やはり俺が強くなることは間違っているだろうか   作:149

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#21 中層

「ここが、中層…」

 

「話には聞いていましたが、今までより光源が乏しいですね」

 

インファント・ドラゴンをぼっこぼこにした一週間後、エイナさんから中層進出の許可を貰った俺達は最初の死線(ファーストライン)とも言われている十三階層に所謂『中層』に足を踏み入れていた。

 

「十三階層はルームとルームを繋ぐ通路が長いのが特徴です。安全に戦闘を行う為にも、まずリリ達は迅速に最初のルームに到達しなければいけません」

 

リリの説明を聞きながら、俺達は確認し合うように頷く。

 

「モンスターと出くわさない内に少しでも前進しましょう。ヴェルフ様、ハチマン様、この通路は一本道なので、道なりにガンガン進んじゃってください」

 

「「わかった(了解)」」

 

リリにの指示に俺とヴェルフは前に出て進んでいく。

因みに今の陣形はと言うとヴェルフが前衛、俺が前衛兼遊撃、ベルが中衛でヴェルフのサポート、りりは後衛と言うものになっている。初の中層と言うこともあって程度を知るまではティポは俺の中でお留守番と言う形で収まった。

その際『役に立てなくてごめんね…』と心の中でティポが謝っていたが、俺が気にするな、と言いイレギュラーがあったら頼むと付け加えるとすぐに機嫌をなおし納得してくれた。

 

そんなこんなで四人一列で中層の奥へと足を踏み入れていく。

 

「…それにしても、やっぱり派手だよな、コレ」

 

「『サラマンダー・ウール』のことですか?」

 

「ああ。着心地は文句ないんだがな」

 

静寂が訪れるダンジョン内で、ヴェルフが軽い調子で話題を振ってくる。それにリリもあっさりと乗る。

 

「リリはこんな立派な護符を着れる日が来るなんて、思いもよりませんでした。ありがとうございます、ベル様。大切にしますね?」

 

「あははは…割引してもらったものだけどね」

 

「しかしこんなヒラヒラした服が、上級鍛冶師の作品も顔負けする耐熱装備ってのが納得いかねえ…まあ、それ以上におかしいやつがいるけどな」

 

着流しの裾を引っ張りながら口にした最後のセリフに、全員が俺の方へと視線を向ける。

 

「なんだ精霊がいるから『サラマンダー・ウール』はいらねえって…」

 

「ええ、本当に。なんなんですか生身一つで精霊の護符より性能が上って。本当に人間なんですか?」

 

「ふっ、気にしたら負けだぞヴェルフ、リリ」

 

「「それを張本人のお前(ハチマン様)が言うんじゃねえ(言わないでください)っ!!」」

 

そう、二人の言うとおり俺は今『サラマンダー・ウール』を身に着けずいつも通りの装備でここまで来ていた。

その理由としてはティポ曰く精霊である俺と俺が持っている魔法がそのまま司るものになるらしいティポがいればそこら辺の精霊の護符なんて目じゃないらしい。しかしその際

 

『私も精霊で君も精霊みたいなもんなんだよ?それに君の魔法を思い出してみて?【サラマンダー】だよ?要らないらないそんなの要らないよ。精霊の護符?精霊そのものがいるんだからこっちの方が性能高いに決まってるじゃない。それとも何浮気?他の精霊に浮気するの?私なんかよりもあんな布切れがいいの?』

 

とかなり早口でティポにキレられたハチマンがいたとかいないとか…。

 

「ですが、正直にありがたいです。非常識(ハチマン様)が居てくれるおかげで費用は浮きますし、なにより全滅のリスクがぐっと低くなりました」

 

「…なんか字おかしくなかった?」

 

「『ヘルハウンド』、だよね?」

 

「あれ」

 

「もし遭遇した場合はハチマン様かヴェルフ様が真っ先に処理と言う形で…」

 

「おう、任せろ。俺だって火葬は御免だ」

 

「…」

 

無言になっている俺は無視され話し合いは終わり、洞窟を装う一本道を歩き続ける。

 

そして数分。それまで動いていた俺達の足が、ほぼ同時にとまる。

 

「…いきなりか」

 

前方の暗闇から姿を現したモンスターを見てヴェルフが呟く。

ごつごつとした黒一色の体皮に真っ赤に輝く両の目。『放火魔』とも呼ばれる十三及び十四階層での死亡原因第一位、ヘルハウンド。

 

「ハチマン様」

 

「了解」

 

俺が駆け出すのと同時にリリが指示を飛ばす。その指示へ返事を返し、二匹いるヘルハウンドのもとまで肉薄し間合いを潰す。

こいつらは身体能力も高いが真に恐ろしいところはその口から放射される火炎攻撃にある。その炎は並の防具ならいとも容易く溶かしてしまうほどの高威力。それを遠距離で吐き出せると言うのだから本当に恐ろしい。

ならどうするか。答えは簡単、やられる前にやれ、だ。

 

「シッ!」

 

『ァガッ!?』

 

目視した瞬間間合いを潰されたヘルハウンドは驚いているのか動きを止め、その間に一匹は真っ二つに一刀両断する。

 

「っと!」

 

『キャウッ!?』

 

そしてもう一匹は下から蹴り上げ宙を無防備な状態で舞う。

 

「ヴェルフ!」

 

「わかってる!」

 

そのヘルハウンドを俺に続いて出て居た前衛のヴェルフが突き刺しヘルハウンドは呻き声と共に崩れ落ちた。

 

「よし…幸先は良さそうだな」

 

「うん、いい感じだった」

 

一旦戦闘を終え、パーティ―の空気が弛緩する。

 

「っと。また来たぞ」

 

「!」

 

しかしそれもつかの間。ヴェルフがモンスターに反応し直ぐにその方向へと視線を向ける。

道の奥からやってきたのは、兎の外見をした三匹のモンスターだった。

 

「あれは…ベル様!?」

 

「違うよっ!?」

 

「ベルが相手か…冗談きついぜ」

 

「いや完璧に冗談だから!?」

 

「かかってこいベル」

 

「だから違うっ…待ってこっち向いてソードを構えないで!?」

 

俺がベル(本物)の方を向いてソードを構えると本人は泣きそうな表情になる。そんな茶番の間にもベル達(偽物)は天然武器をの石斧を装備する。

 

「四対三だな」

 

「言っておきますが、あくまで四対一を繰り返すんですよ?」

 

「ああ、分かってる。それじゃあまずは右をやるぞ」

 

「う、うんっ!」

 

「おうっ!」

 

「それにしても、初めてモンスターを倒すことに抵抗を覚えますねぇ…普通に可愛いです」

 

『キャウッ!』

 

『キィ、キィイ!』

 

四人一組、三匹一塊。計七つの影が、正面からぶつかり合った。

 

***

 

アルミラージの鳴き声が四方八方から俺達の耳を殴る。

 

「息つく暇もない、ってな!」

 

「無駄口叩く暇もないです!」

 

次々と襲いかかってくるモンスターの群れを捌きながらリリとヴェルフが叫ぶ。

ヴェルフは大刀を振り回し、リリはそれを援護、俺とベルは魔法を解禁しモンスターの数を削っていく。

 

「ヴェルフ、伏せろ!」

 

「うおっ!?」

 

二匹のアルミラージがヴェルフに攻撃を仕掛けようとしていたのに気付き声を張る。

俺の声に反応ししゃがんだヴェルフの上を飛び越えアルミラージを殴り再起不能まで追い込む。

 

(多すぎる…)

 

十一階層の時とは質も量も全然違う。しかも負担はLvが上である俺とベルに集中しており大分疲弊していた。

休憩が必要だと誰が見るよりも明らかだったが何せその暇がない。内心どうするか、悪態をついていたその時に気付く。

 

(…?)

 

六人で編成されたパーティーが段々と俺たちのほうへと向かって近付いてくる。

そしてその後ろには大量のモンスターが後を追って——————————

 

「「—————っ!?まずい(です)、押し付けられたっ!!」」

 

その行為と目的にほぼ同時に気付いた俺とリリが声を張り上げる。

 

「え…?」

 

「囮にされた、すぐにモンスターが来る!退却するぞ!全員右手の通路だっ、急げ!」

 

「おいおいおいっ、冗談だろ!?」

 

普段出したことのないような切迫した声にベル達は動く。

 

「ハチマン様、魔法で…」

 

「分かってるっ!」

 

消えかけていた魔法をもう一度唱え火力を増やし通路をふさいでいるモンスターとの距離を詰め蹴散らしていく。

 

——————ティポをだすか?

 

一瞬考えが浮かんだがすぐにそれを否定する。もしこんなところで出したらティポはこの数のモンスターから集中砲火を受け速攻お陀仏。ついでに俺もお陀仏からの全員道連れなんて最悪なことになりかねない。

そうこう考えているうちにも人が通れる程度の間をあけ、そこに全員がその身をねじ込む。

 

(追いつかれる)

 

どんどんと通路の奥へと進んでいくうちに迎えるだろう結末に気付く。

それは単純な話。追いかけてくるモンスターのほうが速いのだ。ベルや俺はともかくサポーターで【ステイタス】の低いリリでは一本道において中層のモンスターたちから逃げきれないのは道理だった。

どうすれば、そこまで考えた時に横から投げかけられている視線に気づく。その視線の主のほうを見ると真っすぐと俺の目を見つめ、すぐにその思惑に気付く。

 

理解してくれた————と判断したのかベルはすぐに後ろを振り向き立ち止まる。

 

「っ!?ベル様!?」

 

「おい、ベル!」

 

「足を止めるなっ!」

 

その行動に気付いたリリとヴェルフが制止の声を上げるが、それをかき消す。

そんな俺たちの問答も無視し、ベルは盾を装備している左手を真っすぐ突き出し、砲声。

 

「【ファイアボルト】!」

 

通路に向かって魔法を三連射。

瞬間的に精製された炎雷は狭い通路の中で光り輝き、モンスターを一掃していく。

 

(くそっ)

 

その光景を見ながら俺は心の中で悪態をつく。

こういう場面での自らの魔法の火力不足を改めて自覚させられる。何時ぞやに言った必殺技として劣る、その言葉が今自分へと深く突き刺さる。もっと火力のある魔法があれば——————―

そう考えた時通路を埋め尽くしていた爆炎の中から四つの影が飛び出してくる。

 

(っ!?)

 

飛び出してきたのは四頭のヘルハウンド。

モンスター達は比喩抜きで燃えており、満身創痍のはずだった。しかし自らが炎を吐き出す為か全身を焼かれてもしぶとく生きていた。

 

『オオオオオオオオオオオオオッッ!?』

 

「っっ!」

 

怒り狂いながら飛び掛かってきたうちの二匹はベルが受け止めるが、その横を残る二匹が抜いていく。

 

「っ!」

 

脇目もふらずベルの左右を通過していったヘルハウンドは、本能故かリリとヴェルフの元へ疾走する。

 

それに気付きベルの悲鳴が飛ぶ中、ヴェルフには悪いがまずリリに襲いかかってるヘルハウンドを処理するため居リリの前に立つ。

 

『—————ガァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

「くそがっ!」

 

「舐めんなァッ!」

 

交錯する。俺は飛び掛かってきたヘルハウンドを斬り払い、ヴェルフは大刀を振り払いモンスターとすれ違う。

 

「三人とも、平気!?」

 

「は、はい…」

 

「大丈夫だ」

 

「なんとか、な…畜生め」

 

ふらつきながら立ち上がるリリと、腕を押さえながら情けなさそうに薄笑いを浮かべるヴェルフ。

敵の爪が掠めたのか、切り裂かれたその肌は出血していた。

庇いきれなかった————その思いがすぐに胸を満たし、思わず顔を歪めてしまう。どうしてもこんな状況をこの数による理不尽を打ち破れる火力が欲しい。そんなことを望んでしょうがない。

しかしそれもベル達の背後の光景にすぐさま目の色を変える。

 

「っ!まだ来るぞ!」

 

通路の奥からこちらへ向かってくる大量のモンスターの影に、警戒するように呼び掛ける。

しかしリリ達は俺とは反対の方向を見つめ声を漏らす。

 

「挟み撃ち…」

 

「気が滅入るどころじゃないな…」

 

その声に炎の弱まった一本道に目を向けると、先程とは違う別のアルミラージが跳ねながら出てくる。

 

「中層ってのは何でこう、モンスターが寄ってくるのが早いんだ。休む暇がないぞ」

 

「中層だからだろ」

 

「は、ははっ…」

 

そんな軽口をたたきながら、リリがバックパックから取り出した回復薬を二人に回す。

俺はと言うとその受け取りを拒否し、温存するように言う。

確かに疲弊はしていたがベルとヴェルフほどではなく逆に余裕があり集中力も未だに続いていた。発展アビリティの効果か?なんて考えながらも《神様のソード》を構えなおす。

 

「三人とも、リリは逃げることを上策とします。なんにしても態勢を整えなければキリがありません。なので…」

 

「片方を強引に突破…か」

 

「ええ」

 

俺とリリの問答に、他の二人も頷く。

 

「前には俺が出る。何でか普段よりも動けるしまだ余裕がある」

 

「わかりました。それでは…」

 

「おう」

 

「…行くぞ」

 

***

 

ビキリ、と。

数え切れないほどのモンスターを捌き疲労が頂点を迎えようとしていたハチマン達のもとに不穏な音が届く。

その音に反応し咄嗟に視線を周囲に巡らせた。しかし壁面に異常はない。ならどこから。

 

(横じゃない——————)

 

それにいち早く気付いたのはハチマンだった。精霊に近付いていた彼は普通の人より索敵能力が高かった。

その音源は頭上。天井を仰ぐハチマンに釣られベル達も顔を振り上げ、息をのむ。

まるで蜘蛛の巣のようにあり得ない数の亀裂が天井に走る。広すぎる、今のハチマン達には絶望的な効果範囲。

 

———————やばい。

 

そう思った瞬間。

耳を塞ぎたくなるほどの破砕音をまき散らし、ダンジョンはその牙をむいた。

 

***

 

『キィァァァァァァァア——————————!!』

 

甲高い産声を上げ夥しい数の『バッドバット』が天井から生まれ落ちる。と、同時に辺りに散っていき岩の天井を黒一色に染め上げる。

その視界を遮られた奥で、穴だらけとなった天井は限界を迎え安定を失い、崩落する。

 

「「「「———————ッッ!?」」」」

 

ベルも、リリも、ヴェルフも、俺もなりふり構わず地を蹴った。

降り注ぐ殺人的な岩雨。一つ一つが命を奪う可能性を孕み満を持して俺達に襲いかかってくる。

轟音に次ぐ轟音。命を奪わんとしているそれらを俺達は必死に避け続ける。

 

「ぐっ、ぅ…!」

 

ようやく落石の雨が収まった時。通路全体に土煙が立ち込め、ヴェルフのうめき声がどこからか漏れてくる。

確かめずともその脂汗が滲みだしたような声音に負傷したことを悟る。遠くではリリの荒い呼吸音が、ベルの息遣いが聞こえてくる。

生きているそれだけが確認できた時。

 

『ウゥ…』

 

立ち込めた砂埃が薄れ、徐々に薄れていく視界の中絶望を現したような漆黒の体躯がいくつも影を作り俺達を見下ろしていた。

 

『ガァ…!』

 

全てのヘルハウンドが地に低く伏せる。それは爆炎を放射するときの構え。

 

(———————いけない)

 

リリは青ざめる。

 

(———————間に合わねえッ)

 

ヴェルフは己の不甲斐なさを心底呪うように歯を食い縛る。

 

(———————)

 

ベルは言葉を失い瞠目する。ここが中層か、と。納得するように。

その間にもヘルハウンドたちは一斉に頭を振り上げた。誰もが待ち受ける次の瞬間に絶望しながらも男は動いた。

 

【守れ】(フィ・オーガ)ッッ!!」

 

ヘルハウンドがその内包した熱を解放するのと同時に、ハチマンは三人の前に躍り出て何時ぞやに試したように空中に炎の壁を作り出しそれを手で押さえる。そして次の瞬間。炎の壁を通して衝撃が襲いかかる。

 

「ッッ!!」

 

数秒、それに耐え続ける。炎の壁の温度は上がり、手は焼け爛れていくがそれをすぐに精霊の奇跡で直していく。ティポの加護がなければ消し炭になっている手を見ながら感謝しながらも思いを燃やす。

そして耐えて更に数秒かかっていた圧力が消える。

それを確認した俺はこれを解除しヘルハウンドに斬りかかろうとした瞬間。

またビキリ、と音が鳴る。

 

(またかっ!?)

 

パーティーメンバー全員が同じ思いを抱き、辺りにすぐ視線を向ける。しかし上へ横へ視線を巡らせようとも亀裂が確認できない。

その間にもビキリ、ビキリ、と音は鳴り続けそれに気付く。

 

「ちがう、ハチマン、したっ———————」

 

俺と同時に気付いたベルが声を上げるがそれを言い切る前にダンジョンの床が限界を迎えた。

 

「「「「!!」」」」

 

ダンジョンの床が抜け、その穴へと俺達は吸い込まれるように落ちていった。

 

 

 

 

 




一万字超えそうだったので一旦ここで投稿。ちなみにここから大分原作と乖離し始めるかも…?それと一戸聞きたいことと報告?みたいなのがあるんですけどはやく出せるなら一万字くらいでもいいですか?ちょっとぱっぱと出したくて…。
そして報告?はツイッターを作りました。もしよろしければフォローしてもらえるとありがたいです…。作った理由なんかはツイッターの方で説明しています。
それではまた次回お会いしましょう!

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