特に休止していたわけではないのですが、4年ほど更新が止まっていた本作を再始動させます。
もしも待っていた方がまだいらっしゃいましたら本当にお待たせして申し訳ありません。
文量は少なめですが、更新頻度を高くできるように集中的に書いてゆくつもりですのでリハビリのつもりで読んでいただけば幸いです。
衝撃的な出会いの後に洋風の居間へと案内されたヒビノ・ミライは戸棚の上に飾られた写真を眺めていた。
あの少女、ヒビノ・トキと名乗った少女のより幼い時期の写真、その両親と思わしき男女が映った幸せそうな写真が幾つも飾られていたのだ。
それらの写真の中からミライは気になる人物が映っていることに気が付く。
手に取って写真をよく見ると、そこには見覚えのない姿をしていたが、間違いなく彼がよく知る女性の年老いた姿がそこにはあった。
より良く写真に写った人物を見ようと目を凝らそうとした瞬間、ひったくられるように写真が彼の手元から離れ宙に浮く。
特に驚く素振りも見せず写真を目で追うと写真はお茶の準備をすると言い部屋を後にしていたヒビノ・トキの手元に収まった。
「…お茶が入ったわ。座ったらどう?」
まるで勝手に触るなと言いたげな声色で不機嫌そうにミライへ着席を促すトキ。
彼女の周りにはティーセットの数々が宙に浮いており、手を使わずに飲み物がカップに淹れられ、次々に配膳されていった。
「やっぱり超能力。それが君の“個性”なんだね?」
「そうよ…。おばあちゃんと同じ、超能力と言われている能力は大体使えるわ。…例えば、こんなこともね!」
トキがそう力強く叫ぶとミライは見えない力が彼の心に干渉しようとしていることに気が付く。
(テレパシーによるハッキング…! こんな高度なことも出来るなんて!)
テレパシーとは言葉を介さずに相手の精神へ自身の思考を伝えることが出来る超能力の一種であり、一般的には遠く離れた相手とのコミュニケーションに用いられる能力として知られている。しかし、この超能力の本質は相手の精神へと無許可にアクセスすることにある。
電話で例えるならば、例え電話が掛かってきたとしてもそれに応答するか否かは電話の持ち主が決めることが出来る。
しかしテレパシーとは受け手側の意志に関係なく問答無用で応答させることと同様なのだ。
能力者の力量によっては相手の精神に割り込み、相手の記憶や思考をのぞき見、暴くことも容易にできてしまう程に恐ろしく攻撃的な能力でもあるのだ。
テレパシーが遠隔通話として活用できるのは相手が勝手にこちらの心を覗かいと理解できるほどの信頼を築いているか、あるいは同等の能力を有しているかのどちらかとなる。
そして、ウルトラマンであるミライの場合は後者であった。
「―ッ!? 信じらんない! 逆にこっちの心を読み取ろうとするなんて!!」
トキが狼狽するのも無理はなかった。
ミライはトキからのテレパシーを防ぎつつ、まったく同じテレパシーをトキに放って相手の心をのぞき込む一歩手前まで干渉し返したのだ。
それはこちらの家のドアをこじ開けようとしてきた相手を完全に締め出しつつ、逆に相手のドアを完全に開けるにもかかわらずノックで済ませてくれたようなものである。
「ちょっとしたコツがあるんだ」
「……」
特別なことは何も無さそうにそう告げるミライ。
実際、彼にとっては超能力を有する宇宙人と対峙することもある宇宙警備隊の基礎技能を披露しただけなのだが、トキからすれば赤子の手をひねるかのように攻撃をいなされたことには変わりはなかった。
超能力者としても思春期の女子としてもこれ以上の屈辱はなかったのだが、先に仕掛けたのは自分であることを自覚していたため、ただただ顔を真っ赤にして相手を睨みつける。
そんな複雑な乙女の心境をミライが察せるはずもなく、子供のちょっとした悪戯程度で話を続けようとした。
「それより“個性”を使っても大丈夫なのかい? 確かヒーローとか、特別な許可が無いと“個性”を使うことは違法だったはずじゃ?」
「それはあくまで公共の場での話。ここは私有地だから“個性”の使用は特に問題はないのさ!」
突如ミライとトキ以外に誰も居ないはずの部屋に“個性”や超能力の類ではない男性とおぼしき肉声が響き渡る。
彼ら以外に人語を話す存在は居なかったはずと認識していたミライは突然の事に驚きつつもその声の主を探すため部屋中を見渡したのだが声の主はすぐに判明した。
屋敷の門にてトキが抱きかかえていた、ネズミと呼ぶには大きく、白い毛皮の上から紳士的な服装を身にまとう謎の生物がソファーに座り、用意された紅茶を優雅に飲みながらトキに対しまるで教師が生徒を
「でも“個性”を使って勝手に人の頭の中を覗くのはどうだろう? 君の気持ちは分かるけど言葉が通じる相手なのだから先ずは会話で解決できるように努力すべきだね」
「…ごめんなさいおじ様」
「あなたは?」
「やあ、初めまして! 僕の名前は根津。ネズミなのか犬なのか熊なのか…実は君と同じ宇宙人なのかも知れないけど真実は僕にも分からない。ただ分かっているのは僕も“個性”を持ち、人間と同等の権利を与えられたこの星の住人にして彼女の後見人さ!」
「後…見人?」
「そう、そして遺言執行者でもある。ウルトラマンメビウス…いや、ヒビノ・ミライさん」
根津に彼の正体を知っているという発言に思わず身構えるミライ。
しかし間髪を入れずに続けられた根津の言葉に彼は警戒を解かざるを得なかった。
「依頼主はヒビノ・カコさん。ミライさん、貴方宛てに遺言を預かっています。そして、彼女の遺産を相続する権利が貴方にもあります。彼女の身内としてね」
一方そのころ、彼らのいる屋敷から程近いショッピング街の裏路地に突如二人の男が現れ、すぐさま表街道へと移動し雑踏に紛れ込む。
リーダー格とおぼしき男に対し、もう一人の男はその行動に対し疑問を感じているようであった。
『なぜ地球人の街なんかに降り立つ? どうせこの街は壊滅するんだ。場所を吟味する必要なんてないだろう?』
男は不機嫌そうに声を荒げる。
周辺を歩いていた人たちは突然の怒号に驚きこそはしたが少し距離を取り怪訝な反応を示す程度であった。
それはこの世界にとっては不自然な現象であった。
例えそれが悪ふざけによる狂言であっても、ヒーローや警察に注意してもらうだけでも抑止力となるのでこの星の人々は通報に対するハードルはかなり低い。
だが人々はこの危険な発言をした男たちを通報しなかったのには訳があった。
『あまり大声を出すな。誰が聞いているのか分からんのだぞ』
『ハッ! オレたちの言葉分かる奴がいるのなら是非ともお目にかかりたいものだ』
彼らの話す言葉は日本語ではなかった。
それどころか、この地球上のどこの国の言葉でもなかったのだ。
白昼堂々と危険な発言をしようとも、その内容が理解されなければそれはただ大声で話している二人組でしかない。
このような状況下でもヒーローや警察に注意してもらうこと自体は可能ではあるのだが、明確に危険人物と認識できない相手を注意するように通報することには抵抗を持つ者が大半だった。
人々が遠巻きに眺めているのを尻目に、男たちは憚ることもなく会話を続ける。
『そもそも、オレたちが求めるエモノは青く大きな水たまりにあるはず』
『そりゃこっちの方が効率良いからだ。最初からエモノが大量に一か所に集まっている所へコイツを放つ方があんな広大な水たまりを探させるより時間が掛らなくて済む』
『しかしそれでは目立ちすぎやしないか? この星のヒーローって奴らにコイツを何とか出来るとは思えないが既に厄介な奴が来ているのは知っているだろう?』
『宇宙警備隊か。奴に見つかればこちらの損害は図りしれないだろう』
『ではなぜ?』
『だからこそだ。奴が出現する前にエモノを回収する必要がある! せめて投資分は回収できるとことを願おう』
そう忌々しげに吐き捨てながら男たちは目的の物が集まる場所を探すために歩き続ける。
確かな悪意と危機が近づきつつあることに周りの人々は気づく術を持ち合わせては居なかった。
お読みいただきありがとうございました。
最後の更新から4年、その間にトリガー、デッカー、ブレーザー、そしてアークと4シリーズも放送され、次回は久しぶりのメビウス以来となる宇宙人の擬態タイプのウルトラマンが登場ということでどうにか少しでもいいので本作を再始動させようと発起した次第です。
そして、僕のヒーローアカデミア。こちらも連載終了からもうすぐ1年と時が過ぎる早さにめまいがしそうですが、敬愛する堀越先生が無事作品を完結まで書けたのは逢魔ヶ刻動物園の頃からのファンとしては嬉しい限りでした。
原作の物語は終了しましたが、ヒロアカは本当に度量の広い世界観が魅力的な作品だと思っております。
久しぶりに本作を書いててウルトラマンとの相性の良さに関心するばかりです。
もっと増えればいいのに…。ウルトラマンとのクロスオーバーに限らず、ヒロアカの二次創作が増える一助になれればと思い書き続けたいと思います。
いま非常に再燃している最中なのでなるだけ早く続きを書きあげます。
それではまた。