メビウスのヒーローアカデミア   作:Mak

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1か月丸々更新が空いてしまい申し訳ありません。

楽しんで読んでもらえればと思います。


(かこ)の遺産 ①

『続いての特集です。 昨日N県の太田山金鉱にて怪獣が現れました。 この怪獣は既にMt.レディと謎の巨人、ウルトラマンメビウスによって討伐されました。 怪獣が現れた事例はこれで3件目となりました。 頻発する怪獣騒動、なぜこのような空想の生物が突如現れたのか・・・。

本日は怪獣災害アナリストである上田耕生さんをスタジオにお招きしております。 上田さん、宜しくお願い致します。』

 

『よろしくお願いいたします』

 

『早速ですが上田さん、なぜ今になって過去に例をみない巨大な生物が現れるようになったのでしょうか?』

 

『ずばり、外来種の到来ですな』

 

『と申しますと?』

 

『あれほどのデカい生物が地球に今の今まで発見されずにいたとは考えられません。 だとしたらあとは外、この場合は宇宙からやってきたとしかいう他ないでしょう』

 

『しかしそれらはどのようにしてやってきたのでしょう? 最新の政府の発表によりますと、田等院に現れた最初の怪獣(ディノゾール)は宇宙でも生息できる能力を有しているとのことでしたが、その次に遊園地に現れた怪獣(ガギ)は地球に似た環境でしか生息できないとのことでしたが?』

 

『地球規模、まさかこのようなSF染みたセリフを言う日が来るとは思いませんでしたな・・・、ゴホン。 地球規模で例えるのならば、外来種の侵入の要因の一つは人間によって外国から持ち込まれることが大半です。 これを宇宙規模に置き換えると・・・、異星人が連れてきたと考えるのが妥当でしょう』

 

『異星人と言えば真っ先に思いつくのはやはり“ウルトラマン”と呼ばれるあの巨人でしょうか。 上田さんはカレが、怪獣たちを連れてきたとお考えですか?』

 

『恐らく。 きっと力を見せびらかしたいのでしょう。 あれだけの力を示すにはそれ相応の相手があってこそしめ・・・・』

 

 

突然テレビの電源が落ちる。

それは、家主がリビングのドアノブに手を掛け、もう片方の手には学生鞄を持って部屋を出ると同時であった。 リモコンはテレビの側に置かれたままであり、部屋には静寂だけが残った。

 

 

あの番組を観るのはもうやめよう。

そう心に決めながら家主は通学路を歩く。

 

何気なしに観ていたあの番組は彼女を不機嫌にさせるには十分な内容であった。

推測でしかない未検証な情報をニュースと称して流し、アナリストという騙る謎の人物に喋らせる。

イタズラに不安を煽る内容は元々好きではなかったが今回は彼女個人の事情も相まって非常に不快に感じられた。

 

 

「・・・・馬鹿みたい」

 

 

別に彼女本人に被害が及んだ訳ではない。 

だが怪獣とウルトラマンの出現は少しずつではあるが平和だった日常にまで影響を及ぼし始めていた。

現に隣のクラスの出来事ではあったがとある生徒が紫色の肌と触覚の“個性”をもつ女子生徒に「宇宙人」と揶揄う事案が発生した。

その時は女子生徒が寛容かつ毅然とした態度でそれに対応し、周りのクラスメイトの執り成しもあったため大事にはならなかったが、いつまた火種が燻ぶり、大きな問題に発展するかは時間の問題だと彼女は感じ取っていたのだ。

そして、何時その悪意が自分に向けられるのか・・・、彼女の心は穏やかではなかった。

 

 

 

 

 

翌日、公安との手続きを完了させ、ミライを連れて事務所に戻ってきたMt.レディを待ち構えていたのは事務所唯一の社員(サイドキック)兼経理担当、山本サトシからヒビノ・ミライの採用に対する『待った』の声だった。

 

 

「ミライ君を雇っちゃダメってどういうことよ!」

 

「背景が不透明な人物を雇えるわけがないだろ!」

 

 

事務所に着いてからずっとこの調子である。

事務所の人間同士が盛り上がっている最中、隣に位置する応接間ではミライが所在なさげに座っていた。

その声は壁一枚を挟んでいるとはいえ事務所の壁を通り抜けてくるほどの声量であり、内容はほぼ筒抜けであったからだ。

 

 

「だ~か~ら! ミライ君には事情があるのよ! あんまり他人の事情を暴くものじゃないでしょ!」

 

「だからって過去の経歴をあやふやにしたまま雇えるか!! もし彼が・・・、いや彼でなくとも・・・、彼の家族にヒーロー事務所に相応しくない経歴があったらどうするんだ?」

 

 

ヒートアップしていくMt.レディにつられそうになりながらも、山本は途中から声を落とし耳打ちするように告げる。

 

 

「なによそれ!? そんなの彼には関係ないじゃない!」

 

「その通りだ。 しかしこの世にはな、そういうことを気にされる人々もいるんだ! 実際そうやって騒がれて潰れた事務所だって少なくない」

 

「そんなのって・・・・・・」

 

 

夢見ていた華やかな世界の思わぬ裏事情を知り、自分がそれに直面していることに打ちのめされそうになる。

だが、山本の説得はまだまだ終わらなかった。

 

 

「それにな、彼を雇ってこの事務所になんのメリットがあるんだ? もう一人の方、金子さんみたいに前職が大手のサポートアイテム製作会社だったとか、そういうのを示してもらわんと困る」

 

 

今この場には金子は居ない。

彼は履歴書をMt.レディに渡し、一度地元に戻ることとなったのだ。

後日、経歴の確認と面接を経て正式に入社する予定となっており、彼はその準備に掛かる必要があったからだ。

 

そしてこれは山本なりの優しさでもあった。 

どこかMt.レディはミライを雇うことに関して冷静ではないと感じていたからだ。 

即戦力となる優秀な人材を引き合いに出し、冷静に比較させ彼を雇うことの意味を考えさせる目的もあった。

 

 

「メリットならあるわよ! 彼はカネゴンの作ったメカを整備出来るわ! 炊事洗濯も出来るし、それに個性だって・・・!」

 

「ちょっと待った・・・・・・、はい! こちらMt.事務所です!」

 

 

ミライを雇うことに対するメリットを示そうと躍起になるMt.レディだったが、その威勢は鳴り響いた外線よって妨げられてしまう。

 

山本も営業用の声に切り替え笑顔で対応するのだが、だんだんとその顔が不機嫌になるのを彼女は見逃さなかった。

 

 

 

ドアが開くと同時に満面の笑みを浮かべたMt.レディが応接間に入室して来た。

 

 

「ミライく~ん! あなた宛てに電話が来ているわよ?」

 

「僕に? ですか?」

 

「そう。 山本が怒っていたわよ、家族間の通信に会社の回線を使うなって」

 

「僕の・・・家族!?」

 

「何驚いているのよ? ここの番号を知らせたのは君なんでしょ? それより! 電話終わったら家族のこと詳しく教えてね! これで経歴がはっきりすればあなたを雇えるかもしれないんだから!」

 

「は、はぁ」

 

「そこの電話を使って。 外線3番を押せば繋がるから! あ、お茶がもう無いわね。 淹れてきてあげるからその間にどうぞ」

 

 

にこやかにそう告げ、空になった湯呑を持って退出するMt.レディ。

部屋に残されたのは対照的に困惑と疑念に満ちた表情のミライだけとなった。

彼はゆっくりと備え付けられた電話機に近づき受話器を持ち上げる。

 

 

(僕の家族? 少なくともこの星に僕以外のM78星雲人は来ていないはずだ。 兄さんたちからの連絡ならウルトラサインを出すだろうし、一体誰なんだろう?)

 

 

一瞬で考えを旅順させ、いくつかの可能性を巡らせたがどのみち電話に出ないことには始まらないと思い直し、意を決して外線ボタンを押した。

 

 

「・・・・・・もしもし、ヒビノ・ミライですが?」

 

『・・・本当に居たんだ・・・』

 

「え? それはどういうことだ? 君は一体・・・?」

 

『初めまして、ヒビノ・ミライさん。 いいえ、ウルトラマンメビウス』

 

「ッ!?? 君は何者だ? どうして僕のことを知っているんだ!?」

 

 

声の主は年若い女性の声だった。 

途中まで、ミライはそのどこかで聞いたことがあるような懐かしい印象を覚える声の正体を訪ねようとする、しかし返ってきた衝撃的な単語に小声ながらも語尾が荒くし問い詰めようとした。

 

 

『その答えを知りたかったら今から言う住所に一人で来なさい、私も貴方に興味があるの』

 

 

 

数分後、2つの湯呑と自分の故郷名産の洋菓子を盆に載せたMt.レディが応接間のドアを開ける。

 

 

「どうミライ君? 話はおわった・・・かしら・・・・?」

 

 

応接間にはミライの姿はなく、テーブルの上には一枚のメモ書きだけが残されていた。

 

 

「急用が出来たので失礼いたします、か。 折角お茶を淹れてあげたのに・・・・うぇ! にがッ!?」

 

 

ソファに腰掛け、持ってきた茶を啜る。 

その味はお茶請けとの相性を考え濃く淹れたつもりだったのだが彼女の予想以上に苦く濃く出てしまっていた。 

普通であればすぐにでも甘い洋菓子で口直しをするところではあるが、彼女はその洋菓子を不思議と手に付ける気にはなれず、ただひたすら2杯分の濃いお茶を胃に流し込んだ。

 

 

 

 

 

千葉県のとある駅から徒歩15分と少々、閑静な住宅街の一角に周辺の住居とは一線を画す豪邸と呼ぶにふさわしい住宅があった。

 

その豪邸のこれまた立派な門の前にミライは立っていた。

此処こそが電話の相手が来るようにと指示した場所であり、表札には『ヒビノ』と書かれている。

 

様々な疑惑を胸にインターホンを押そうとするミライだったがその前に重く金属製と思われる鍵が解錠される音がする。

 

 

「失礼しまーす」

 

 

解錠を入れと解釈したミライは門を開く。

するとまず目に映ったはカタツムリのような突起した両目と人の頭すら丸かじり出来そうな程口を大きく開けた人間ではない何かが彼の面前に飛び出してきたのだ。

 

一般人であれば突然のことに腰を抜かして驚くだろうが、彼は特に驚きもしなかった。 

いや、多少は目を見開いたがそれよりもその正体に驚いていた。

 

 

「ファントン星人!? いや、違う。 本物と見間違えるほど精巧だけどこれは人形だ。 なぜこの地球にこんなものが・・・」

 

「へー、やっぱりその人形って本物の宇宙人がモデルだったんだ」

 

ファントン星人の等身大人形の背後からあの電話の声が聞こえてくる。

背丈が2メートルもあり、特徴的な広い肩幅のせいでミライからは声の主の姿が見えなかった。

人形を脇に押しやり、出来た隙間から通り抜けるとそこには制服姿に身を包んだ中学生ぐらいの黒髪の女の子がそこには居た。

その両手にはネズミと呼ぶには大きく、白い見たことのない生物を抱えていたのだが、ミライが驚いたのはその生物にではなく、女子中学生の姿に対して驚いていた。

 

 

「君は!? いやでも・・・ありえない。 けどそっくりだ・・・」

 

「初めまして、ミライさん。 私の名前はトキ。ヒビノ・カコの孫よ。 よろしく」

 

 

 




少し短めですがいかがでしたでしょうか?

次回もお楽しみに!
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