほどの、凄まじい猛り声が轟く。

 

「「「っ!?」」」

 

俺達は、ここのいる冒険者全員が顔を振り上げ声の主に視線を向ける。頑丈そうな琥珀色の鱗、長い尻尾に鋭利な爪。体高はざっと百五十C、体長は四Mを超える小竜。

 

「『インファント・ドラゴン』…!?」

 

名も知らぬ冒険者がその名を呟く。そのモンスターは数ある種族の中でも最強と謳われる竜種で、十一、十二階層に出現する絶対数の少ない希少種。

 

『—————————ッッッ!!』

 

雄叫びと共にインファント・ドラゴンが動き冒険者を襲い暴れ始める。それを皮切りに普段はいがみ合っている冒険者たちはこの時ばかりは一丸となり、討伐しようと後衛は詠唱を始め、前衛は一斉に駆け出す。

 

「リリスケェッ、逃げろっ!?」

 

そんな中、余裕のないヴェルフの絶叫が飛びその前に俺は魔法を唱え駆け出した。遥か先にいた魔石を回収するリリのもとに小竜が突き進み始めていた。それにいち早く気付いた俺はステイタスと魔法にものを言わせリリのもとまで辿り着く。

 

「文句言うなよ」

 

「えっ?何があああああああああああああっ!?」

 

リリのもとまでたどり着いた俺は一応断りを入れ膝と首に手を回し抱きかかえ超加速し離脱する。その際リリが絶叫していたが気にしないことにし、インファント・ドラゴンに視線を送った瞬間————————。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

全ての音が消え純白の閃光が爆発する。それはベルの魔法、【ファイアボルト】。のはずだが規模がおかしい。白い粒子を纏ったそれは人一人丸呑みしてしまいそうなほどの厚さと大きさを持ってインファント・ドラゴンへと驀進する。

 

『…ガッ、ァ』

 

そしてそれは瞬く間に小竜を穿ちダンジョンの壁面へと着弾し大爆発を起こす。その結果小竜は掠れた声を残し倒れ伏し、静寂がルームを支配した。動きを止めた冒険者達の視線がベルのもとに集まり俺がボソッと呟いた。

 

「ベルって人間やめたんだな…」

 

「やめてないよっ!?」

 

驚愕と、戦慄、そして敵意の視線が渦巻く中ベルの絶叫が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

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