Atelier lirica~アースランドの錬金術士~   作:ねり金術師

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弟子と悪魔と魔法の氷

 ところかわってリオンの一味アジト。

 

 そこには協力相手の説得をやり遂げ灰になる直前のリリカがいた。

 

 リオン達初期メンバーは個性的であるものの、少なくとも悪い人たちではないのである。

 ただ目的を目の前にして、周りが見えなくなっているだけ。

 

 

 

 ザルドなる底の見えない老人もいたが、警戒に警戒を重ね夜襲の取り止めに成功したわけだ。

 

 これから宿敵との対決が始まるというのに余計な体力を使う暇はあるのかという問い掛けが決定打になった。

 

 -この事からもわかるとおり、ジェシカはリオン一味の目的を正確に把握している。

 

 把握した上で、なおかつ最悪な状況の被害を予想した上で彼らと行動を共にしていた。

 

 ではなぜこんなことになったかというと、話はジェシカがこの島にたどり着いたところから始まる。

 

 

 

 島にたどり着いたジェシカに待ち受けていたのは、先住民からの暑い歓迎

 ではなく同じく侵入者からのつるし上げだった。

 

「あのー、わたし怪しいものじゃないんです。ただの通りすがりですよ」

 

 後ろ手に縄で縛られご丁寧に椅子に座らせられて逃げられないように六人体制で詰問されている。

 ジェシカはなんとか相手に信用してもらおうと言葉を紡いでいた。

 

 

「いやこんな辺鄙な島に一人で来る時点で既に怪しさ隠せないだろ。」

「ごもっとも…!ぐうの音もでない正論だけど!本当に違うんです!ほしいものがここにあるって聞いて来ただけなんですよ!」

「欲しいもの、だと?」

 

 不意にジェシカを監視する目線が強くなる。

 先程まではまだ不審人物にたいする程度の警戒だったのが、一触即発になりかねないレベルまで引き上げたのだ。

 殺気と違わない凍てつく空気を錯覚して、背筋に冷たい汗が流れる。

 

「貴様、その話どこで聞いた?どこまで知ってる?」

「わ、わたしが知ってるのはこの島で『月の雫ムーンドリップ』ってよばれる魔法を解除できる液体が手に入るってことだけです!」

「なるほど、あなたの目当ては月の雫なのですわね」

「あ…」

 

 語るに落ちるとはこのこと。

 いや、別に隠していたわけではないのでそこまで問題ないはずであった。

 …相手が、カタギの人間であれば、の話だ。

 

 

「それじゃぁもっと詳しい話をきかせてもらおうか、情報源と目的、全てを」

 

 

 言葉には出さないが『何をしてでも吐かせる』という気概が伝わってくる。

 彼らにも計画というものがあるし、邪魔となりうるのなら排除も辞さないだろう。

 有無を言わせない圧力に、ジェシカは訥々と語らざるを得なくなるのだった。

 

 

――――――――――――

「月の雫については古書に詳しい知人から教わり―」

「その目的のために、どうしても欲しくて一人で来た…ですか。…………どうかされました?零帝様。」

「―いや、少し昔を思い出していただけだ。さて、ジェシカ―いやイシュガルの錬金術師リリカと言ったほうがいいか?」

 

 あらかた絞りつくされた後に改められて巷で通っている名のほうで話が切り出された。

 

「悪いが月の雫は余るほど余裕があるものではない」

 

 リリカの目の前がまっくらになった!

 すわここで話が終わ…………るわけがない、まだ物語は続くのだ。

 

「だが、もし俺たちに協力するというのなら話は別だ。」

 

 その言葉を聞いたリリカはバッと顔をあげる。

 ジェシカを見る男のそれには利用してやろうという魂胆に、些か同情的な感情ものせられていた。

 

 

「錬金術…………俺はあまりよく知らんが、道具を使いこなして奇跡を起こす魔導士なんだろう?」

「いえ魔導士ではないです」

 

 すかさず否定をかえすあたり、自らが魔導士ではないという拘りがあるようだ。

 リリカは続ける。

 

「それに錬金術は無作為に奇跡を起こせる魔・法・でもありません。素材を理解し、過程を構築してはじめて結果を起こせる技・術・です。奇跡の裏には綿密な計画と柔軟な発想、そして裏付けするための試行錯誤どりょくが必要なんです。魔法と一緒にしないで」

 

 相手の目を見てハッキリといい放つその姿に、零帝と呼ばれる男は少し鼻白んだがすぐにむしろ面白いと言わんばかりの笑みを溢す。

 

「ほう、つまり錬金術だろうと無理なものは無理ということか?」

「そんなことは言ってないよ。たしかに人によっては無理かもしれないけど、試行錯誤の果てに誰かが奇跡を起こすんだ。それが錬金術ってやつなんだよ」

「そこまで言うのなら、見せてもらおうじゃないか錬金術師の実力とやらを」

「フフッ、吠え面かかせてやりますよ。」

 

 

 火に油を注ぐ勢いで話が斜め上の方角へ進んでいく。

 あれよこれよと話が決まり、ふと全員が気づいた頃にはジェシカも彼らの目的、デリオラの復活そして討伐に協力することになったのだ。

 

そしてー

 

「なに、これ…………?」

 

 一つの出会いを果たし、リオンとジェシカは岐路に立たされた。

 

 

 一悶着あって最終的に一時的な共闘関係を結ぶことになっジェシカたち。

 いまは計画の最終段階である、デリオラの討伐のための前準備を終えていた。

 復活のための月の雫は今回の儀式で全て集まる予定である。

 

 この集まった月の雫がそのままデリオラの復活に使われるか、もしくはジェシカの手に渡るかはこれからの彼女の活躍次第だ。

 

 ジェシカは万全の状態で解呪に専念できるよう、一寸した隠し部屋に陣取っていた。

 

 

 その中で彼女はデリオラの氷を解かし、復活させるための方法を頭のなかで描く。

 

 方法は二通り。

 一つは月の雫の代替になるアイテムを使って解呪(はかい)すること。

 これはあの氷を直に見て、どういった性質なのかを理解して作ったアイテムでどうにかなるだろう。

 

 

 そしてもう一つ、旅の最中に偶然出来てしまったアイテムを使うことで文字通り解呪する方法だ。

 アレがただの氷ではないから取れる、一か八かの奇跡だった。

 

 

 両方とも、既に準備は整っている。

 

 そして彼女がいる部屋からは預かり知れないが、デリオラをめぐる戦いも佳境に入っていた。

 

 

 仮にリオンが負けたとしても、そのまま月の雫を手に入れて逃げるという算段は、今の彼女にはない。

 

 

 どうしたものかとウンウンと悩みあぐねるジェシカ。

 油断していたのが悪かったのか、思わぬ伏兵が近づいていることに気づくのが遅れ-

 

「こんなところにいたのか、リリカ。」

 

「エッ…!?」

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